野武士のグルメ最新刊がだんだん食の軍師化してきていてかんたんしました。
野武士のグルメは定年退職した初老のおっさんが「俺は野武士のようにありたい」とぶつぶつ言いながら食べ歩きする漫画です。
孤独のグルメ(原作者は同じ)のシニア版といえば格好がいいですが、井之頭五郎さんと違ってトホホ感強めのオチが多い印象ですね。
実に親近感が湧きます。
1巻のエピソードでは「朝のアジ(千葉県の民宿の朝食)」、2巻のエピソードでは「野武士のライスカレー(自炊)」がお気に入りです。
今回の3巻では「文士の鰻重」「野武士のランチステーキ」「ハモニカ横丁のソーキそば」「野武士のおでん」「中野の甘味屋めし」「現代の大食堂」「町の寿司屋」という7編が収められております。
美味しそうなのは「文士の鰻重」。
太宰治さんゆかりのうなぎ屋さんに訪れる話です。
とにかく鰻重を食べる場面の描写力が半端ないですよ。グルメ漫画界の大御所である久住昌之・土山しげる両先生の手腕が冴えまくりです。
こんなにうなぎを美味しそうに食べている漫画はそうないと思います。
劇中のドラマパートでは太宰作品の「お伽草紙」や「津軽通信」、「黄村先生言行録」などがプッシュされていたりして興味を引かれたりします。
面白かったのは「ハモニカ横丁のソーキそば」。
ネタバレはしませんが、初老のおっさんの空回り・失態描写が素晴らしいです。
この漫画は老境に入っていく際の侘しさや滑稽さやみっともなさを素直に切り取ってくれていて、それが読み手にある種の安心感を与えてくれるんですよね。
漫画の主人公と読者が地続きであるような共感を抱きます。
そして、3rdから増えているのが「脳内野武士からのダメ出し」。
「食の軍師」では本郷さんがいつも脳内軍師(孔明)からダメ出しされていますが、だんだん野武士のグルメもそういうシーンが増えてきております。
1巻2巻は「野武士ならこういう時どういう風に振舞うだろうか」みたいな感じで自問自答しながら飯食ってる感じだったのですが、3巻では脳内野武士が「お主、馬鹿か?」「気は確かか?」「たわけたことを抜かすな!」「お主、どこかおかしくなったか?」などと辛辣かつ語彙力の少ない突っ込みを浴びせてくるのです。
主人公のおっさんが一人でシュンとしているのも含めて、シュールでいいですね。
脳内野武士がお子様ランチの旗について
「旗はいいもんだ
戦をするにも旗がいる
旗標は戦意を昂らせる!」
「昔のワッパはお子様ランチで敵の城を奪ったような気持ちになったのかもしれんぞ――」
みたいなご高説を述べてはるシーンなど愛しみが強いです。
以上、定年過ぎのおっさんが主人公であることに抵抗がない方にはおすすめできる良グルメ漫画だと思いますね。
この漫画は様々な媒体に掲載されたのを取りまとめたり書き下ろしを加えたりして単行本にしているようです。
この3巻が売れたら4巻企画も出るのでしょう。
ゆっくりペースでもいいのでシリーズが続いていきますように。