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山岡鉄舟小説「命もいらず名もいらず 感想」山本兼一さん(集英社文庫)

山岡鉄舟さんの生涯を描いた小説「命もいらず名もいらず」がストイック極まりない精神性推しの展開の数々でかんたんしました。

 

books.shueisha.co.jp

 

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幕末~明治期に活躍しはった山岡鉄舟さんの生涯を1,000ページ以上にわたって丹念に描写してくださる長編小説になります。

 

おおきくは史実や有名な逸話に沿って進んでいきますので、何がネタバレで何がネタバレでないのかの線引きは難しいのですが、以下、気になる方はご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山岡鉄舟さんといえば、

などなどで有名ですね。

強くて、将軍や天皇や市民を守って、あんパンを配って歩くという意味では日本史上最初のリアルアンパンマンと言えるかもしれません。

 

 

章立てに沿ってざっくり小説の流れや見どころを紹介します。

 

第一章 遺言

飛騨高山で過ごした少年時代。

鉄舟さんは子どもの頃から非常にストイックな人物として描写されています。

要領のよさなんて欠片もない感じが好感度高いです。

 

 

第二章 鬼鉄

江戸に戻って剣や禅の修行に励む様が描写されます。

黒船がやってきて世相が騒然とする中、鉄舟さんは山岡静山・高橋泥舟兄弟に出会ったり、山岡家に婿入りしたり、講武所の剣術世話心得を務めたりと着実に人生を前に進めている感じです。

急逝してしまいますが、山岡静山さんの人物描写が爽やかで格好いいですよ。

 

 

第三章 攘夷

清河八郎さんが攘夷方面で大活躍する章になります。

その関係で近藤勇さんや芹沢鴨さんも登場したりも。

史実の清河八郎さんの評価は様々のようですが、この小説では山岡鉄舟さんと好対照をなす人物として、非常に突き抜けた魅力・実力の持ち主に描かれています。

 

 

第四章 朝敵

いよいよ山岡鉄舟さんが歴史に名を遺す活躍をしはる章になります。

幕府が朝敵になってしまう中、山岡鉄舟さんはなんやかんやで徳川慶喜さんに近いところでお役目をいただくことに。

江戸の焼き討ちを回避すべく駿府西郷隆盛さんのところに行く場面が活躍的にはハイライトですが、個人的にはその後の上野彰義隊の顛末を制止できずに苦しむ鉄舟さんの場面の方が好き。

 

 

第五章 流転

徳川家の皆さんと一緒に駿府に移動し、大量の失業者の食い扶持を得るべく牧之原台地の開拓に着手したりする章です。

この章あたりから禅の描写が一層増えてきます。

龍澤寺の星定さんへの参禅を願って山門の軒下で座禅を組むシーンが好き。

 

 

第六章 大悟

明治天皇の侍従に就任しつつ、禅の修行に更に励んで大悟に至る章になります。

木村屋のあんパンも登場します。

天龍寺の滴水老師から蹴りを入れられまくりながら禅に励むシーンがとても好みです。

 

 

第七章 春風

剣の道でも遂に目標だった浅利義明さんを越え、一刀流を継ぎます。

その後も様々な方面で鉄舟さんらしく活躍し、明治二十一年(1888年)に53歳で亡くなるまでが描かれています。

死の直前にあっての、勝海舟さんや三遊亭円朝さんとの会話がイイですよ。

 

 

 

 

おおむね、世人が鉄舟さんに描くイメージ通りに物語を膨らましてくれている印象で、素直に楽しみやすい小説ではないでしょうか。

 

個人的には、山本兼一さんは某作品の大胆な創作エピソードの解釈違いが長年引っかかっていたのですが(その人が無理やり側室つくりますかね的なやつ)、この「命もいらず名もいらず」は無理に逸話を創作せず、世に知られている逸話を中心に話を組み立て、かつ、描写がストイックな精神面方向に重きを置いている点が気に入りました。

 

我ながら、歴史小説を読んですぐに史実がどーのこーの言うのがよくないですね。

(自分だって生半可な歴史知識を書いたりするのでなおのことタチが悪い)

先入観を抱かずにもっと素の心で物語を楽しめるようにならなければ。

 

 

私ももう少しきちんと生きて、山岡鉄舟さんが見出したような禅の境地がちょっっとは身につきますように。