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肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「十字路が見える」北方謙三さん

 

北方謙三さんのエッセイ「十字路が見える」にかんたんしました。

 

www.shinchosha.co.jp

 


北方謙三さん……
私の中では「萌え殺しの謙三」ということになっています。


ハードボイルド作家で、中世史の歴史小説家で、中国史歴史小説家で、
「ソープに行け」で有名な若者の導き手でもある北方謙三さん。

昔からキュン死に系のおじさんでしたが、御年七十歳に近づいた昨今、
ますますかわいいお爺ちゃんになられているようです。

 


この本はそんな北方謙三さんのエッセイで、
旅について、葉巻について、料理について、映画について、
音楽について、車について、文章を書くということについて、
北方節を思う存分楽しめる内容となっております。

既に北方謙三さんの本を読んだことがある方には
なんとなく内容が想像できるかもしれませんが、
このエッセイは想像以上に萌えポイントの多い本でございました。

 


例えばこんな記述。

まさに本を読み始めた冒頭1ページから、散歩について語ってはるのですが。

闘争的な気分で歩いていることが多いから、擦れ違う人を、投げ飛ばせるかなどと、測るような時もある。これを読んでいる君よ、私と擦れ違う時は、気をつけろよ。


どうですか。気をつけろよ。しょっぱなからキメてくれます。
格好いい。かわいい格好いい。

 

 

そもそも章立てからして北方節全開ですからね。
全部で4部構成なのですが。

 第一部 暁に風を追う
 第二部 白昼に霞を食らう
 第三部 夕べに馬乳酒を呷る
 第四部 真夜中にひとり哮える


いい。本当にいい。
失敗したカレーを泣きながら食らうとか、
蛸と格闘する話とか、
スペインを旅した話とか、
アフリカで身ぐるみ剥がされた話とか、
昔のチョウ・ユンファはよかったがいまはオーラが消えてしまったとか、
旧東ドイツの若者が西ドイツでやってるデヴィッド・ボウイのライブを
聞きたくてブランデンブルク門に集まってきた話とか。

エッセイ一つひとつのエピソードもさすが面白い。
感心したり共感したりすることも多いのです。

そしてそれを、ちょっとドヤったりときには照れたりしながら
北方氏が語っているのかと想像すると、もうものすごく萌えるのです。
「真夜中にひとり哮える」とご自身で言っている通り、
影で寂しくなったり過去に囚われたり悶絶したりしてはりそうなのもいい。

 


とりわけ第四部はすごい。
詳細なネタバレはしませんが、

 ・迷惑メールブロックのやり方が分からない
 ・海外のAVサイトに見入ってたら数万円請求された
 ・勧められて水素水を飲んでいると放屁の数が増えた

みたいなキュン系エピソードを怒涛の如く開陳してきて、
もうたまらない。

くそ、このお爺ちゃんたまんねえな。

ずるいですよね。
日頃はハードボイルドで、尋常でない実績をあげてはって、
そんなレジェンド爺ちゃんが「助けて! 迷惑メールが止まんないの」ですよ。
こんなん銀座の姉ちゃんでなくてもギャップ萌えに悶えますよ。

 

 

ホットドッグ・プレスで人生相談をやってはった時代のエピソード。
電車の中。どかどかと乗りこんできた高校生の集団が。

あのオヤジ、北方謙三の真似してるぞ、と聞えよがしに言うのである。
私はむっとして、本物だぞ、と睨みつけた。あ、真似した真似した。高校生たちには、大受けに受けた。私は、ひどく傷ついてうつむいた。


目に浮かぶようです。
本気でへこんでそうで、それがまた萌えます。
こういう格好つけのお爺ちゃんがシュンとしてると、もうウキャーですね。

 

 

タイトルの由来。

男の人生は、十字路の連続である。
右へ行くか左をとるか、それとも真っ直ぐに進むか。君はいま、十字路に立っているかね。つらいものと楽なものが見えたら、つらい方を選べ。それが、ほんとうはつらくない。長く生きた人間からの、ちょっとした忠告さ。


お見事だと思います。
真理を仰っていて、なおかつこういう表現が似合う男は滅っっ多におりません。
こうした「男の台詞」を直球で投げてくれるのが北方氏だと思います。

 

そんな十字路論。

途中、ご自身の病気のエピソードの中では、

私には十字路がなかった。いや、だらだらと続く一本道しか見えなかっただけで、もう少し視点を変えれば、十字路は見えてきたのかもしれない。


こんな弱気なことを仰ったりもするのです。


でも、この本の最後の最後ではあらためて十字路論が出てきて、
それは北方謙三さんにしか語れない、北方謙三さんだけの人生が描かれていて。

是非、多くの方に読んでほしいと思います。
七割くらい萌え殺し本ですが、真髄はやはり男の教科書なのです。
女の子は、彼氏なり息子なりに読ませましょう。

 

 

ご本人がどう願っているかは分かりませんが、私は願っています。
どうかこんな素敵なお爺ちゃんが元気に長生きしてくれますように。