肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「ラーメン発見伝&らーめん才遊記」作 久部緑郎先生/画 河合単先生

 

漫画「ラーメン発見伝」と「らーめん才遊記」にかんたんしました。

 

www.shogakukan.co.jp

 

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食べもの漫画が好きで、時々目についた作品を買って読むようにしています。

この作品は、コンビニのペーパーブックスで購入していました。

 

私は先に「才遊記」から読んでしまったのですが、
作品の時系列としては「発見伝」→「才遊記」となります。
ストーリーの繋がりは薄いのでどちらから読んでも問題ありませんが、
発見伝から読んでいれば才遊記の数箇所でニヤリとできる感じです。

ちなみにこの2月末に発見伝の最終巻が出たところで、
3月末からは才遊記の1巻がコンビニで出るようです。


以下、若干のネタバレを交えつつ、両作品を紹介します。

 

 

 

 

 


発見伝は脱サラしてラーメン屋になりたい男が主人公、
才遊記は料理研究家の親許から逃げてきた女が主人公です。


発見伝のあらすじ。

主人公はラーメン屋を開く開業資金を貯めるため、
昼間は商社でサラリーマン勤めをし、
夜は修行のために公園でラーメン屋台を出しています。

二重生活な訳です。

そんなある日、主人公は会社でラーメン事業の担当になることに。
ラーメン事業の開発、ラーメンを通じた人助け、ラーメンライバルとの対決等を経て、
主人公は念願の脱サラ・ラーメン店開店を果たす……という流れになります。

 

才遊記のあらすじ。

主人公は著名な料理研究家の一人娘です。
世間常識はありません。B級グルメであるラーメンの知識もありません。
名前はゆとりちゃん。まんまかいな。
但し、母の薫陶により料理スキルだけは並外れたものがあります。

とあるきっかけでラーメンという食べもののワクワク感を知った彼女は、
前作発見伝の主人公のライバルが経営するラーメンコンサルに入社します。
そこでラーメン関係のコンサルや人助け、ライバルとの対決に励んでいった末に、
最後は料理研究家の跡を継がせたい母と、ラーメンで生きていきたい娘の
母娘対決に繋がる……という流れです。


この両作品、作者さんの「ラーメン業界に対するリスペクト」が
素晴らしいんですよね。
ここまで敬意を尽くしてくれれば、取材先のラーメン屋さんも満足を超え、
誇らしいとすら感じていただけるのではないでしょうか。


ストーリー。

この両作品は一貫して「ラーメンの進化・発展」を掘り下げているのですが、
面白いことにこの漫画自体も「既存の料理漫画の進化・発展系」なんですよね。

昭和風シンプルラーメンが「美味しんぼ」や「ミスター味っ子」だとすれば、
この漫画はダブルスープとこだわりタレを絶妙のバランスで仕上げた、
いかにもな21世紀型ラーメンというところ。
先達の優れたところを取り入れつつ、独自の魅力を加えて正統進化させた感じなのです。

具体的には。

 ・料理を通じて人助け……美味しんぼミスター味っ子
 ・料理対決での盛り上げ……〃
 ・豊富なウンチク……美味しんぼ
 ・親子関係の葛藤……美味しんぼ
 ・主人公を導く強大なライバル……美味しんぼ
 ・問題を拾ってくるダメ上司……美味しんぼ
 ・審査員のオーバーリアクション……ミスター味っ子(アニメ版ほどではない)
 ・パートナーのかわいい女性……美味しんぼ(序盤)、ミスター味っ子(未亡人)
 ・ネタが切れたら三角関係……美味しんぼ

などなど、先人が築いた料理漫画の骨組みをよくよく研究し、
自分のものとしている感があります。
とりわけ、美味しんぼの影響は明らかですね。

 

その上で、この漫画の大変優れた工夫なのですが。
コンサルや対決のテーマに「実際的な店舗経営」を取り入れているのです。


印象的なエピソードをひとつ。
町の中華料理屋が高齢の為、後継者を探しています。
適切な後継者を主人公たちが探してくるという話の流れなのですが。

普通の料理漫画はここから「おいしい料理をつくった人」「心をこめた接客ができる人」を選ぶところ、この漫画では「自分では料理を作らず、店から出て、地域との信頼関係づくりや広告宣伝に力を入れた人」が大勝利するんですよね。
元々の中華料理屋のポテンシャルを踏まえれば、売り込み方を変えれば充分繁盛するんだと。飲食店経営は皿の中、店の中だけを見ていては駄目なんだと。

もちろん、ラーメンの出来栄え、味の良さで対決する話が多いのですけど。
ちょこちょことこういう経営ネタを入れてくる、
ラーメンの味のことだけを考えていたら大失敗、という戒めを刺してくるのです。


漫画のジャンルを「料理漫画」+「経営漫画」のダブルスープにしたようなもので、
下手なストーリーテラーならばとっ散らかってしまうところなのですが。
原作者の久部緑郎先生という方は相当に頭がよいのかセンスが巧みなのか、
漫画としてきれいに、読み易く、読み応えがあるように成立させています。

「主人公すげえ」より「作者すげえ」の方が正直な感想になります。
まったくジャンルは違いますが、「暗殺教室」の読後感に近いかもしれません。
研究と洗練の果てに完成した良作漫画、という印象です。


発見伝と才遊記の違いについては、どちらも面白いのですが
発見伝の方がいい意味で意識高めで、才遊記の方がいい意味でアホですね。

発見伝の主人公、昼間はグータラサラリーマンで一見美味しんぼ風なのですが、
第一話の時点で夜には屋台を出してラーメンの研鑽に励んでいるのです。
これって、凄いことですよね。
相当の覚悟がないと、普通の社会人はそんなことできません。続きません。

物語が進む中、一部界隈で有名な「ラーメンハゲ」こと芹沢さん

ラーメンハゲ - Google 検索

を始めとして、主人公の周りには強力なライバルや支援者が次々と登場します。

皆が皆、それぞれの方法で主人公に気づきを与え、主人公の成長を導くのです。
これは単なるラッキーではなくて、実力ある者ほど主人公の本気・努力を認めているからなんですよ。

 

発見伝は主人公を取り巻く、「格好いいおっさんたち」を愛でる漫画です。
よほど取材がしっかりしているのでしょう。
協力者である石神秀幸さんもよほど手厚い支援をされたのでしょう。
それぞれにモデルがいるのだと思いますが、
まあ出てくるおっさん一人ひとりの実に男前なこと。

ライバル芹沢さんばかりが目立ちがちですが。
昼間の上司、油断させて腹の中はキレッキレの四谷さん。
日頃はニコニコ、仕入れ先の不手際には激おこのギャップ萌え小池さん。
粗野で粗暴ながらも実は商売の本質を掴んでいる賢マッチョ武田さん。
カリスマ×復讐者×ツンデレ×メガネヒゲ×仏頂面という盛り盛りな千葉さん。

これはもうおっさんフェチには堪りません。

経営要素なんかを取り入れて人生は厳しい難しいといった態を取りつつ、
よく見ると「真摯に頑張った者がきちんと報われる」ストーリーになっている。
下手な自己啓発本を読むならこの漫画を3回読んだ方が遥かに良いと思います。


続編の才遊記は逆に、主人公のキャラクターで皆を引っ張っていく漫画です。
ゆとりちゃん(本名)は最高にアホで、最高にかわいくて、最高にすごい奴なのです。
前作最大の強敵芹沢さんですら、彼女にはペースを狂わされてしまうのです。

発見伝でラーメン屋経営がいかに厳しいか、
ラーメンをつくるのがいかに難しいかを散々やった後だからこそ、
ゆとりちゃんの天才性が引き立つのです。

発見伝ほど肩肘を張らず、勢いでピッコーンピッコーン言いながら
読み進めていくのが楽しいと思いますね。
ゆとりちゃんを見ていると元気が出てきます。

とは言え、一人のキャラでいつまでも引っ張っていくのは難しいのでしょう。
発見伝に比べれば短めのストーリーになるのはやむなしです。
真の意味でゆとりちゃんを食うような脇キャラも出てきませんでした。
そしてそれが、正しいスピンオフのあり方だとも思いますね。

 


作画。

河合単さんのイラストは独特の味わいがあります。
私がいいなと思う点を3つ挙げたいと思います。


1つ目。
写実的なラーメンの描写。

やはり取材をしっかりされた上で、写真などを参照しながら
描かれているのだと思いますが。
漫画の主題、ラーメンが実においしそうです。

ただトレースしているのではなくて、
ラーメン現物や取材先への敬意が伝わってくるかのようなのです。

さすがプロ! と唸らされてしまいます。

そして何より、見ているとおなかが減ってきます!


2つ目。
おっさんたち。

先ほどストーリーのところで散々書いたので短くしますが、
とにかくおっさんたちが格好いい。

イケメンなんてほとんど出てこないんですよ。
ゲジ眉主人公、ハゲ※、デブ無精髭、タラコ唇ロンゲ髭……とかばかり。

 ※万が一にも髪の毛をラーメンに落としたくないから剃っているという設定

絶妙にリアルな、その辺にいそうなビジュアルのおっさんばかりです。
でも、読んでいるうちに彼らが輝いて見えてくるんですよねえ。

若いうちにこんな漫画を読んでいたら(青年誌全般がそうですが)
おっさん好きの女子が増えてしまうじゃないですか。
不倫とかが増えて治安が乱れるじゃないですか。

そういう意味では禁書になりかねませんね。


3つ目。
女の子。

河合単さんが描く女性は……おっさんたち同様、体型がリアルなんです。
親近感を覚えざるを得ません。

平たく言えば、全体的に足が太いのです。
その癖、微妙に短いスカートをはいていたり薄着だったりします。
その状態で足を組んでいたりもします。

下着だとか裸だとか性的な描写だとかはまったくないのですが、
ちょいちょい挑発的な表紙であったり、
下ネタ混じりの会話であったり、
巨乳キャラが放り込まれたりしてくるんですよね。

ううむ、けしからんと言ったらよいのか、もっとやれと言うべきか。
サービスやテコ入れで書いているのか、作者の趣味で書いているのか。
判断に困りますが、味わい深い魅力があるのですよ。
なんかこう、いわゆる若い人向けの漫画にはない、
青年誌系の女性特有の艶ってありますよね。

 

 

さて、色々と発見伝・才遊記の魅力を書いてきました。

私はラーメンは京都派というか、
白状すると天下一品と新福菜館があれば幸せという人間なので、
東京の左の方っぽいシュッとしたラーメンの魅力は
実のところたぶんよく分かっていないのですが、
それでもこの漫画は面白いと思います。

繰り返しですが、ラーメンへの強いリスペクトが感じ取れるのがいい。
職業系の漫画はけっこうな数がありますが、
取材で流した汗の量を想像できるような漫画は多くありません。

ちょっと文字が多いので読むのに時間はかかりますが、
読んで後悔することはないのではないかと思います。

コンビニ等で見かけたらぜひ。
そして、私の家の近所に天下一品ができますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「三好長慶と曜変天目茶碗」  徳島新聞 徳島市男性の「曜変茶碗」化学顔料ほぼ検出されず

 

 

続報はあるまいと思い込んでいた曜変天目茶碗のニュースが入ってきたので
かんたんしました。

せっかくなので、曜変騒ぎや三好長慶に関する雑感でも
書いてみようかと思います。

 

まずは曜変の件。

 

徳島市男性の「曜変茶碗」 化学顔料ほぼ検出されず【徳島ニュース】- 徳島新聞社

 

贋作贋作と言われてしまった曜変天目の持ち主の方が、
奈良大の魚島純一教授(保存科学)に鑑定を依頼したとのことです。


結果。

 

18世紀以降に開発された化学顔料はほぼ検出されなかった

 

魚島教授は「どの色にX線を照射しても、ほぼ同じ成分が検出され、使われた釉(ゆう)薬(やく)は1種類とみられる。この結果が出たことで偽物とは断定できなくなった」と話した


とのことであります。

記事にある通り、

 

番組での鑑定結果に異論を唱えていた専門家は、中国の模倣品と斑紋が酷似していることを理由に「化学顔料が使われている」と訴えていたが、その主張を覆す結果となった。


とひとまずは言えそうです。
持ち主の方はさぞ嬉しかったことでしょうね。


とは言え、一足飛びに「じゃあ本物なんだね」とはなりません

あくまで今回分かったのは、
「18世紀以降に開発された化学顔料はほぼ検出されなかった」
ということだけなのですから。

持ち主の方の協力を得られるのであったとしても、
まだまだ検証のポイントは多いと思われます。


<科学的鑑定>

①茶碗の成分的に、つくられたのは何世紀と推定されるのか
  -現代人が化学顔料を使わずに、奇跡的につくったのかもしれない

②茶碗は南宋時代の同種の茶碗と同じ特徴・成分を有しているのか
  -当時の日本人が奇跡的につくったのかもしれない


<史学的鑑定>

③本当に三好長慶由来なのか
  -確かに南宋時代の茶碗でも、いわれが違うかもしれない


<美術的鑑定>

④本当に「曜変」なのか
  -長慶由来の南宋の天目茶碗でも、曜変とは認められないかもしれない

曜変だとして、美しい、価値があると認められるのか
  -曜変だけど「格落ち」と判断されるかもしれない


と、思いつくだけでもチェック項目は多そうです。
もっとも、①②を満たした時点でけっこうな値打ちものでしょうけど。


私としては、

①②は予想しようがないので専門家に委ねるしかない、
一旦確かに南宋時代の天目茶碗だと仮定した上で、

・③は三好家由来っぽいが、三好長慶が使用した確証は得られない
 (他の三好一族由来である可能性の方が高い)

・④⑤は向こう数十年、「曜変」とオーソライズを得られることはない

辺りが暫定の検証結果となる気がいたします。


③について。

四国に貴重な茶碗が伝わったとなれば、「三好一族」はアリだと思います。

ただ、既に色々な方が指摘されておりますが、
なんでも鑑定団では家系図・由来書が妙に新しい品のように見えた上、
三好一族で茶の湯となると、長慶よりも宗三か実休が思い浮かぶのですよね。

長慶は茶の湯というより連歌の人です。

一方で宗三と実休は知る人ぞ知る茶数寄者で、一般的にはマイナーながら、
茶道の歴史においては長慶よりもメジャーな存在であります。

例えば「清玩名物記」というドキュメントには、
「耀変の持ち主は元々近江の六角殿で、今は三好実休である」
ということが記されています
(出典:三好長慶 宮帯出版社 今谷明/天野忠幸監修)

 ※この「耀変」が今回の「曜変」かどうかは不明

宗三は刀剣乱舞で大人気の宗三左文字のまさにオーナーだった人で、
名物の大収集者、当時の武家を代表する茶人です
刀剣女子よ三好沼に来たれ。

宗三か実休、いずれか系の子孫が曜変天目を秘蔵していて、
何代も経つうちに細かい祖先の素性が分からなくなって、
江戸時代か明治・大正ごろに後から家系図・由来書を加えた……
折角だから長慶直系にしてやれ……とかはいかにもありそうに思えます。

大穴としては、死の経緯、墓の在り処がよく分からない
安宅冬康由来だったりしたらロマンがありますけどね。

現代人でも、自分の祖父の祖父の祖父がどんな人だったかとか分からないものです。
江戸時代も明治時代も、家系図づくりがブームだったようですし、
ちょっとくらいの脚色は当たり前だったようですし。

リアル三好家の傍流の子孫が、ハッタリを効かせたくて
三好一族最大の英雄「長慶」の直系子孫を名乗った。
くらいのかわいい結末なら穏健だと思います。

が、子孫を称する方が実際に現れて、
様々な角度から検証しないと結論は出ないでしょうし、
そうした検証が実現する可能性は低いでしょう。


まあ、茶碗が長慶由来だろうが宗三由来だろうが実休由来だろうが
三好一族とまったく関係ない人由来だろうが、
正直価値はあまり変わらないと思いますし。

テレビで中島誠之助氏も触れておられましたが、
茶の湯関係の芸術品って「誰から誰の手を経て……」という
由来の積み重ねが大事な世界です。

番組を観て誤解されている方も多いようですが、
長慶が駄目、信長や秀吉がOKという訳ではなくて、
有名人の手を経るごとに何割かのプレミアムがついていく、
そうしたバフの重ねがけが足りないという文脈だったと思うのですよね

どれだけ名品でも、「長慶→現代人」だけだと箔が足りない。
「長慶→Aさん→Bさん→Cさん→……→現代人」だったらよかったね、
ということなのだと私は受け取りました。

仮に現代人が超名品をつくったとしても、直ちに国宝にはなりません。
一目置かれるような人物の手に渡り、それが更にあの人の手に渡り、
数寄者の世界でだんだん話題になって、世間にも知られるようになって。
そういうプロセスが必要なのですよ。

美の価値って、そのもの以上に、そのものを愛した先人たちへの
敬意が大半な気がします。


色々書きましたが、
③については残念ながら真実が明らかになることはなく、
ご想像にお任せします的な感じになると予想します。

(①②で江戸時代につくられた品とかになれば別ですが)


④⑤ですが、これはもう審美眼の世界、面子の世界になってきますので、
我々庶民がどうこう言える領域ではないのですが、
まあ従来の曜変に権威を与えてきた人たちは認めないでしょう。

かんかんがくがくした上で、
「曜変と言えば曜変であるが、これは広義の曜変であり、狭義の曜変ではない」
とか実に哲学的な結論で棚上げされるのではないでしょうか

かつて「佐野乾山論争」というのがありました。
あれも結論はいまもって不明ですが、
基本的に新発見は権威から叩かれるものなのでしょう。
そして、それだけ新発見=贋作という事案が多いのでしょう。


それにしても、この④⑤。
③以上に、④⑤の方が三好長慶との親和性を感じてしまうのは私だけでしょうか。

 

「曜変は三点だけ」という定説に対して、突然現れた今回の曜変茶碗。

 

「戦国期の天下人は信長・秀吉・家康の三英傑だけ」という定説に対して、
近年急速に「最初の天下人」と賞され始めた三好長慶

 

似ている。
似過ぎている。

天下人議論で言えば、これまで信長の特異性や革新性をアピールして
ご飯を食べてきた人がたくさんいる以上、
「長慶が最初の天下人だよね」とオーソライズされることはしばらくないでしょう。

じゃあ長慶と信長の違いは?
官位の差、領国数の差、外交、秀吉という後継者を得たかどうか……などが
論点になるのだろうとは思いますが、そういう実証的なプロセスをすっ飛ばして
「信長を長慶なんぞと一緒にするな」という結論ありきにしたい人が多いでしょうし、
こじらせたニッチファン側も「むしろ信長が長慶の二番煎じ」的に煽り返して、
不毛な議論が続いて、そのうち皆飽きて放り投げてしまう。

なんだかそんな未来を想像してしまいます。

そして、曜変の④⑤も似たような議論になる可能性が高いと思います。

 

私個人としては、曜変の美はよく分かりませんが、戦国期の天下人は
細川政元・高国・晴元、長慶、信長・秀吉・家康の7人だと捉えています。
長慶ファンだけど、“最初の天下人”呼ばわりには違和感を覚えてしまうんですよね。 

天下人とは何か、曜変とは何か、ということを
まず定義して、ついでに素人にわかりやすくレクチャーしてくれると
ありがたいのですが。 

 

 

……まとめます。

仮に①②で「少なくとも南宋時代の天目茶碗ではある」と認められた場合、
③④⑤は論争の果てに「決着つかず」になると私は予想します。
(誰も傷つかない、優しい落としどころ)

そして、その「よく分からなさ」「人によって位置づけが違う感じ」が、
なんだかとっても三好長慶という人物に通じる感じがして、
面白いなあと思うのです


とりあえず、引続き①②の検証に進捗がありますように。

これだけ妄言を書いたのだから、あっさり「現代の作ですね」とかになりませんように。

 

 

 

「グランド・ブダペスト・ホテル」ウェス・アンダーソン監督

 

映画「グランド・ブダペスト・ホテル」にかんたんしました。

 

www.foxmovies.jp

 

以下、描写を中心にネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズキューンドゴーンうぎゃああ!
みたいな映画ばかりを見ていたので、
久しぶりに人間ドラマ的な映画を見たくなりました。

TSUTAYAさんのおすすめコーナーから、
ジャケットでなんとなく惹かれて借りてきたのがこの映画です。

なんか有名な監督&作品らしいのですが詳しくは知りません。
映画はあまり色んな情報を仕入れずに観たい方です。


ざっくりしたあらすじを紹介すると、


回想の回想で第2次大戦前くらいの時代に戻る
 ↓
<ここから1930年代>
コンシェルジュのグスタヴがロビーボーイにゼロを雇う
 ↓
グスタヴが上得意の婆様の相続争いに絡む
 ↓
グスタヴが陰謀で拘留所に収容される
 ↓
脱獄する
 ↓
真犯人ドミトリーの手先ジョプリングと手がかり獲得競争
 ↓
無実を証明し、グスタヴが婆様の遺産を得る
 ↓
戦争が始まり、グスタヴは軍に銃殺される
 ↓
ゼロがグスタヴの遺産を相続
 ↓
<ここから1960年代>
以上の話を、年老いたゼロが作家に話して聞かせる
 ↓
<ここから1980年代>
以上の話を、作家が回想している


……という感じです。
ストーリー構成はそこまで入り組んだものではありません。

 

それよりも、
鮮やかな色彩、
絵画的な画面づくり、
テンポよい展開、
それを支える役者陣の好演、
小気味よいBGM、
などなどがこの映画の特長であり肝であるかと思われます。

ちゃんとした人が見たら、
東欧風のパステルで華やかな砂糖菓子の中に、
戦争の悲劇というビターさホロリさが隠されている、
深い、これは実に深い作品だ。
といった感じの評価になるのかもしれません。

私個人としては、
ビターさをシリアスに評価するより、
ビターを覆っている砂糖の方を絶賛したいと思います。

苦い物語なんて幾らでもありますが、

こんなにコケティッシュで
観ているだけでくあぁ東欧行きてえとうっとりさせられて
サクサク進んでうひゃひゃと笑えてたまに冷や冷やしてきっちりスッキリして
エンドロールのBGMと共にああなんかすっごい上質な時間過ごしたな、
と思わせてくれる映画なんて滅多にないんですもの。

 

0:10の赤いエレベーター。
0:17のメンドル箱に結ぶリボン。
0:21のグスタヴがゼロを庇うシーン。
0:28のドミトリーパンチ→ゼロパンチ→ジョプリングパンチ。
0:31の絵画すり替え。エゴン・シーレで退廃してろ的な。
0:36の第19犯罪者拘留所ゲートのでーんとした迫力。ここは映画館で観たかった。
1:05の鍵の秘密結社。
1:17のスキーとソリのチェイス、BGMいい仕事からの対ジョプリング決着。
1:20のゼロ。きびきびとグスタヴを導く。めっちゃクール。
1:25のホテル最上階を舞台にした銃撃戦。
1:27のピンク。ピンク。ピンク。
1:28のビターな締めくくり。甘味の後のコーヒー的役割。

 

すごい映画だ。
100分でよくこれだけ場面を重ねて、わくわくを高めてくれるものだ。

全体的にカメラワークと、色の組み合わせがいいんですよね。
絵画っぽく見えるように工夫しているのかな?
主となる役者だけに焦点を当ててて、周囲のモブがぼやっと油絵みたいに見えるの。
ルノワール? モネ? とかの印象派っぽい感じの彩色。超おしゃれ。超憧れる。


映画が面白いとハピネスを感じます。
適当に借りた映画だとなおさらです。

2回観ました。また記憶が薄れた頃に観ようと思います。

 


さあ、次にTSUTAYA行く時は。
ずっと貸出中になっているボトムズ6巻が返却されていますように。

 

 

 

「裏紫」樋口一葉さん

 

樋口一葉さんの「裏紫」にかんたんしました。

 

樋口一葉 うらむらさき (青空文庫

 

 

樋口一葉さんの文章は有名なものしか読んだことがなくて、
全集的なものでも買おうかしらと考えていたのですが、
よく考えたらいまは青空文庫でほとんど読めてしまうのですね。

ありがとう青空文庫さん。


この裏紫は未完の作品で、小説全体の導入部分だけしかありません。
その後の筋がどういう展開になる予定だったのかは知る由もないですが、
そんなことが気にならないくらいに優れた作品だと思います。

以下、あらすじをネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ。


奥さんのところに手紙が届く
 ↓
どうかしたかい? と旦那様
 ↓
姉が心配事があるからと、ちょっと来てほしいそうですの
 ↓
そうかそうか。早く行ってやるといい
 ↓
では行ってきます
 ↓
姉とか嘘でした。実は愛人からの呼び出しの手紙です。
ああ、あんなよい夫を騙して。
いっそ行くのをやめてしまおうか
 ↓
いや、私にはやはり愛人しかいないのだ。
迷うまい。行こう


以上。
描写は旦那とのやり取りと、奥さんが逡巡している場面だけ。
5分くらいで読める短さです。

これだけを見ればなんてことないように思えるのですが、
実際の樋口一葉さんの文章を読むとウゥ……ってなってしまうんですよね。


抜粋。

奥さんが愛人のところへ行くのをやめようと迷う場面。

 

あのやうな毒の無い、物疑ひといふては露ほどもお持ちなさらぬ心のうつくしい人を、能うも能うも舌三寸に欺しつけて心のまゝの不義放埒、これがまあ人の女房の所業であらうか、何といふ惡者の、人でなしの、法も道理も無茶苦茶の犬畜生のやうな心であらう

 

路傍に立すくみしまゝ、行くまいか行くまいか、寧《いつそ》思ひ切つて行くまいか、今日までの罪は今日までの罪、今から私が氣さへ改めれば

 

もう思ひ切つて歸《かへ》りませう、歸りませう、歸りませう、歸りませう、えゝもう私は思ひ切つたと


言葉を尽くして所業を恥じ、己を責め、嫌悪し抜いて、
夫のもとへ帰ろうと決心したはずのところ。

 

生憎夜風の身に寒く、夢のやうなる考へ又もやふつと吹破られて


夜風が身に染みてしまったから。
いまいまの決心を「夢のやうなる考へ」と、蒙であるかのように断じ。

 

ええ私は其やうな心弱い事に引かれてならうか

 

今更に成つて何の義理はり、惡人でも、いたづらでも構ひは無い、お氣に入らずばお捨てなされ、捨てられゝば結句本望

 

吉岡さん(注:愛人名)を袖にするやうな考へを、何故しばらくでも持つたのであらう、私の命が有る限り、逢ひ通しましよ切れますまい、良人を持たうと奧樣お出來なさらうと此《この》約束は破るまいと言ふて置いたを


このように「正気」に戻ったとして、

 

急ぎ足に五六歩かけ出せば、胸の動悸のいつしか絶えて、心靜かに氣の冴えて色なき唇には冷かなる笑みさへ浮かびぬ。


この迫真、この転変、この清々しい女心。

恐らく、このような逡巡もこれが初めてではないのだろう。
愛人のもとへ向かうたびに悔悛が浮かび、毎度毎度に煩悶しているのであろう。

それでも女は行き着くところまで行こうとしてしまうのだ。
ろくでもない結末が待っていることくらい分かっているのだ。
迷えば迷うほどに男への恋情、非道の甘味が増すことを知っているのだ。


恐るべし樋口一葉
どうすればこんな文章が書けるのだろう。
豊かな古典の教養、下種世間での苦い漂泊、夢と挫折と辛抱。
どれが一葉を一葉たらしめたのだろう。

この作品を読んで、つくづく思いました。

こんな文章を書いていたら寿命が縮む。
この「裏紫」を、この導入部に釣り合うように書ききったとしたら、
作者の魂魄も無事には済むまいと。

未完でいいのだと思います。
後の筋は、読者が銘々に想像すればよい。
読み手の胸を打つという点では充分に過ぎましょう。


樋口一葉さんの文章。
文語調で一見読みにくいのですが、音韻が快く、
1分もすれば慣れてすらすら読めてしまいますよ。
声に出して読んでみたり、誰かに朗読してもらっても愉しいと思います。

 

ずっと読み継がれてほしい作家です。


同じくらい素敵な文章に、また出会えますように。

 

 

 

「土佐「はちきん」は証券投資で稼ぐ-縮む地方でわが道行く信用金庫」ブルームバーグ 日高正裕記者/Toru Fujioka記者

 

ブルームバーグの「土佐「はちきん」は証券投資で稼ぐ-縮む地方でわが道行く信用金庫」という記事にかんたんしました。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 

記事の前半では、縮む高知マーケットの中、高知信用金庫
融資ではなく資産運用による収益確保に活路を見出したことを紹介。

記事の後半では、その他の頑張っている四国衆を紹介しています。


私がいいなと思ったのは、記事前半の、高知信用金庫 山崎理事長の
発言を紹介している次の個所です。

高知県は日本列島でもいち早く人口減による市場縮小が進むが、「投資はどこでもできる。中央にいる必要はない」と逆風をものともしない。


確かにそうなんですよね。

サラリーマンは都市にしか働き口がない。
起業しようにも都市にしかマーケットがない。
農業林業漁業などの伝統産業は儲けが薄い。
(後半の記事で6次産業についても触れられていますが)

じゃあ、人口流出が続く土地では暮らしていけねえじゃねえか。
というのが通説です。

でも、投資はどこでもできる。
まさにその通り、株も国債も信託もどこでも売買できる。
大掛かりなイニシャルコストも必要ない。
個人でもネットと元手さえあれば即投資家になれます。


いずれ、国内の地方地方で「資産運用課税軽減特区」みたいなのが
できるかもしれませんね。

NISAとかイデコとか、結局リテラシー高い人しかやらないじゃないですか。
そういうのって、結局都市部の人になっちゃうじゃないですか。

制度ではなくて、いっそ土地で区切ってしまう。
「この土地で暮らす貴様たちは優遇されているッ!」
「勤め先などない! 運用せよ! インカムで食い繋げッ!」
「人に必要なのは知能でも運動神経でもない! キャピタルだッ!!」
みたいな風土づくりをやっていく。

都市部と地方部で運用税コストが10%も違えば。
都市部と地方部の役割分担がダイナミックに形成されていくのではないでしょうか。

都市部は……学問と労働者の町。
若者の街だけど、いつまでも都市部にいる人は「元手を溜められなかったダメな人」と
思われるようになっていく。

地方部は……資産運用で食っていく街。
若い頃都市部で稼いだ元手をもとに、運用リターンと幾ばくかの労働で
暮らしていく。目指せヨーロッパの旧貴族&アメリカの牧場主。

 

いま問題視されている都市圏への人口集中は、
要は田舎に人が帰ってこないぞ問題じゃないですか。
しかも郷土の英雄……優秀な人に限って。

田舎の方が資産運用税コストが低いなら、
都市で成功した郷土の英雄も凱旋してきますよ。
郷土の英雄が帰ってきて、一定の銭も有しているなら、
彼ら目当ての飲食店やサービス店もマーケット形成されていきますよ。
いまでも、元庄屋さんとか元網元さんとかは資産運用で食べてますしね。

地方で無理に若者向けの産業をつくるんだとか、若者を移住させるんだとかより、
合理的・即効的かもしれません。
東京都の人たちはめっちゃ怒るでしょうし、
そこまでして地方を活性化させたいのか、
日本は大都市集約でいいんだ地方は滅べの方がいいのか、
そもそもの議論が前段で必要でしょうけど。


まあもし地方部に投資カルチャーが急速に流入してきたら。
投資家保護はもちろん、運用する元手をどうするか、
何で運用したらいいんだとか色んな問題が起きるでしょうね。

資産運用は少額から始められますが、少額だとたいした儲けにならない。
高知信用金庫社債・株式・地方債・国債で運用しているようですが、
社債辺りの目利きは個人には難しい。
投資信託、不動産、ワインとかになってきたら尚更です。

……それにしても、企業が社債で資本を自己調達するようになって、
金融機関が融資で稼げなくなって、
金融機関が社債を買ってご飯を食べているというのは皮肉な話だ。


本当に、これから地方はどうなっていくのだろう。
産業が壊滅して、資産運用でならかろうじて……となったとしても。

農民 :地方の有力者様、わしらの代わりに資産を運用してくだせえ。
    わしら難しい話はよく分かんねえだ。
 ↓
有力者:構わんが、お主たちはわしに満足な運用手数料も払えまい。
    代わりに何を差し出すというのだ。
 ↓
農民 :この身命を。有事の際には槍にも盾にもなりますだ。
    お館の警護もしますだ、目障りな連中の排除も請け負いますだ。
 ↓
武士団の形成!

とかになってしまう気もしますし。

農奴制とか封建制とかは地方の困窮から始まることが多いようです。
自由よりも、食い繋がせてくれる有力者の庇護を求めてしまう儚い民衆心理。
豪族の群雄割拠。そして失うものが少ない地方勢は喧嘩が強い。
揺らぐ中央の権威。そして失うものが多い都市勢は喧嘩が弱い。
もはや政体転覆まったなし……。

みたいなことを防止するためにも、なんとか都市部と地方部の経済バランスを是正して、なんとか経済成長も確保して、穏健な社会をつくっていかなくてはならないのでしょうね。


とりあえず、記事に記載されている四国勢の活躍を応援したいと思います。

どうか宗田節がたくさん売れますように。

 

「後奈良天皇の治世」NHKニュース 皇太子さま57歳の誕生日

 

 

皇太子さま57歳の誕生日ニュースで、皇太子殿下のコメントの中に後奈良天皇のエピソードが出てきたことにかんたんしました。

 

www3.nhk.or.jp

 


皇太子殿下は学生時代に中世史を専攻されていたそうです。
現代の皇室の方が中世の後奈良天皇のエピソードに触れられたことは、
歴史好きにはグッとくるものがあります。

紹介された箇所を引用すると下の通りです。

また、ふだんの公務などでも国民の皆さんとお話をする機会が折々にありますが、そうした機会を通じ、直接国民と接することの大切さを実感しております。このような考えは、都を離れることがかなわなかった過去の天皇も同様に強くお持ちでいらっしゃったようです。
昨年の8月、私は、愛知県西尾市岩瀬文庫を訪れた折に、戦国時代の16世紀中頃のことですが、洪水など天候不順による飢饉や疫病の流行に心を痛められた後奈良天皇が、苦しむ人々のために、諸国の神社や寺に奉納するために自ら写経された宸翰般若心経のうちの一巻を拝見する機会に恵まれました。紺色の紙に金泥で書かれた後奈良天皇の般若心経は岩瀬文庫以外にも幾つか残っていますが、そのうちの一つの奥書には「私は民の父母として、徳を行き渡らせることができず、心を痛めている」旨の天皇の思いが記されておりました。


後奈良天皇の治政はどんな時代だったかというと。

在位期間は1526~57年です。
その間、朝廷目線、京都人目線で起こっていた事象を並べると……。


1526年 波多野稙通・柳本賢治が細川高国に造反
 -天皇になられた途端、時の天下人政権が大揺れします

1527年 細川晴元や三好元長が細川高国に勝利、堺公方府立ち上げ
 -四国の極道が天下人を追放し、堺に怪しげな政権をつくりました
  どうなる京都。

1530年 細川高国が備前で再起
 -かつての天下人がすごい勢いで迫ってきます。どうなる京都。

1531年 細川晴元・三好元長・赤松晴政が細川高国を撃破・斬首
 -やっと細川家の内乱が終わりそうです。

1532年 一向一揆が蜂起、三好元長が討死
 -今度は宗教勢力が蜂起しました。どうなる畿内

1533年 細川晴元が一向一揆に撃破されて淡路に逃走
 -武家の面目丸つぶれ、どうなる畿内

1536年 天文法華の乱
 -法華宗比叡山まで武力闘争を始めました。
  京市街は応仁の乱以上のダメージを受けます。
  末法とかいうレベルじゃねーぞ
 -ちなみに、在位10年目にしてやっと即位式を執り行えました
  だって細川高国→細川晴元の治政が全然安定しないのだもの。

1538年 尼子晴久が東進
 -すごい勢いで迫ってきます。どうなる畿内

1539年 三好長慶が細川晴元に楯突く
 -細川晴元政権、安定する兆しが見えません。

1540年 天文の大飢饉
 -各地で飢死者多数、京市街も遺体で埋まったようです。
 -ニュースに出た後奈良天皇による写経……天下安寧の祈りは
  この頃のようですね

1541年 木沢長政上洛
 -なんか怖い人が京に入ってきました。皆逃げました。

1542年 三好長慶が木沢長政を討ち取る
 -細川晴元政権が小康状態になりました。

1543年 細川氏綱決起
 -細川晴元政権が再び不安定になりました。
  て言うかいつまで家督争いするんですか細川家。

1544年 京で大水
 -相当な数の建物が流され、京市街は溺死者で埋まったようです。
 -一条戻橋で三好長慶家臣が細川晴元に鋸引きされるという陰惨な事件も。

1546年 細川氏綱・遊佐長教が細川晴元勢力を次々に制圧
 -細川晴元政権の崩壊待ったなし。どうなる畿内

1547年 三好長慶が細川氏綱・遊佐長教を撃破
 -細川晴元政権が小康状態になりました。

1548年 三好長慶が細川晴元に造反
 -細川晴元政権の崩壊待ったなし。

1549年 三好長慶が細川晴元腹心の三好宗三を討ち取り、
    足利義晴・細川晴元を近江に追放
 -時の政権が遂に崩壊してしまいました。どうなる畿内

1550年 三好長慶足利義輝が争う
 -お願いだから京で戦わないでくれ。

1551年 三好長慶暗殺未遂事件×2、ザビエル来訪
 -お願いだから京で暗闘しないでくれ。異人も怖いから近づかないでくれ。

1552年 三好長慶足利義輝が和睦
 -そうそうそれでいいんだ。
  三好長慶には宸筆の古今和歌集を授けるからね。

1553年 三好長慶足利義輝を近江に再び追放
 -……。これからは三好長慶の時代なのかな。
  て言うか誰だよこいつ、大悪の大出の曾孫だろ、こえーよ。

1557年 後奈良天皇崩御
 -三好政権は思ったよりまともだったが……。
  心労が祟ったか、このタイミングで崩御
 -以後、中陰相論の裁許、正親町天皇践祚改元即位式等が
  三好長慶の手で粛々と進んでいく。


やー、こうして見るとほんど酷い時代ですね。

戦乱、下剋上、宗教一揆飢饉、大水、キリスト教
歴代天皇の中でも、トップクラスにお心を痛められたのではないでしょうか。


そんな中、いまに伝わる後奈良天皇のエピソードは
先ほど紹介した写経、猟官活動お断り、なぞなぞ遊びなど
朝廷独自の誠意、誇り、知性、風流を感じるものが多いです。

武家も宗教も民衆も争いまくっている中、
後奈良天皇が泰然と清貧暮らしを送られていたことは、
日ノ本秩序をギリギリで支えてくださっていたと見做せるかもしれません。

 

うん。
この時代に比べれば、現代の方が100万倍マシですね。


こんな時代が二度と訪れませんように。

 

「おかき餅(期間限定ごはんですよ!使用)」三幸製菓

 

「おかき餅(期間限定ごはんですよ!使用)」にかんたんしました。

 

www.sanko-seika.co.jp

 


名前通りのお菓子です。

海苔の佃煮の傑作……「ごはんですよ!」を練り込んだおかき。
ハッピータンくらいの小ぶりなおかきを齧ってみれば、
ごはんですよ!」まんまの風味がふんだんに味わえておいしかったです。

同社の「ぱりんこ」などと比べればこってり気味で、
それがまたいいんですよ。
あっさり気分の日はぱりんこ、こってり気分の日はこちらと
使い分けてみるのも楽しそうです。


おかきやせんべいは米からできている訳ですから、
そりゃごはんに合う風味ならおかきにも合いますよね。

定番商品に一風変わったフレーバーを、というトレンドが
アイスや清涼飲料やカップ焼きそばなどでも続いていますから、
米菓業界でもこうしたコラボ商品が増えていくのかもしれません。


ちなみにこちらの商品、原材料は米(中国産、タイ産、その他)と
なっております。

ほうそうか、新潟の会社なのに新潟の米で作っている訳ではないのだなと
思って同社のHPをぽちぽち見てみたら、けっこう興味深いことに気づきました。

 

ぱりんこ……米(米国産、国産)
塩せんべい……米(新潟県産)
チーズ気分……米(アメリカ産、日本産)
海鮮あられ……米(中国産、タイ産、その他)
雪の宿サラダ(14枚)……米(中国産、日本産、アメリカ産)

と、商品によって原材料の米がけっこう違うみたいなんですね。

ぱりんこは米国産でチーズ気分はアメリカ産というところに、そこはかとなく担当者のこだわりを感じてしまいます。漢字派とカタカナ派の派閥抗争でもあるのでしょうか。

 

「どこそこ産の米は危険だ! けしからん!」みたいなことを脊髄反射的に言う人もいるのでしょうが、私は美味しくて衛生的ならそれでいいと思っています。

好意的に見れば、商品ごとに適した風味の米を選んでいるということかもしれません。
ごはん用の高級米が必ずしもせんべいに適した米という訳でもないのでしょうし。
傾向としては、薄味のせんべいは国産や米国産、
濃い味のせんべいは中国産やタイ産を使っているような雰囲気です。

あるいは、調達の関係で、国産や新潟産の米を安定確保できないという
事情があるのかもしれません。
例えば「せんべい用の米はどうしても単価が落ちるから国内の農家さんが
作りたがらない」とか。

一般的な考え方からすれば、
コスト削減の観点から中国産やタイ産の米も使っているよ。
そういう米は味の濃い商品から優先的に使って目立たなくしているよ。
為替や安定供給の観点から100%どこかの国に依存することはせず、国内、アメリカ、
アジアなど多様な地域の米でポートフォリオを組んでいるよ。
ということなんですかね。

「売りにくいんだよ! とにかく国産米を仕入れろや!」
「そうそう、米の使い分けなんかしたら製造効率下がるんだよね」
「じゃあ100%国産にして値上げしてもいいんか、利益圧迫していいんか。
 お前ら給料下がってもいいくらいの覚悟で言ってんだろうなオラ!」

みたいな感じで、
営業担当と製造担当と調達担当で激論を交わしていたりして。
おかき1枚の向こうにも企業ドラマがあるのやもです。


まあ、消費者サイドとしては美味しければそれでけっこうであります。

期間限定商品ということですが、なるべく長く売ってくれますように。
再販や定番化もされますように。