肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

大河ドラマ「直虎 第42回 長篠に立てる柵」夜の初陣に挑む井伊直政(万千代)さん

 

 

直虎42話、ゴールデンタイムとは思えぬ衆道演出などにかんたんしました。

 

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徳川家康阿部サダヲ)はついに武田との決戦地・長篠へと出陣する。井伊から材木を調達して初手柄をつかもうとした万千代(菅田将暉)だったが、直虎(柴咲コウ)がその動きを阻んだため無念の留守居を命じられることになる。長篠では家康と合流した信長(市川海老蔵)が、鉄砲を用いた奇策を披露していた。この戦に徳川勢として参戦していた直之(矢本悠馬)と六左衛門(田中美央)は不足していた材木を調達した功が認められ、信長と対面することに。褒美として見事な茶碗を賜る。一方、日本一の留守居役をめざし武具を修理し続けていた万千代と万福(井之脇海)だが、小姓の小五郎に手柄を横取りされてしまう。しかし、その働きに気づいていた家康は浜松に戻り、万千代を労う。

 


見どころを端的に紹介しますと

新しいふんどしを持てーい!!

インパクトが圧倒的だったんですが、それ以外の細やかな演出も大変よございましたよ。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


既に大河ドラマ「直虎」は実質的に「直政」に変わってきておりますね。

 


昨夜の放送では、直政さんが長篠の戦で初陣を飾りたかったんですがその願い叶わず、留守居役を任されたところから始まります。


直政さんは城中の設備・武具のメンテナンスに励み、立派な留守居役ぶりです。

一方、長篠では織田家・徳川家が史実通りに武田勝頼さんを撃破いたします。


戦後。

残念ながら直政さんは武具メンテの手柄を他の人に奪われてしまいました。

がっかりです。

ところが、がっかりしていたら徳川家康さんの寝所に呼び出しがかかりました。


これは……

夜の初陣を先に果たそうということでしょうか!?


危うし貞操、こんにちは寵愛!

 

 

続く

 

 

 


という流れ。

お茶の間へ大爆笑か沈黙かの二択を迫る素晴らしい内容でございました。

 

 

すごいですね。

衆道というか男色というかBLというか。

ここまでぶっ込んできた大河ドラマは久しぶりな気がします。

 


若干演出が現代の価値観的というか、当時の人ならもう少し「はい喜んで」となりそうな気もしますが、この辺の衆道文化は地域や家中や個人によって違いまくりますので一概に批評できないっすね。

直政さんが自らの肉体城を主君に差し出して出世したというのは俗説っぽいですし。


「織田家の前田利家さんも武田家の高坂弾正さんも」と、諸先輩方への熱い風評被害を呼び込んでいるところは笑えました。

これで直政さん側近の万福さんが「大寧寺の変を思い起こされませ」とかもう一言入れていたら収拾つかなくなるところでしたね。

 

 

何がよかったって、直政さんの覚悟っぷりがよかったです。


設定上、彼は「はじめて」「その気はない」というスタンスなんですが。


寝所への呼び出しを受けて、そういうことかと驚愕しつつ、怯みつつ。

自らの意志の力で直ちに覚悟を決め、「新しいふんどしを持て」ですもんね。


これはひとかどの漢ですよ。


周囲にぐちぐち相談したり、時間稼ぎしたり、逃げ出したりしないんですよ。


不本意な展開でも主君の命ならばと迅速な決心ができる人材。

この若さでこれほど腹ができあがっているならそりゃ寵愛待ったなしであります。

自我と上昇志向が強過ぎるきらいもありますが、それに釣り合う能力と心胆があるなら、やっぱり周囲は応援したくなっちゃいますね。

 

 

 

と、衆道関係だけに目を奪われそうになるんですが、昨日の放送は他の要素もさまざま良かったです。

 

 

徳川家中の描写。

 


阿部サダヲさん演じる徳川家康が実にいいですね。

こんなに味のある家康さんはめったにないと思います。


初期回では重臣たちの言いなりだったのに。


最近では独自の人事評価により直政さんたちを取り立て、重臣たちのあしらい方も随分上手くなり、更には大将として家来へ肌理細やかなフォローをなさっております。

人柄の良さ、頭脳の冴え、腹の底を見せない辛抱強さ。


いいっすねえ……!

これで今後(直虎さん死亡後)黒い部分も出てくると思うとたまんないっす。

 


また、この家康さんが息子信康さんや石川数正さんとめっぽう仲良さげなのがずるい。

ひどい。

いただけない……。


さりげなく岡崎派と浜松派の存在を匂わせていましたし。


直虎さんは1582年に亡くなる訳ですけど。

1579年のエピソードで、視聴者をもうひと泣かせしてきそうですね。

(あんまり井伊家関係ないですが)

 

 

徳川家中では本多正信さんも渋く目立っています

直政さんとの対比演出がいいですね。


「さすが正信さん」と視聴者は感心しているけど、物語の中ではまだまだ全然評価されていない。

そんなところが視聴者の歴史オタ心をくすぐってきます。

 

 

 

 

織田信長さんの描写。



信長さん本人はよかれと思ってやってるんだけど、微妙に相手の立場を踏まえた細かい配慮ができていなくて、周りは対処に困っている感じ。
(天目茶碗の扱い方とか)

地味に最近の信長さん研究が反映されている気がします。


このドラマ、井伊家はともかく、今川家・徳川家・織田家あたりのこだわり考証ぶりがいいですよね。


長篠合戦の描写もよかったです。

少ない人数でけっこうな迫力を醸しだす熟練の映像づくり。
殺陣に慣れた大部屋俳優というものが消滅した現代では充分な成果ではないでしょうか。

馬防柵づくりの丁寧さは材木と縁が深いこのドラマならではですね。

 

 

 

直虎さん。



長篠合戦跡に出向いて経をあげるシーンはすごく良かったです。

直虎さんの人物造形にとても合っていますし。


いまだ遺骸が転がる戦場跡、兵どもが夢の跡。

(さすがに鎧を剥ぎ取られた裸の骸が転がっているような演出はありませんでした。なくていいです)


批判も多いと思いますけど。

私は「戦を避けたい主人公」でもいいと思いますし、その上で「戦を止められない無力感」の“あわれ”を充分に演出してくださっているので満足しています。

 

 

 

以上、楽しい回でございました。


もう残り少ないですね。

充実感を保ったまま美しいフィナーレを迎えてくださいますように。