アクタージュ12巻、羅刹女・乙篇がこれまでのアクタージュの物語をまとめ上げるような完成度になっていてかんたんしました。
デスアイランドの時といい、百城千世子さんは本当にこの作品そのものをまとめ上げてしまう力に満ちていてすごいキャラクターですね。
表紙は百城千世子版の羅刹女です。
前巻と対になるデザイン、白と赤漆の色合いがまことに美しいですね。
なお、カバーの下ではこの漫画初披露となる星アリサさんの映像作品(監督:黒山墨字/演出:手塚由紀治)が収録されているというサプライズが!
以下、一部ネタバレを含みます。
12巻は羅刹女・乙篇全体と、甲・乙両方の打ち上げ(前半)が収録されています。
端的に見どころを言えば百城千世子覚醒巻であり黒山監督実力判明巻でもあるのですが、それだけで済ますにはもったいないほど見どころが多い巻になっておりますので、登場人物ごとに名ゼリフと印象に残った活躍を。
夜凪景
燃えた
今日は勝つ
前巻甲編の顛末から、百城千世子さんに対して罪悪感を覚え、また、羅刹女を表現するための怒りの感情すら見失ってしまうという大ピンチ状態だったところに。
百城千世子さんを想って演じてくれなかった夜凪景さんに対する怒りを胸に演じる百城千世子さんの演技を見て燃える夜凪景さんという、二人がおばあちゃんになっても途切れることなく続いている超エモいメビウスを我々読者に与えてくださいます。
この主人公とライバルの関係、ほんと凄いな……
百城千世子
ごめんね
お客さんの顔 見ておきたくて
黒山墨字さん、星アリサさん、手塚由紀治さんという頼りになる大人たち、そして明神阿良也さんという良き共演者を得て、秘められた真価を発揮するに至った彼女。
星アリサさんの「私が教えてきたもの全部忘れたようね」、
明神阿良也さんの「こんなにも皆に愛されるようになったんだね」、
百城千世子さんの瞳に映るお客様たちの陶酔した表情、
映画・舞台芸術のよい雰囲気が凝縮されているような気がして素晴らしいシーンだと思います。
満を持して開始した乙篇においても、1巻の百城千世子さん初登場時を彷彿とさせる開幕が超よかったですね。
あの時の百城千世子さんはアクタージュという作品の連載を継続させた救世主で、今回はアクタージュという作品の成長を示すかのような象徴で。
まことに百城千世子さんというキャラクターは神がかっておられます。
明神阿良也
登場場面当の好感度向上度が一番高かったのが明神阿良也さんじゃないでしょうか。
セリフではないのですが、ラストで垣間見せた牛魔王顔に濡れない人なんているの!? という感じです。
あのシーンが好き過ぎて、明神阿良也牛魔王分の僅差で私は乙篇に1票を投じたい。
上で挙げた百城千世子さんの真価を引き出した場面に加え、単行本おまけでの「ココ置きな」「一緒に暮らそう」の破壊力も地味に高いんですよ。
黒山墨字
稽古で変えろ稽古で
というセリフの説得力高さに笑いました。そりゃそうだと。
いよいよ秘めていた実力を披露し始めましたね。
アクタージュの物語の先行きが楽しみです。
天知心一
本来の目的を忘れるな黒山監督
私たちは演劇人じゃない 映画屋だ
自分のことを映画屋だと位置付けしはりましたね。
ただのプロデュース屋とかゴシップ屋とかではないようです。
黒山墨字さんと「本来の目的」を共有しているということで、おそらくそれが夜凪景さんを主演にした映画ということなんでしょうけれど。
天知心一さん目線での動機は現時点でまったく不明なので、こちらもおいおい明らかになっていくのが楽しみですね。
山野上花子
…だって黒山さん あなたなら分かるでしょ…?
夜凪景さん羅刹女により、自らの怒りの虚無を突きつけられ。
百城千世子さん羅刹女により、自らの怒りを許す救いを見出すことになり。
怒りを失い、浄化された山野上花子さん。
甲・乙それぞれの羅刹女を見届ける山野上花子さんの表情、それぞれに奥深い魅力がございましたね。
なんか許された感じになっていることといい、
だんだんかわいい感じになってきていることといい、
ものすごくズルい立ち位置にいる彼女ですが。
個人的に一番スゲェなこの描写と思うのは、基本的に苦手な相手である黒山墨字さんに対して「あなたなら私の気持ちを分かってくれるはず」と酔いに任せてさっそく無自覚に重たい依存光線を放っている三十路美人のありさまです!
その他
王賀美陸さんの「いたい。」、
手塚由紀治さんが時々見せてくれる切れ長の目の表情、
柊雪さんの有能ブレイン描写、
和歌月千さんが「欲しくても手に入らなかったもの」で百城千世子さんに光が当たっているところ、
打ち上げの焼肉会にちゃんと殺陣指導の先生も呼ばれているところ、
なんかが好きです。
あと、茜さんも夜凪景さんの芝居が切れていたことに気づいていて安心しました。
以上、いい総決算巻でございました。
アクタージュの前半か中盤か分かりませんが、大きな節目になったような印象ですね。
人気投票もオーディションも盛り上がっているようで何よりです。
次回人気投票の際は私が推していた山野上花子・星アリサ・巌裕次郎・手塚由紀治・時代劇の映画監督あたりの妙齢キャラクター陣の得票も更に伸びますように(なお少年誌)。
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