肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

週刊ダイヤモンドの特集「初調査! ニッポンの老害 相談役・顧問」

 

 

週刊ダイヤモンドの相談役・顧問特集が刺激的でかんたんしました。

 

dw.diamond.ne.jp

 

『週刊ダイヤモンド』10月14日号の第一特集は「初調査! ニッポンの老害 相談役・顧問」です。多くの上場企業にいる「相談役」や「顧問」。しかし、開示項目ではないため、その存在の有無や勤務実態、報酬などの情報はほとんど知られていませんでした。しかし2018年1月から任意の公開制度が始まります。ついにベールに包まれていた「奥の院」についに光が当たるのです。特集では、上場企業へのアンケートを通して、一足先にこの「奥の院」を覗いてみました。また、コーポレートガバナンス企業統治)向上のために、「相談役」「顧問」制度を自ら改革しようと取り組むメガバンクの苦闘も紹介します。

 


いよいよ経済誌でも本格的に特集されるようになってきましたね。


グローバルな相場観を踏まえた「コーポレートガバナンス」が求められる世の中。

透明性の向上を求め、指名委員会だとか、報酬委員会だとか、社外取締役の増員だとか、様々な観点で取組み強化が要請されるようになってきております。


そんな中、来年'18.1.1より東証は上場企業に対して「相談役・顧問」の任意情報開示を迫る予定になっておりまして……。



「社長・CEO経験者」かつ「取締役ではない」人……すなわち、「影響力はあるのに経営責任は求められない人」が社内に何人いて、誰で、どんな仕事をしていて、どれくらい報酬を得ているのか。


明らかにしたらどうです?


明らかにしない理由があるなら株主にちゃんと説明してくださいね?



ということであります。

 

 


ははは、これは厳しい。

 

 


今週のダイヤモンドでは、こうした動きを推進する経産省東証の課題意識や、実際の各上場企業の相談役・顧問情報(実名入り、報酬・社用車・個室・秘書の有無付き)を分かりやすく解説してくださっています。

 


「老益」として活躍する相談役・顧問もいるよね、とバランス取りしつつ。

 


日本に何人いるかすら分かりません。


“おいしい思い”をしてるかもしれませんが詳細不明です。

あ、個室・秘書・社用車の3点セットがついている人も多いそうですけどね。


そう言えば東芝事件も相談役(歴代社長)が混迷を深めてくれましたねえ……。

 


と、どちらかと言えば「相談役・顧問こそ日本企業組織の歪んだ意思決定の元凶だ、しかもおいしい思いしやがって」と受け止める読者が増えそうな誌面づくりをされております。

 


確かに、日本の伝統的大企業においては「社長→会長→相談役→(名誉)顧問」というのが美しい出世コースになっております。


相談役以降はたいてい取締役メンバーではないので株主代表訴訟などを起こされることは基本ありません。

その割に年収は数千万円もらってるんじゃないかと推測されています。

しかも、会長というのは社長を出世させてくれた恩人で、相談役というのは会長を出世させてくれた恩人であります。
引き上げてくれた恩人に牙を剥くことなんてできません。

日本の伝統的大企業において、社長というのは実はNo.1ではなく、No.3-5くらいだというのが相場なんですよ。


とは言え、「伝説の創業者」とかなら名誉顧問で残っていても違和感は少ないのですが、サラリーマン出世駅伝の元トップランナーが何人も社長の上にいるのはやっぱり違和感がある気がしますね。

 

 

ダイヤモンドの誌面では、みずほFGや三菱UFJFGがこうした世の中の動きを受け、「OB退場」に向けて舵を切り始めたということを紹介いただいています。

一方で、石油元売りのJXTGHDはいまも名誉顧問のプレッシャーに困っているという「なんでJXTGHDだけ名指しされるの(笑)」的な指摘がなされてもおります。

上でも触れましたが、各上場企業の相談役・顧問も実名入りで表にしてくださっていますので、これはけっこう各企業社員の酒の肴になりそうな特集ですね。

 

 

 

個人的には、素直に受け容れにくいところもあります。

 

ダイヤモンドでもP41で触れてくれている通り、「相談役・顧問の有無と、企業業績には相関は見られない」というのは大事なことだと思います。

コーポレートガバナンスとは社業繁栄と投資家保護のためにやっていることで、取組みが業績に結び付かないなら意味がありません。

「世間相場のコーポレートガバナンスを装備すること」……手段が目的化してはいけないのです。

 


むしろ、東証はともかく、政府や経産省が「暗黙裡のプレッシャー」を財界にかけることの方が「不透明な意思決定の温床」なんじゃねえのと。

中途半端な毒にも薬にもならんサラリーマン相談役より、いまだに護送船団のノリで経済界に一律みんな同じことやれやプレッシャーをかける行政の方がタチ悪いんじゃねえ? と。


「相談役がこう仰ってるから……」というのも恥ずべき思考停止ですけど。

「行政がこう旗を振ってるから……」というのはもっと恥ずべき思考停止ですよね。


まだ相談役・顧問の方が社内の切れ者若手が丸め込める余地ありますし。

 


東芝事件は実際「あいたたた……」でしたけど、東芝は現在進行形で「罰」を受け続けている訳で。

別に他の企業すべてに強要するような話ではないでしょう。

不透明な意思決定はもちろんいいことではありませんけど、それも含めて各企業の自己責任ですからね。

 


「みんなで相談役・顧問を廃止しよう!」じゃなくて、「みんな、自分の会社にとって相談役・顧問とは何なのか考えてみよう!」ならいいんですよ。

ビジネスモデルも企業文化もそれぞれですから、最適な組織制度や意志判断プロセスは違っていていいと思います……いやさ違っているべきでありましょう。

 


その上で、みずほFGや三菱UFJFGのように、「世間の動きを口実にして」社内の改革を進めようというのであれば強かだと思いますが。

 


『上場企業を一覧表にして「うわ、この企業いまだに相談役置いてるわ!」と単純〇×判定するのはなんだかなあ。


まずは業績を見ろと。

たいていの日本組織では社長も会長も相談役も歯車に過ぎないんだから、特定の誰かのせいにして課題分析できた気になるんじゃねえぞと。

……まあでも、実際うちの会社も顧問多すぎるな。●人くらいでいいんじゃね?

組織企画担当役員の●●くんとも議論してみるか……。』

 


と、反発しつつも、ちょっと反省もしてみる。

結果として、自社にとって最適な組織態勢のイメージが具体化していく。

 


そんな読者の反応と思惟と行動を、きっとダイヤモンドも経産省も待っていることでしょう。
(一覧表を作ったのはあげつらうためではなく、各社の議論を促進するためだと信じています)

社会の各層で議論を重ねて、今日的なコーポレートガバナンスのあり方が具体化されていくといいですね。

 

 

この特集は全体的に分かりやすくて面白い内容だったのですが、個人的に一番かんたんしたのは巻末の編集後記です。

 「トランジスタをやっている会社です」と、東京通信工業(現ソニー)の井深大氏が編集部を訪ねてきた――。1955年7月の本誌にそんな記事があります。
 持参した小型ラジオの音を聞き、国産トランジスタの出来栄えに驚いた弊社創業者の石山賢吉や編集長、記者たちが「今から工場を見せてほしい」と、逆に井深氏の案内で北品川の本社に向かうという石山の筆による取材記です。
 社屋では万代順四郎氏が待っていました。三井銀行の会長などを歴任した財界の大物。その万代氏が相談役を経て東通工の会長になっており、「若い者たちをよろしく」とあいさつに出てきた。「これはただの会社ではない」と石山が述懐しています。“老益”の見本のような話です。 (深澤)


ダイヤモンド社が各企業、相談役・顧問個人に期待しているメッセージが端的に伝わってくるような名文だと思います。

 

 

 

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「相談役・顧問」がレアになっていったとしたら……。

現在「会長」としてふらふら遊んではる島耕作さんはどうなっちゃうんでしょう。

部長時代のように、ダイヤモンドで推奨されているように、テコットを去って新進企業の老益系アドバイザーに就任するのが今日的なあり方なのかもしれませんが。


島耕作の事件簿」というシュールな番外編連載をやっている間に構想を練ってはるんでしょうか。


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今週のダイヤモンド、他にはP102-103の「ものつくるひと……「折り紙構造物」舘和宏さん(東京大学大学院総合文化研究科 広域システム科学系助教)」が面白かったです。

以前もニュースに出てはりましたが、順調に研究が進んでいるなら何よりですね。

ASCII.jp:東大など、折り畳めて丈夫な構造物になる「オリガミ・チューブ」

 


あと、P23の「個人の信用力を点数化 信用情報システム「芝麻信用」とは?」という中国企業の動向ニュース。

個人情報を保護せず、がんがん社会インフラ化していったら便利じゃね? と。

一面ではその通りなんですが……。
日本では実用化できそうにない……その間に中国では新技術が確立されていく……と。

これこそ「リーガルデザイン」的な議論が求められるテーマですね……。
保護一辺倒でいいのか、経済成長を少しは狙っていくのか、幅広の検討が要ると思います。

 

 

 

以上、週刊ダイヤモンド10/14号のご紹介でした。

特集記事を読んで、血圧が上がって倒れる相談役・顧問さんが現れませんように。