肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「メガ!-巨大技術の現場へ、ゴー-」成毛眞さん

 

「メガ!―巨大技術の現場へ、ゴー―」という本にかんたんしました。

 

www.shinchosha.co.jp

 

 

本の帯には

「大人の社会見学です。」

「こういう時だから、デッカいもの、見ようぜ!」

「巨大なのにディテールが緻密。」

と書かれています。


大きいもの好きなのでついつい手に取ってしまいました。

 


紹介文の通り、この本は大人の社会見学本でして、
紹介されている場所・技術は次の通りです。

 

Ⅰ ザ・巨大!

1.首都高・大橋ジャンクションの地下網
  -地下を約8.4キロ掘っても誤差は約数ミリの緻密さ

2.東海道新幹線の運行システム
  -15秒刻みの緻密なダイヤを集中的に制御する秘密の場所

3.三菱重工業長崎造船所
  -日本にエネルギーを運ぶ新型のLNG船が続々進水

 

Ⅱ 次世代エネルギー

4.東京ガスの世界最大タンク
  -横浜と川崎の地下に潜む世界最大容量のガスタンク

5.国家石油備蓄基地
  -備えあれば憂いなしを体現する巨大タンク群

6.大企業終結プロジェクト
  -世界初! 海に浮かぶ風力発電所 回転速度は新幹線並み

7.浜松ホトニクスの挑戦
  -夢の「核融合発電」実現のカギを握る超強力レーザー

 

Ⅲ 職人技――技術は細部に宿る

8.オハラのすごいガラス
  -宇宙の果てを見通す精密な巨大ガラス

9.本が届くことの驚異
  -一日最大200万冊を扱う日販の大流通システム

10.「グローバルニッチ」の未来形
  -メガなのにディテールにこだわる日本
    ・理研 放射光科学総合研究センターの「SACLA(巨大顕微鏡施設)」
    ・東レの「炭素繊維材」
    ・コマツ無人ダンプトラック運行システム「AHS」
    ・大林組のトンネル工法「URUP工法」
    ・三精テクノロジーズによる歌舞伎座の「廻り舞台」

11.この本の紙をつくる人たち
  -どんな紙でも精緻につくる 日本製紙と特殊東海製紙

 

Ⅳ 宇宙・地球の起源を探る

12.130億光年先を見る望遠鏡
  -超電導素子を手づくりする国立天文台

13.ミッションは「ちきゅう」
  -海洋研究開発機構 地球深部探査船の内部

14.宇宙の謎を探る、世界のCERN、日本のKEK
  -1兆円、完成まで12年の加速器で粒子をキャッチ

 


……どうですか。
目次を見ているだけでワクワクしてきませんか。


全部で130ページほどのブックで、
上記14章一つひとつに6~12ページほどが割かれています。
1章辺りの文章量は実質3ページほど。
残りはすべて施設や建造物の写真です。
何しろ被写体がメガ! だから、写真も大きなカットになるのです。

こういう構成だから、読むのに時間はかかりません。
1時間ちょいで読み終わり、10分ほど写真を眺めかえしてみました。

それでとっても幸せな気持ちになりました。


色々と難しい先端技術の話が紹介されていて、
それぞれに知的な関心と敬意を抱いて、
知らないことが多いことを知って、
ためになったと思って、
という面でも満足度が高い本です。


そして、それ以上に、
「大きいなあ!」「すごいなあ!」と一瞬で理解できる
写真の数々が楽しいのです。

 

私が一番気に入ったのは北海道の国家石油備蓄基地です。
巨大なタンクが57基も並んでいる超現実的な光景。
一つひとつのタンクは高さ24.5メートル、直径82メートルだそうです。

昭和の巨大団地全棟が丸ごとタンクになったかのよう。
すごいぞ。
ここでかくれんぼとかしたら絶対みんな迷子になると思います。
見学に行って、緑色のタンク外壁をぺしぺし叩いてみたいなあ。


この本は2015年出版で、それからも色々な環境の変化が生じています。

三菱重工長崎造船所は、確か客船事業からは撤退するはず。
この本で紹介されたLNG船づくりは続けるそうですが、
いつまで安泰かどうかは分かりません。

その他多数紹介されている国家プロジェクト群も、
日本の財政がもっと危なくなれば予算が縮小されるかもしれません。

ローマ帝国ではないけれど、巨大建造物をつくる技術は
一度失われたらそうそう取り返すことはできないものです。

 


どうかそれぞれの事業に大過がなく、
適切に成果を挙げて、
人類の文化産業遺産としてこれからも維持・発展していきますように。