さいきん流行している気がする「女性を題材にした写実絵画」の特集本を買ってみたところ、どきどきするような絵がたくさん収録されていてかんたんしました。
息をのむ写実絵画の世界 美しき女性像 | TG-NET 辰巳出版グループ
婦人画っていいですよね。
いつの時代の作品も神秘的な美しさがあって。
こちらの本に収められている画家は次のとおりです。
【掲載作家一覧】
島村信之/生島浩/小尾修/小川泰弘/山本雄三/石黒賢一郎
塩谷亮/小木曽誠/山梨備広/渡抜亮/藤田貴也/本木ひかり/鶴友那(掲載順)
冒頭の「新写実憧憬」(南城守さん)の文章からいいんですよ。
現代写実の新しい挑戦
今日の写実は一過性のものとして看過できるものではない。日本の現代写実には画家たちの存在に対する思想・哲学が息づいている。写実専門を謳った美術館の開館などは、日本のリアリズムを美術史の中に位置付ける試金石となるものだろう。考えてみればCGやデジタル動画が氾濫する現在、画家たちが置かれる環境は、もはや写真に衝撃を受けていた時代の比ではない。絵を描くという行為そのものが否定されかねない状況にある。であるからこそ逆に、日本で起こったこの現象を「新写実」と捉え、現代アートに伍する新たな挑戦としてその可能性を問いかけてみたいと思うのである。現在、日本の写実は中国や韓国の若い芸術家たちにも波及し、それぞれの価値観と美意識に培われたリアリズム絵画を生み出す契機ともなっている。
さて、クールベの「レアリスム(リアリズム)」から百六十年。現代の写実にも時代の審判が訪れるだろう。忘れてはならないことは、リアリズムはイズム(主義・主張)であるということだ。何をその中に語るかがその生命線となる。「写実」は「実」を「写す」と書く。「実」とは何か、その問いかけこそ個々の人生観、価値観を通して見えてくる存在の証でもあるのだ。「実」に迫り、真の「実」を語るリアリズム絵画の誕生を期待したい。
女性像、特に裸婦像を眺めているとハァハァした気持ちが湧いてきますが、一方でこうした観念を抱いておくことも愉しいことだと思います。
ちなみに文中で紹介されている「写実専門を謳った美術館」とは、千葉のホキ美術館のことでしょう。
行ってみたいなあ。千葉かあ……遠い……。
本に収録されていた作品の中で、個人的に好きなのは次のとおりです(掲載順)。
日差し(島村信之さん)
月夜(〃)
ニジイロクワガタ――メタリック――(〃)
香る宙(生島浩さん)
夏彩(〃)
視(oil sketch)(小尾修さん)
彼方に(小川泰弘さん)
余韻(山本雄三さん)
誘惑(〃)
月華(塩谷亮さん)
森の陽(〃)
待春(〃)
桜と光の中(小木曽誠さん)
光へ還る(〃)
Largo(山梨備広さん)
計測と記述(渡抜亮さん)
影を測る(〃)
結び目の行方(鶴友那さん)
覆い隠す(〃)
島村信之さんの「日差し」についてはホキ美術館の収蔵作品欄にも載っておりました。
光を浴びながら横になる女性の姿。
細密な描写、服やシーツや毛髪の柔らかな表現、安心と幸福を感じさせる表情。
いいなあ……。
ぜひ実物を見てみたいものです。
絵については実物を見るのが一番だと思いますので、気になる画家さんなどがいたらチェックしてみてはいかがでしょうか。
画家名でグーグル画像検索するだけでも幸せになれますよ。
島村信之 - Google 検索 ※ヌード注意
こうした女性像の写実絵画は近頃ムック本などもよく出ていますし、じっさい人気が出てきているのでしょうね。
男女の性差が社会的には是正されていく一方、それぞれ固有の美しさもまた認められる社会でありますように。
画集「神業の風景画 ホキ美術館コレクション 感想」芸術新聞社 - 肝胆ブログ