肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

歴史(畿内戦国史以外)

「東日本の統合と織豊政権 感想」竹井英文さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑦)

東日本の戦国時代後半通史を記した当著が、最新の研究反映、視点の広さ、読みやすさ等を兼ね備えたハイレベルな一冊でかんたんしました。 www.yoshikawa-k.co.jp 16世紀後半、関東では武田・上杉・北条らの領土紛争が激化、奥羽では伊達の勢力が急拡大する…

麒麟がくる「最終話 本能寺の変 感想 世を平らかにする覚悟に果てなし」

麒麟がくる、遂に最終回が放映されましたね。 全44話を通して紡がれてきた明智光秀さんの軌跡、織田信長さんとの主従愛を超えた絆と相剋、光秀さんを見守る人々、ピュアに演出クオリティの高い本能寺襲撃描写、過ぎ去る室町幕府と新たな時代の行方等々、まこ…

「甲陽軍鑑(ちくま学芸文庫版) 感想」佐藤正英さん

武田信玄さん・勝頼さん時代の甲州武士の様子を描いたという「甲陽軍鑑」、これまで興味のある部分しか読んだことがなかったので、ちくま学芸文庫から出ている抜粋版を買ってみました。 甲陽軍鑑は、書かれていることが史実だ史実じゃないんだ一部は信用して…

「毛利領国の拡大と尼子・大友氏 感想」池亨さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑥)

列島の戦国史シリーズ6巻、毛利家の成長を中心に西日本戦国史の動向を記した書籍が、日ごろ戦国時代ものであまり目にしない視点が多くてかんたんしました。 www.yoshikawa-k.co.jp 16世紀後半、西日本では毛利氏、尼子や大友などの地域勢力が領土争いを繰…

「小野篁 その生涯と伝説 感想」繁田信一さん(教育評論社)

小野篁さんの評伝が出版されていてかんたんしました。 小野篁さんはお上に立てついてリアル島流しにあったのに有能なので復帰して出世したという公務員やサラリーマンの神様のような方なので、存在や事績が世間によく知られ、また、これを機に研究が蓄積して…

「日本のルネッサンス人 感想 突然の三好長慶ピックアップに驚く」花田清輝さん(朝日選書)

昭和の名文家花田清輝さんの歴史エッセイを読んでいたら、三好長慶さんの連歌が異常に高く評価されていてかんたんしました。 その評価視点が個人的に解釈一致なのでとても嬉しいです。 publications.asahi.com 花田清輝さんは卓越した文章力で有名な方で、教…

小説「逆軍の旗 感想 明智光秀/戸沢藩暗闘/南部藩仇討ち/上杉鷹山」藤沢周平さん(文春文庫)

大河ドラマ「麒麟がくる」をきっかけに藤沢周平さんの明智光秀短編「逆軍の旗」、および同収録の「上意改まる」「二人の失踪人」「幻にあらず」を読んでみたところ、いずれも場景がひたひたと目に浮かぶような筆致に胸を打たれかんたんしました。 books.buns…

「海帝 7巻 感想 仏教とのフュージョンが素晴らしい」星野之宣先生(ビッグコミックス)

鄭和さんの活躍を漫画化した「海帝」7巻、舞台となる大海原・大自然と、船団への来訪客「ゲンドゥン(ダライラマ1世)」さんとのフュージョンっぷりが素晴らしくてかんたんしました。 仏教思想的なものを表現した漫画としては、近年随一ではないでしょうか。…

「大内氏の興亡と西日本社会 感想」長谷川博史さん(吉川弘文館 列島の戦国史③)

吉川弘文館の列島の戦国史③「大内氏の興亡と西日本社会」が、タイトル通り西日本社会の独自性と大内氏の存在感をビビッドに描いていてかんたんしました。 www.yoshikawa-k.co.jp 16世紀前半、東アジア海域と京都を結ぶ山口を基盤に富を築き、列島に多大な…

「享徳の乱と戦国時代 感想」久保健一郎さん(吉川弘文館 列島の戦国史①)

吉川弘文館「列島の戦国史」シリーズの第一弾、「享徳の乱と戦国時代」が期待にそぐわぬ面白さ・完成度の高さでかんたんしました。 このシリーズ、とてもいいですね。 www.yoshikawa-k.co.jp 15世紀後半、上杉方と古河公方(こがくぼう)方が抗争した享徳(き…

「中世の罪と罰 感想」網野善彦/石井進/笠松宏至/勝俣鎭夫(講談社学術文庫)

復刊された「中世の罪と罰」で語られた仮説が、非常に切れ味鋭い一方、現代の視点で読むとかなりスレッスレなことを闊達に提唱していたりしてドキドキとかんたんいたしました。 bookclub.kodansha.co.jp 「やーい、お前の母ちゃん、でべそ!」 誰もが耳にし…

篠原古戦場「斎藤実盛の首を抱え天を仰ぐ木曽義仲像」石川県加賀市

私用で北陸に遠征(大成功)していたところ、念願の「斎藤実盛さんの首を抱え天を仰ぐ木曽義仲さんの像」を拝見することができてかんたんしました。 www.hot-ishikawa.jp 石川県の南端、小松空港や加賀温泉がある辺りに位置する篠原古戦場。 木曽義仲さんの…

「海辺を行き交うお触れ書き 浦触の語る徳川情報網 感想」水本邦彦さん(吉川弘文館)

臨海部を舞台にした江戸時代の通信網に関する研究書が、歴史学の地に足の着いた楽しさをふんだんに味わわせてくれる良書でかんたんいたしました。 モチベーションが上がると思いますので、歴史学に限らず何らかの学問をしている方におすすめですよ。 http:/…

「共和制ローマの内乱とイタリア統合 退役兵植民への地方都市の対応 感想」砂田徹さん(北海道大学出版会)

表題の本に出会い、共和制ローマ末期におけるスッラさんの活躍、そしてイタリア半島全体に対する影響等について、近年の学説に触れることができてかんたんしました。 www.let.hokudai.ac.jp 本屋さんでたまたま見かけ、「Sulla's Veteran Settlement and It…

「小泉八雲集 感想」訳:上田和夫さん(新潮文庫)

小泉八雲さん(ラフカディオ・ハーンさん)の作品集を通して読んでみたところ、よく知られた日本の昔話があらためて面白かったり、小泉八雲さんの観察眼が素敵だったり、上田和夫さんの日本語訳が美しかったりと、非常に満足度が高くてかんたんしました。 ww…

鍋島直茂小説「武士道 感想」近衛龍春さん(実業之日本社)

鍋島直茂さんの生涯を記した小説「武士道」の鍋島直茂像が、ストイック極まりない理想のサラリーマンのような佇まいでかんたんしました。 www.j-n.co.jp 鍋島直茂さんの幼年時代から晩年に至るまで、みっちりと描写してくださっている歴史小説になります。 …

「神仏と中世人 宗教をめぐるホンネとタテマエ 感想」衣川仁さん(吉川弘文館)

平安時代後期~鎌倉時代頃の記録をもとに、中世の人々が神仏を実際のところどれほど信仰していたか、どのように接していたかを探る本が面白くてかんたんしました。 こういう、特定の人物や事件を掘り下げるのではなく、その時代全体の雰囲気や相場観に着目し…

小説「大黒屋光太夫 感想 置かれた状況で望みは変わる」吉村昭さん(新潮文庫)

吉村昭さんの小説「大黒屋光太夫」が、壮大な漂流小説の中で変遷していく人の望みのありようをビビッドに表現していてかんたんしました。 www.shinchosha.co.jp www.shinchosha.co.jp 大黒屋光太夫さん。 有名人なのでご存知の方も多いと思いますが、 江戸時…

「椿井文書――日本最大級の偽文書 感想」馬部隆弘さん(中公新書)

中世畿内史の研究で有名な馬部隆弘さんの新書が大手書店の目立つコーナーで平積みになっていてかんたんしました。 内容も大変面白いもので、こういう本が評価され売れるというのは世の読書家さんたちの目利きに安心感を抱いてしまいますね。 www.chuko.co.jp…

「中国古典名言辞典【新装版】 感想と好きな言葉10選」諸橋轍次さん(講談社)

諸橋轍次さんの「中国古典名言辞典」を読んでみたところ、知の巨大な集積っぷりに圧倒されてかんたんしました。 いい本を手に入れたものです。 bookclub.kodansha.co.jp 諸橋轍次さんは新潟出身の、漢学の大家ですね。 こちらの辞典は諸橋轍次さんの目で、広…

「漂巽紀畧(ひょうそんきりゃく/全現代語訳) 感想」述:ジョン万次郎/記:河田小龍/訳:谷村鯛夢/監修:北村淳二(講談社学術文庫)

ジョン万次郎さんの漂流記「漂巽紀畧」を初めて読んだのですが、思いの外な漂流モノアドベンチャーとしてのレベルの高さにかんたんしました。 これ、高校日本史の副読本とかで紹介してもいいんじゃないなと思いましたよ。 bookclub.kodansha.co.jp 江戸時代…

芦名家小説「会津執権の栄誉 感想」佐藤巖太郎さん(文春文庫)

金上盛備(かながみもりはる)さんを主軸に、落日の芦名家(蘆名家)を描いた小説「会津執権の栄誉」が地に足の着いた読み応えに富んでいてかんたんしました。 books.bunshun.jp 芦名家は会津に根を張る有力大名でしたが、嫡男の夭折等がありまして、後継者…

「人類の歴史を作った船の本 感想」ヒサ クニヒコさん(子どもの未来社)

子どもの絵本コーナーにあった「船の切り口から説明する世界史」本が極めてハイクオリティでかんたんしました。 これは、中学校や高校時代に副読本として欲しかったなあ。 comirai.shop12.makeshop.jp 皆さん、船は好きですか。 私は大好きです。 こちらの絵…

「尼子残照 感想」藤岡大拙さん(山陰中央新報社)

隠岐の島に行ったときに島根県のお土産屋さんで買った尼子晴久小説「尼子残照」が、主人公なのに尼子晴久さんがまったくアゲられてなくてむしろサゲられまくっていて、逆に晴久さんへの強い同情心が湧かずにいられなくてかんたんしました。 furusato.kyodo.c…

「室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君 感想」阿部暁子さん(集英社文庫)

「室町繚乱」という南北朝時代モノの小説がたいそう面白くてかんたんしました。 これは室町時代好きには強くおすすめであります。 books.shueisha.co.jp あらすじ。 京と吉野に二人の帝が存在した、南北朝の時代。南朝の帝の妹宮・透子は、北朝に寝返った武…

「河内源氏 頼朝を生んだ武士本流」元木泰雄さん(中公新書)と「シチリア・マフィアの世界」藤澤房俊さん(講談社学術文庫)

積んでいた本を2冊続けて読んだところ、読後感が非常に似ていてかんたんしました。 ともに武力(暴力)集団の成立過程を感覚的に掴めるいい本です。 www.chuko.co.jp bookclub.kodansha.co.jp 前者は、平安時代における河内源氏の活躍と政権癒着と内紛と挫折…

富山県「富山城・勝興寺・五箇山」~岐阜県「高山祭・下呂温泉・明智光゛秀」

富山県から岐阜県にスッと縦に通っていく旅が面白くてかんたんしました。 外国人観光客に人気のコースらしいですがさもありなんです。 富山市郷土博物館[富山城]|観光スポット|とやま観光ナビ 雲龍山勝興寺(重要文化財)|観光スポット|とやま観光ナビ…

「斗南藩――「朝敵」会津藩士たちの苦難と再起」星亮一さん(中公新書)

会津藩のその後……である斗南藩を軸に幕末・明治期の歴史を取り上げた新書が非常にエモーショナル過多でかんたんしました。 www.chuko.co.jp 帯で「会津の“国辱”」「雪ぐまではここは戦場なるぞ」と大見出しにされているのがさっそく重いものを感じさせてくれ…

「スラ(スッラ)」モンタネッリ版ローマの歴史より

モンタネッリさんが描写するスラ(スッラ)さんも格好良すぎてかんたんしました。 スラさんはモムゼンさんであったりモンタネッリさんであったり割と近現代の人から高く評価されている気がしますが、じっさいワークライフバランスだとか自己実現だとか働く理…

「ローマの歴史 感想」I・モンタネッリさん/訳:藤沢道郎さん(中公文庫)

読み物として面白いと評判のモンタネッリさん版「ローマの歴史」を読んでみたところ、確かに取っつき易い歴史紹介文章とイキイキとした各登場人物の活躍がお見事でかんたんしました。 www.chuko.co.jp ローマの歴史を学んでみたいけど、文庫ベースで43巻もあ…