肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「勝新伝説」別冊宝島

 

 

別冊宝島の「勝新伝説」というムック本にかんたんしました。

 

tkj.jp

 

宝島社は様々なムック本を出していて「誰が買うんだろう」という代物も
多いんですが、ときどき渋い逸品が現れます。

 


タイトルからも分かるように、この本は勝新太郎さんの特集です。

勝新太郎さんの「伝説」については新書や漫画などで定期的に話題に上がりますね。

文春新書『天才 勝新太郎』春日太一 | 新書 - 文藝春秋BOOKS

吉本浩二 『カツシン~さみしがりやの天才~ 1巻』 | 新潮社


それらで紹介されているエピソードとこのムック本におおきな違いはありません。
勝新系情報を追いかけている人であればお馴染みの内容が多いと思います。

とは言え、ムック形式なので「読みやすい」「写真が豊富」という長所、
幻の週刊ポスト連載「何処で果てよと」傑作選が載っている、あたりは
見逃せないポイントです。

1,000円もしますが、ファンアイテムだと思えばむしろ安い。
躊躇せずに購入し、病院の待合室で一気に読み通しました。



座頭市
悪名。
兵隊やくざ
独眼竜政宗豊臣秀吉
中村玉緒の旦那さん。
パンツをはかないことにした人。

いまさら勝新太郎という大スターをあれこれ紹介するのもみっともないですね。



いちばん有名なのは座頭市シリーズでしょうか。

私のお気に入りは「喧嘩太鼓」です。
市川雷蔵さんの作品も含めて、この頃の時代劇に触れてみるなら
まずは三隅研次監督作品をおすすめします。


この本も含めて世間評価が高いのはドラマ「新・座頭市Ⅱ」の10話「冬の海」。
ドラマシリーズはときどきBSフジあたりで再放送していますので、
機会がありましたらぜひ。
ドラマ制作のエピソード(脚本無視、リハなし、思いつきで展開変更等)には
驚いてしまいますが、実際に新・座頭市は映画を凌駕するほどの名作揃いですから
その甲斐あったということなのでしょう。
スタッフさんはほんまに大変やったでしょうけど……。


私の知るマイナーな話をひとつ紹介しますと、座頭市という作品は
WizardryというRPG業界の金字塔にも影響を与えているんですよ。

BCF(#6)最強の武器「ザトウイチボウ」。
CDS(#7)最強のNPC「ブラインドメイス」。

その気になればこの2つの思い出だけで1万字くらいの文章を書けそうです。

Gガンダムのキラルさんなど多数のフォロワーを生み出してもいますし、
「盲目の凄腕剣客」というモチーフはおいしすぎますね。

 


勝新伝説」の内容に戻りまして、せっかくですので幾つかのエピソードや
勝新語録を引用させていただきます。

次から次へと出てくることはまさに逸話ばかり。勝プロが借金まみれになったときに社員が組合をつくると、「俺も入れてくれ」という勝さんや、「これまでに見たことのないようなビックリした顔を、と要求された役者さんへのアドバイスとして、自分で運転して知恩院の門(国宝)に車をブツけた」など枚挙にいとまがない。

「カツ丼とおま●こはいっしょだよ」

松田優作の七回忌で、集まった周囲に、「おい、みんな、金を出せ!」と命じた逸話は有名だ。そして、自分の金も足して渡し、妻の松田美由紀にこう言った。「お前、ちゃんと贅沢してるか? おいしいもの食べてるか? ……いいか、このお金は、生活のために使うな。お前だけのために使え。お前が楽しむために使うんだぞ」松田美由紀は、涙が止まらなかったという。

「影を持っている人間だからこそ、光り輝くものが出てくる。影から出てくるそいつ独自の生き方、光に人は憧れるんだ。今は影のない役者がスターになれる。本物よりも本物に良く似た偽物の方が扱いやすい。気位がないから使いやすいんだ」


野暮だと思いますから細かな解説やコメントはいたしませんが、
いずれも人間の深奥に届くものを感じます。

興味が湧いた方はどうぞこの本を読んでみたり、出演作品を視聴したり
してみてください。

 

 

もう何年も経ちましたけど、つくづく惜しい方を失ったものです。

こんなお方はそうそう出てこないと思いますけど、いつかまた、
こんなスターやもっとすごいスターが次世代の中から生まれてきますように。