肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

信長の野望201X「異聞 河越野戦のストーリー」※ネタバレ多め

 

201X、復刻された河越夜戦イベントを初プレイしたところ、戦国時代らしさとしても201Xらしさとしても満足度の高い内容でかんたんしました。

 

↓異聞河越夜戦復刻のリリース

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

終わってから語るなという話ですが、ネタバレ多めのためご容赦ください。

攻略に役立つ内容はございません。

 

 

 

この河越夜戦イベントは「河東の乱」と「河越城の戦い」の二部構成となっているのですが、まず前半の河東の乱で今川義元さんが北条氏康さんを翻弄する訳なのですよ。

 

関東史のファン以外にはあまり知られていない気がする今川義元さんの巧みな手腕。

仲介役に登場する武田信玄さんも義元さんのことが若干苦手なようで、今川家好きには堪らないものがあるのではないでしょうか。

 

悔しさを隠さない氏康さん。氏康さんは悔しさを力に変えられるタイプだと思います。

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調停役で登場する信玄さんというのも新鮮ですね。

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義元さんのこの余裕。怖い人です。

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宗三左文字は家賃のカタに取り上げられたのかもしれませんね。

 

 

 

そんなこんなで河東の乱は今川義元さんの大勝利で幕を閉じ、フラストレーションの溜まった北条氏康さんは後編の河越夜戦で大活躍していただく流れになる訳です。

 

河越夜戦の展開自体は史実(伝説)に沿った感じで進んでいきますが、北条家や敵の古河公方・両上杉家には魅力的な方が多いので戦国合戦ものとして素直に面白いのです。

 

 

敵方の印象的な人たち。

 

立派な鞭が気になる上杉憲政さん。

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渋い魅力の長野業正・上泉信綱タッグ。

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渋い古強者の太田資正さん。

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Better be the head of a dog than the tail of a lion.

(ライオンの尻尾になるくらいなら犬の頭になった方がいいよね)

という英語のことわざがありますが、相模の獅子と戦い続ける愛犬家さんにも相応しい言葉かもしれません。

 

 

 

続いて北条家サイド。

 

いつも通りの北条綱成さん。

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何気に怖い北条幻庵さん。

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更に……ダブルサプライズがありまして。

 

 

北条家大勝利と思いきや、幽魔の大量発生で一転大ピンチになってしまったその時。

 

意外な二人北条氏康さんを救いに駆けつけるのですよ。

 

 

 

 

 

……終盤のピンチに登場する援軍とくれば。

 

私は、「おっ、義元さんと信玄さんか!?」「だよね、河東の乱でオイシイとこ取りしっ放しで終わらないよね」等と展開を想像していたのですが。

 

想像していたのですが…………

 

 

 

 

援軍その①、北条氏康の妻、瑞渓院さん。

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援軍その②、なぜか生きている北条氏綱さん。

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笑いました。

「マジか」「やられた」「一本取られた」と唸ってしまいました。

 

 

やー、氏綱さん、「激闘、河越城」ガチャに混じっているから変だなとは思っていたのですが。

河越夜戦イベントということで、当然死んではるもんだとばっかり。

 

ちなみに義元さんと信玄さんは現れませんでした。

ということは義元さんは氏綱さんが生きているのに河東の乱なんて企んだんですね

すげぇ。

 

 

瑞渓院さんの濃すぎる活躍ぶり、超よかったです。

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201Xの瑞渓院さんいいですね。

 

氏康さんは若干大変かもしれませんが、

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義父の氏綱さんからすれば誠に頼もしいお嫁さんでけっこうなことかと思われます。

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前に読んだ本では今川義元さん寿桂尼さんの子どもじゃないよ説が出ていましたので、本当に瑞渓院さんと義元さんの関係は悪かったのかもしれません。

そして、同じく氏康さんには複数の側室がいらっしゃいますので、201Xの世界線ではろけっと砲が吹き荒れていて大変かもしれませんね。

「北条氏康の妻 瑞渓院 政略結婚からみる戦国大名」黒田基樹さん(平凡社) - 肝胆ブログ

 

 

 

最後にいつも素敵なまつりさんで締めです。

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働く女性としてのスタンスや強さや楽しそうさに憧れます。

 

 

 

河越夜戦といえば、川越の界隈はさいきん観光も絶好調のようですし何よりですね。

 

そのうち201Xと観光地がコラボしてインバウンド観光客を混乱させてくださいますように。

 

 

 

「戦国武将のアピールポイントとは 理想像から共感の対象へ?」知恵泉(NHK Eテレ)の松永久秀特集より

 

NHK Eテレの「先人たちの底力 知恵泉」という番組で「ヒールの言い分!時代劇定番の大悪人 松永久秀」という特集がされていて、三好長慶松永久秀の主従愛アピールが半端なくてかんたんしました。

 

 

↓'19/2/5に再放送があるそうです。

www4.nhk.or.jp

 

 

テレビなのでちょいちょい分かりやすさを最優先した演出や表現になっていたものの、出演者のトークコーナーも含め、総じて面白い内容でしたね。

 

「愛する主君」「愛する長慶」「長慶の面影を求めて信長に接近」等々、エモーショナル過多な表現に笑いました。

泉下で三好実休さんや三好長逸さんが「誰がNo.2やねん」「三好三人衆かて長慶様を愛してたわ」「なんでいつもいつも久秀だけ」等とお怒りになっているような気がしないでもありません。
(これはこれで三好一門と松永久秀さんの軋轢ぽくて面白いのですが)

 

 

信長の野望・大志といい、さいきんの三好家の取り上げられ方はなぜか「愛」アピールが強い傾向になってきました。

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愛する人は他にもいたんだけどいまは久秀だけだよと言い残して逝く長慶さん)

(やはり長逸さんの立場はない)

 

 

 

※ここからは完全に私見です。

 

 

番組でも取り上げられていましたが、歴史上の人物の注目度や取り上げられ方は、現代サイドの世相を反映しているところがございます。

 

とりわけ戦国時代は人気が高いところでして。

 

織田信長さんであれば、古くは「勤皇」、昭和後半くらいから「革新」、最近は「保守と革新の融合」みたいな感じで、なんだかんだ理想的なリーダーの特徴を常に見出されている気がします。

豊臣秀吉さんであれば「出世王」、徳川家康さんであれば「偉大なる創業者」。

武田信玄さんならば「統率者・内政巧者」、上杉謙信さんなら「カリスマ」、毛利元就さんなら「謀多きは勝ち」。

あるいは、山中鹿之助さんや真田幸村さんの「敗れた者たちの意地」、高橋紹運さんや鳥居元忠さんの「次に繋がった殉」、花の慶次さんの「華も実もある自由」等々。

 

共通するのは、タイプはそれぞれなれど、いかにも社会人の理想像を仮託されている感がありますよね。

現代のビジネスパーソンや行政パーソンも、一口に有能と言っても色んな有能の形がございますから、戦国時代の多くの武将の中から、自分の理想像に近い人を探すのも楽しい歴史との接し方でありましょう。

 

 

一方で、平成後半頃から歴史の楽しみ方にも幅が出てきておりまして。

 

特定の個人というよりは、鎌倉武士のアナーキーさや末法の極み感、室町時代の混沌と胎動といった、時代時代の空気感自体を楽しむ人が増えてきましたし。

 

個人に対しても、「理想像としての戦国武将」に加え、「共感できる対象としての戦国武将」のようなアプローチが盛んになってきましたよね。

最上義光さんの鮭ネタや小田氏治さんの不屈ネタや毛利元就さんの手紙長いネタや織田信長さんのだんだん字が小さくなる手紙ネタ等に代表される「かわいい」「愛しい」概念の勃興であったり。

具体的な作品名やカップリングは挙げませんが特定主従・戦友の組み合わせに着目した「尊い……」「好き……」概念の旋風であったり。

 

それ以外にも共感を飛び越えてもはや何の対象なのか歪んだ性欲なのか何でもいいのかでも確かに格好いいな/かわいいなみたいな擬人化コンテンツの急成長等もありますがそれはそれとして。

 

なんしか歴史に親しむ裾野が広がるのはいいことだと思うのです。

(番組に出ていた伝統的コンテンツ「講談」も好きです)

 

 

 

そんな中、局地的に注目を集め始めている三好主従愛ネタ。

史実的なことはさておき、これも現代の何がしかの空気にフィットしているということなのでしょうか。

 

これって、天野忠幸氏やコーエー社が初めから何もかも意図的に仕組んでいた訳ではないと思うんですよね。

 

研究者の方々が、真面目な研究の結果として、従来のイメージと違う面を取り上げた。

信長の野望等のコンテンツが、そういった内容を試しに反映してみた。

そうしたら、思った以上にユーザーからの反響があった。

反響があったから、研究者も、クリエイターも、更に掘り下げてみた。

また反響があった……また掘り下げた……

やがて人々はこう名付けた……「愛」……これにはフロイスさんも感涙……

 

みたいな感じで、ある種自然発生的に強化されてきた流れだと思うんですけど。

自然発生的だからこそ何がしかの共感を集めているということなのかなあと。

 

 

……低成長、むしろマイナス成長な時代だから?

登場人物全員不幸みたいな三好家に共感できて?

登場人物全員不幸な中でこの愛だけは永遠的な?

 

????

 

 

まあ、松永久秀極悪説の反動で注目されている面も多分にありますし、そんな中で忠臣とか愛とかの言葉を付加すれば余計に面白いというのも大きいのでしょうけど。

 

 

「不幸だけど美しい」みたいな概念が支持される時代になっていってるのかなあ。

だったら再び平家物語とか江戸時代の心中ものとかが復権したり……?

これから我々はどんな時代を生きて、どんなコンテンツが喜ばれる時代になっていくのでしょうね。

 

 

 

とりあえず、世の中で三好主従愛ネタが受け入れられていくのなら、研究者の方々におかれましては久秀さんだけに傾斜せず、一次史料から長慶さんの本命を特定してくださいますように。

歴史的事件の真相とかよりも、この人がいちばん好きだったのはこの人に違いないみたいな論争の方が盛んな世の中になったらアバンギャルドでいいですねえ。

 

 

大相撲'19初場所感想「長年の苦労が報われる喜び、そしてその後」

 

2019年の大相撲初場所

稀勢の里関の引退に始まり、豪風関の引退、相次ぐ怪我と休場……とつらい内容が続きましたが、最終的には玉鷲関が爽やかな初優勝を決めてくださり春の訪れを感じるような空気で終えることができてかんたんしました。

 

www.sumo.or.jp

 

 

幕内の勝ち越し勢は次のとおりです。

 

 13勝 玉鷲(優勝、殊勲賞、敢闘賞)

 11勝 貴景勝(技能賞)

 10勝 白鵬※途中休場、魁聖、遠藤、阿炎

   9勝 豪栄道、高安、北勝富士、宝富士、大栄翔、佐田の海、勢、矢後

   8勝 御嶽海(殊勲賞)、千代大龍、阿武咲、明生、朝乃山

 

 

玉鷲関おめでとうございます。

しかも優勝した日に次子が誕生されるとは……!

ご本人も家族も部屋の皆さまもファンも感動ひとしおだと思います。

彼のように、地道に、まじめに、コツコツと稽古して成果を上げてとやってきた力士がこのような栄光を勝ち取ったのは、非常に嬉しい。

これからも長く活躍してほしいですし、気持ちの良い突き押し相撲を貫いてほしいと思います。あのおとなしそうなのに負けん気が強そうな取り口がイイんですよね。

 

貴景勝関は大関昇進が見送り、来場所持ち越しとなって残念でした。

みんな今日千秋楽の負け方がよくなかったと言ってはりますが、私は貴景勝関が悪かったというより豪栄道関が良すぎただけだと思います。

大関の意地と言われていた通り、ベスト豪栄道がよりにもよって今日のこの日に現れた訳で、ベスト豪栄道横綱クラスの力があるんですからそれに負けたからといって印象点を下げられるのはあまりにも気の毒ではないでしょうか。

 

白鵬関の休場も残念でした。

序盤の綱渡り勝利の後、中盤は調子よさげでしたから、優勝はまあ白鵬関だろうと思っていたのですが……。

稀勢の里関がいなくなって、モチベーション面でも心配です。

鶴竜関もシレッと休場しているし。

栃ノ心関、千代の国関、琴勇輝関、十両に落ちた隆の勝関と、怪我人続出ですし。

世代交代云々以上に、みんなの満身創痍感がひどい。

 

 

稀勢の里関の引退……。

彼もまた、かつて長年の苦労が報われて、多くの人から共感や称賛を浴びた方です。

それなのに、ここ最近の彼のバッシングされようはあまりにも気の毒で、見ていられなかったですね……。

偉くなること、頂点を極めることのリスクを人々にまざまざと知らしめてくださったようにも思えます。

 

相撲に限りませんが、長年の苦労が報われる喜びの素晴らしさを、その後の失敗や低迷ばかりに目を取られて忘れてしまってはもったいないですよね。

稀勢の里関や豪風関が活躍していたあの頃を、私は忘れないようにしたい。

 

 

そう、豪風関と言えば、尾車部屋では矢後関がご活躍であります。

彼は相撲もいいし、顔や声もいいですね。

今後が楽しみです。

 

 

今後も去っていく人、上がってくる人が続くと思われますが、なんしか怪我がもう少し減ってくださいますように。

玉鷲関の喜びが長く続き、よい力士人生をまっとうできますように。

 

 

 

定点観測:相撲界の毛利三兄弟

 

 若隆元 5勝2敗(幕下四十枚目)

 若元春 7勝0敗(幕下三枚目、優勝)

 若隆景 7勝8敗(十両五枚目)

 

若元春さんおめでとう!

 

 

 

 

 

「書物と権力 中世文化の政治学」前田雅之さん(吉川弘文館)

 

印刷技術確立以前、書物がどのように流通していたか、また、書物の譲り渡しにどのような政治的意味合いが付与されていたかを論じる表題の本が、思いの外ライトな分量ではあったものの、興味深い事例が多数収録されていてかんたんしました。

 

面白い切り口なので、もっと掘り下げた本も読んでみたいですね。

 

www.yoshikawa-k.co.jp

 

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以下、当著の章構成に沿って概要を紹介いたします。

 

古典的公共圏

中世において、真に「古典」として扱われていたものは「古今和歌集」「伊勢物語」「源氏物語」「和漢朗詠集」のみである。

註釈や校本が作られ、皆に仰がれ規範とされる作品はこの四書だけだった。

 

という著者の意見を披露いただいた上で、

 

黒田俊雄さんの「権門体制論(武家が朝廷や寺社を圧するのではなく、公家・寺社・武家が国家権力を分掌する中世の統治体制)」に対して、

黒田史学には大事なものが欠けていた。権門体制を維持し交流させていく文化装置がそれである。

私は、権門体制(院・天皇-公家・武家・寺家)を相互に繋いでいく文化的要素を加えたものを「公」秩序と呼び(拙稿二〇〇四年)、そのような中世のエリート的公共圏を「古典的公共圏」と命名した。

なる概念を提唱いただく章です。

 

四大古典に基づく「和歌の知識」が「国家の権力体制」に組み込まれている。

だからこそ、書物がいかに大事であったことか……というフリになっている訳ですね。

 

 

伏見宮家と足利将軍 『風雅集』『玉葉集』の贈与

室町時代、経済的にも皇統的にも不安が尽きなかった伏見宮家が、秘蔵の風雅集を足利義満さんへ、玉葉集を足利義教さんへそれぞれ贈与し、御領安堵(および、もしかしたら皇統関係への配慮)を図られていたことを紹介いただく章です。

 

還俗して急遽将軍となった足利義教さんが、義満さんと伏見宮家との経緯を踏まえた上で、同じく伏見宮家から書物を譲渡されることで権威アピールを狙っていたのだとしたら面白いですね。

 

書物が権力の正統性と繋がっていたんだよ、という。

 

 

一条兼良『源語秘訣』の変遷

15世紀に活躍した、「日本無双の才人」「和漢の御才学比類無し」「本朝五百年以来此の殿程の才人御座有るべからざるの由」と名高い一条兼良さん。

 

彼の手による源氏物語の注釈書「源語秘訣」が、「一子相伝」のはずなのに、彼の知名度の高さもあって、色んな人が「読みたい・写したい」と群がってきて、実際に複数のルートで書写されていく流れを紹介いただく章です。

読めないはずの本ほどみんな読みたい、ということなのでしょう。

 

書写した人物は、三条西実隆さん、足利義尚さん、里村紹巴さん、細川藤孝(幽斎)さんなど錚々たるメンバーがいらっしゃいます。

とりわけ細川藤孝さんは、どうやら本能寺の変直後に書写してはったようで。

世の中が転変極まりない中、まごまごあわあわせずに源氏物語の註釈を写し書きしていたとい藤孝さんの心胆がすごい。

 

 

書物をめぐる知と財、そして権力

日本史上初の「職業文芸家」たる連歌師の手によって、書物が都から地方へ流通していく様を、三条西実隆さんと宗祇さんの具体事例をもとにご教示いただける章です。

 

応仁の乱後、伝統的権威がおおいに動揺しつつも、古典文化自体は破壊されず、むしろ連歌師の手によって地方へ伝播(公家の困窮→書物売却、仲介役が連歌師)していった……古典的公共圏の拡大……という著者さんの歴史解釈はなかなか興味深いですね。

実際、地方の守護代や国人層、あるいは地方の末端寺社にまで古典が広まったのはこの時期なのではないか、ということです。

逆に言えば、各地で成長した新興層が、ランクアップしたステージに相応しい知識・教養を渇望していたということなのかもしれません。

 

権力者たるに相応しい教養が求められるのは古今東西変わらないっすね。

 

 

書物の移動をめぐる力学

前章の掘り下げ、具体例として、天文の乱後の本願寺証如さんが朝廷と懇意にして信頼回復に努めて『三十六人歌集』を下賜されたり、能登の畠山義総さんが三条西実隆さんや禅僧を通じて宋詩『山谷集』を入手したり、近世初頭の江戸時代各藩大名が書物の貸借・書写を通じて共有し合っていたりというエピソードを紹介いただく章です。

 

印刷技術普及前の、書物が極めて貴重で、一種の権威性を帯びていたのはこの頃までで、以後はお金さえ出せば誰でも書物を入手できるようになる……それはそれとして、中世の書物への渇望っていいよね……といった風合いで当著は締めくくられています。

 

まあ近世、近代、現代でもレア本っていうのは引続き残存していて、一部界隈では一種の権威を保っていたりしますけれども、「公共圏」と呼べるほどの存在ではなくなったという意味では仰る通りかもしれません。

 

 

 

 

以上のような内容を、200ページほどのサラッとした分量で取り上げてはる本です。

この本単独で強い学術的提言がされているというよりは、新書に近い印象。

 

気軽に読みやすい、とっつきやすい感じですので、文化面からの切り口で中世を見たい方にもちょうど良いのではないでしょうか。

文中には呉座勇一さんの「応仁の乱」の説が取り上げられたり、細川晴元さんや木沢長政さんの名が出てきたりと、最近の中世研究のトレンドと連関している感じがするのも親しみやすいと思います。

 

文化史は人類にとってとても大事なファクターだと思いますから、今後もこうしたジャンルの歴史本が出版され、ほどよく売れて、更に出版され……となりますように。

 

 

「IQ 感想」ジョーイデさん / 訳:熊谷千寿さん(早川書房)

 

ロサンゼルスを舞台に黒人探偵「IQ」さんの活躍を描いたミステリ?小説がたいそう面白くてかんたんしました。

 

ラップとかギャングスタとかのアメリカブラックカルチャーに関心のある方には特におすすめです。

とりわけ2PACさん好きには必読レベルではないでしょうか。

 

www.hayakawa-online.co.jp

 

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現代・黒人版の「シャーロックホームズ」「バスカヴィル家の犬オマージュ」などと評され、アメリカで大注目を集めた作品とのことです。

 

確かに主人公のIQ(アイゼイア・クィンターベイ)さんは紳士的で頭脳明晰で洞察力があって身体能力が高くて悪を許さない精神の持ち主ですので、ホームズさんと共通点が多いような気もします。

相棒のドッドソンさんもいい感じにIQさんを立ててくれるので、ワトソンさんを彷彿とさせなくもありません。

 

とは言え、個人的にはこの作品はミステリというよりサスペンスアクションという印象の方が強いですし、英国文化の薫り濃いホームズさんと濃密な黒人社会で暮らしているIQさんとでは魅力の方向性がそれぞれ違いますので、無理にホームズ扱いせずともいいような気もいたしますね。

 

 

以下、セリフの引用やあらすじの紹介はありますがネタバレは含みません。

トリック等のミステリ要素は薄いものの、黒幕とその動機を当てるのは難しいですし、動機の納得感が高いのでとても満足です。

 

 

 

 

 

 

 

 

おおきくは、探偵IQさんと相棒ドッドソンさんが、有名ラッパーを狙う襲撃犯(犬使い)を追っていくという筋です。

そして、その過程でIQさんとドッドソンさんの過去話がたびたび挿入され、二人の因縁、背負っている闇と業、黒人社会の暗部が紹介されるという。

 

この現代黒人社会の描写がめちゃくちゃ秀逸でですね。

はっきり言って品はよくないのですが、凄まじい頻度でFで始まる単語やNで始まる単語が飛び出してきて、そのまま原文を引用しただけでブログのアカウントを凍結されるんじゃないかという危惧を覚えるほどなんですが。

 

現代アメリカの、黒人貧困層たちにとっての……

夢。

白人。

警官。

食事。

欲しいもの。

憧れる対象。

選べるキャリア。

敵対する中米移民。

 

こういった現実を切り取っている感じがたまらないのですよ。

この小説全体を色濃く覆う舞台装置の魅力とやるせなさがね。

方向性は違いますが、ホームズ読んだら古き良き英国社会に憧れるでしょ。

同じように、この小説を読んだらアメリカ黒人社会に畏怖と憧憬を覚えちゃうのです。

 

 

登場人物もですね。

 

主人公のIQさんは本当に魅力的な青年で、友達になりたいタイプなのですが、すこぶる深い闇と業を背負っております。

「おれのせいです」

「ぜんぶ」

「償いをしないと」

 

相棒のドッドソンさんはズルくて臆病で乱暴で自己を律することのできない元ギャングで、友達にはしたくないタイプなのですが、料理上手なところとオイシイ活躍ができる点は魅力的です。彼のつくったガンボを食べてみたい。

「キッチンにいるおれは最強だ」

「少し頭を冷やせよ、アイゼイア。イラつくのをやめて一日休んでマリファナ・タバコでも吸って、どんなだったか忘れる前に女でも引っかけて来いって。勤労の果実を味わえって」

 

全編通じて出てくるヒロインのデロンダさんはケツがデカいだけが取り柄の、その他は悪いところしかないような女性で友達にはしたくないタイプなのですが、でもこういう人と一緒にいるとけっこう楽しいんだろうなとも思います。

「あたしはどうしても社会での立ち位置を変えたいの。文化環境を変えたい。住所を変えたいの」

 

依頼主の大物ラッパー「ブラック・ザ・ナイフ」ことカルさんは、既に精神が薬とプレッシャーでイカれていて奇行も目立つという友達にはしたくないタイプなのですが、才能は本当に優れているしいかにも成金という感じの衣服・インテリア趣味がいっそかわいくて守ってあげたくなる人です。

「グッバイ、グッバイ、グッバイ」

 

 

この他、ブロローグに登場する性犯罪者が「くそったれの卵野郎(ハンプティ・ファッキング・ダンプティ)」というエッジの効いたあだ名をつけられていたり。

 

作中に登場する黒人ギャングと白人ニュースレポーターの会話が印象深かったり。

「自分たちがNではじまる言葉を使うのはいいのに、わたしのような人が使っちゃいけないのはなぜですか?」

「まともに答えてやろう」ストークリーが言った。「ニガにニガといわれたら、どういうつもりでニガといったのかはわかる。だが、あんたにニガといわれたら、心から“ニガ”といってるかもしれねえだろ」

 

あまり類似作品が思いつかない、独自性の濃い文章が読んでいてとても楽しいです。

 

 

ストーリーの核となる背景、犯人、そしてIQさんの具体活躍内容は伏せておきますが、いかにも映画化したら映えそうな、場景が思い浮かぶような、写実的でスピーディな展開がまことにお見事です。

 

既にアメリカでは続編が発売されているそうですし、きっと日本でも続編が発売されることでしょう。

読めばIQさんのファンになり、彼のその後を追いたくなってしまいます。

 

 

アメリカ黒人社会に限らず、世の中の何かしらの一面をクリアに切り取った上で、高品質なストーリー・エンターテイメントを織り交ぜた創作作品。

そんな優れたコンテンツがますます多く生まれ、出会うことができますように。

 

 

「IQ2 感想」ジョー・イデさん / 訳:熊谷千寿さん(ハヤカワ文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

 

信長の野望201X「三好家パーティ(隣接武将の与ダメージ増加特性は便利)」

 

201X、三好御前さんと三好実休さんの登場で、ようやく実用性を備えた三好家パーティ結成の目途が立ってかんたんしました。

 

信長の野望201Xの「三好御前」 - 肝胆ブログ

「三好義賢(実休)さんと足利義栄さん」信長の野望201X 薬師コレクション・弐 - 肝胆ブログ

 

 

出来上がった三好家オンリーパーティ。

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足利義輝さんが御前試合※などに興じている隙に、三好家は着々と戦力を充実させていた訳なのです(脳内補完)。

 

 ※報酬が大盤振る舞いで素晴らしいイベントでしたね。

  塚原卜伝さんの弟子たちがよございました。

  一条戻橋では一戦ごとに突破師範が貰えておいしいおいしい。

 

 

 

 

三好家パーティのイカれたメンバーを紹介しますと。

 

当主の長慶さん。

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スキルマス(吉兆)を温存しながらの雑魚敵掃討が仕事です。

畿内ガチャ2倍がとんと来なくなったのでいつまで経っても大開眼してもらえない。

 

 

 

末弟の一存さん。

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スタンダードな単体アタッカー。

大開眼をこれ以上進めると長慶さんの敏捷を上回ってしまうので止めています。

 

 

 

元長パパ。

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スタンダードな全体攻撃役。

地味に中列1体への0.7倍追撃が役に立つことも。

 

 

 

そして追加メンバー①は次男の義賢(実休)さん。

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魔界Tシャツと合わせて隣接武将の与ダメージが+35%、

部隊全体の与ダメージが+5%。

特性名も、軍略家で数寄者で胸に何か秘めてる実休さんに合っている気がしています。

 

 

 

追加メンバー②は長慶さんの娘を名乗る三好御前さん。

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馬印御前にした結果、真面目な数寄者というそれっぽい特性名に。

三好家随一のバッファーなんですが非実在青少年な気も。

 

 

 

ずうっと使っていた寿桂尼さんと岡部元信さんを外してまで、実休さんと御前さんを入れる価値があるのか悩んでいたのですが。

 

実休さんに積んだ外付け隣接与ダメージ特性が思った以上に便利だったので、結果としては以前のパーティに勝るとも劣らない感じに仕上がってくれました。

 

 

実験してみます。

 

長慶さんの普通の攻撃。

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通常17,000、クリティカル込みで34,000程度のダメージです。

 

 

次に、実休さん(薬師バフ+与ダメージ増加特性)が横にいると。

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通常32,000、クリティカル65,000と倍近い威力になりました。

 

 

更に、御前さんが後列バフしてくれれば。

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通常48,000、クリティカル95,000にまで。

二回攻撃ですし、これなら大抵の雑魚敵は長慶さんで屠れそうです。

 

 

縦陣を揃えて一存さんがボスアタッカーする際も、実休さんが隣接できていれば、以前の寿桂尼&岡部元信バフの時以上にダメージが出るようで、一安心。

 

今更ですが便利なんですね、隣接の与ダメージ増加特性。

計算式が特殊系に乗るそうなので、効果が大きいです。

ボスアタッカーへの影響のことしか考えてなかったんですが、道中の雑魚散らし力の底上げ効果も大きくて、つくってよかったなあと素直に思いました。

 

 

他の有能バッファー薬師(慶誾尼さんとか)でつくった方がいいんじゃないかとか、

そもそも三好家にこんなけ資源を費やす必然性があるんだろうかとか、

気になる点がない訳ではないのですが満足しています。

 

実休さんがいれば三好家は安泰!

という気分に浸れますし。

 

 

 

以上、三好家関係は私の趣味ですが、それよりも隣接与ダメージ増加特性は便利だよ、という記事でございました。

どなたかの参考になれば幸いです。

 

 

あとちょうど1か月で大志PK発売&バレンタインデーですね。

私は2/14に遠出の予定が入ってしまったので残念な感じなのですが、世の皆さまやコーエー社や武将方におかれましては良き日となりますように。

 

 

「みんなの牛乳のおいしさに驚く」東毛酪農業協同組合(群馬県太田市)

 

「みんなの牛乳」という名の牛乳がすこぶるおいしくてかんたんしました。

 

 

みんなの牛乳 200ml - 牛乳・乳飲料 - 商品紹介 - 東毛酪農業協同組合

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(画像はオフィシャルHPより引用)

 

 

牛乳を飲んで「おぉっ」と驚いたのは久しぶりです。

 

柔らかい甘味と乳味、

のどごしのすべりのよさ、

後切れの香りよさ。

 

いずれもがハイレベルで、味音痴の私でも一口で普通の牛乳とは違うのが分かります。

牛乳のイイところだけをグングン伸ばして、クセのあるところを極力減らしたような。

これは贔屓にしたい味。

 

 

パスチャライズド」「ノンホモジナイズド」など瓶にいろいろ難しい単語が書いてあり、なんかメッセージ性が高そうな印象だったので、家に帰ってからHP等を見てみたところ、おおきくは生乳のおいしさを保つために低温殺菌等の工夫をしているよという趣旨のようでした。

普通の牛乳よりちょっと高いくらいの値段で、かなりの手間をかけていただいているようなので頭が下がりますね。

 

 

教えてくれた人によれば、けっこうレアな牛乳ではあるものの、関東圏では探そうと思えば意外と手に入れやすいそうです。

ショプリスト - 東毛酪農業協同組合

 

もし見かけることがありましたら是非味見してみてください。

 

おいしいものを生産してはる方がきちんと評価される世の中でありますように。

 

 

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ただ、HPをいろいろ見ていると、普通の牛乳には問題があると読み取れるような記載表現もあって、その辺はどうかなあと思いました。

この「みんなの牛乳」は明らかに普通の牛乳よりおいしいんですが、私は普通の牛乳も好きですし、生産地から遠い上に高い衛生管理と厳格な品質安定と過剰な価格競争力を求める日本の消費市場特性を踏まえれば普通の牛乳の製造方法にも合理性があると思っていますので、必要以上に普通の牛乳をくさすのはうーむと。

自己アピールはおおいに結構なんですけど、その中に他者を下げる表現があると、特定の消費者を強く引き付ける一方で離れていく消費者もいると思うんです。

 

……生産者さんや常連さんの信念に関わることなので、イチゲンの消費者がどうこう言うのは不遜ですね。
すみません。

 

細かいことはさておき、この牛乳は本当においしいです。

それがいちばん大事。

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