円谷チャンネルで無料公開中のウルトラマンマックス9話「龍の恋人」を観ていたら、もしかして麒麟がくる復活22話「京よりの使者」はウルトラセブン「ノンマルトの使者」オマージュだったのかなあと思い当たりかんたんしました。
以下、畿内戦国史およびウルトラセブンに関する浅薄な知識をベースにした戯れ言ですのでご留意ください。
「ノンマルトの使者」についてはあえて解説しませんが、初代ウルトラマンのジャミラ回同様、子どもたちに「正義とはなんぞ」を問いかける名作ですので興味があれば調べてみてくださいまし。
やっぱり面白いなあとか、
三好長慶さんお亡くなりになっちゃったなあとか、
でも明智光秀大河の折り返しまで三好長慶さんが生きてたのは奇跡的だなあとか、
色々とかんたんする点が多くてタイトル名がウルトラセブンオマージュなんじゃないかという話題をすっかり失念しておりました。
どちらかというとパッと連想したのはハイロウズの「日曜日よりの使者」の方で、越前に逼塞している明智光秀さんを「どこか遠くへ連れてってくれる」「(出家しますとか)適当な嘘をついてその場を切り抜けるのも上手な」細川藤孝さんステキだなあとか当初は考えていたんですよね。
以前、第6回「三好長慶暗殺計画」と「セブン暗殺計画」を引き合いに、確かに三好長慶さんがウルトラセブンに似ているのは周知の事実ですよねということを書いたことがあるのですが、
麒麟がくる「第六回 三好長慶襲撃計画 感想とウルトラセブン」 - 肝胆ブログ
今回の「京よりの使者」=「ノンマルトの使者」であることを踏まえれば、
「足利義輝」=「ノンマルト」
ということは確実視してよいでしょう。
地球の先住民ノンマルトが、現在の人類に追われて海底に逃げ延びたのと同様。
室町幕府の足利将軍もまた、三好家や織田家に代表される成り上がりどもによって京から追放されてしまうのであります。
「京は公方様のものなんだ」
「三好家が京を侵略したら、公方様はだんぜん戦うよ」
「公方様は悪くない! 三好家がいけないんだ! 足利家は三好家より強くないんだ! 攻撃をやめて!」
ハマり過ぎててヤバイ。
NHKさん、これは大胆過ぎやしませんか。
かつてのちびっ子たちがノンマルトに同情し、ウルトラセブンやウルトラ警備隊の正義に揺らぎを感じたのと同じように。
現代の大河ドラマ視聴者も、まずは足利義輝さんに同情し、三好長慶さんや三好家の横暴に憤りを覚える訳なのです。
されど。
原典のノンマルトの使者も、そう単純な話ではございません。
そもそもノンマルトは本当に地球の先住民だったのか。
侵略宇宙人がフカしていたんじゃないのか。
ノンマルト側にも海底に追いやられるだけの罪や問題を抱えていたのではないか。
ノンマルトは海底資源探査船を攻撃したりと人類に現実の危害をもたらしており、ウルトラ警備隊はあくまで防衛に努めただけではないのか。
等々の「よく考えるとどっちかだけが正しいというものでもないよな……」「どうしたらよかったんや……」要素に満ちておりますので。
麒麟がくる視聴者も、やがては「三好家には三好家の言い分や道理があるのでは」「どうしたらよかったんや……」という気持ちを抱くに至ることでありましょう。
いや、本当にノンマルトオマージュというのは深いものがあると思うんですよね。
ウルトラセブンたる三好長慶さんは、足利義輝さんが放ってくる刺客や軍勢を撃退はしたけど、足利義輝さんを直接弑逆してはいない。
むしろ、足利義輝さんと敵対することに葛藤し続けている。
それでも、民の平和のために葛藤を呑み込んで、足利義輝さんが相手でも戦うんだ。
ウルトラ警備隊たる三好三人衆は、当初は足利義輝さんを弑逆するつもりまではなかったけれど、現場での咄嗟の判断で永禄の変を起こしてしまう。
「やっぱり攻撃だ!」
「二条御所は完全に粉砕した! 我々の勝利だ! 天下も我々三好家のものだ!」
※美濃のマムシに育てられた明智光秀さん=毒蝮三太夫さん説は一旦忘れてください。
足利義輝さんは、それらしい大義名分を有してはいるものの、計画性のないテロリズムで治安を乱しているのも事実。
更に、大事な大事な取次の人選や方法でもミスっている気がするぞ。
そもそも、ノンマルトを海底に追放したのは現人類の発展によるものなのだから。
足利将軍が何度も京から追放されたのもまた、当時の社会そのものの発展に伴う構造的帰結だったのではないか?
こんな風に、畿内戦国史において現在進行形で議論が盛り上がっていて、いまだ定説の形成にまで至っていないような難しい論点を、「ノンマルトの使者」を投影することで非常に分かりやすく視聴者に伝えてくれるNHK!!
学問とドラマ演出の、クオリティ高過ぎるマリアージュに脱帽です!!!
以上、NHKさんやっぱ半端ねェわという記事でございました。
こんな深い仕込みをしているくらいですから、麒麟がくる全般においてまだまだ気づいていない演出や伏線もあるんでしょうね。
来週あたりかもしれませんが、足利義輝さんの散り際が美しいものでありますように。
三好家へのフォローも時々はありますように。
麒麟がくる「第二十三回 将軍の器 感想 足利義輝の美しさ」 - 肝胆ブログ