肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

三重県北勢「関宿、七里の渡し&桑名城、願証寺、片樋マンボ」

 

三重県の北部地域を回ってみたところ、豊かな史跡等々をいろいろ見て回ることができ、旧街道地域の雰囲気にたくさん浸ることができてかんたんしました。

三重県の観光といえば神宮や志摩、あるいは伊賀や松阪、熊野等が先に思い浮かぶ(というかこれら地域は行ったことがある)のですけど、北勢地域も見過ごせない魅力がございますね。

 

 

関宿

亀山市の関宿。東海道五十三次、47番目の宿所。

かつては大海人皇子が関を閉ざした故事でも有名な町ですね。

www.kankomie.or.jp

 

 

いまも江戸時代風の町並みが保全されていることで知られています。

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朝早く行きすぎてお店が開いていない笑。

その分、気兼ねなく散策できたのはよかったです。

 

 

 

百五銀行さんのセンスが素晴らしいと思う。

こういう地銀は愛されて残っていくに違いない。

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高札場の復元もあります。

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江戸時代、というか時代劇でよく耳にするワードが多くて楽しいですね。

「働け」「喧嘩すんな」「博打すんな」「鉄砲持ち歩くな」「人身売買すんな」「キリシタン見かけたら申し出よ」等々。

 

それにしてもキリシタンを通報したら「銀500枚」って、けっこうな金額……。

銀1枚が43匁と聞きますので、21500匁相当。1匁が2000円以上の価値があるとすれば、少なくとも4000万円以上の報奨金が得られるということでしょうか?

かばいたい人情をお持ちの方でも人を売ってしまう金額がこれくらいと思えばいいのか、賞金稼ぎ的に魅力ある水準がこれくらいと思えばいいのか。

 

 

 

燕がいてかわいい。

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関宿、西側では東海道(近江)と大和に別れ、東側では東海道四日市方面)と伊勢に分かれているので、交通の要所としてずいぶん栄えたそうです。

「追分」という言葉、情緒豊かで好き。

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そういう交通の要所だった歴史からか、町のホスピタリティが高い印象を受けました。

駐車場に足湯があったり、公衆トイレにウォッシュレットがついていたり。

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休憩所もあちこちにあります。

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ちなみに、関宿には織田信孝さんの墓所もありますのでファンは要チェックですね。

全然知らなかったので驚きました。

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「理由はわからないが織田信孝さんの墓石がどれか分からなくなったので新しい墓石を用意した。位牌はちゃんと祀り続けているよ」という解説がなかなか味のある正直さでいいなあと思います。

 

 

 

 

七里の渡し&桑名城

続いて、同じく東海道五十三次42番目の宿所である桑名へ。

こちらは東海道唯一の海路(⇔名古屋の熱田)として、「渡し」があったことで知られています。

 

www.city.kuwana.lg.jp

 

 

七里の渡し跡。

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「渡し」と聞くと個人的には信長の野望20XXの中間管理職が思い浮かぶようになってしまいましたが、この言葉も情緒深くて好きです。

 

 

渡し跡のそばには、桑名城の「蟠龍櫓」を模したという水門管理施設があったり、

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有名な長良川河口堰が望めたりいたします。

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なんしか、川岸の風景ってのはいいもんですね。

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この日は桜がまだきれいに残っていました。

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芝生が整備されていて、小さい子どもを放牧していたり、犬の散歩をしている人がいたりと、地域の方々に親しまれている感じなのが観光客的にも見ていて嬉しいですね。

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さて、渡しの近くには桑名城址(九華公園)がございます。

歴史ファン的には山城が人気ですけど、水辺の城もいいものですよね。

 

城主本多忠勝さんの像。

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パッと見で本多忠勝さんだと分かる装備がいいですね。

城主時代ということで、壮年期っぽい表情なのが好き。

いまもご当地の方々にリスペクトされているようなのが何より。

 

 

 

城址は公園化していて、居心地がよい感じです。

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天守閣が失われているのは知っていたのですが、驚いたのは、代わりに公園の脇に柿安城が建っていること。

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柿安さんといえばデパ地下の牛めし弁当で著名ですが、桑名の企業だったんですね。

(書いていると牛めしを食べたくなってきました……)

 

 

 

 

願証寺

蓮淳さんや証恵さんや証意さん、何より織田信長さんとの激戦で知られる願証寺

現在の「ナガシマスパーランド」や「なばなの里」の隆盛と、「長島一向一揆」の距離感がすごすぎて、長島を訪れると一瞬感情が迷子になりそうです。

 

www.city.kuwana.lg.jp

 

 

 

現在の願証寺は後に再興されたものとのことですが、境内には一向一揆鎮魂の石碑がございます。

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一方、織田信長さんと戦った元の願証寺は、明治期の治水工事で、現在は川の底とのことで。

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そういう訳で、往時を偲ぶような遺構はほとんど見当たりませんが、長島の地をドライブしているといかにも輪中っぽい土地のフラットさ、複雑に張り巡らされた水の流れ、名古屋にも四日市にも近い交通の利便性……をひしひしと感じられます。

 

交通の要所だけに、現在の長島が賑わっている理由もよくわかりますし、当時も賑わっていたのでしょう。

そして、どっちを向いても川が見えるような土地で、当時はもっともっと湿地帯であったであろうことを踏まえれば、「こんな寺(城)攻めるの無理っす」を強く実感できますので、一度現地を訪れてみるのもいいと思いますよ。

 

 

 

 

片樋マンボ

北勢地域を旅していて、一番シビれた、「三重人スゲェ」と思わされたのが、こちらいなべ市の「片樋マンボ(間風)」です。

 

atago-kmk.net

 

 

江戸時代に何十年もかけて掘削された農業用水路なのですが……。

 

 

案内板に従って、

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まずは石碑・解説板とご対面。

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……書いてある内容が壮絶すぎて、現実感を得るのに時間がかかります。

「水が足りない(分かる)」

「トンネル掘って地下水流してこようぜ(お、おう)」

「準備だけで10年、落盤相次ぎ犠牲者多数(…………)」

「100年かけて出来あがったトンネルは全長1キロ(マジっすか)」

 

 

長島のあたりなんて困るくらい水がありそうなのに、少し上流のいなべに行くと水不足問題が出てくるんだなあ。

 

 

 

で、こちらのマンボ(地下水トンネル)、実際に覗くことができるのです。

 

階段を降りていくと……

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…………。

 

 

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いやいやいや、こわいこわいこわい。

 

「水がない時期は、100メートルくらいなら入っていけますよ!」と案内してくれているのですが、むりむりむり。

真っ暗やし。

かがまないと入れない狭さやし。

一人で中に入って、途中で誰かにあったり生き物にでくわしたり見てはいけないものを見つけたりしたら失神するわ。

 

めっちゃビビッて即回れ右しました。

普通に中に入って見物する人がいたらすげーよ。

掘った人はもうメチャクチャすげーよ。

 

 

近代建築とはまったく違う、プリミティブなスゴさと怖さを直感的に味わえるので、この片樋マンボは見た方がいいと思うし、この町の子孫はどれだけ誇りにしてもし過ぎということはないと思います。

 

 

 

 

 

三重県北部は経済的な意味で知名度が高い一方、(ナガシマリゾートを除いて)観光的には初めて接する地域だったので、新鮮な気持ちで楽しめました。

関西からも名古屋からもアクセスがいいので、機会があれば訪れてみてくださいまし。

 

現代の交通インフラが新たに賑わう地域を生み出す一方で、

往年の交通インフラで栄えた地域も引続き魅力を維持・向上していけますように。

 

 

 

おまけ

 

鈴鹿で、コスパで人気だといううなぎ屋さん「あおき」に行きました。

すごいボリュームで味もよく(ふっくら・薄味系)、大満足!

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「三重県四日市市 笹井屋のなが餅と藤堂高虎(信長の野望・大志)」

 

名古屋駅でも売っている三重県四日市市の名物「笹井屋のなが餅」を初めて食べてみたところ、あんこ控えめな大変好みの味でかんたんした上に、このお餅も藤堂高虎さんのエピソードを売りにしていて驚きました。

 

www.nagamochi.co.jp

 

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(画像は公式HPから引用)

 

 

 

 

画像の通り、のびのびしたお餅の中にうっすらと品のいいあんこが入っており、そのうえで両面を炙って仕上げた品ですね。

「ながもち」という名前ですがあまり長持ちはせず、早めに食べた方が良いそうです。

 

 

シンプルなお菓子だけに、材料や調理の質がダイレクトに味に出そうな佇まいでございますが、実際にいただいてみるとこれが大変おいしい。

 

お餅のべろべろのびのびした食感がまず楽しいですね。

きしめんといい、東海地方の方はこういう食べ味が好きなのかしら。

 

その上で、口を近づけると感じる炙ったお餅の香ばしさ、からの、程よい量のあんこが実にいいんです。

あんこが上質なのは一口で分かるのですけど、そのあんこがゴッテゴテに入っていなくて、うっすらちょうど良さげペースト分だけ入っているのがすごく好み。

 

あんこ、大好きなだけに、たっぷり食べたい日とうっすら食べたい日の両方があるじゃないですか。

たっぷり食べたい日は赤福や御座候を食べればよくて、

うっすら食べたい日はなが餅を食べればいいんだな、と。

 

加齢とともにうっすら食べたい日が増えてきているので、これから東海地域に来たときのお土産は、なが餅をリピートしてしまいそうです。

 

さいきん東京駅で人気だという「あんバタフィナンシェ」も、全体としては濃厚こってりながら、あんこ感は意外と控えめなのがウケているんだろうなと思いますし。

あんこ感をうっすらに留めるお菓子は、これからますます人気が出ていくんじゃないでしょうか。

 

こういう、あちこちで買いやすくて、なおかつ自分好みの味のお菓子に出会えると嬉しいものですね。

 

 

 

して、こちらのなが餅、お店のHPや同封のしおりによれば、藤堂高虎さんが流浪時代から御贔屓にしていたようなことが紹介されていまして。

お店の歴史も天文年間からということで、当時新興・流行の人気スイーツに若者藤堂高虎さんが食いついたというのはありそうな話であります。

 

藤堂高虎さんの出世餅エピソードといえば愛知県吉田宿の話だとばかり思っていたので、三重県にも同様の話が伝わっているんだなあと。

三重県滋賀県に近いですし、藤堂高虎さんと三重県伊賀上野や津で縁が深いので、同じような話があっても不思議じゃないですね。

あまり元祖論を掘り下げて某京都銘菓みたいな論争が起こっても困りますし、どっちもあり得るしどっちもおいしい、という感じで受け止めておきたいところです。

もともと東海道や伊勢街道はお餅をウリにしている町が多いので、藤堂高虎さんもあちこちのお餅屋を贔屓にしていたんでしょうきっと。

 

 

 

ご参考ですが、信長の野望・大志は各武将のエピソードが掘り下げられてイベント実装されたことで知られているところ、藤堂高虎さんは築城とか戦場とかの活躍ではなく、このお餅エピソードが採用されています。

織田家で浅井家を滅ぼし、数年経過したら羽柴秀長さんのもとに仕えてきますので、その後は適当な城の城主にしてあげましょう。

 

 

足軽時代の高虎さんと、妙に存在感のあるお餅屋さん。

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数年経過すると羽柴秀長さんのところに仕官してきはります。

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そして、高虎さんをどこかの城の城主に取り立てると、お餅イベント後半が発生。

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武将は肉体も頭脳も酷使する暮らしですので、甘くて腹持ちのいいお餅菓子はさぞ重宝されたことでありましょう。

現代の社会人も肉体や頭脳を日々酷使していますので、先人に倣っておいしいお餅でリフレッシュしてみるのも一興ですね。

 

 

なが餅がこれからもながく世の人々に愛され、販路も広がっていきますように。

 

 

 

 

「尊厳――その歴史と意味 感想」マイケル・ローゼンさん / 訳:内尾太一さん・峯陽一さん(岩波新書)

 

ワンピースの過去編等で破壊されがちな「尊厳」という言葉、最近耳にすることが増えたなあと思い、岩波新書の「尊厳」という本を読んでみたら思いのほかガチな哲学本で難しくて濃厚でしたが、書いてあることはいい内容でかんたんしました。

 

www.iwanami.co.jp

 

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「尊厳」は人権言説の中心にある哲学的な難問だ。概念分析の導入として西洋古典の歴史に分け入り、カント哲学やカトリック思想などの規範的な考察の中に、実際に尊厳が問われた独仏や米国の判決などの事実を招き入れる。なぜ捕虜を辱めてはいけないのか。なぜ死者を敬うのか。尊厳と義務をめぐる現代の啓蒙書が示す道とは。

 

著者はハーバード大学の先生でして、西洋の哲学、法制、カトリック等々における「尊厳」の歴史を紐解き、尊厳とは何か、なぜ尊厳を大事にしなくてはならないのか、を考察していくような本です。

とりわけカント哲学の考察・批評がメインを占めますので、なんとなくでもカントさんについて知っていないとしんどい気がしますね。カントさんの本なんて若いころにシャラっと読んだことしかないので正直苦戦しましたわ。

 

そういう訳で、そもそもカントさんや哲学について興味がない人は読み進めるのがけっこうしんどいような感じもするのですけど、ゆっくり読み進めていくと、論理の積み上げのしっかりっぷりが「さすが偉い先生やわ」とかんたんできたり、著者の主張にそこはかとなく人間性の良さが匂い出ていたりして、いい本を読んだなという満足感は充分に味わえました。

 

 

当著の結論部分を、自分用メモも兼ねて引用しておきます。

人間性の尊厳を敬う義務は――これについては私はカントに同意する――根本的には自己に向けられた義務である。これによって私が意味するのは、私たちは自分の義務を遵守することで利益を得られるということではなく、私たちの義務はきわめて深いところで私たちの一部になっているので、それがなければ、私たちは人として成り立たなくなってしまうということである。他社の人間性を敬わなければ、私たちは実際に自分のなかの人間性をも掘り崩してしまうのである。

 

 

この、われわれ一般人でも「せやな!」と思えるような良心的な結論を得るまでに、200ページにわたって

  • 尊厳って言葉、歴史的には人権的な言葉というより地位を示す言葉として始まったみたいね。
  • 一般的なカント哲学の解釈とかだと、人間だけが有する道徳性や自律の力を尊厳の源泉、すべての人間を敬うべき根拠にしているよね。
  • でも、人間の何らかの力を根拠にすると、そうした力を有さない人間には尊厳がないということなのだろうか。カトリックは神の存在(→人間は神の似姿)を尊厳の源泉にしているので、能力に左右されずに人間全般に尊厳を求めているよね。
  • 哲学とカトリック両方の影響を受けている法律の事例として、ドイツ連邦共和国基本法における「尊厳」を解釈してみよう。
  • 尊厳を大事にしなければならない理由は本当のところ何なんだろう。「胎児や、遺体にも敬意を払う理由」「犯罪者を拷問していい/いけない理由」「大勢の人を救うために一部の人を犠牲にしていい/いけない理由」……

 

等々の難しい論点を整然と積みあげていく著者の記述スタイル、本当に頭と性格よさげで好きです。

 

 

なお、尊厳死や堕胎、メッツラー家誘拐事件の顛末や、ハイジャック時の乗客の取扱い等々、様々な尊厳にかかわる具体事例が出てきますが、この本は特段の強い指針・方向性を示すものではありません。

あくまで哲学本で、ハウツー本ではないのでご留意ください。

 

その上で、なんとなくでもご自身やひと様の尊厳について考える機会になり、より丁重に扱う契機にできるのならば、読んだ甲斐のある本ということになるのではないでしょうか。

 

 

 

そろそろクライマックスを迎えそうなワンピースのワノ国編、作品世界の中でおでんさんの尊厳が回復し、それに伴って赤鞘九人男たちの尊厳もまた回復いたしますように。

 

ワンピース世界の一般人たちの尊厳感覚はしばしば崩されがちなので、もう少し暴力の脅威が減って民心が落ち着くといいですね。

この辺、狂四郎2030の世界に近いものを感じる。

 

 

 

まんがで読破「雇用・利子および貨幣の一般理論 感想」ケインズさん / 漫画:Team バンミカス、トーエ・シンメさん(イースト・プレス)

 

図書館で何気なく借りたケインズさん漫画が予想外のおもしろさで、大学生とか新社会人とかに読ませてあげたらええんちゃうかという感じにかんたんしました。

 

www.eastpress.co.jp

 

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第一次世界大戦で疲弊しきったイギリス経済は、失業率25%という大不況にあえいでいた。
しかしこの国家の危機にも、経済学の主流である「古典派経済学派」は古い価値観にとらわれ、「いずれ時が解決してくれる」という姿勢から離れない。
経済学者として、また財務官僚として一級の感覚を持っていたケインズは、この状況に疑問を持ち、そしてひとつの結論に達する。
「不況が経済理論どおりに解決しないのは、イレギュラーな事態だからではない。経済学そのものが、発展した社会から取り残されているからだ!」
ケインズは全精力を傾け、現代の社会に対応した経済理論を開発する。
それこそが、いまや経済学の教科書となった『雇用・利子および貨幣の一般理論』なのである。
経済学を「近代」から「現代」へ一気に進化させた革命的な一書を、マンガ化。


【もくじ】
プロローグ
1章 古典派経済学の問題点Ⅰ──失業の定義
2章 古典派経済学の問題点Ⅱ──供給重視から需要重視へ
3章 古典派経済学の問題点Ⅲ──実質賃金と名目賃金
4章 有効需要──雇用と物価について
5章 限界消費性向・乗数理論──収入、貯蓄、投資について
6章 流動性選好理論──利子率とお金について
7章 公共事業──不況時の財政出動と雇用について
8章 モラル・サイエンス
エピローグ

 

 

 

内容は原著を直訳的に漫画化した訳ではなく、評伝というか、ケインズさんの人生を紹介しながら彼の経済理論を紹介していく、という組み立てになっています。

 

 

全編を通じてケインズさんの妻であるリディア・ロポコワさんがナビゲートしてくれるのですが、彼女の漫画的なデフォルメがなされたコケティッシュさが大変魅力的でして、夫婦もの漫画としてもなにげに完成度が高いのが見過ごせません。

 

この「まんがで読破」シリーズ、何冊かを読んだことがありますし、当著の漫画化を手掛けた「Team バンミカス」「トーエ・シンメさん」の作画も見たことがある気がするのですけど、特にこの本で描かれているリディアさんや往年のロンドンの風景、車やパブ「シャーロック・ホームズ」等々の作画は筆が乗っていてイイと思う。

ベタ、ページ内の黒い部分の魅せ方がおしゃれなんですよね。

 

 

 

メインの内容はよく知られているケインズ経済学そのもので、私も専門ではないので数式等詳しい中身までは理解していませんけど、つい最近まで各国がやっていた金融緩和政策(含むアベノミクス)の理論的背景がよく分かるので、経済学の入門本としてもいいんじゃないでしょうか。

 

  • 労働者の賃金を下げても雇用は増えない
  • 物価が下がったら景気は良くならない
  • 物価が上がった方が、消費者の実感とは逆に、景気は良くなる
  • 皆が貯蓄すると景気が悪化し、皆が散財しまくると景気が良くなる
  • 利子率を下げた方が投資が増えて景気やGDPが良くなる
  • 利子率を下げるためには国が金融緩和や公共投資をやりまくると良い

 

などなど。

 

 

「労働者は実質賃金と物価の関係性など考えてはいない!!

 彼らが見ているのは給料明細の額面! 名目賃金だ!!」

 

「もし男が女の買い物にイライラしなくなったとき

 この世のあらゆる苦難を耐え忍ぶことができるんだ!」

 

「不況を吹き飛ばすのはぼくらひとりひとりの行動だ!

 神様の出る幕はないね!」

 

「公共事業はムダであってもいいんだ」

「ピラミッド建設なんてどうだ?

 あれほどムダな建造物ってちょっとないと思うぞ」

 

 

といった威勢のいい(そしてやや危ない)名言も多くて読んでいて楽しいっす。

 

 

 

全体を通じて、ケインズさん当時の「世界恐慌・失業問題」「国際間の貿易競争の激化が世界大戦を生む」に立ち向かう姿勢を縦軸にしていますし、ケインズさん風の経済合理性を前面に出したモラルの良さが輝いていますので、良心や徳性を感じることの多い、経済学部生や若手社会人のモチベーションを高められそうな点も効能だと思います。

 

 

ただ、その上で私のさいきんの雑感をひとつ添えるとすると、こうしたあふれる知性を前提にした良識やモラルが世の中に広がっていくと、知性に乏しい(と見做された)人が置いていかれたり不満を持ったりする世の中になるんじゃないかなあという肌感覚もありますね。

なんとなくこの10年ほどずっと、反知性というか脱知性というか、頭がいいとされる人を冷やかに見つめる潮流が世界的に横たわっている気がいたしますし。

 

ケインズさん当時から、経済の課題が失業問題から、人口減を補う生産性の確保、そして高生産な人と低生産な人とのギャップ克服にシフトしていっていますので、求められる対策も徐々にマクロ的な政策から個々の事業政策、あるいは福祉政策にシフトしていくのでしょうから、ケインズさん以降の経済学をより学際的に補整・発展させた価値観や論説がそのうち出てきて、広まったり実践されたりしていくんでしょうね。

私の頭ではこれからどんな世の中になっていくのか正直分かりませんが、なんしか楽しみなことでありますし、置いていかれる人が極力少なかったらいいなと思います。

 

 

 

「経済」の語源通り、経済学の発展による恩恵が一部の範囲に留まることなく、広く世の中の苦しみを和らげ救いをもたらすものでありますように。

 

ケインズさんもアローさんも、あるいはケインズさん以前のアダム・スミスさんとかも、理論に違いはあれども、本を読んでいると共通して善意とか倫理観とかを強く感じられるのがいいですね。

 

 

 

 

大相撲2022春場所感想「琴ノ若関の大成長が嬉しい驚き」

 

2022年久しぶりの大阪春場所、若隆景関と高安関の優勝争いにかんたんしつつ、琴ノ若関の素晴らしい成長っぷりに目を見張りました。

 

www.sumo.or.jp

 

www3.nhk.or.jp

 

 

今場所幕内で勝ち越したのは次の方々です。

 

12勝 若隆景(優勝・技能賞)、高安(敢闘賞)

11勝 御嶽海、琴ノ若(敢闘賞)

10勝 霧馬山

  9勝 正代、北勝富士、翔猿、若元春、琴恵光、

   琴勝峰、栃ノ心、錦木

  8勝 貴景勝、阿炎、豊昇龍、大栄翔、遠藤、

   志摩ノ海、照強、一山本

 

 

若隆景関の活躍は目覚ましいものがありましたね。

あの斜め下からのおっつけは本当に相撲勘の冴えを感じますし、それを支える強靭な足腰もたまらない。鍛錬とセンスの高い次元での融合を感じます。

強い余震に先日襲われた福島県民の喜びもひとしおではないでしょうか。

 

兄の若元春関、モンゴル新世代の霧馬山関と豊昇龍関、そして宇良関や石浦関等々、さいきんは中軽量級のアスリート系力士が増えてきて、彼らのハイレベルな攻防をたくさん見れるのはなんと幸せなことでしょう。

その中で若隆景関が一歩先んじたかたちになりましたけど、なんとなく若隆景関の独走を許さなさそうなライバルが多いだけに、これからも楽しみですね。

 

 

高安関は……またも…………。

ファンの心情としては、一度は彼に優勝してもらいたいんですけど。

兄弟子同様、こんなに初優勝を心待ちにされている方もそういないんじゃないですか。

来場所、更に上がった番付で、堂々と勝利数を積み上げてほしいものです。

 

 

そして、琴の若関ですよ。

先場所から連続での敢闘賞、優勝争いの一角……という結果もめでたいのですけど、それ以上に肉体・取り口の向上っぷりが感動モノでしたね。

もともと、恵まれたポテンシャルは誰もが認めるところでしたけど、やや小器用になりがちで伸びきらない姿にやきもきさせられていたじゃないですか。ケガもしましたし。

それが、今場所になっていよいよ足腰が座って、相手の芯をつかむような速攻性の当たりを繰り出すようになって、強さ・速さ・柔らかさを兼ね備えた堂々たる姿になったものだと。きたきたきたと。

(と思ってたら中盤、貴景勝関戦等でいつもの小器用な取り口が顔を出してたのでマジかとなりましたが、後半ふたたび良くなっていたので終わりよければと受け止めましょう!)

今場所のいい時の相撲は、個人的には朝乃山関以来の大器を感じました。

ぜひいい時の相撲をモノにして型にしていただきたいと願います。

 

 

ちゃっかり9勝している正代関に微笑みを禁じられないのですけど、やはり照ノ富士関がいないと土俵が締まらない感もあって、かすかなもやもや感も残りますね。

 

 

8勝勢の中では、志摩ノ海関の守備力が心に残りました。

彼も柔らかくてタフですよね。

タイプは違いますけど、北勝富士関のように、粘り強い取り口でファンに愛される存在になってきていると思います。

スピーディでセンスの光る若隆景関のおっつけも格好いいのですが、志摩ノ海関の地道で息の長いおっつけも私は好き。

 

 

それにしても毎場所毎場所、新たなヒーロー、新たな魅力が出てきて楽しいですね。

絶対王者のいない時代の良さも間違いなく出ていると思います。

来場所も新鮮な驚きがファンのもとにやってきますように。

 

 

 

十両では、推している武将山関が6勝9敗とまたも負け越し。

あと一歩足腰が嚙み合えば……と悔しく思いますが、復調・再起の兆しも感じるので引き続き注目していきたいです。

 

 

 

 

「三重のトリセツ 感想 昭文社の本気と愛と熱量を感じる」昭文社「トリセツ」シリーズ

 

三重県がらみの友人から昭文社の「三重のトリセツ」という本を贈呈いただきました。

てっきり「ことりっぷ」的なライトで眺めていると楽しい系の、あるある地元ネタが並んだ内容の本だと思って読み進めてみたら、中身は地図・地形・交通・歴史・産業への濃厚な愛と知識が詰まったガチ本でかんたんしました。

 

都道府県の「トリセツ」が発刊済みということですので、皆さまお住い・お勤め・お好きな都道府県版のトリセツを読んでみるといかがでしょう。

地図専門出版社の本気が感じられて楽しいですよ。

 

ec.shop.mapple.co.jp

 

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よく見たら、オフィシャルHP掲載の概要紹介文章の時点で特濃でした笑。

 

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から三重県を分析!

【本書の特長】
三重の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。三重の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報満載!

【見どころ】
■Part.1 地図で読み解く三重の大地
県民もよくわからない謎 三重県は結局どの地方か?/
三重県を横切る中央構造線 南北で大きく異なる地質/
琵琶湖は伊賀にあった! 古代の地殻変動の痕跡を探る/
赤目四十八滝の独特な地形と生きた化石オオサンショウウオ/
鳥瞰図で見る 昭和初期の赤目四十八滝と香落渓/
2万年前は山だった? 志摩半島誕生の秘密/
若き日の大正天皇も泳いだ! 日本初の海水浴場二見浦/
奥伊勢の香肌峡の不思議 なぜ超硬水が湧き出す?/
飛び地と名勝瀞八丁が複雑すぎる3県境をつくった/
伊勢湾台風のせいで飛び地に? 愛知県に限りなく近い木曽岬町/
世界遺産鬼ヶ城を生んだ巨大な熊野カルデラ火山/
尾鷲の雨量が尋常でないのは海流と大台ヶ原のせい?…
などなど三重のダイナミックな自然のポイントを解説。

■Part.2 三重を駆ける充実の交通網
伊勢湾を渡って川を越え鈴鹿峠へと向かう東海道/
三重と浜松、大阪がつながる!? 太平洋新国土軸構想とは/
御師の活躍で大いに賑わった内宮と外宮を結ぶ参宮街道/
鳥瞰図で見る 吉田初三郎が描いた約90年前の参宮街道/
初瀬街道の「あお」越えと便利な参詣システム伊勢講/
街道に餅が並んだ理由は? 吉野へと続く鯖&塩街道/
参拝客を運んだ神都線の路面電車 バス路線網で車両が復活!?/
伊勢湾、熊野灘の海運と海上の百貨店赤須賀船/
峠が多い熊野古道伊勢路 戦前にはロープウェイがあった/
つながった南紀への路線 紀勢本線の難工事とは?/
名張と松阪を結ぶはずが……秘境駅だらけな名松線の謎/
東大卒の剛腕社長による英断!? 近鉄を発展させた軌間拡幅工事/
社名がコロコロ変わる養老鉄道 いま何代目? どこが運営?/
貨物輸送の歴史がわかる三岐線貨物鉄道博物館/
片道135㎞の路線もある! バス中心の三重の交通網…
などなど三重ならではの鉄道事情を網羅。

■Part.3 三重の歴史を深読み!
日本最大の恐竜が鳥羽にいた? ミエゾウから探る古代の三重/
あちこち巡行して決めた! 神宮が伊勢市にあるワケ/
壬申の乱で敗れた大友皇子は伊賀を経て東国で生きのびた?/
50年かけて少しずつ解明 明和町にあった幻の宮・斎宮/
平家のルーツは伊勢にあり! でも、ほんとうは伊賀だった?/
天皇の側近から没落するも明治維新で復活した北畠氏/
伊賀に忍者が生まれたのは修験道の行場が多かったから?/
徳川家康が駆け抜けた? 謎多き伊賀越えルートを歩く/
海賊大名と呼ばれた九鬼嘉隆 海上の城と鉄甲船の秘密/
築城の名人藤堂高虎は7回も主君を変えていた!/
クジで藩の命運が決まった? 幕末・維新の桑名藩の顛末/
津から四日市、そして津へ コロコロ変わった県庁所在地/
鳥瞰図で見る 吉田初三郎が描いた約90年前の津…
などなど、激動の三重の歴史に興味を惹きつける。

 

各内容が2~4ページの分量で、かなりマニアックで読み応えのある文章、美麗な写真・史料とともに紹介いただけます。

 

 

この本の特徴や昭文社出版であることを把握せずに読み開きましたところ、

冒頭に四日市コンビナート夜景や英虞湾、御在所ロープウェイ等々のグラビア、

続いて三重県29市町のマップ、鉄道網、道路網……

までは普通の都道府県ガイドやなあという印象だったのですが。

 

その次のページが妙にリアルな「三重県の凹凸地図」だったので「ん? なんか……様子が……」となり。

 

その数ページ後には「三重県を横切る中央構造線の存在」、「月出の中央構造線露頭地の断層では色も質も明らかに違う地層が接している様子を観察できておすすめ」みたいなことを紹介し始めてくれたので、「あっ……この本、あるあるネタとか観光ガイドとかとは違うお客さんを相手にしてるやつや」と問答無用で理解させてくださいました。

 

 

その後の2章交通網パートでも、海上のコンビニとして活躍していた赤須賀船」「紀勢本線の全通がいかに難工事・難事業だったか」「伊勢湾台風後の近鉄による軌間拡幅工事の英断」

3章歴史パートでも、大友皇子が伊賀越えして生き延びた説」「徳川家康の伊賀越えルート(定説ベース)を歩いてみた」「門前町の宇治と山田は昔不仲で、流血の抗争も起こった」、

4章産業パートでも、「今はもう閉山してしまったけど、伊勢国は水銀や銅の採掘でも名を馳せていたんや……東大寺大仏のメッキも、室町・戦国時代に隆盛を誇った伊勢白粉も、原料は伊勢の水銀なんやで」

 

等々、観光客というよりは地学ファンや鉄道ファンや郷土史家を呼び込もうとしているような内容の記事が目立ち、詳細な地図・地形図でそれらの場所やルートを補足いただけますので、130ページ程度の小冊子ながら読み終わる頃にはすんごい満足感が得られますし、謎の三重愛がむらむら湧いてきましたのでとりあえず三重に行ってこようと思います。

 

巻末の「三重が舞台の名作小説」紹介も個人的にはうれしい。

 

 

 

「トリセツ」というよりは「布教書」的な印象がなくもありませんが、このシリーズは名著だと思いますので見かけたら好きな都道府県をチェックしてみてくださいませ。

 

昭文社さん、野心的な面白い本を出したものですね。

この濃密な文章を執筆したのは吉田由美子さん、上田登さんという方だそうですが、すごいなあと思います。

 

 

こうした良著をきっかけに、各地域の地形や歴史や文化を愛する方が増えていきますように。

トリセツシリーズも版と改訂を重ねていただけますように。

 

「ウィザードリィ#8 久々攻略の感想 アンパニ・ティーラング、そしてベラの未来」日本語版バニラ

 

ウィザードリィ8を久々に攻略いたしまして、相変わらずのバランス調整の上手さを存分に楽しむことができてかんたんしました。

シリーズ最終作にして最マイナー作ではありますが、攻略本等がなくても充分にクリア可能でプレイするたびに何らかの発見があるというスルメな取っつきやすさがある作品ですので、いずれ著作権関係の整理がついたら日本語版の再販がなされるといいなと思っています。

 

 

いまや貴重になってしまっている日本語版。

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20年近く前、たまたま立ち寄った名古屋駅ソフマップで発掘したことを覚えています。当時は1万円くらいで買えたものでした。

 

公式パッチを当てただけのバニラ状態(v1.2J)でプレイします。

PCゲームだけに、かつては様々な非公式パッチが有志の手でつくられ、クリア後のレアアイテム収集ができたり強くてニューゲームができたり楽しかったですね。

 

 

 

以下、重要なネタバレも含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストーリーの導入部。

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ウィザードリィ#6、#7の出来事をかんたんにおさらいしてくれつつ、

主人公パーティはムーク族の護衛にやとわれた冒険者で、よく分からないまま宇宙旅行をしていたら宇宙船がラスボスのダークサヴァントさんに狙撃され、惑星ドミナスに墜落してしまうという流れ。ちなみに惑星ドミナスは宇宙の謎の根幹が眠っています。

 

それはそうと、最後の画面にあります通り、#8はパーティの各キャラが正確に応じたセリフを声優(英語)付きでペラペラしゃべってくれるのが魅力です。

ご覧の通り、品格や正義感に乏しいセリフが多いのが好き。

 

 

 

キャラセリフの事例集。

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たいていの場合、重要人物の重要トークをちゃんと聞いていなかったり、ラスボスを倒しても気の抜けたセリフを吐いていたりと、マイペースっぷりが際立っています。

主人公パーティは最終的に宇宙のすべてを司る神のごとき存在になるのですが、こんなに品格に乏しいLordに宇宙を任せて大丈夫なんすかね。

 

 

 

今回プレイしたパーティはこんな感じ。

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慣れている人が見たらピンとくると思いますが、ファイター、ファイター、ローグ、レンジャー、バード、ビショップ、ゲストキャラ2人という、明確に強くて楽なパーティです。

久しぶりにストーリーを楽しむのが主目的なので、攻略の歯ごたえはなくてもいいやという感じ。

 

初心者の方はこの構成がおすすめです。

ファイターはバーサク攻撃の与ダメージが段違いに強い。

ローグも与ダメージが強い上に鍵外し要員。

レンジャーは常時探索が超便利で、出来ることも多い。

バードは中盤にて全体回復や全体魔法防御アップ等の便利魔法が使い放題。

ビショップはすべての魔法を使いこなせます。育て方にコツが要りますが。

 

wiz8は敵の魔法防御力が高いので、攻撃魔法は基本的に役に立ちません。

魔法はどちらかというと回復、補助(特に常駐魔法と、戦闘中のエレメンタルシールド・ソウルシールド)、移動(ポータル)での使用がメインですので、メイジの人数を増やしても殲滅力が増す訳ではない点にご留意ください。

 

改造して敵の魔法防御力を下げれば話は変わりますが。

 

 

 

 

#8のマップはオープンワールド形態で、立方体フレームダンジョン形態ではなくなっています。往年風の隠しダンジョンもあったりはしますが。

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BGMはおとなしめですけど、メインの街「アーニカ(アルニカ)」のBGMは独特の雰囲気があって好きです。

 

 

 

 

登場人物も3Dグラフィックです。

 

参考にwiz8三大美人の画像を貼っておきますね。

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初見だと「えぇ……」となるかもしれませんが、一度プレイすると「デューゥティ! パゥワー! ビクトリィーー!!」にハマること間違いなしであります。

 

 

 

 

軽く攻略チップスを。

 

ロッコは、スタート地点が上ではなく左なので注意。

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エクスカリバーは、ネッシーさんの向こうにある宝箱(デイビージョーンズロッカー。ドミナスにもこういう言い回しがあるんですね)に時々入っています。

#8は、マップに入った時点で宝箱の中身が確定しますので、宝箱の前でリセット&ロードをしても意味がありません。

ネッシーさんエリアに入る前にセーブして、エクスカリバーが欲しければ何度でもネッシーさんを倒しましょう。

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ネッシーさんは強敵です。

魔法防御を充分に高めた上で、モンクや鈍器で気絶させると楽になると思います。

 

 

 

ネッシーさんの向こうにいる海賊の亡霊は、まれにライトソードやライトシールドを落としますが、粘るには効率がよくありません。

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彼らは倒した瞬間にドロップアイテムが決まりますので、戦闘前にリセット&ロードは可能ですけどね。何か手に入ったらラッキーくらいのつもりでいいと思います。

 

 

 

 

ライトソードは、ベイジン島の宝箱に稀に入っています。

マップ初進入時に宝箱の中身が決まるので、うっかりスワンプ湿原側から入らないように注意。

 

ベイジン島に入ったら、通路の右っかわに潜って。

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この岩あたりを目印にそろそろと陸地に近づき。

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ダッシュで目的の小屋内のリンジンに近づけば、戦闘が1回で済みます。

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ライトソードが出るまで頑張ってみてください。

苦労に見合う威力はございます。

 

 

 

 

ライトシールドは、ジャンエッテさんがまれに落とします。

これもリセット&ロード可能ですので、落とすまでジャンエッテさんの最期をタイムリープして見続けましょう。

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ジャンエッテさん、#7ではイケイケのハイレグ姉ちゃんだったのに、#8では哀れなお姿に。それにしてもヘラゾイドさんたち、言うほどアストラルドミナを積極的に守っていなかったような気もしますけどね。

#8の正史では、#7の動乱でケ・リ女王も亡くなっちゃったのかなあ。

 

 

 

 

♯8では、他にもかつてのキャラクターが多数登場します。

 

#6のラスト、♯7のオープニングで衝撃の登場と行動をした挙句、音沙汰なしだったアレスエイデスさん。

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♯8ではラストに趣深い活躍をされますのでお楽しみに。

 

 

 

 

衝撃だったのは、#7のラットキン族「ラズーカ一味」がドミナスに移り住んできて跋扈していること。

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ブラインドメイスさんの名前に反応してくれるのが嬉しい。

 

それにしても、この生命力のたくましさにはかんたんしてしまいますね。

メタ的に#7の方が#8よりも圧倒的に敵が強いことも含め、アストラルドミナが近くにあったせいでガーディアの生き物はエネルギーが過剰に溢れているのではないか。

 

 

 

ラズーカ一味と言えば、ドン・バルローンももちろん登場いたします。

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ネズミ男なのに伊達男という、独自の格好良さが大好きです。

怖いけど。

 

なお、襲い掛かって倒すことができれば、#7で最凶を誇ったあの武器が手に入ります。

ブラインドメイスさん、#8正史ではバルローンさんに始末されちゃったんということなんですかね……。

 

 

 

バルローンさん、本当にダークサヴァントさんを出し抜いてアストラルドミナを盗んでくるところがスゴい。

#7であれだけ苦労して手に入れた宝珠を、#8では彼から買って手に入れるというのがたまらんっすわ。

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どうでもいい話ですが、#8のダークサヴァントさんはキン肉マンのオニキスマンとデザインの方向性が似ている気がしますね。

 

 

 

 

#7からの続投と言えば、アンパニ族とティーラング族。

 

相変わらずいがみ合って戦争していますが、イベントのこなし方によっては両者を和平させてダークサヴァント戦に挑むという宇宙史に残りそうな展開も実現可能です。

 

はじめはこんなんですけどね。

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#7の時ほど、アンパニも強固な結束を誇っている訳ではなさそうですし。

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♯7でのヤモ将軍の戦死が、アンパニ社会に与えた影響は大きかったようです。

 

 

 

一方、ヤモ将軍の後を継いだヤミールさんは理性のある方でして。

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ティーラングの新首領であるザントさんも、過去から学ぶことのできる魅力的な人物。

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#7から続投のロダンさん、そしてドラジックさん(=シュリティスさんなのだろうか?)の活躍と説得により、遂に両者は手を結ぶことに相成るのです。

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#7から続く両者の対立が克服され、#8エンディング後も発展していくであろうことを見届けると、ゲームプレイ満足度の高まりもひとしおですね。

 

ちなみに、ラストダンジョンにアンパニ・ティーラングが駆けつけてくれるようなことをおっしゃっていますが、実際に来てくれたことは一度もありません。

ボツイベントなのだろうか。

逆に、この和平イベントを起こさないと、ラストダンジョンにアンパニ・ティーラングの骸が転がっていて悲しい気持ちになったりします。

 

 

 

 

最後に、#6から再登場のベラさん。wizの登場人物の中で一番好き。

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情報量が多過ぎて、ベラさんが優遇されすぎていて、頭がヒートしますね。

 

#7で表に出てこないと思っていたら、裏でヴィ・ドミナさんやヤモ将軍に接触していたことが触れられていたり。

 

「bane king」について尋ねたら「いつの日か戻って彼らに会うだろう。」、

rebecca」について尋ねたら「姉上……」、これには感涙でした。

 

すべてを知る者マートンさんからは「他のLordの息子」……。

これはbane king(Dracula)の庇護下にあったことを指しているのか、あるいは実の父親である悪魔(Daemon Lord?)のことを指しているのか。

 

ラストバトルでは味方になってくれ、ダークサヴァントさんが呼び出した部下のアンドロイド兵たちに瞬殺を連発してくれるのも頼もしい。

選択肢によってはベラさんがラスボスになってしまいますけど。

 

 

あれだけ苦しめられたコズミックフォージのことを「唯一の希望」「過去の出来事をなかったことにすることもできる」、そして「いつの日か戻って彼らに会うだろう」、これらのセリフを踏まえれば、ベラさんはフォージの力で#6の面々に(幸福な形で)再会すること、#6の面々の魂を救済することが願いで、ここまでの旅を続けてきたのかもしれません。

 

外見は完全に悪魔ではあるのですが(#8のデザインはサンショウウオっぽいですし)、#6以降、言葉の端々に現れる彼の魂の善性が魅力的すぎて本当好きです。

 

#8のエンディングで、詳述はされていませんが、おそらくベラさんの願いは叶ったであろうと思われますので、プレイしてきてよかったなあという気持ちになります。

 

 

というか、宇宙全体を司るような大ごとになっている#8の舞台に、かつて殴り込んでCosmic Lordたちをシバいてコズミックフォージを強奪していったベインキングさんとゾーフィタスさん、豪傑過ぎやしませんか。

やってることの益荒男っぷりが、ダークサヴァントさんよりもよっぽどスケールが大きいような……笑

 

 

 

 

 

以上、満足度の極めて高いウィザードリィ#8のご紹介でした。

 

いつの日かコズミックフォージの力で#6~#8の日本語版がプレイしやすい環境で再販とかリメイクとかされて尽きることのないこの魅力が広く知れ渡りますように。

 

 

 

「ウィザードリィ#7 久々攻略の感想および考察(種族、ゴローの間等)」PS ガーディアの宝珠版 - 肝胆ブログ