文学技法を漫画にアレンジした作品「児玉まりあ文学集成」の2巻が1巻よりも取っつき易く面白くてかんたんしました。
なかなか説明が難しい漫画ですが、「児玉まりあ文学集成」は言葉や文学のレトリックを漫画で再構成してみたような実験的な作品です。
と言いながら、実は恋愛・萌え漫画なような気がしないでもありません。
主人公の笛田くん(狂人)とヒロインの児玉さん(狂人)が文学部活動に名を借りて楽しくいちゃいちゃしている様を詩のように切り取っている感じです。
ちょこちょこと著名な文学や漫画のパロディも出てきます。
中学生・高校生くらいでハマると後遺症が強そうなのであまりおすすめしませんが、もう少し物心がしっかりついた大人がコーヒー片手に余裕をもって読む分には大変居心地がよいように思います。
さいきん2巻が発売されました。
私の場合、1巻時点では読み慣れていないためか作品の楽しみ方に少し戸惑う面もあったのですが、2巻になってくると素直に笑いながら読み進める感じになっていました。
お気に入りは第十一話「クラスログレコード」。
笛田くんが自分の一日がつまらないと口にしたところ、児玉さんが
「結論を言うと笛田君の様なゴミの一日にも価値は見出せます」
「神話的に読み解くことでね」
と、神話文学の力を借りて日々の暮らしを解釈すればすごいことになる、と教えてくださる物語です。
例えば教室のゴミを捨てに行くだけの事でも、
共同体が生み出した悪い物を外部へ捨てに行くのは世界じゅうの神話に見られる冒険物語のパターン
地下のゴミ捨て場へ降りる事で笛田君は一度象徴的に死を経験し
新しいゴミ袋を持ち帰る事でクラスを救い英雄として生まれ変わった
などとのたまってくださる児玉さんが素敵。
「象徴的に死を経験し」ていうフレーズが好み過ぎます。
次に好きなのが、第十二話「マリアストラクチャー」。
レゴをアルファベットの一文字一文字に例え、レゴを組み立てること・デザインすることは文章を組み立てること・デザインすることに似ていると教えてくださるお話です。
それはそれでそうだねという感じなのですが、終盤の悪ノリが下品でいいんです。
二人がそれぞれつくったレゴ作品について。
その時 僕はあるおそろしい考えを思いついた
「… この2つ… 合体させられないかな」
「他人のレゴと合体…!?」
「児玉さんが嫌じゃなければ」
「… 考えた事もなかったけれど… でも可能なはずよねどちらもレゴなんだし
それに笛田君となら…」
「同意とみてよろしいですな?」
僕たちはレゴの合体を試みた
「なかなか上手くいかないな…」
「どちらも他人との接合を想定していないせいね」
「もう上下に重ねちゃおうか」
「エッ強引…」
「えい えい」
「あっ」
下品でたいへんいいですね。
やっていることは連歌的文芸手法の比喩ではあるんですけれども。
はっ、連歌会とは乱交パーティのメタファーだった……!?(迫真)
他の話でも、アル中の女子高生が出てきたり、日差しがまぶしいから死にたい女子高生が出てきたり、ポストウォーターという懐かしい商品名が出てきたりと、文学的悪ノリは留まるところをしらず単純に楽しい感じになっております。
言葉の「表現」に関心がある方であれば、なんとなしに愉快な作品だと思います。
こうした風変わりな漫画がちゃんと面白いところに、文学と漫画、それぞれの裾野の広がりを感じられていいですね。
ネタを考えるのも大変な漫画だと思いますが、連載が快調に続いていきますように。