肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

信長の野望20XX「異聞 近江騒乱 感想」

 

信長の野望20XXの戦国時代イベント「異聞 近江騒乱」のストーリーが完成度高く面白い上にさりげなく六角家の存在感も高まっていてかんたんしました。

 

↓イベント実施のリリース(終了済)

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

 

以下、一部ネタバレを含みます。

攻略に役立つ情報はございません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近江騒乱イベントは前後編構成で、前編で浅井亮政さんや朝倉宗滴さんの時代を、後編で浅井長政さんのデビュー戦時代を取り上げるという、浅井・朝倉好きにはそうとう満足度が高い組み立てでございました。

 

 

イベントの主人公、浅井長政さん。

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星5バージョンでもイケメン設定は継続しております。

201X・20XXの浅井長政さんは大器なるも成長途上という感じに演出されることが多く、今回もはじめはそんな感じでしたが、物語が進むにつれて大成長されて立派な個性を確立するに至るという、さいきんのブロッケンJr.さんみたいな存在になられましてよございましたね。朝倉宗滴さんとタッグを組むとそうそう強くなるパターンです。

 

 

 

まつりさんは引続き長政さん派なようです。

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対するかさねさんは、長政さんのイケメンを認めつつ、マイペースにご活躍。

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かさねさんのキャラ、安定してきてますよね。

まつりさんとはまた違う魅力・進行力を発揮できているように思えます。

 

 

 

もう一人の主人公、浅井亮政さん。

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威勢がよくて器も大きいものの、肝心の戦が弱いというキャラになっています。

こういうキャラっていつの時代も人気者ですよね。

かつて本家の蒼天録では「江北の炎」という格好いい異名と高い能力をつけてもらっておりましたが、私はこの20XX亮政さんの方が更に好きだなあ。

 

 

 

両者のあいだに位置する浅井久政さん。

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201X・20XXの浅井久政さんは常にライターさんからのフォローが入っているのに愛を感じます。

こういう、制作サイドが積極的に光を当てたり再評価したりされにいく姿勢、素晴らしいと思うんですよ。

 

 

 

続いて朝倉家。

 

イカつい星5グラで登場した朝倉宗滴さん。

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一貫して若者を導いているのがいいですね。

孝景さんのキャラがしっかり根付いているのが伺えるのも嬉しいです。

 

 

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色んな経緯があるので表立っては三好家を褒めない宗滴さん、好きよ。

 

 

 

星4として凛々しくなった気がしないでもない朝倉義景さん。

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ゲーミング装備もレベルアップしているご様子です。

詳細は伏せますが、続編イベント「斎藤小少将の追憶」でのご活躍・ご成長が実にエクセレントでしたね。

 

 

朝倉家といえば、さいきん通りがかりに大黒丸城に寄ったのですが

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朝倉義景さんのご先祖は、新田義貞さんとも戦っているんでしたね。

太平記の時代から戦国時代にまで続いていくロマン、素敵です。

看板の「戦国の興亡は夢の如く九頭竜の流れに」という文章力にもかんたんしました。

 

 

 

 

そして六角家ですよ。

 

クソったれの守護ったれみたいな扱いだったら悲しいなあと思っていたら、意外なほどの丁重な扱われように驚きました。

 

 

偉大なる六角定頼さん。

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実力、器量、判断力、正当性、軍事力、いずれをも兼ね備えた傑物として登場してくださいましたよ。

近江地域の安定や畿内政局の後見に尽力していることが伺えて満足度高し。

 

 

 

更に、六角義賢さん。

 

平服と戦闘服(コラ)のギャップに笑わされつつ。

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水攻めネタを拾ってくれたのは嬉しいですね。

もしかしたら後世、義賢さんの薫陶を受けた近江衆が秀吉さんに仕えて水攻め大成功させたのかもしれませんし。

 

 

定頼さんとはまた違う熱さや武辺を示してくれたのが超ポジティブサプライズです。

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後藤賢豊さんにはやはり苦労をかけておりますけど、

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義治さんが史実よりも成長されて、六角家の結束の強さを維持できるといいですね。

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さりげなく後藤賢豊さんの死亡フラグをへし折っているところ、本当に20XXのライターさんの性格のよさが出ていると思います。

 

 

しかし、六角家が強いままだと、三好家や織田家が困りますね。

 

そのうち三好家も異聞やってくれると期待していますけど、六角家を黒幕にはもう出来なさそうなので、京兆家や河内畠山家がフィーチャーされる感じになるのかな。

イベント「細川晴元の追憶」とか、どのタイミングに戻ってやり直せばいいのか絞れなくて企画するのが楽しそう。

 

 

 

 

三好家で小ネタをひとつ。

 

今回のイベントで、三好之長さんが初めてまともに活躍してくれたんです。

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之長さんが屠った相手がチェンソーマンというのが面白くて、

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三好家といえば海部刀で、海部刀といえば鋸刃ですからね。

(※諸説あり)

海部刀 鋸 - Google 検索

 

これはある意味チェンソーマン同士の対決だった訳でありますよ。

宝刃とはチェーンソーのことだった。

 

そのうち三好長慶さんが、星5バージョンや無双やBASARAで、シルクハット紳士で光あれ的なキャラなのに手にしているのはチェーンソーみたいな生き物のサガ味あふれる感じで登場したらウケるなあ。あるいはこれでも(細川家の)執事DEATH。

(※三好長慶さんの愛刀と伝わる岩切海部に鋸刃はありません)

 

 

 

ちょいちょい戦国時代の異聞イベントが実装されて、星5キャラの実装も含め登場人物が掘り下げられていく流れ、いいですね。

 

今後の異聞もポジティブな驚きでプレイヤーを惹きつけてくださいますように。

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版10巻 感想 チエちゃん台詞キレッキレ」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエの文庫版10巻が、いよいよ各登場人物がしっくりと円熟してきてそれぞれの魅力を充分に発揮する中、主人公のチエちゃんがキレッキレな彼女らしさで活躍していてかんたんしました。

 

www.futabasha.co.jp

 

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収録されているお話は次のとおりです。

 

  • ヒネクレ男のスキヤキ
  • きたないきたない一日
  • コケザル始動
  • 気になるお化け屋敷
  • テツの就職!?
  • お化け屋敷に向かって
  • 生き残りお化け合戦
  • レイモンド飛田の残したもの
  • 借金取りのソロバン
  • おバァはんのソロバン
  • レイモンド飛田 余話
  • 考えるほど解らない二人
  • そんなふうな秋
  • アントニオJr.マフラーとったらアントニオ
  • 堅気屋の逆さ三日月
  • 堅気屋襲撃
  • 少女小説家 竹本チエ
  • 落とした財布は聞くのもこわい
  • 拾った財布はなおこわい
  • ウナギ弁当の食べ方
  • テツに来た手紙?
  • 正月にカセットがやって来る
  • カルメラの決心
  • 揺れるカルメラ
  • あの時の「泣き別れ法善寺」
  • 「泣き別れ法善寺」をうたいたい
  • カルメラは何処に

 

カルメラ弟が帰ってきて始まり、カルメラ兄が曇って終わる巻になっています。

その間では、コケザルとレイモンド飛田というトラブルメーカー二人が組んでしょうもない企てをし、結果としておバァはんや花井センセらの株を上げて終わる感じですね。

 

 

細かなネタバレはいたしませんが、この巻は主人公のチエちゃんがいつも以上に多方面へのセリフがキレていて素敵ですので、チエちゃんのセリフに絞って紹介させていただきます。

 

 

「あんなことせんでも

 テツなんかドブの水飲ましたら一発やのに…」

 

便秘に苦しむテツについて一言。

のっけから切れ味が半端ないです。

 

 

 

「えらい勝手やな

 今までそっちからなんやかんや言いに来たくせに

 不利とか敵とかそれなんやねん

 どうせまたテツのことなんやろけど

 イザとなったらウチはテツの子なんやからな

 忘れんといてや」

 

レイモンド飛田の舎弟に対して。

元ヤクザの大人に対して、良心を抉り取るような直球啖呵をブン投げるチエちゃんが素敵です。

相手の舎弟も、もともと人がいいタイプなので、身の破滅を覚悟している姿がいいんですよね。

 

 

 

「おバァはん ウチの店来る客は根性あるゆうとったけど

 かせぎの悪い根性なしがウチの店に来るんやなぁ」

「おおきに また来てや~~」

 

店の常連客をなじっておきながら、お帰りの際は愛想よく笑顔を向けるチエちゃん。

チエちゃんの「おおきに また来てや~~」はアニメ版の声がかんたんに脳内再生されますね。

 

 

 

「ウチ今まで店ジャンジャンもうかったらええなぁと思てたけど

 こんなにもうかってまたもうけるために昼寝だけしてる生活なんて……

 シヤワセっていったいなんなのかしら」

 

ある事件でめっちゃ儲けた時のセリフ。

極貧もあぶく銭も小学生にして経験しているチエちゃんの達観がスゴイ。

 

 

 

「テツのことをまともに考えるとお母はんのことまで

 全然解れへんようになるねん」

「ああ…ウチは日本一親のことが解らん少女や」

 

お母はんに対して。

あんな父親の何がよくて結婚したん? という問いかけは非常に重いものがあるはずなんですけど、この家庭の場合はいい意味で諦めが漂っていて平和ですね。

 

 

 

「あんたなんでも出来るからゆうて勝手にノコギリなんか

 使たらあかんゆうてるんや」

「あんたは自分が猫やゆうの忘れたらあかん」

 

小鉄に対して説教するチエちゃん。

説教の内容は誤解に基づくものなので、詰められた小鉄がスネてしまって四ツ足で歩き始めるのもかわいいのです。

 

 

 

「少女竹本チエ物語

 ははは 調子出てきたど

 良い子少女竹本チエは

 生まれた時から日本一不幸な少女でした

 不幸な不幸な……

 ………

 ………

 なんや……

 どうしてウチが落ち込まないかんのん」

 

小説を書いてみたチエちゃん。

思いのほか自分に対してキレッキレ。

自伝はヘコむので書くのを諦め、お好み焼屋のオッちゃんとアントニオJr.についてノンフィクションを書き始めるのもいいんですよ。

 

 

 

「ほんまに

 ウチも気がついたら両手に下駄持ってたわ」

 

しっかり者のチエちゃんが、珍しく財布を落とすという失敗をしてしまい、落ち込むという印象的なエピソード後に。

財布をたまたま拾ったヤクザが、テツ怖さに財布を届けられず、結局スリ盗ったんだと勘違いされてチエちゃん含む皆からボコボコにされたのが大変気の毒です。

 

 

 

 

こんな感じに、他の登場人物もいろいろ楽しく活躍されるのですけれども、主人公のチエちゃんが真ん中でイキイキしていると読者的にはやっぱり満足度がひとしおですね。

 

こうゆう元気な子どもにいいことがある世の中でありますように。

 

 

 

「じゃりン子チエ番外篇 どらン猫小鉄奮戦記 感想」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

「じゃりン子チエ 文庫版11巻 感想 テツの結論、ヨシ江はんに酒」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

 

 

 

「特撮のDNA―ウルトラマン展 感想」&「小石川後楽園」

 

あまり行ったことのない水道橋界隈に立ち寄り、特撮のDNA展と小石川後楽園にかんたんさせていただきました。

ウルトラマンを眺めていたり、何も考えずに庭を歩いたり池っぺりを見つめたりしていると倦んだ心も紛れますね。

 

 

特撮のDNA―ウルトラマン Genealogy展

 

www.tokusatsu-dna.com

 

 

youtubeの円谷チャンネルで広告が流れていたので訪れてみました。

 

 

そう言えば今年は2020年ですね。

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防衛隊の中では、科学特捜隊が一番好きです。

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特にイデ隊員が好きなので、スパイダーショットのサインが嬉しい。

 

 

 

二番目に好きなのはUGMかなあ。レッツゴーユージエム、ユージエム!

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イトウチーフが好みのタイプです。

 

 

ジャグラーさん効果で、ウルトラマンZ放映後はストレイジが一番好きと言っているかもしれませんけどね笑。

 

 

 

ちなみにUGMの隣にはとんでもないシロモノがございました。

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ダ、ダイナマイトボール……!

ちゃんと保存されていたとは驚きです。

 

 

 

往年のシリーズの中では、レオも好きなんです。

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スポ根的な成長物語で、色褪せない熱さがありますよね。

 

 

 

最近人気のセブンガーさん設定画もございました。

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まさか令和の時代にリバイバルされるとはなあ。

 

 

 

平成三部作もしっかり展示されていましたし、

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珍しい方々も。

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ミラーマンのデザイン、怪人っぽくて好きです。

 

 

 

赤いあの人もいらっしゃいました。

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(耳のアンテナは何のためにあるのだろう?)

 

 

 

 

歴代のウルトラマンたち。マン兄さんムッキムキ。

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定期的に光・BGMの演出が入ります。

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思った以上に気持ちが盛り上がりますね。

 

 

 

嬉しかったのは、梶田達二さんのイラストコーナー。

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セブンを中心に、懐かしく、格好良さ極まる画力を堪能させてくださいます。

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ラゴン対ペギラというのもアツいですね。

 

 

 

大御所にもお会いできたし大満足であります。

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帰りは、物販コーナーでレッドマンのサントラを買おうか悩みました。

 

 

 

 

小石川後楽園

 

www.tokyo-park.or.jp

 

 

東京ドームの近くにある後楽園。

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水道橋~東京ドーム~後楽園~飯田橋という流れで歩きましたが、程よい散歩コースでございました。

 

 

庭園の様子。1枚目の奥に東京ドームが見えているのが近代感。

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静けさと季節情緒を楽しめる、いい庭園でした。

さすが水戸徳川家

 

 

 

いま時分は花も紅葉もなかりけりな季節ですが、梅やあやめや藤が咲くときれいなんでしょうね。

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さいきん石や岩に興味があるので、こちらの「屏風岩」にも惹かれました。

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有名な庭園ですけど、狭間の季節だからかお客さんが少なく、のんびりゆっくりとさせていただきました。

都心のど真ん中にこんな場所があるもんなんだなあ。

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンにせよ自然を活かした庭園にせよ、大きくて包容力のある存在に触れていると安らかになれていいですね。

 

元気が出てきます。

 

季節の変わり目で体調を崩しやすい時候でございますが、皆様お風邪など召さぬよう、ご自愛くださいますように。

 

 

「桃山―天下人の100年展 感想」東京国立博物館

 

東京で悲しいことがあって少し落ち込んでいたのですが、帰り道に立ち寄った桃山展が素晴らしい内容でかんたんしたので元気を取り戻しました。

 

tsumugu.yomiuri.co.jp

 

 

 政治史における安土桃山時代は、1573年の室町幕府の滅亡から1603年の江戸幕府開府までの30年間をさします。この30年間に花開いた、日本美術史上もっとも豪壮で華麗な「桃山美術」を中心に、室町時代末から江戸時代初期にかけて移り変わる日本人の美意識を数々の名品によってご紹介します。


 戦国の幕開けを象徴する鉄砲伝来が1543年、島原の乱鎮圧の翌年、ポルトガル船の入国を禁止し、鎖国が行われたのが1639年。豊臣秀吉が北条氏を滅ぼし天下統一を果たした1590年が、その100年間のほぼ中間地点といえます。安土桃山時代を中心として、日本は中世から近世へ、戦国武将が争う下剋上の時代から、江戸幕府による平和な治世へと移り変わります。本展は、室町時代末から江戸時代初期にかけての激動の時代に生まれた美術を概観し、美術史上「桃山時代」として語られるその美術の特質を、約230件の優品によってご覧いただこうというものです。


 激動の時代に、「日本人」がどう生き、どのように文化が形作られていったのか、約100年間の美術作品を一堂に集め概観することで、日本美術史のなかでも特筆される変革の時代の「心と形」を考える展覧会です。

 

 

三好長慶さんの肖像画が出ているらしいし見ていくかあ。

 

くらいの気持ちで、下調べせずに訪れてみたところ、想像をはるかに上回る展示品の充実っぷりに圧倒されてしまいましたね。

 

以下、どの展示物も半端なかった前提で、個人的に印象に残った品々です。

(出品目録順)

 

↓出品目録

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/img/list_jp_200924.pdf

 

 

  • 1 洛中洛外図屏風歴博甲本)
    大永年間の京を描いた方の洛中洛外図屏風です。
    上賀茂神社の辺りがきれいでよございました。

  • 4 聚楽第図屏風
    大永年間の京や、上杉家本の洛中洛外図屏風(永禄頃)と比較して見ることが出来ますので、秀吉さん期の京の過密感がよく分かります。
    聚楽第自体もぎゅうぎゅう感ありますし、端っこに描かれている町家も二階建になっていますね。

  • 7 三好長慶
    三英傑と並んで展示されていたり、戦国時代年表にしっかり載っていたりと、かつてに比べて格段に扱いがよくなっていますね。
    あらためて現物をまじまじ眺めると、やっぱりイケメンやなあと思います。

  • 9 織田信長
    狩野永徳さん版の織田信長さんです。
    いかにもキレたら恐そうです。

  • 12 豊臣秀吉像画稿
    下絵的なやつで、これが一番本人に似ているそうです。
    これを見た後、麒麟がくる佐々木蔵之介さんを見ると、実はけっこう上手く再現しているんじゃないかという気もします。

  • 15 東照大権現
    家康さんの前に狛犬がいることに初めて気が付きました。

  • 18 後奈良天皇宸翰詞花和歌集
    ご苦労されたことで知られる後奈良天皇の書です。
    流れるような筆跡が美しく、これは確かに欲しがられそうだ。

  • 26 狩猟図
    狩野山楽さんによる中国狩猟図です。武人が厳ついし、皇帝背後の樹木も迫力があるし、界隈に展示されている狩猟図の中では一番好きです。

  • 28 紫式部石山詣図幅
    九条稙通さんのオーダーで、土佐光元さんと三条西公条さんが作成した品です。九条稙通さん、本当に源氏物語がお好きですね。六角家がこういう品を携えて上洛してきていたら九条稙通さんは六角方に寝返ったのではないか。

  • 40 初瀬山蒔絵硯箱
    「初瀬山 花に春風ふきはてて 雲なき峰に 有明の月」の意匠で知られる硯箱ですね。全体のデザインも、蓋の裏の手が長いお猿さんも素敵です。

  • 45 志野茶碗 銘 橋姫
    たおやかな筆で橋が描かれています。器自体は堂々とした存在感があるのに、描かれている橋は確かに女性的で、橋姫という名もなるほどですね。

  • 46 赤楽茶碗 銘 僧正
    とてもモダンなデザインで、江戸時代の作品というのも納得です。戦国~桃山~江戸で、美的感覚もすごく変わっていくのがよく分かりますよ。

  • 55 黒韋肩赤威鎧
    56 梅唐草蒔絵文台硯箱
    57 唐物瓢箪茶入 上杉瓢箪
    58 青磁筒花入 大内筒
    突然現れる大内義隆さんの審美眼を愛でるコーナー!
    素人目にも分かる至宝の数々、さすが大内家!
    という気持ちになりますので、西国史好きは詣でた方がいいと思いますよ。
    鎧の胴に描かれている龍の目がかわいいのも見逃せません。

  • 71 足利義晴像紙形
    これも下絵ですので、写実性が高い品なのだろうと思われます。やや目が虚ろだったり、髪の生え際が後退していたり、とても疲れてはる気がいたします……。

  • 86 古銅角木花入
    88 瓢花入 銘 顔回
    突然現れる三好実休さんと千利休さんを対比させるコーナー!
    古銅角木花入は三好実休さん所縁の品で、見せてもらった千利休さんもびっくりされたそうな。スッキリとスマートでスタイリッシュな逸品です。
    一方の瓢花入は千利休さんらしい、瓢箪の造形をそのまま活かした野趣あふれる逸品で、これもまた譲れない美しさがございます。
    スタイリッシュ実休 vs 野趣侘びリッシュ利休というのはごく一部の戦国茶人ファン的にはたまらないカードですから、めっちゃ気持ちがアガりました。

  • 102 伊賀耳付水指
    古田織部さん好みの、そのまま現代アートとして通用しそうな存在感のある水指です。ドン! という擬音が似合う感じ。

  • 107 瀬戸黒茶碗 銘 冬の夜
    上品な黒地に、白い点々。よい趣味だと思います。

  • 125 南蛮人渡来図屏風
    有名な屏風ですが、あらためて左端の南蛮船を見ると、黒人が多数働いていますね。私が抱いていたイメージよりも、黒人は珍しくなかったのかもしれない。

  • 138 楓図壁貼付
    148 秋草蒔絵歌書箪笥
    楓図壁貼付は、長谷川等伯さんによる作品。目を見張るような楓と秋草の色彩、繚乱! が非常に美しいです。
    秋草蒔絵~は同じく秋草を細やかに描いた素晴らしい蒔絵。
    この両者が近くに展示されていて、蒔絵箪笥から、楓図を借景のように見通すことができる配置の遊び心にかんたんいたしました。

  • 146 籬に草花図襖
    狩野山雪さんの襖。垂直の竹垣と、釣り下がる朝顔の曲線との対比が見事です。

  • 155 七宝九七桐紋釘隠
    156 七宝五七桐紋釘隠
    桐紋の釘隠です。銅に鍍金した金色に、緑色の七宝釉が差し色になっていていいですね。

  • 174 豊国祭礼図屏風
    岩佐又兵衛さんの作品ですね。人口密度が半端なくて、豊臣秀吉さんの遺徳がそれだけで伝わってきます。当時の風流踊りというか祭というか、衣装や演出が艶やかでいいものですね。

  • 206 紺糸威南蛮胴具足
    210 黒糸威二枚胴具足
    推しメンの一人、榊原康政さん所縁の具足です。やっぱり好きな人物の遺品を見るとキュンとしますね。

  • 218 松鷹図襖・壁貼付
    狩野山楽さんの作品です。松葉のむらむら感が非常に雄大でおおらかで、時代が変わった感じがものすごく伝わってきました。

  • 222 白糸威一の谷形兜
    徳川家康さんの兜です。黒鉄の兜だと思っていたのですが、当時は銀箔に覆われていたのだとか。徳川家康さんに白銀色を合わせるイメージがなかったので、家康さんの印象が少し変わりました。

  • 223 小袖 浅葱練緯地葵紋散模様
    葵紋が散らされた小袖です。葵紋のデザインがころころと丸くて絶妙にかわいいのです。

 

 

前期展示なので観れていない作品も多いのですが、めちゃくちゃ満喫できました。

かつて観たことがある作品でも、歴史知識が増えたり、他の作品と並べて比較したりすることで、印象や味わいが違ってくるのが楽しいですね。

 

ちなみに、こういう場に行って好きな人物の遺品を見ていると、頭の中に「久しぶりだな」とか「また会えたな」みたいな声が聞こえてきて自分がかつて戦国時代に転生していた頃の記憶が蘇ってくるという乙女コンテンツの最終回みたいな展開が起きたらどうしようという心配をしたりする人も多いと思うんですが、当然のことながら私の身にも周囲の人の身にも何も起こっていませんでした。

 

 

何はともあれ、こうした美術的な切り口からも歴史ファンが増えていきますように。

 

 

 

映画「夜は我がもの 感想」ジョルジュ・ラコンブ監督

 

ジャン・ギャバンさん主演の映画「夜は我がもの」を観てみたらものすごく面白くて、これはきっと名作映画として広く知られているんやろなあと思ってネット検索したら情報がほとんど出てこなくてびっくりしましたが、もう1回観てみたらやっぱり面白くてかんたんしました。

たぶん「知られていないけど名作」というやつだと思いますので、機会があったらご覧になってくださいまし。

 

 

あらすじとしましては、

  • 蒸気機関車の機関士を務めるジャン・ギャバンさんが、
  • 事故で視力を失い(本人は1年で治ると思い込んでいる)、
  • やさぐれた気持ちで日々を過ごしていたところ、
  • 視力を失った人の教育施設に通うことになり、
  • 視力を失った状態でもラジオを巧みに組み立てられるようになり、
  • 同じく視力を失っている美人の先生にも出会い。
  • 人生が再び楽しくなってきたと思いかけたが…………

 

という流れで物語が進んで参ります。

 

端的に言えば、視力を失って絶望した男が、なんやかんやありつつ立ち直っていく物語ですね。

それ自体はベーシックな筋立てに移るかもしれませんが、役者陣の人間味あふれる演技がたいそう心地よく、非常に共感できる作品に仕上がっているんですよ。

 

「夜は我がもの」というタイトルから、てっきり悪魔城ドラキュラヘルシング的なホラーサスペンス系の内容をイメージしていたんですけど、全然違いましたね。

 

 

 

視力を失い、さっそくやさぐれているジャン・ギャバンさん(右)。

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イライラは大げさに、反省や感謝は控えめに表現する演技が、事故で傷ついた人間の心持ちを実にリアルに再現しているように思います。

それだけに、めっちゃ共感しちゃうんですよね。

 

ちなみに左は義理のお兄さんです。

ちょいちょい喧嘩にもなりますが、根っこでは強固な信頼で結ばれていることが分かる、素敵な関係なんですよ。

たまに喧嘩するけど、ちゃんとお互いを心配し、信頼し合っている家族。

ちょっと寅さん的な雰囲気があって好きです。

 

 

 

ヒロインは、シモーヌ・ヴァレールさん。

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自身も視力を失っているものの、教育に励み、視力のない方々に自信や喜びをもたらそうとされている立派な女性です。

 

この映画では、剥製や立体パズルを触ることで事物の知識を拡げる様や、点字教育、視力に頼らない工芸等々、具体的な教育シーンが充実していて、かつ見飽きない構成になっているのがとてもいいですね。

軽々と言っていいことではありませんが、自分が同じように視力を失ったとして、「これなら全く無理ではなさそう」と思えるように製作されている気がするのです。

勝新座頭市さんのような超人技能も好きですが、こうした質実な映像も好きだなあ。

 

 

 

惹かれていく二人。

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多くのセリフも派手なアクションもありませんが、この二人が惹かれあっていく過程は感じ入るものがありました。

視力を失った方すべてが魅力的な恋に出会えるかは別として、傷ついた人を癒していく、絶望した人に前を向く力を与えてくれるのは、やはり人との出会いや触れ合いなのかもしれませんね。

 

 

 

詳しくは書きませんが、敵役の方も、確かに嫌がられるタイプではありますが根っからの悪者という訳ではありませんし。

脇を固める役者陣の演技もいい感じですし。

 

とても完成度と満足度の高い映画だと思います。

もっと知られてほしいっす。

 

 

 

どのようなかたちであれ、不慮の出来事で傷ついた方に対しては、不慮に幸せな出来事も同じくらい発生いたしますように。

 

 

 

「海辺を行き交うお触れ書き 浦触の語る徳川情報網 感想」水本邦彦さん(吉川弘文館)

 

臨海部を舞台にした江戸時代の通信網に関する研究書が、歴史学の地に足の着いた楽しさをふんだんに味わわせてくれる良書でかんたんいたしました。

モチベーションが上がると思いますので、歴史学に限らず何らかの学問をしている方におすすめですよ。

 

http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b457636.html

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江戸時代、海運・海難に関するお触れ書き「浦触(うらぶれ)」が、全国の海辺の村や町を行き交っていた。

年貢米輸送船の行方捜索や島抜け流人の追跡、瓦や材木の回漕予告、漂着した異国船の長崎への護送など、テーマは海事全般に及ぶ。

国境・藩境を越えて津々浦々に届いた「浦触」を読み解き、幕府の情報ネットワークの仕組みと複合的な全国支配の実態に迫る。 

 

浦触と出会う―プロローグ/

四国を巡る
大洲藩領の継ぎ送り/松山藩や小松藩領の場合/請印帳の役割)/

九州へ渡る
肥前国星賀村にて/肥後国天草へ)/

東海を行き交う
三河国刈谷町の庄屋留帳と多彩な浦触/瓦と材木/幕府触れ・藩触れと浦触/江戸前期の浦触/九州・四国との比較)/

東北・北陸を旅する
(「弘前藩庁日記」を読む/下達型から横断型へ/出羽国酒田湊の記録/越中能登・加賀では)/

山陰から山陽へ
石見国大浦湊/備前国岡山藩領)/

仲間を探す
(類似触れのいろいろ/伊能忠敬の測量)/

幕末から明治へ―エピローグ

 

要旨としては上記引用の通りでして、日本津々浦々の海辺の地域を回り、各地に残された浦触の内容を探求・整理していく書物となります。

 

通常、徳川幕府によるお触れとくれば、各藩に通達されて、そこから各藩内に周知しといてね、というのが通常の実務であるところ。

江戸時代を通じて、地域差はあれど、各藩を横断して海辺の村から村へと触書が回っていく実務が徐々に定着していく

そんな実態を明らかにしてくださる訳ですね。

 

 

浦触の用件も多種多様で、

  • 変わった船(外交使節や漂流異国船等)が航行することの事前通達
  • 年貢米や御用材木を積んだ船が到着しないので漂着したら教えてね
  • 八丈島から流人が逃亡したので見つけたら教えてね

 

等々、この内容だったら広い地域横断で幕府が直接連絡したくなる気持ちも分かる、というものがございます。

珍しい事例では、長崎俵物のフカヒレが足りないので、日ごろフカ漁に馴染みのない者もフカ漁をやって干して長崎俵物請負人へ売り渡すようにせよ」ですとか、伊能忠敬という男が御用で測量するので便宜を図れ」なんてものもあって楽しい。

 

 

現代だったら一斉メールとかで済むところ、墨や手垢で書状を汚さないように気をつけながら各村代表が確認印を押して次の村に回す……という運営をやっているのは大変な手間暇ですね。

村から村への書状の受け渡し時の気の使いようなんかを見ていると、村の代表たる庄屋さんというのもなかなか大変な役目なんだなあと偲ばれますよ。

 

 

こうしたテーマの研究は、著名な人物や事件を掘り下げるものではないので一般的には地味に思えるかもしれませんけれど、その時代の行政実務の一端を明らかにしてくれるものですから、研究であれ創作であれ、知識基盤として重要だと思います。

実務の流れを掴めると、その時代の人々の生活やものの考え方に対してもイメージがクリアになるというか、解像度が上がる感じがして好きなんですよね。

 

 

その上で、この本は

  1. 著者が偶然出会った文献(浦触)をもとに好奇心を抱き
  2. 別の地域でも類似文献を発見して研究テーマが明瞭になり
  3. 各地の知人や先人と交流する中で研究が掘り下げられていき
  4. 研究成果として結実する

 

という、学問を望ましい流れで大変楽しそうに進めてきはったことが読み手に伝わってくるんですよ。著者のお人柄だと思うんですが、楽しんで、充実した研究をしておられるのが分かる。

 

ひとつの史料との出会いが研究テーマを方向づける。

自分の仮説が、研究を進めるたびに明瞭に、形になっていく。

 

こういう流れを疑似体験できるので、気持ちがアガっていいと思います。

「著者さん楽しそうだな」と伝わってくる研究成果はいいですね。

 

 

 

どの分野であれ、基礎研究や地域に資源や人材がなかなか回らないと評されがちな世相ですが、伸び伸びと好きなテーマを好きなように研究している方を見つけやすくなって応援しやすくなっていきますように。

 

 

「アクタージュへの追悼、星アリサの過去嘘バレ」

 

「アクタージュ13巻。
 大河ドラマ編が始まりましたね。
 渋谷(NHK)に集結する特級女優に特級スタッフ。
 アクタージュ版呪術廻戦渋谷編のワクワク感に
 かんたんしました」

 

とか今頃言っているはずだったんですけど……。

 

 

アクタージュの連載終了決定から四十九日が経ちましたので、己のアクタージュファン心が漏出して澱のように積み重なり呪霊となってしまわないよう、自分なりに追悼して気持ちを祓っておこうと思います。

 

 

 

原作者の性犯罪については残念でなりません。

報道以降、色々頭の中に思い浮かぶものはありましたが、原作者に対しては

 

 「君の原作は凄かった!!」

 「でも 子どもを傷つけたことは許さない」

 

としか言いようがないなあと。

 

 

いちファンとしての「連載終了を惜しむ気持ち」と、

いち庶民としての「性犯罪者が一人減った安心感」。

 

等価、いや、後者の方が優勢、というのが正直な気持ちです。

 

著名人が逮捕されたことで。

罪を犯せば罰を受けるという、当たり前のことが当たり前であるとあらためて周知され、類似犯の撲滅に繋がっていけば、ですね。

 

被害を訴えた方の勇気、捜査に携わった方の精励。

いずれにも賛辞と敬意をお送りしたいと強く思います。

 

 

 

 

一方で、アクタージュファンがアクタージュを愛していた気持ちを否定しようとも思いません。

連載中止は当然の判断だと受け止めておりますが、生みの親の罪を受け、子である作品が同罪かというと、それは違うのだろうと。

作品が罪を負ったのではなく、罰として連載終了が科せられたのでもなく。

連載中止は判断、自制、姿勢と言われるべきものであって、罰ではないと思うのです。

 

 

作者の人格から切り離されて、作品が愛され続ける事例は枚挙にいとまがありません。

 

作者の固有名詞は出しませんけど、

不倫(姦通罪)常習者の文豪の小説、

DV・モラハラ常習者の陶芸、

殺人犯の絵画、等々。

 

様々な意見があるとは思いますけど、芸術作品は、公開された時点で作者の手から離れて、作品を愛でるファンのものになっている面が強いと思うんですよね。

 

原作者の罪、作品の連載中止を受けて、「そういう作品を愛してしまった自分の気持ち」までが無下に扱われたかのように傷ついたファンがいれば、それは悲しいことだし、適切なことでもないと感じるのです。

 

 

原作者の罪はしっかりとした裁きを受けるべき。

作品の連載も中止されてしかるべき。

でも、アクタージュという作品は間違いなく傑作だったし、それを愛したファンの心は歪むことなく癒されていくべき。

 

そんな風に思っています。

 

大事な人の死と同じように、四十九日、一年、三年……と、せめて時の経過がファンの慰めになってくれることを祈ります。

 

 

 

 

 

で、未練を成仏させるために、「連載が続いていたらどうなっていたんだろうなあ」という空想を軽く書いておこうと。

 

以下、いちファンによる駄文ですのでご留意ください。

気を悪くされた方には申し訳ございません。

 

 

 

自分の思いを率直に言えば、連載が続いていたとしても、原作者との同一性をうっすら感じる「黒山墨字」「夜凪父」あたりのキャラについては、ちょっと引いてしまう気持ちを否めません。

彼らの掘り下げについては関心が激減したと言わざるを得ない。

 

 

一方で、「夜凪景」「百城千世子」等のヒロインについては、素直に更なる活躍を望みたいですね。

連載中止が「羅刹女編」終了後だったのが、せめてもの彼女たちの救いなのかも。
(詳細時系列を知りませんが原作者事件は早期の解決が望ましかった前提で)

夜凪景さんなんて、作品内の父からも、作品そのものの父からも、二重に酷い仕打ちを受けていて本当に気の毒ですから、連載終了後もどこかの世界で幸せに役者を続けてくれていればなあと思いますね。

 

 

一番掘り下げを見てみたかったのは星アリサさんで、彼女の過去編を読みたかった。

大きくはメソッド演技を極め過ぎて役から抜け出せなくなったということなのかと想像していますが、そのリスクは作品内で明神阿良也さんが既に克服している訳ですから、メタ的には星アリサさんにはもっとパネェ何かがあったんだろうと思いたいじゃないですか。

 

なので、アクタージュが連載継続していた場合の嘘バレを書くとですね。

 

 

20巻くらい

夜凪景さんが絶望の悲鳴をあげるシーン。

彼女の没入とシンクロするかのように、失神してしまう観客や共演者が続出。

 

評論家
「これはまさか、アリサ・シンドローム!?」

 

 

27巻くらい

星アリサ
「千世子。景。覚えておきなさい。
 メソッド演技には、その“”がある――」

 

(過去編突入)

 

 

28巻くらい(過去編)

作品:ロミオとジュリエット(演出:巌裕次郎)。

主演女優:星アリサ。

全盛期星アリサの演技、それに伴い失神していく観客・共演者。

 

薬師寺真美
(あれは――領域展開。
 演技力で構築した生得劇場内で
 必殺のクソデカ感情を
 必中必殺のクソデカ感情へと昇華する
 私の到達できなかった演技の極致)

 

 

29巻くらい(過去編)

星アリサの演技は、自身の感情だけでなく、共演者、更にはスクリーンを通して観客たちの感情をも強制的に揺さぶる次元に到達していた。

頻発する失神、精神荒廃、後追い●●未遂。

 

裕次郎薬師寺真美ら、演出家・共演者が対策を完成させる前に。

星アリサは表舞台から姿を消した。

 

星アリサの引退後、ウェルテル効果等の指摘もあり、星アリサ映像作品の放映や流通は行政から厳しく制限された。

(夜凪景さんが星アリサさんのスゴさをいまいち知らないのはそのせい)

 

 

40巻くらい(最終巻)

ぶつかり合う夜凪景と百城千世子の"領域展開”。

“領域”はいまや質量をまとい、衝撃を起こす。

砕ける機材、裂けるスクリーン。

 

観客
「このままでは劇場がもたない!!」

 

 

……だが。

 

"貴女がいたからここまで来れた”

"貴女がいるから演じることがこんなに楽しい”

 

共鳴りし始めるヒロイン二人のクソデカ感情。

 

多幸感。

しわしわのお婆ちゃんになっても続く永遠。

 

一体化した領域が劇場を覆い、東京を覆い、日本を、世界を覆っていく。

 

 

やがて――

 

全人類が、健康になった。

これには星アリサさんもニッコリ。

 

 

fin!!

 

 

 

 

 

みたいな展開にきっとなっていたんじゃないでしょうか。

 

 

なんて連載終了後のあれこれを好きに想像できるくらい、魅力あるキャラクターに富んだ作品でしたね。

 

本当に素敵な作品でございました。

ありがとうございました。

惜しいけれども、だんだんと気持ちを消化していければと思います。

 

 

 

宇佐崎しろ先生をはじめ、アクタージュに携わった方々やファンの方々みんなに、今後もイイ感じの人生が待っておりますように。

 

 

 

 

「アクタージュ12巻 感想 名ゼリフ・名シーン連発の総決算巻」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ