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「戦国の肥前と龍造寺隆信 感想」川副義敦さん(宮帯出版社)

 

龍造寺隆信さんの生涯をまとめた本が売っていてかんたんしました。

 

宮帯出版社/商品詳細 戦国の肥前と龍造寺隆信 川副義敦 著

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龍造寺家の本ってレアで、意外とこれまで見かけなかったんですよね。

ちょっと前に鍋島直茂さんの本も売っているのを見つけましたが、小さな龍造寺ブームでも来ているのでしょうか。

「鍋島直茂」岩松要輔さん(戎光祥出版 シリーズ【実像に迫る】004) - 肝胆ブログ

 

 

本は龍造寺隆信さんの生涯を分かりやすくまとめたものとなっています。

「はじめに」でも記載されているのですが、龍造寺家の一次史料は数が少ないようで、この本も江戸時代に成立した軍記を基に執筆しているところが多く、信憑性が不鮮明であることは否めないとのことです。

それを承知の上で、龍造寺家ドラマの面白さを味わいましょう。

 

 

目次を引用します。

【目次】
第一章 龍造寺氏のおこり
第二章 龍造寺家兼
第三章 隆信の登場
第四章 東肥前の経略
第五章 大友氏の肥前干渉
第六章 大友軍の来襲
第七章 東肥前再征服
第八章 西肥前経略と筑後・肥後出馬
第九章 肥前統一
第十章 筑後経略
第十一章 五州二島の太守
第十二章 龍造寺領国の終焉と鍋島氏
龍造寺関係資料・古記録解題
龍造寺隆信略年譜
参考文献

 

ご覧の通り、龍造寺家兼さんを襲った悲劇から、龍造寺隆信さんの活躍、そして敗死、鍋島直茂さんへのバトンタッチまでをきれいにまとめてくださっていますね。

 

 

 

私の感想としましては、

 

龍造寺隆信さんについては新たな発見や意外な一面というのは少なく、一般的なイメージ通り、戦と謀略の上手さでのし上がり、晩年は増長して太り、鍋島直茂さんの忠告を聞かずに沖田畷に出陣して島津家久さんに討ち取られる……という感じでした。

その上で、「五州二島の太守というけど対馬との関係は薄い。三前二島の守護だった少弐氏が元ネタ?」「肥前の熊という異名の元ネタも不明だわ」とあとがきでサラッと触れられていたのが面白かったです。

 

鍋島直茂さんについては細かな戦でも逐一彼がアゲられていることが多く、この辺は「江戸時代に成立した軍記」をソースにしている関係もあるのかな、という印象です。なんせ佐賀藩0代ですからね。

 

若干マイナーながら「毎回渋く活躍してるなあ」と印象に残ったのが納富信景さん。

色んな戦でいい仕事をしてはります。

龍造寺家中というと四天王の五人組が目立ちがちですが、もっと彼も愛でられてほしいものだと思いました。

 

龍造寺家兼さんについては、佐賀県ご当地の話として、一昔前まで古い時代のことを「剛忠さん(家兼さんの法名)の時代」と呼んでいたという挿話がよございました。

こうした土地に根差したエピソードって好きです。

この本は佐賀県民をメイン読者に想定しているのか、「あの町にこういう山があるでしょう、あそこのことですよ」みたいなニュアンスの記述が多く、これを読んでから佐賀県を散歩したりドライブしたりしたら楽しかろうな、と思います。

 

松永久秀さんの弟と名乗って玉砕したことで有名な、光照寺の空円さんも登場します。

著者さんは「松永久秀の勇名が当時天下に轟いており、敵兵を驚かすためだったろうか」と考察されていますが、真偽含め実際どうだったんでしょうね。

 

女性陣だと、有名な隆信さんの母「慶誾尼」さんの他、百武賢兼さんの妻「円久尼」さんも印象的でした。

「九州治乱記」という戦記では、「比類なき剛の者」「大力の荒馬乗りなり」「大長刀を横たへ城戸口に出で、手の者を励まし防戦す」などと女性とは思えない記述がされているそうです。

女丈夫が多いですね、九州。

 

 

かように、龍造寺家にまつわる主要なエピソードが包括的に描かれていますので、龍造寺ファンには非常にありがたい一冊になっていると思います。

こうした入り口からファンや研究者が増えて、もっと研究が進むといいですね。

 

とりあえず佐賀県に行ってみたくなりました。

そのうち機会が訪れますように。

ロマンシング佐賀を体験してみたいのです。

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