肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「ハマスホイとデンマーク絵画 展の感想」東京都美術館

 

楽しみにしていたハマスホイ展を見に行ってみたところ、心をニュートラルにしてくれる静かな作品の数々にかんたんいたしました。

 

artexhibition.jp

 

www.tobikan.jp

 

 

'20/1/28現在は東京都美術館で開催されています。

4月以降は山口県立美術館に移るそうなので、東京ないし山口にお越しの際は寄ってみるといいと思いますよ。

 

 

 

ハマスホイさん(1864-1916)はデンマークの画家さんで、薄暗い灰色でアパートの室内を描写した作品で有名な方です。

ものすごく地味なモチーフなんですけど、見ていると落ち着くというか、精神的にニュートラルにしてくれるというか、日本で言うところの禅、坪庭、枯山水などに共通するような気分を与えてくれる作品でして。

そうか、緑がかった灰色が人間にとってニュートラルな色なんだね、と思えるような。

デンマークでは「ヒュゲ」とも言うらしいんですけど、ハマスホイさんの作品は、一般的によく使われるヒュゲという言葉よりはもう少し暗め・テンション低めな落ち着きを孕んでいる印象です。

 

 

美術展では、19世紀のデンマーク絵画の流れをたっぷり堪能させていただいた上で、なお異彩を放つハマスホイさんの作品をシメに魅せつけてくださる流れになっています。

 

以下、個人的に気に入った作品を。

 

 

 

 

 

1.日常礼賛――デンマーク絵画の黄金期

・13 フレズレクスボー城の棟――湖と町、森を望む風景
 (クレステン・クプゲ)

  お城からの遠景を描いた作品。

  なんでもない景色を切り抜いたような構図が好き。

 

・14 ブランスー島のドルメン
 (ダンクヴァト・ドライア)

  巨石記念物を主題にした風景画。

  自然の広大さ、巨石の大きさと極小な人・海鳥の対比。

 

・15 シェラン島、ロズスコウの小作地
 (ヨハン・トマス・ロンビュー)

  収穫期の農場の風景。

  描き加えられたというツバメの躍動感よ。

 

 

2.スケーイン派と北欧の光

・22 漁網を繕うクリストファ
・29 朝食――画家とその妻マリーイ、作家のオト・ベンソン
・30 詩人ホルガ・ドラクマンの肖像
・31 スケーイン南海岸の夏の夕べ、アナ・アンガとマリーイ・クロイア
 (いずれもピーザ・スィヴェリーン・クロイア)

  当美術展でハマスホイさんの次に印象的だったのがクロイアさん。

  スケーイン派というそうですが、光の当たり方が実に好みです。 

 

・26 台所の片隅、花を生ける画家の妻
 (ヴィゴ・ヨハンスン)

  地味ながら日常の幸福を切り取ったようで感じ入ります。

 

・28 スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち
 (ミケール・アンガ)

  子どもたちと控えめに華やかな草花の構図が好き。

 

 

3.19世紀末のデンマーク絵画――国際化と室内画の隆盛

・32 晩秋のデューアヘーヴェン森林公園
 (ティーオド・フィリプスン)

  ゴーガン(ゴーギャン)さんの影響を受けたという秋の木々。

  印象派風の色彩がたいへん美しいです。

 

・37 画家クレスチャン・サートマンの肖像
 (ヨハン・ローゼ)

  抑えた色調、力強い線、溢れ出る無骨感に好感度が高まります。

 

・42 遅めの朝食、新聞を読む画家の妻
 (ラウリツ・アナスン・レング)

  安心感のあるあたたかい光と、妻の部屋着の質感がいいですね。

 

・46 縫物をする少女
 (ピーダ・イルステズ)

  少女がいなくても完成度が高い室内風景画。

  行儀良さそうな少女が加わってなんとも妙味あるヒュゲ感が。

 

・49 飴色のライティング・ビューロー
 (ギーオウ・エーケン)

  これも完成度の高い室内風景+少女の絵。

  存在感ある家具の飴色、少女の服の深緑色が地味ながら美しい。

 

 

4.ヴィルヘルム・ハマスホイ――首都の静寂の中で

・54 古いストーブのある室内
・56 自画像
・66 農場の家屋、レスネス
・69 若いブナの森、フレズレクスヴェアク
・70 室内
・73 背を向けた若い女性のいる室内
・80 室内――開いた扉、ストランゲーゼ30番地

  といったところが私の好みです。

  めったに観れない作家さんですし、
  現代人からの人気は今後ますます高まりそうですから、
  機会がある人はぜひ。

 

 

 

 

非常に楽しめる、静かな作品ながら深い情動を得られるような美術展でした。

 

東京都美術館は、子どもたちに「せんせい」のようなお絵かきボードを貸してくれて、好きな絵を模写してみましょうみたいなことしているのも素晴らしいですね。

「はじめてのびじゅつてん」で、気にいった絵を選びましょう、まねっこしてみましょう、その過程でよく観てみましょう、ってやるのスゴくいいと思いますの。

 

 

鑑賞した方々がハマスホイさんとデンマーク絵画に気持ちをリラックスさせてもらって日々の多忙やお疲れが少しでも紛れますように。