「雑誌掲載作品をイチ早く読める!!」という触れ込みで、コンビニやキヨスクで売ってはるビッグコミック別冊のゴルゴ13シリーズ。
新幹線等での移動時になんとなく1冊買ってみたら面白くてそこからゴルゴ13にハマった、という方も多いかと思われます。
そんなゴルゴ別冊のNo.198に収められている表題3作品がいつも以上に面白くてかんたんいたしました。
オクトパスの疑似餌
システムセキュリティに携わる防衛側のハッカーと、攻撃側のハッカーの勝負をテーマにした作品です。
ゴルゴ13はほとんど出てこないパターンの内容になります。
攻撃側ハッカー(オクトパスさん)の手口が、
「SNSの某フラッシュモブ動画についた"いいね”をすべて標的企業へのサーバーアタックに変換……100万人の異なるIPアドレスからの不正アタック」という大掛かりな代物と、
「不正メール(ウィルス添付ファイル付)送付とフィッシングサイト誘導を仕掛けまくる」という日頃なら引っかからないけど慌てている人は引っかかる心理的隙をついた代物
の組み合わせ。
こんなんされたら、そうとうセキュリティ構築・従業員教育を徹底している企業でも突破されてしまいそうです。
みんな、トラブルにトラブルが重なるパターンは苦手ですもんね。
こわいこわい。
ハッカー話だけだと地味な絵柄になってしまうからか、ドラマに関わる登場人物として「リアノン」さんというセクシーなインターポールの女性も登場してきます。
彼女の振る舞いやアクションシーンはなかなか爽快で、魅力的でございました。
森と湖の国の銃
フィンランドってめちゃくちゃ銃が普及している国なんだよ、規制すべき? しないべき? というテーマのお話です。
銃犯罪事件や歴史的経緯を取り上げつつ、どちらの意見も説得力に富んでいるという。
重厚なテーマを正面から扱いながらも漫画として読みやすい、社会派漫画のお手本のような作品になっております。
エピソードの主人公はヘルシンキ在住の世界的漫画家「サカリ・ハロネン」さんで、彼は冷静な銃規制反対派であるも、最愛の妻を銃犯罪で失うという皮肉な運命に陥っています……。
たいへん好感の持てる主人公で、彼が悩みもがく姿は銃事件に縁の薄い日本人読者の心にも伝わるものがあると思います。
ネタバレはしませんが、ゴルゴ13への依頼内容、依頼時のやり取りもいいですね。
こういう機知に富んだ依頼者と、揺らがないプロ意識の持ち主であるゴルゴ13の掛け合いが見られるエピソードは名作が多い印象です。
亡者と死臭の大地
舞台はアフリカ。
利権の亡者である現地大統領と中国農業省幹部の陰謀、そしてアフリカ特有の内乱に、ゴルゴ13が巻き込まれて大ピンチになる内容です。
3作の中では圧倒的にバイオレンス度が高く。
気の毒になるくらいゴルゴ13がえらい目に遭いますよ。
・サンチョウバエを使った非人道的バイオ攻撃でリーシュマニア症に冒される
リーシュマニア - Wikipedia
・こんなこともあろうかとで持っていた治療薬はバスが横転して紛失
(放っとくと2週間で治療できない段階へ移行し、死ぬ)
・現地政府軍に追跡されて銃を浴びせられる
・ワニに襲われる
と……毎度のことながら「よく死なないな」という展開です。
そろそろゴルゴ13の体内にはリョーツGPX的抗体でもできているんじゃなかろうか。
悪役の中国人官僚「郭聡明」さんも1話で死ぬにはもったいないくらいキャラが立っておりました。
下手な軍人よりもはるかにゴルゴ13を追い詰めてますからね。
サンチョウバエを使ったバイオ攻撃指揮の辣腕、大躍進政策時代の悲惨な過去。
悪党の鑑だと思います。
もう一人、ゴルゴ13と行動を共にする現地反政府勢力の女性「エボニィ」さん。
彼女はこの漫画の定番展開でレイプされてしまうのですが、そんな彼女とゴルゴ13の会話が超よかったですよ。
「あ、あたしは……」
「汚された女だよ……」
「…………」
「そんな観念は、男社会のエゴの押しつけでしかない……」
「女からすれば、男は単なる衣服のようなものだ……」
「…………」
「気に入らなければ、着替えをすればいいだけだ……」
「…………」
この後、ゴルゴ13は彼女に「お前が困った時は、いつでも力になる」と約束し、更には謝礼の大金を渡して去っていきます。
フェミニズムでもハードボイルドでもない、ゴルゴ13ならではの言葉。
この脚本、最高でした!
以上の名作3品が収録されていて税込み500円。
いまならその辺で手に入ると思いますし、おすすめですよ。
名作長編漫画が次々と最終回を迎えていますが、ゴルゴ13はこれからも元気に快調に続いていきますように。
さいとう・たかをさん、いつまでもお元気でいてください……!