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「こううんりゅうすい<徐福> 1-2巻」本宮ひろ志先生(グランドジャンプ)

 

こううんりゅうすいの単行本がようやく発売されてかんたんしました。

かなり渋い漫画ですが私は好きです。

 

grandjump.shueisha.co.jp

 

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ジャンルは歴史漫画になります。

歴史漫画といっても本宮ひろ志御大の作品ですから、壮大なスケール感・大風呂敷感を楽しむ内容です。
細かな考証とかは突っ込まないようにいたしましょう。

 

いうなれば本宮ひろ志版の「まんが 日本の歴史」

秦の始皇帝から不老不死の霊薬を探してこいと言われた「徐福」さんが、日本に辿りついてうっかり2,500年の寿命を手に入れてしまい、その後の日本の歴史を見守ることになってしまうというストーリーです。

秦の時代は紀元前200年ころですから、そこから2,500年というと現代日本のさらに未来まで生きることができる計算です。

 

「赤龍王からサラリーマン金太郎までの時代をミルフィーユに仕立て上げるようなもんですから、なんかとんでもない作品をつくろうとしているんだなということが察せられます。

気宇壮大ですね。

 

 

このたび発売された1-2巻では、徐福さんが倭に辿りつき、2,500年の寿命を得、卑弥呼(作品内では「日弥呼」)さんの邪馬台国成立を見守るまでを描いてはります。

 

ちなみに邪馬台国は九州説を採用されています。

が、このまま日弥呼さんが皇室のルーツになりそうな気配が漂っていますので、途中で古事記よろしく東征に出るんですかね。

百年単位で時間を飛ばしていく漫画ですから、ややこしい論争を呼びそうな細かい描写はカットされるかもですが。

 

この日弥呼さんが登場する2巻から作品が盛り上がり始めます。

1巻は壮大な舞台を整える基礎工事の段階です。

 

日弥呼さんはよいキャラクターですよ。

ドSだし尊大だし崇高だし。

天照大神のごとく太陽(日食中)に命令する姿は名シーンで、その時代の民からすれば堪らないものがあると思います。

「はあああああーーーっ」「いっやああああああーーーーっ」という本宮作品っぽい叫び声も大好きです。

「我は
 お前の下僕ではない
 お前を司る者じゃ」

「命令する」

「ただちに元の姿に戻れ」


「太陽に仕える巫女」ではなく「太陽を司る巫女」。

このカリスマはただごとではありません。 

 

3巻か4巻くらいで日弥呼さんの出番も終わることになると思いますが、消えるにはもったいないキャラであります。

 

日弥呼さん率いる邪馬台国と奴国(師升さん)が争う展開も古代ロマンのある話です。

徐福さんなどがもたらした中国文化が、平和だった倭に争乱の種をもたらしたという経緯も本宮御大らしい構想だと思います。

 

 

合間合間に中国を中心とした世界の情勢が入るのもいいですね。

ストーリー的には端役ですが、項羽さんがめちゃくちゃ格好よかったです。

龍王版よりも格好よいと思います。

曹操さんも登場していましたが、こちらは天地を喰らう版の方がイケメンでした。

 

グランドジャンプ本誌の方ではローマ帝国の衰退が描かれていましたし、そのうちイスラムとかモンゴル帝国とかも出てくるんでしょうね。

 

 

これから先の展開も楽しみです。

本宮ひろ志御大がどのような切り口で日本の歴史描写をセレクトしていくんでしょう。

 

日本という国の成り立ちを考えれば、次は仏教伝来や白村江の戦い律令制など、その次は平安と女性文学、その次は清盛と頼朝と鎌倉新仏教、その次は元寇、その次は南北朝、その次は応仁の乱と侘び寂び、その次は秀吉と家康、その次は江戸と庶民文化、その次は明治文化、その次は日清日露、その次は帝国主義、その次は敗戦と高度成長、その次は現代……というあたりがメイントピックでしょうか。

 

戦国時代あたりで連載に飽きて、信長さんと夢暴丸さんが全世界を統一する話に切り替わったら笑いまくりますけどさすがにそれはないでしょうしね。

 

 

学問的な話とはまた別の立ち位置で、日本という国の歴史の流れを俯瞰してみるというのも楽しい試みだと思います。

かなり骨の折れる作業ですのに、個性的なエンターテイメント作品として成立させてしまえる本宮ひろ志先生の器量と腕力には敬意を表します。

 

 

現代に近づくほどスケールの大きい展開を描くのが難しくなってくると思いますが、このまま本宮節全開で現代まで描き切ってくださいますように。

 

 

「こううんりゅうすい<徐福>3-4巻感想 卑弥呼さんいいよね」本宮ひろ志先生(グランドジャンプ) - 肝胆ブログ