読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

東京都荒川区の「ゆいの森あらかわ/吉村昭記念文学館」

 

東京都荒川区に新しくできた「ゆいの森あらかわ」、および内設の
吉村昭記念文学館」にかんたんしました。

 

東京都荒川区立図書館 ゆいの森あらかわ

 

吉村昭さんが好きですし、旅先の町の図書館に寄ってみるのも好きです。

吉村昭さんの記念文学館ができたという話を受けて、他の用事のついでに
荒川区まで足を延ばしてみました。

 

建物としては荒川区立図書館「ゆいの森あらかわ」が新たにオープンして、
その中に「吉村昭記念文学館」が設置されているという構造です。

 

順番に感想を申し上げますと、「ゆいの森あらかわ」(図書館部分)
新築なので当然きれいで席も多くて蔵書も多そうで羨ましい限りなのですが、
とりわけ

 ・絵本・児童書コーナーが充実している
 ・0歳~小学校入学前の乳幼児向けプレイルームがある
 ・館内に飲食OKの座席がある
 ・併設のカフェに貸出前の本が持ち込める

というところにかんたんいたしました。

家にちびっ子がいるとなかなか本も読めませんが、この施設に来れば
子どもをプレイルームで放牧しつつ読書を楽しむことができそうです。


オープンして1箇月とのことなのですが、これらの美点が早くも口コミで
広まっているのか、館内には子連れの親御さんがたくさんいらっしゃいました。

子どもで賑わっている図書館というのは素晴らしいことだと思います。
ぜひ本好きの次世代が増えていってくださいますように。



図書館でぱらぱら目についた書籍を眺めていたところ、
「世界の美しいボタン」という本が印象に残りました。

世界の美しいボタン / PIE International

f:id:trillion-3934p:20170430153626j:plain

 

f:id:trillion-3934p:20170430153642j:plain


宝石のような美しいデザインのボタンですとか
野菜・果物型のかわいい子ども向けボタンですとか
いろいろ気になるボタンが掲載されているのですが、
まったく知らなくて「おお」と思ったのが「薩摩ボタン」です。

日本の幕末期、ヨーロッパではジャポニズムが起きていました。

その中で目ざとい薩摩藩は伝統の「薩摩焼」技術を活用して
西洋人向けのボタンをこしらえ、ばしばし輸出していたのだとか。

一説にはこのボタン輸出で戊辰戦争の軍資金を捻出したそうですから、
けっこういい値段で売れたんでしょうね。
写真を拝見すると確かにとてもきれいで、菊柄やあやめ柄のボタンなど
思わず欲しくなってしまいました。

 

 

続いて吉村昭記念文学館です。

f:id:trillion-3934p:20170430153953j:plain


2-3階にまたがる施設で、吉村昭さんの経歴を紹介するコーナー、
書斎を再現しているコーナー、映像化作品を紹介するコーナーがございました。

とりわけ吉村昭さんの生い立ちや作品群については生原稿や取材日誌などを
豊富に陳列されていて、たいへん興味深かったです。


個人的に驚いたのは戦前の日暮里界隈(吉村昭さん生誕地)の古地図で、
狭い町内に映画館が3箇所もあったという点です。
現在は荒川区全域でも映画館は1つもないそうですから、
本当に、かつての映画は娯楽産業のど真ん中オブど真ん中だったんですね。


また、以前は別の荒川区立図書館に吉村昭さんコーナーがあったのですが、
なんと少し前に天皇陛下が見学に来られたのだそうです。

天皇陛下吉村昭さんがお好きなんでしょうか。

吉村昭さんの作品は事実を淡々かつ丹念に描写していくスタイルで、
あまり偏った主義主張は入ってこないという特徴があります。
加えて、災害や戦史や漂流や難工事などを通じ、人の生死や生命のありようを
深く深く探求していくテーマの作品が多いですから、天皇陛下の公務や祈念に
通じるものがあるのかもしれませんね。

 

この記念文学館は、荒川区長さんの強い思いで実現した様子でした。

いくら吉村昭さんが郷土の英雄とはいえ、いまどき特定の作家や芸術家を
行政方面からプッシュするのは勇気がいることだと思います。
(実際、生前の吉村昭さんは税金をつかって自分のコーナーをつくるのは
 固辞されていたとのことです)

それを、子どもも含めて全世代に親しまれそうな素敵な図書館の中に
記念館をこしらえ、自然な形で区民の生活に浸透させていこうという
計らいは、たいへん“粋”ですし、“意気”に感じます。

吉村昭さんは現在そこまでメジャーな作家さんではありませんが、
定期的に再評価されるに違いない方ですし、こうした記念館設置は
意義深いことだと思います。

このうまいやり方は、各自治体による地域の歴史とのつきあい方として
参考になるのではないでしょうか。

 

今回、まだまだ読んだことのない作品がたくさんあるなあ……と痛感しました。

数えてみたら、吉村昭さん作品を20冊程度は読んだことがあるのですが、
膨大な作品群の中では1合目か2合目を登ったばかりというところの模様。

これからも少しずつ気になる作品を読んでまいりたいと思います。

 

 

以上、荒川区の「ゆいの森あらかわ・吉村昭記念文学館」のご紹介でした。

東京駅や上野駅からも遠いのでなかなか行くのは大変ですが、
都電荒川線なんかを使ってぶらぶら出かけてみるのも楽しいですよ。
東京と思えないほど昭和な町並ですので、暮らすにはすごくよさそうです。



私の地元の図書館もいつかこんな感じにリニューアルされますように。
南北朝~江戸時代あたりの歴史を掘り下げるコーナーを併設してほしいです。