たまたま手に入れた伊賀の陶芸家さんによる四季の料理本がめちゃくちゃ美味しそうな写真だらけでかんたんしました。
こんな美味しそうな料理写真はめったに見られません。
料理をされた福森雅武さんに加え、写真家後勝彦さんの腕前も素晴らしいですよ。
あくまで素人の好みですが、伊賀焼って好きなんですよね。
備前焼とはまた違った“土”の肌合い風合いに惹かれます。
お店で気合い入れて器を選ぶときは伊賀焼を手に取ることが多いです。
この本は伊賀焼の著名な窯元「土楽窯」の福森雅武さんによる手料理を四季の移ろいに沿ってご紹介いただける内容になります。
冒頭、春からびっくりさせられますよ。
一つ目の料理は「山菜のてんぷら」。
なるほど、伊賀で手摘みした山菜はさぞおいしいことでしょう。
からの、
二品目に「すみれご飯」。
すみれの花、葉、茎がいっぱいに散らされたごはんが紹介されているのです。
もう全面きれいな紫色のごはん。
美味しいんやろか……? とも思いつつ、その紫な写真があまりにも鮮やかで美しくて、もう目をビタリと離せなくなってしまいます。
続けて花山椒を使った「かしわの花山椒鍋」「花山椒のステーキ」と実にうまそうな肉料理が繰り出され、わずか数ページで心と胃袋を掴まれてしまいました。
春の料理の中では、他に「わらびご飯」「豚の角煮とわらびの炊合せ」なんかもたまりませんし、「ルッコラ入り卵焼き」はちょっと自分でもつくってみたくなる親しみやすい魅力がございます。
夏。
「ずいきと枝豆のごまあえ」「かぼちゃの花のみそ汁」といった夏に食べたいものが登場します。
かぼちゃの花のみそ汁の解説がいいんですよね。
少し苦みがあって、格別うまいというものでもないが、昔から二日酔いにいいといわれていて、熱いみそ汁にかぼちゃの花をばっと入れて食べたもんです。七時の朝飯に、花の開いているのを入れてね。昼になると花はもうすぼんでしまう。
そっけない説明がかえって惹きつけてくださいます。
「焼きなす」の焼き色緑色の写真がこれまた非常に美しく、“なす三昧で夏は過ぎる。”という見出しに深く首肯し。
鮎釣り写真からの「鮎の塩焼き」に悶絶し。
「蒸しあわびと蓴菜(じゅんさい)の梅肉だれ」「えびの塩蒸し、キーウィソース」の洗練された涼やかさにときめかされるという。
あうう、食べてみたい。
秋。
十月、名残りの品として「枝豆」「鱧」を取り上げていただいているのがめっちゃ粋で格好いいです。
夏ではなくあえて「秋に食べてもうまいよね」という充実を知る心が。
伊賀だけあって山の恵がステキです。
松茸はもちろん、「むかごご飯」なんて最高ですよね。
「むかごと自然薯の素揚げ」も実にいい。少しの塩をつけて肴にしたい。
更に「バッテラ」「鯛のかぶと煮」とページが進むと関西文化圏らしい歴史味も感じて郷愁をそそります。
そうそう、ごぼうといっしょに鯛のかぶとを煮ると超うまいよね、とうきうきします。
冬。
山の峡そことも見えず一昨日も昨日も今日も雪の降れれば
(万葉集巻十七 紀男梶)
の歌と、囲炉裏で熱せられる黒土鍋の写真から始まる導入が鮮烈です。
「自家製飛竜頭」の写真の説得力がまず白眉。
これぜったいうまいやつ、というやつですよまさに。
同じく「揚げうどん」というオリジナル料理……ゆでて、いったん油で揚げたうどんを濃いめのだしで鍋仕立てにして、ねぎを散らしていただく……というのがごっつぅ美味しそうです。
どうぞ囲炉裏のそばで召し上がれって言われたい。
ラストに向かって「漬物」「雑煮」といった根源的な料理が流れていくのもいいの。
もうここまで春夏秋冬を味わってきたら「ちょっと伊賀に移住してくる」って言いたくなるほどの重力を帯びてしまっていますよ。
以上、本当に数々の美味しそうな料理を、最高に美麗な写真と分かりやすいレシピ付きで紹介してくれているという読み得間違いなしな料理本ですよ。
大地と繋がっているような料理が好きな人には絶対間違いないでしょう。
巻末には白洲正子さん(福森雅武さんと仲が良かったそうで)との対談まで載っていますし、なんかもういろいろな意味で貴重な本に仕上がっております。
気になる人は古本屋なりネットなりで探してみてくださいませ。
またどこかで素敵な伊賀焼に出会えますように。