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かんたんにかんたんします。

「ミスター味っ子 幕末編 2巻」寺沢大介先生(朝日新聞出版)

 

コミック「真田太平記」で連載している「味っ子幕末編」の2巻がますます面白くなっていてかんたんしました。

 

 

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「これからが我らの」

「るねっさんす情熱だな!」

 

味皇様のご先祖もご満悦です。

 

 

 

ミスター味っ子といえば80年代に大ヒットした料理漫画。

作者の寺沢大介先生はかれこれ30年に亘って料理漫画の第一人者であり続けています。

 

将太の寿司」「ミスター味っ子Ⅱ」「喰いタン」「喰わせモン!」「キッテデカ」など、代表作も多数ありますね。

(料理漫画ではありませんが、キッテデカは新境地を開拓した感があって好きでした)

 

若い人にはピンとこないかもしれませんが、


 ・石灰で温かくなる弁当

 ・昆布鍋や紙鍋

 ・タピオカ

 ・血のソーセージ

 ・マグロのステーキ

 ・芽ネギ

 ・魚への針麻酔

 ・海洋深層水

 

などを世に広く知らしめてくださったのは寺沢大介先生だと私は思っています。

 

私の好みを言えば。

一番食べたい料理は味っ子Ⅱで陽一さんがつくった普通の焼きそば(ちゃんと焼くやつ)で、一番好きなキャラは味っ子Ⅱの磯島慶人さんです。

よく考えてみたら一番好きな作品も味っ子Ⅱかもしれない。
(迷走感も含めて)

 

 

 

こちらのミスター味っ子 幕末編は、中学生時代の味吉陽一さんが勝海舟さんの食欲に引き寄せられて幕末にタイムスリップする物語です。

ずっと幕末に飛ばされたままではなくて、勝海舟さんが食欲的な意味で困ったときにだけ呼び出される仕組みです。

 

1巻の時点でペリーさんにカツ丼を食べさせたり坂本龍馬さん&堺一馬さんとカレー勝負をやったりと好き放題やっておりました。

 

食べ物描写はもちろん、登場人物のキャラがよく練られていて、時代物としても純粋に面白いんですよ。

1巻では勝海舟さんと福沢諭吉さんの論争がよかったです。

 

福沢

「学問に励み能力さえあれば士分でなくても上を目指せる」

「これからはそういう世の中になるんですよ」

 

「それじゃあ能力のない者はどうなるんだ?」

「おめえの目指す先の世は そんな奴らは見捨てちまうのかい?」

 

福沢

「今は国家の存亡がかかっているんです!!」

「あなたは我が国が列強のほしいままに蹂躙されることをお望みなのですか!!?」

 

「民 百姓や町人を不幸にする国になっちまったら本末転倒だよ」

「俺はそんな世の中を決して認めるわけにはいかねえな」

 

 

面白そうでしょ?

秋元治先生といいゆでたまご先生といい、円熟味を増したベテラン作家が個性ある良セリフを生み出してくださっている現世は最高です。

 

 

 

 

そしてこのたび発売された2巻。

 

のっけから孝明天皇にショートケーキを献上するという危ない橋を渡り。

長州藩と四国連合艦隊の争いをオムレツ丼を使って止めようとしたり(結果は失敗)。

薩長同盟締結に当たって料理勝負でカタをつけようとしたり。

 

漫画的大ボラ感のある展開が超面白いです。

フリーダム過ぎる。

 

歴史上の人物も実に殺伐としていて素晴らしい。

いい意味で全然ヒロイックではありません。

自我強すぎ男子の集いになっていて、それがたいそう魅力的で楽しいんです。

 

 

とりわけ、坂本龍馬さんとグラバーさんの暗躍がいいですね。

 

薩摩・長州それぞれを煽って内乱起こして武器販売で大儲けするはずが、うっかり薩長同盟という真逆の方向に舵を切ってしまう大胆な流れ。

こんな坂本龍馬像も素敵だと思います。

 

 

要所要所で面白い一橋慶喜さんもおいしい。

「ハイッ 解散ーーーッ!!」

と唐突に登場して勝海舟さんの神戸海軍操練所を解体するテンポ感に笑いました。

 

 

やあほんま、幕末ものとしても料理漫画としても極上のエンターテイメントです。

 

 

 

 

ますます面白くなってきた幕末編。

 

どうか雑誌が廃刊にならずに真田太平記完結まで刊行が続きますように。

この漫画は途中で休止したらもったいないクオリティだと思います。

 

 

 

「ミスター味っ子幕末編4巻(最終巻) 感想」寺沢大介先生(朝日新聞出版) - 肝胆ブログ