じゃりン子チエの文庫版が発刊されていてかんたんしました。
「2019年度 大阪ほんま本大賞 特別賞受賞」という冠もついていますね。
漫画版の再販は久しぶりな気がします。
じゃりン子チエを知らない若い方もそろそろ増えてきているかもしれませんが、再び貧しくなってきている現代日本においてはあらためて注目されそうな作品でもあります。
ダメな親に難儀している子どもは読むといいよ。
大阪下町(西成)で、ごくつぶしの父親「テツ」に代わって、小学五年生にしてホルモン焼き屋を切り盛りするチエちゃんの物語です。
物語開始時点でお母はんは出ていってしまっています。
近所にはヤクザ・チンピラ・バクチ打ちがうようよいます。
猫は二本足で走ってこん棒やバットを振り回します。
そんな騒がしい舞台の中で元気なチエちゃんの活躍を見ていると読者も元気が湧いてくる的な作品なのであります。
私がダメ夫系の夫婦モノが好きなのはたぶんにこの作品の影響もある気がします。
ダメ男を世話する楽しさってのは事実存在しますからねえ。
アニメも名作な上、いまはTMSアニメチャンネルで一部無料放送していますよ。
直近公開されている11話「金賞!チエちゃんの作文」は名作なのでおすすめです。
こちら文庫版1巻は、第1話「チエちゃん登場の巻」から第24話「賭け野球の巻③」まで収められています。
「賭け野球」という単語が出てくる時点で舞台の民度はお察しですね。
ネタバレしすぎない程度におすすめの話を取り上げれば、
お母はんとチエちゃんがこっそり会う第4話「秘密のデートの巻」、
作中最強人物が誰か判明する第8話「おバァはん強い!の巻」、
チエちゃんが人間離れした活躍をする第10話「マラソン大会の巻」、
同級生「マサル」のかませっぷりが素晴らしい第13話「文部省選定映画の味方の巻」、
父母子3人の京都旅行回、第14話「同居予行演習の巻」、
詳細言いませんがスカッとする第15話「テッちゃんの同窓会の巻」、
オチが秀逸な第18話「テツの家出の巻」、
猫同士の対決を描く第20話「アントンJr. VS 小鉄の巻」、
上のアニメでもおすすめした作文回の第21話「「ウチのお父はん」の巻」、
あたりですかね。
個人的にいちばん涙腺に来るのは第20話の小鉄です。
おまええらい奴ちゃなあ。その後アジを持って見舞いに来るアントンJr.もいいよね。
おすすめと言いながら半分近く取り上げてしまっています。
他の回もクオリティ高いですから、いかにじゃりン子チエの構成力が高いんかあらためて唸らされてしまいました。
さいごに文庫版1巻で主要人物の好きなセリフを引用しておきます。
じゃりン子チエの魅力はなんといってもセリフまわしですからね。
チエちゃん
あかん 明日考えよ ほんならまた元気が出る
明日はまた明日の太陽がピカピカやねん
テツ
デベソー ハナクソー ミミズのダッチョ
ヨシ江(お母はん)
チエも大人になったらわかるやろけど……
一人で生きてゆけるなんて思ってると
辛抱せなあかん時に辛抱がきかんようになったりもするんよ
人間とつきあうと苦労するよ
社長(お好み焼き屋のオッちゃん)
どないしたて… アントニオの命日やないか
ワシ 毎月14日は線香あげて供養しとるんや
アントニオJr.
男やったら力で勝負せんかい
各人物(猫)の個性が光っていていいですね。
全員ズブズブの関西弁でアクが強いんですが、セリフを聞けばだいたいどのキャラか分かるのがすごい。
じゃりン子チエに出てくる子どもたちのように、現実現代の子どもたちも元気にたくましく暮らしていけますように。
「じゃりン子チエ 文庫版2巻感想」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ