岩手県盛岡市玉山区の渋民、石川啄木さんゆかりの地にあります石川啄木記念館が発行している無料パンフが素晴らしい逸品でかんたんしました。
↓このパンフ。
和歌や短歌といえばご時世的に万葉集の話でもした方がいいかもしれませんが、あえて石川啄木さんです。
素朴で等身大でしみじみ心情が伝わる歌がいいですよね、啄木さん。
こちらのパンフは岩手県内を中心に石川啄木さんの歌碑の歌・所在地をまとめた冊子になります。
啄木さんの愛されようは半端なくてですね、岩手県内だけでも24か所に歌碑があるようですよ。
パンフ、すなわち歌碑で取り上げられている歌は、地域や風土への思いを歌ったものが当然中心になりますので、啄木さんの歌の中でもあたたかい系、前向き系、ハートフル系のものばかりがセレクトされているのがいいんですよね。
啄木さんといえば
はたらけど
はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり
ぢつと手を見る
とか
ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにいく
といった、苦しい系や寂しい系のものが人口に膾炙しているイメージがありますが、私はむしろあたたかい系の歌もいいんですよと言いたい。
パンフではこんな感じに歌碑の歌と所在地が一つひとつ取り上げられておりまして。
ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな
ふるさとの山はありがたきかな。
この歌なんて、地元に山がある人ならたいてい好きになると思うんですよね。
取り上げられている歌は他にも
かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
ですとか
やはらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに
のように共感性の高いものが中心になっています。
誰にとっても偉大なるかな地元。
ジモトがジャパンおもしろいですよね。
今日ひよいと山が恋しくて
山に来ぬ。
去年腰掛けし石をさがすかな。
や
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
なんかも好き。
個人的に一番アート味が好きなのはこの歌。
或る時のわれのこころを
焼きたての
パンに似たりと思ひけるかな
この歌の歌碑はご当地の玉山小学校にあるそうです。
こんな歌に触れて育つ小学生は幸せだと思いませんか。
こうしたあたたかい系の石川啄木さんの歌や、所縁の地マップや、啄木さんの生涯の紹介等が約60ページという程よいボリュームにまとまっていて、無料配布。
これはいい公共事業。
啄木さんの歌をちょっとかじってみたい人にも、啄木さんがらみの観光をしっかりやってみたい人にも、垂涎の品になっていますよ。
盛岡にお立ち寄りの際にはマストゲットイクイップメントだと言えましょう。
さいきんはインバウンドなお客様も石川啄木さんを求めてやってきているそうです。
穏やかにふるさとを尊ぶような歌こそますます世に広まっていきますように。