BSフジで夜桜お染の再放送をやっていたので、まとめ撮りして久々に全話見返したところ、やっぱりこの作品は面白いなあ、ちょっと早すぎたなあとかんたんしました。
わざわざ録画で観なくてもDVD持ってるんですけどね。
↓このオープニング題字からしてイイ。
夜桜お染は、フジテレビさんや映像京都さん(新・座頭市や御家人斬九郎等もココ)が「いつか若村さん主演の作品をやりたい(能村庸一プロデューサー)」と長年温めてきて、構想・製作された全10話のオリジナル時代劇です。
若村麻由美さんは美人で演技が上手くて踊りが上手くて仕事に熱心と、スタッフ方からそうとう愛されていたようですね。
以下、ネタバレ少な目で概要と見どころを。
若村麻由美さんの七変化(芸者とか姫君とか花魁とか下女とか博徒とか忍びとか)をメインに据えつつ、若村麻由美さん演じる「お染」の兄上探し、両親の死の真相、抜け荷(密貿易)の摘発に努める幕府隠密組織の活躍……等々を物語の縦糸に据えて、クオリティの高い連続ドラマに仕立てられております。
全体的に人情&サスペンス寄りで、派手なチャンバラは少なく(多少はある)、若村麻由美さんの演技というか“芸”を魅せることに重きを置かれています。
ドラマストーリーにしても単純明快・勧善懲悪という感じではなくて、苦みや寂しさや辛抱が中心、でもささやかな喜びや笑顔や日常の中に救いはあるよ、という筋立てですので、落ち着いた大人の視聴者向けな印象を抱きます。
BGMがcobaさんで、OP・ED、挿入曲、どれも通常の時代劇をちょっと外したオシャレな仕上がりになっているのも面白い。
個人的にはサスペンスパートで流れる「デッ … デーン♪」という曲が好き。
若村麻由美さんの周辺を固める配役も実力派揃いで、内藤剛志さん、片岡愛之助さん、遠藤憲一さん、火野正平さん、古谷一行さん、南條瑞江さん等、豪華な顔ぶれです。
とりわけ片岡愛之助さんの意気込み高い演技と、火野正平さんのしっとり味わいある演技がドラマにハマっていて見応えありますよ。
「若いイケメン俳優がバッサバッサとチャンバラで無双する」という内容・陣容ではないだけに、広く耳目を集める感じではないのですけど……。
今でこそ頻繁に再放送がなされ、時代劇ファンの中でも知名度が上がってきているように思えますが、放送当時はコンセプトが新し過ぎたのか大々的にプッシュはされていなかったようで、私も再放送での視聴が初見でした。
若村麻由美さん、白い巨塔での財前教授の妻役で世間の話題をかっさらっていた同時期に、こんな良質な時代劇もやってたんやなあと後からかんたんしたという。
本当に、ストーリーも構成も配役も、がっつり「渋い」んです。
演出はオシャレで、軽妙で、若村麻由美さんがすごい華やかなんだけど、何もかもがハイクオリティ過ぎて、時代劇という大衆食堂のキッチンでうっかり割烹とか料亭とかの料理ができちゃった感じ。
売れるものを作ったというより、スタッフが作りたいものを作ったんだよ感。
この渋さ、現代2010~2020のシーンにはけっこうハマる、熟年のあいだのSNSで話題になりそうな気もするんですが、放送当時の2003-2004にはちょっと早かったかなあ。
ヒットして映像京都が息を吹き返してほしかったなあ。
ところで。
夜桜お染の見どころは上記のような「全編通じてのハイクオリティな渋い華」にあると思いますが、それとは別種の強い魅力を感じたところも。
第6話「お時殺し」の殺陣シーンなんですが……。
悪役は女性をだまして売り飛ばして小銭を稼いでるような小悪党。
芸者に扮した若村麻由美さんが小悪党を釣り出し、他の男衆が小悪党を追い詰めていく流れなんですけどね。
その殺陣がめっちゃ独特で、何か新しい境地を感じるんですよ。
殺陣シーンの冒頭。
鞠を手にして登場する若村麻由美さん(美人)。
鞠を顔にぶつけられる小悪党(三下)。
他の男衆に追いかけ回されて刺したり殴られたりする小悪党(三下)。
この男連中の殺陣(刀は未使用)もちゃんと楽しいんですけどね。
その間、若村麻由美さんが何をしているかというと……
殺陣を微笑みながら見つめる若村麻由美さん(美人)。
殺陣を眺めながらちょっとキメ顔をしてみる若村麻由美さん(美人)。
扇子を取り出して夜桜に目を移してみる若村麻由美さん(美人)。
……と、主人公は戦闘には加わらないで、その間ただただ美人ぶりを(視聴者に)見せつけ続けるという冷静に考えたら異常かつ超レアな殺陣シーンになっているのですよ。
自分が戦わない主人公は、水戸黄門(たまに杖で戦いますが)さんや信長の野望201Xの主人公や西洋ファンタジーで人気の召喚士やネクロマンサー等、さまざまいらっしゃいますが、彼らも仲間が戦闘している間、キメポーズを続けたりはしないですからね。
ふつうは応援したり指揮したりアシストしたり、とにかくなんかするじゃないですか。
戦闘中、主人公が戦わずに脈絡なく美人ぶりを見せつけ、なんなら戦闘そのものの存在を喰ってしまうという演出に新しさと何らかの可能性を覚えてしまうのです。
下手したら、ポケモンとかの方向性を曲げてしまうような発明かもしれない。
若村麻由美さんが主演であるが故の演出で、再現性は低いかもしれませんけどね。
ていうか他の話では若村麻由美さん、しっかり戦ってるんですけどね。
と、いろいろ書きましたが、まとめると夜桜お染は面白いのでおすすめですよ、という話でした。
いずれ若村麻由美さんに続くような役者さんが出てきてくれますように。
美人ぶりとか演技力とか日本舞踊とか美人ぶりとか、彼女を継ぐハードルが極めて高いだけに、この頃の時代劇ファンは彼女の記憶に縛られちゃいますよね。