楽しみにしていた東京藝大の「皇室の彩」展が期待以上の凄まじい素晴らしさでかんたんしました。
眼福すぎて目がつぶれるかと思いました。
↓以前紹介した記事(開催前)
東京藝大で「皇室の彩 百年前の文化プロジェクト」……大正期の皇室献上品アート展をやるそうです(美術手帖の記事より) - 肝胆ブログ
↓ビラ。暗い写真ですみません。
行ってきた感想といたしましては、
・すごい
・皇室の目利きがすごい
・製作者の気合いがすごい
・高村光雲さん最高
・ほんまにすごい
というところです。
久しぶりに語彙力を殺されました。
週末の午後八時までな延長時間帯に行きましたので、お客さんが少なかったのもありがたかったです。
客層は上品かつ年配の紳士淑女が8割、若いカップル等が1割、藝大生っぽい若い人が1割というところでした。
皇室に関心があろうがなかろうが、この美術展はアート好きなら行ったほうがいいと思います。
11月26日までやっています。
次はいつになるか……半世紀くらい次のチャンスはないと思いますよ。
内容は以前ご紹介した通り、大正期を中心とした皇室への献上品、あるいは皇室によるお買い上げ品を展示いただいているものです。
皇太子さま(昭和天皇)ご成婚等に際して、東京美術学校(現:東京藝大)の正木直彦校長が指揮を執って、全国の各分野を代表する作家を集めて献上品を製作する一大美術プロジェクトが行われていたそうですよ。
美術工芸家130人がかりで作成した「御飾棚」ですとか、70人以上の画家の絵を収めた画帖「瑞彩」ですとか……。
技法としてもプロジェクトとしても、もはや再現不可能ではないかと思われます。
実際にそうした献上品・お買い上げ品を間近で見てみると……
品格というか、籠められた熱意・崇敬というか、よい意味でのプレッシャーというか。
通常の美術展以上に、こちらを圧倒するような存在感がございました。
具体的に私が痺れた作品と一言感想を述べてまいります。
(敬称略)
-萬歳を舞う人物の立体造形・躍動感が素晴らしい
鹿置物(高村光雲)
-二匹の鹿が連れ添う姿と大地に散る紅葉。日本の山景色という趣です
東京名勝図・萬歳楽図衝立の萬歳楽図(原図:小堀鞆音、刺繍:飯田藤次郎)
-巨大な衝立をいっぱいに使った萬歳楽の人物図。和の宮殿に相応しい。
景雲餘彩(8人の画家による画帖)のうち、鱚(前田青邨)と松島(近藤浩一路)
-ともにシンプルな画法ながら胸に迫るような味があります
日出処日本(横山大観)
-富士と日輪を描いた巨大な絵。ビラ上段。70歳を過ぎた大観の魂が宿るような
住吉詣(松岡映丘)
-源氏物語の澪標を描いた屏風図。光源氏と明石の御方の対比が素敵
御飾棚 鳳凰菊文様蒔絵(製作者は書ききれません)
-巨大な飾棚が全面びっしりと蒔絵や螺鈿細工等に覆われていて、眩すぎます
御飾棚 鶴桐文様蒔絵(〃)
-上の棚は菊、こちらは桐。慶賀を祝すデザインと細工技法、ともに至高かと
木彫置物 養蚕天女(高村光雲)
-皇室の女性が養蚕に励んでいる姿がモチーフ。造形もコンセプトも尊いです
螺鈿軸盆 藤花菖蒲文様(豊川楊渓(四台))
-銀色の盆と白色の螺鈿細工の色彩が美しい、印象に残るひとしな
彫金洋式文房具(図案:千頭庸哉、製作:山川孝次(二代))
-ロイヤルな細工を施された筆記用具……美しすぎて使えそうにありません
玳瑁装身具 鴛鴦菊文様(図案:森田佳鳳、製作:江崎栄造)
-玳瑁細工を施されたヘアブラシ等。現代では再現も原料調達も不可能です
七宝飾壺 唐花文様(安藤重壽)
-黄色の発色と正倉院風の文様が美しい壺。洋間にも合いそうな逸品
裁縫箱並ニ道具(図案:島田佳矣、製作:木内半古、市島昌邦、堀井正文、吉村忠夫)
-源氏物語の初音帖デザイン。美しすぎて針もハサミも手にできそうにありません
洋式文房具(図案:島田佳矣、製作:江崎栄造、安藤重壽)
-こちらも玳瑁等で細工された文房具。こんなお道具箱、学校に持っていけません
瑞彩のうち、大原女(土田麦僊)と雛祭(上村松園)と屈前歌舞図(小堀鞆音)
-画帖の絵はどれも傑作ですが、私の好みはこのあたり
-松の樹上……天から人々を寿ぐような鷹の高貴さ。デザインが本当いいです
以上……厳選しようにもできないくらい名品揃いです。
挙げなかった作品もどれもこれも半端ないクオリティですからね。ぜひご自身の目で見て、それぞれのお気に入り作品を選んでいただきたいと思います。
そして、高村光雲さんが好きな自分に初めて気づきました。
よく考えたら皇居の楠木正成像も高村光雲さんの作品でしたしね。
各地の作品をあらためて見て回りたいものです。
本当に……眼福極まりない展覧会でございました。
スケジュールをやりくりした甲斐があったというものです。
叶うならもう一回でも二回でも三回でも行きたい。
さらに。
続く春の美術展が……
上村松園さんの「序の舞」「鼓の音」等に加えて、鏑木清方さんの「たけくらべの美登利」までが一同に……!
なんてことだ。
これはまた行かなきゃならないじゃないか……!!
東京藝大の美術館だけあって、さすがのセレクトですね。
周辺の美術館よりは奥まったところにあって人も少ないので、かえって私好みです。
東京藝大美術館に限らず、これからも各地の美術館でこうした今までにない、かつ素晴らしい内容の展示が行われますように。