肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「副業推進に向けた労基法改正の検討」日経新聞の記事より

 

日経新聞で報道されていた、副業の促進に向けた労働関係法の改正議論にかんたんしました。

大賛成です。

 

www.nikkei.com

 

 

いちぶ先進的な企業は副業を奨励していたりしますが、一般的に日本社会では副業は慎むべきものとして認知されております。

 

ただ、この辺の線引きは正直あいまいで、例えば兼業農家は黙認されていたり、せどりやブロガーや個人輸入は黙認されていたり、株や不動産やビットコインへの投資は黙認されていたりする一方で、ちょっとバイトしたら首になったりするのが日本企業(含む公務員)であります。

農業や個人事業や投資はいいけど、他の事業者に雇用されるのは許さんと。

謎の束縛主義というか冷静に考えたらヤンデレ感のある慣習だと思います。

 

 

個人的には副業のひとつもできない社員はどうかと思いますし、どうしても企業が社員を束縛したいなら手取りベースで年収1,000万くらい支給するのが筋ではないかなと考えています。

兼業農家は生まれによるところが大きいですし、個人事業や投資は才覚なき人には厳しいです。大半の人々にとっては、バイトやダブルワークがもっともとっつきやすい副業だと思うんですよ。

もちろん、職業によっては副業がまずいものもあるでしょうけどね(警察官など)。

 

 

 

で、経営サイドからすると、副業禁止については束縛的な理由ももちろん大きいのですが、それ以外に「実務的にめんどい」というところも大きいのです。

労務系の仕事はまじめにやると手間がかかりまくりますし、リスクもでかいんですよ。

 

今回報道されているのもそのひとつ。

 

労働基準法の時間外手当については、本業と副業で労働時間を通算する。

時間外手当は「後に働く方(通常は副業先)」が支払う。

 

というのがルールであります。

 

 

……こんなん、まじめに管理やってられないですよね。

マイナンバーとか使って自動名寄せしてくれるとかならともかく。

 

本業先がわざわざ副業先をしっかり把握して、本業サイドの労働時間を副業先に伝達。

副業先は2-3時間しか働いてないバイトに時間外手当を支給。

 

こんなん本業先も副業先もやってられないです。

労働者の健康保護が目的のルールで、それ自体は本来ありがたいことなんですが、実務的な視点が抜け落ちまくっている感じなのです。

 

黙ってりゃ分からないでしょと言えなくもないですけど、いまはマイナンバーで副業していることが把握しやすくなっていたり、なんかトラブルが起こった時に雇用企業が要らぬ労務リスクを抱える羽目になったり、まじめに管理しようとしたら実務負荷がすごい増えたりという諸々の視点を踏まえれば……やっぱり副業をもろ手あげて奨励しようという風にはならないですよね。

 

 

それをちょっと見直した方がいいんじゃないかと、国も動き始めたと。

 

今回の記事の中で、

 厚労省はこうした実態を踏まえルールの見直しが必要だと見ている。海外には労働者が自らを労働時間規制の対象外とすることを選べる制度などがある。同省は海外の事例も参考にしながら、いまの規定をどう改めるか議論していく。

 

という視点は画期的だと思いますよ。

もちろん悪用するヤカラ事業者も出てくるんでしょうけど、それでも労働者一人ひとりに自らの権利・保護を自覚させたうえで、自らの判断でその権利・保護を制限できる権利を与えるというのは大事なことだと考えます。

一般的に労働関係法は労働者が庇護されるべき弱者という観点で設計されていますが、もうそういう弱者保護一辺倒だと現代の労働マーケットには適応できなくなってきていますので……。

理想主義的な意見にはなりますが、私は一人ひとりが自律的に主体的に物事を判断・選択できる世の中の方が、「お国や企業の言う通りにしていれば幸せになれる。幸せになれなかった場合はお国や企業のせい」という一種の脳死状態よりもマシだと思います。

 

たとえば春闘とかも。

給与賞与が1%上がるか下がるかという議論に、会社側も組合側も何百時間も議論カロリー使ってるってぶっちゃけアホらしくないですか。

その議論している時間、バイトでも個人事業でもした方がよっぽど収入増えるし新たな知見も得られるし……と。

こんなこと言うとお叱りいただくかもしれませんが。

 

 

そんな感じで私は副業推進大賛成です。

労働者サイドとしても経営者サイドとしても賛成です。
会社に尽くしてくれる従業員はありがたいですけど、会社のことしか見えていなくてそれが当たり前だ昔からこうなんだお前も染まれとかいう従業員は迷惑です。

 

 

 

ちなみに小ネタを語りますと。

 

労災は本業と副業それぞれで保険加入することになります。

労基法と違って、労災は本業と副業でバラバラなのです。

 

社労士系のなかではよく知られている事例なんですが、副業先(バイトレベル)で労災が起きた場合、労災保険からの休業補償は副業先の収入をベースに計算されます。

すなわち、本業で月30万・バイトで月5万の収入を得ている人の場合、労災の休業補償は月5万の方をもとに計算されることになるのです。

具体的には月4万程度の収入になってしまいます。

 

これ、きついですよ。

生活できないですよ。

しかも本業先からは「ふーん。バイト先で怪我。それで3か月やすむと。ふーん。ほーん」と言われますからね。

大ピンチです。

 

というわけで、副業はなるべく事故リスクの低い業態を選ぶのがおすすめです。

副業先に向かうときに起こった通勤災害も副業先労災になりますから、車移動よりは公共交通機関移動ができる勤務先がさらにおすすめです。

 

 

 

そんなリスクを踏まえつつ、収入と経験の彩りを増すためにも副業が当然な世の中になっていきますように。

 

滅私奉公もロボットの方が得意ですからね。