長沢芦雪さんの特集本を読んでいたらテレ東でも「虎図」が取り上げられていてかんたんしました。
なんというシンクロニシティ。
※本の表紙の虎図と、新美の巨人たちで取り上げられた虎図は別のものです。
本の表紙の虎図は「水呑虎図」という絵です。
かわいいですよね。水面に口元が映っているのもチャーミング度高し。
長沢芦雪さん(1754-1799)。
丹波篠山、あるいは京都の淀あたりで生まれ育ったっぽい人。
丸山応挙さんの弟子で、応挙さんとも違う独自の境地を開いた画家。
さいきんは本のタイトルにもある通り、かわいい路線で注目を集めているようです。
同時代に活躍した伊藤若冲さんも息の長いブームにありますし、この頃の日本画の味わいや斬新さが現代人の感覚になんかフィットするみたいですね。
私の場合は10年ちょい前に奈良県立美術館の応挙と芦雪展で、「虎図」の躍動感とかわいさの両立っぷり、「白梅図屏風」の枯じけと艶気の両立っぷりに圧倒されてから長沢芦雪さんの画風に惹きつけられたクチです。
あれはよい展覧会だったので、応挙・芦雪ファンをグンと増やしたに違いない。
さて、「かわいいこわいおもしろい 長沢芦雪」という本ですが。
著者の岡田秀之さん、新美の巨人たちでインタビューされてましたね。
当著も代表作として紹介されていました。
新美の巨人たちは30分という短い番組で、一枚の絵画にフォーカスする構成上、画家の作風や生涯などはサラッとした紹介になります。
今回の虎図回でも、「芦雪っぽさ」という言葉が何回か出てくる一方で、番組を見るだけでは「芦雪っぽさ」とは何かが充分に理解できないのはしゃーないじゃないですか。
そこでまさにこの「かわいいこわい~~」の出番でして、この本を読めば「芦雪っぽさ」にしっかり入門することができようと思います。
125ページ、フルカラー、長沢芦雪さんの代表作はたいがい収録、有識者の対談や年表等による知識インプットも豊富、1600円とこの手の本では妥当な価格という。
私は「芦雪っぽさ」とは「かわいいこわいおもしろい」をぜんぶ内包するような、スケールの大きな「(漫画的)楽しさ」だと思いますが、そもそも長沢芦雪さんの絵には、ご覧になる方それぞれで「芦雪っぽさ」を好きなように言語化していただいたらいいんじゃないというおおらかさがある気がしますね。
個人的に好きな作品は次のとおりです。(ぜんぶ本に収録されています)
- 虎図・龍図襖
- 白梅図屏風
- 唐子遊図
- 海浜奇勝図屏風
- 富士越鶴図
- 蛸図
- 蹲る虎図(即興で描いたという演出込みで好き)
- 水呑虎図
- 拾得図
- 一笑図
- 布袋・雀・犬図
- 梅月図
- 出山釈迦図(神々しくないのがイイ)
多いですね。
虎図が代表作として推されることが多いですし、私も大好きですが、長沢芦雪さんの作品はひとつに絞るよりもたくさんの作品を見て「芦雪っぽさ」をふんだんに味わうのが何よりも幸せなように思います。
そういう点で、番組でやっていたような南紀の寺々を巡っての長沢芦雪作品巡り、あれいいですねえ。
素直にうらやましい、やってみたい。
どの寺もふだん作品を公開している訳じゃないのがなあ。
またどこかで、長沢芦雪さんの大規模な展覧会が開催されますように。
でもなんか次回は混みそうだなあ。