肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

映画「大いなる幻影 感想」ジャン・ルノワール監督

 

あけましておめでとうございます。

年末年始に積んでいた映画を何本か観てみたところ、「大いなる幻影」という古い戦争もの映画があたたかい傑作でかんたんいたしました。

 

↓映画館で観た訳ではないのですが、参考になるリンクを貼っておきます。

kac-cinema.jp

 

 

あらすじとしては、

第一次世界大戦中、ドイツ軍に捕虜になってしまったフランス軍の面々が、なんとか収容所から脱出しようぜという物語になります。

 

監督はジャン・ルノワール監督。

画家のルノワールさんの次男ということでも有名ですね。

私はこの作品以外には「ゲームの規則」というフランス社交界の映画しか観たことありませんが、あの作品もかなり面白い作品でありました。狩りのシーンがとてもよく。

 

出演者はジャン・ギャバンさんやエリッヒ・フォン・シュトロハイムさんなど、往年の大物俳優が多く出演されております。

 

 

以下、結末含みのネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一次世界大戦もの」「脱出もの」と聞くと、悲劇・惨劇・残酷・拷問・裏切り・血と死……みたいな言葉をつい連想してしまいますよね。

 

 

私もそんな先入観を抱きながらこの映画を観始めたのですけど……

 

 

ところがどっこい、実際の内容は、そんな優しいファンタジー存在しねえよ! と言いたくなるくらい、あらまほしきヒューマンな「情け」「矜持」に富んだポカポカでかんたんしたんです。

 

大いなる幻影」というタイトルはまさにその通り

幻影なんだけど、あってほしい幻影、こうだったらいいのにと胸を打つ幻影なんです。

 

 

  • 捕虜に相当な自由裁量を与えてくれるドイツ軍
  • 家格差を乗り越えて友情と信頼を育んでいくフランス軍将校たち
  • 逆に、かつての軍事貴族という家格を同じくする者同士で矜持を共有するフランス軍将校とドイツ軍将校
  • 夫を戦争で失いながら、敵国の将校に情けをかけるドイツの民間人主婦
  • 脱出したフランス軍捕虜を追跡しながらも、最後に情けをかけるドイツ軍

 

 

などなど、ひとつ塩梅を間違えれば悲劇待ったなしの場面ばかりなのに、見せてくれるのはあたたかい名場面ばかりでしてね。

 

とりわけ上で挙げた、軍事貴族同士、国を超えた矜持を分かち合う二人、フランスのド・ボアルデュー大尉(ピエール・フレネーさん)とドイツのラウフェンシュタイン大尉(エリッヒ・フォン・シュトロハイムさん)の関係性は最高です。

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左が仏のド・ボアルデュー大尉、右が独のラウフェンシュタイン大尉。

収容所における会話シーンなんですが、そもそも左のボアルデュー大尉、ぜんぜん捕虜っぽい扱いされてないですよね。

 

終盤、この二人はそれぞれの信念と職務に基づいて行動し、関係性としてはつらい結末を迎えるのですが、それでもなお、互いの気持ちをしかと分かち合えていてまこと貴いのですよ。

尊いではなくて貴い。貴い幻影であります。

 

 

胸がたいへんあたたかくなるので、冬場に観る映画としてもおすすめですよ。

(逆に戦争の酸鼻を期待していた方には期待外れになるかもです)

 

 

現実の方はともすれば第三次世界大戦みたいなワードが飛び交う世相でもありますが、どうか2020年は平和であたたかな一年になりますように。