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肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「仇討禁止令」菊池寛さん

 

 

菊池寛さんの「仇討禁止令」にかんたんしました。

 

菊池寛 仇討禁止令


こんな作品があったんですね。
たまたま読んでみたところ極めて完成度が高く、なんでこれが菊池寛さんの
代表作扱いされていないのかと不思議に思ってしまいました。
(ほかの代表作も傑作だからなんでしょうけど)

 

詳細なネタバレは避けますが、
親の仇を取る! バサーグエーという単純な筋ではなく、

幕末から明治にかけて人倫秩序が揺れるさま、
恋と良心の狭間で前途が揺れるさま、
公と私の狭間で刀が揺れるさま、

さまざまな心情の揺れを堪能できるのです。
これは相当ROSIERですよ。
生々しいROSIERですよ。

「道徳の耽美」という矛盾を感想とさせていただきます。

 

10分くらいで読み切れる短さでありながら、読後の満足感は極めて高いです。
このコンパクトかつ鮮やかに完結している感じ、舞台で見てみたくなる内容です。

戦前に映画化もされているそうですが、この小説は演劇や人形浄瑠璃の方が
相性がいいように思いますね。
演じ手の技量がダイレクトに問われる、緊張感の高い演目になることでしょう。

 


また別途紹介するかもしれませんが、青空文庫菊池寛さんコーナーはいいですよ。

有名な代表作も揃っていますし、戦国時代ものも多いですし。


特に「合戦もの」は戦前のいかにも講談らしい内容ながら、一周まわって
現代の歴史ファンにも喜ばれそうな筆者評価が多くて楽しいです。


「小田原陣」で徳川家康のことを

強い者に対した時だけ、信義を振り廻すのが一番であると確信して居る

見捨ての神

と褒めているところなんて「なるほど!」と思ってしまいました。
貶してるんじゃないですよ。家康の慧眼を褒めているんです。

 

四条畷の戦」では、戦前の足利尊氏を褒めただけで大バッシング」という
世情が触れられております。

国会で足利尊氏について激論。
なかなか隔世の感があって面白いですね。

 

「形」は三好家重臣松山重治の家来、中村新兵衛の物語です。

これも極めてコンパクトな小品ながら、印象に残るもの多しですね。

菊池寛さんは香川県の生まれで、先に紹介した通り高松藩ものも書かれています。
現代に生きていらっしゃったら、十河一存を軸とした三好家小説などを
書いてくれたかもしれませんね。

 

 

以上、幾つか紹介いたしましたが、菊池寛さんの小説は素直な言葉で
ズパッと深いところまで貫かれるような、ジャブとストレートを極めた
チャンピオンのような凄味があります。

即ちとっつき易い文豪さんなのです。


人物面・業績面でも圧倒的なお方ですけど、現代での知名度は同時代の
芥川龍之介さんたちほどではないような気もするんですよね。

 


最近の若い人にも名前が知られて、もっともっと人気が出てきますように。