赤木圭一郎さん主演のハードボイルドバイオレンス「抜き射ちの竜」が想像以上にカッコよくてかんたんしました。
主人公「抜き射ちの竜」こと「剣崎竜二」さんがヤク中になったり中国人ヤクザに雇われたり恋したり決闘したりする内容の映画であります。
ストーリー的にはいかにもこの頃のバイオレンスものっぽい感じが漂いますが、この映画の魅力は役者方のケレン味たっぷりな演技とセリフ。
まずは主人公の赤木圭一郎さん。
「抜き射ちの竜」というだけあって早撃ちで知られる一匹狼系のヤクザなんですけど、相手を殺さず肩口を撃ち抜くだけに留めるんですよね。
苦労して育ったような背景もあるようで、ヤクザなんてやりつつ心根のきれいな部分も隠し切れない魅力的なオトコなんです。
それだけに悪いやつに利用されたりもしがちなんですが……。
その純朴まじりの端正な顔立ちと、凄腕のガンマンぶりとのギャップがイイのですよ。
いろいろ戸惑いながら演技しているような印象で、それも含めて若手俳優のアピールポイントやなと思いました。
演じるのは抜き射ちの竜のライバル「コルトの銀」であります。
殺し屋に新境地開く。
どうですかこのオリジナリティあふれる笑顔。
この銀さんが劇中終始目立っててよございましたよ……。
「お前は肩。俺は心臓。いつか言ったとおりになったな」
「これでこないだの借りは返したぜ」
書き起こすとクサく感じるようなセリフが、宍戸錠さんの芝居とセットになると引き込まれるような輝きを放つのであります。
大人の中二病という感じで大好き。
中国人ヤクザ「楊社長」を演じる西村晃さん。
漫画のような中国人日本語を話します。
「抜き射ちの竜いうレテル……アナタ死なない限り消えませんね」
「アナタの手ごらんなさい。ハジキなくても自然にフトコロいてる。習慣ですねェ」
一見アホっぽく見えるセリフなのですが、西村晃さんの怪演が伴うと奇妙な迫力が立ち昇ってくるんですよ。
いい悪役でした……!
ヒロインを演じたのは浅丘ルリ子さん(直虎の寿桂尼さんです)。
「お待ちするのは少しもつらくないわ」
なんてやや古風な言葉遣いに独特の色気がございました。
この頃からさすがですね。
振り返ると宍戸錠さんと西村晃さんの演技がスゲェ濃厚で、そんな中に若々しい赤木圭一郎さんや淑やかな存在感を放つ浅丘ルリ子さんやらが混じって大変なことになったような映画だったように思います。
途中の展開でも、唐突にダイナマイト満載のトラックとかが出てきて笑えましたし。
予告編のこんな一幕も意味違いを誘発しそうで不穏ですし。
男子高校生とかが反応してしまいそうな字幕だなあ。
コミックのような内容でありながら演技の力に吸い込まれてしまう、色あせない名作だと思います。
赤木圭一郎さんや宍戸錠さんのカッコよさが若い人たちにも知られますように。