じゃりン子チエの文庫版13巻。
大きな動きはない巻ですが、小鉄さんの扱いが徐々に悪化しているのがいじらしくてかわいいのにかんたんしますね。
収録されているお話は次のとおりです。
- かなしい気分でイーライラ
- 友達の友達はどこまで友達…?
- 幸福のハンコ
- まだらのテツ
- かたぎ屋の厄除け騒動
- 当選「ヨシ江ちゃん」!!
- 「ヨシ江ちゃん」で大騒ぎ
- マサル宿替い
- 根性の腰ぎんちゃく
- マサルのお別れ会
- 寝込みを襲う無法者
- 百年目の再会
- 雨の日のおみやげ
- おジィはんの反逆
- 根性くんの慰謝料
- おジィはんの自立
- ホルモンの行方
- 猿マネは儲からない
- 池の上での対話
- 泳ぐ学級委員
- どこかで見た人
- 歩く「くいだおれ」
- 困った時の猫頼み
- 写真の中のあいつ
以下、ややネタバレを含みますのでご留意ください。
見どころとしましては、コケザルとマサルの評価アップでしょうか。
コケザルは喫煙や詐欺や粗暴等で知られるクソガキですが、この巻では意外と読書にハマったり、なぜか学級委員(チエちゃんとは別の学校)に選ばれていたり、相変わらずヨシ江はんに懐いていたりいたします。
彼は両親や教育機会に恵まれないで育った子どものリアルさがありますので、それだけに「環境が違っていれば別の才能が伸びるのでは」感に希望があっていいですね。
冷静に考えればコケザル、そもそも頭いいですし。
マサルは転校話が持ち上がって(それは結局立ち消えになるのですが)、マサルがいなくなる前提で他所見くんなる他の子が学級委員に選ばれまして。
で、他所見くんが上手くリーダーシップを発揮できない様子を見て、クラスの子どもたちがマサルを再評価するという。
その間、マサルの腰ぎんちゃくであるタカシもなかなかの男を見せてくれたりして、実に朗らかなエピソードでした。
当て馬にされた他所見くんは気の毒でなりませんけどね。
あとは、日ごろ目立たないおジィはんが注目を集めるエピソードも収録されています。
まあ、結局はテツやおバァはんが話を回し始めるので、そんないうほど活躍はしないのですが……。
おジィはんのようなキャラへの光の当て方って難しいんだなあ、と再認識です。
さて、お話も13巻まで進んできまして、気がつけば猫の小鉄への扱いがずいぶんとぞんざいになってきております。
もともとの小鉄の人柄の良さもあって、チエちゃんやアントニオジュニアからの巻き込まれ属性が際立っているんですよね。
小鉄がらみのやり取りセリフを引用しますと。
ジュニア
「今日からチエちゃん春休みやわな。ほんなら春休みが終ると今度の新学期でチエちゃん何年生になるんや」「しっかり踏んばって答えんかい」
チエちゃん
「ほんまにもぉ…あんたもこの頃役に立たんなぁ」小鉄
「きついことゆわんといてくれ」
大好きなチエちゃんから、素できついこと言われて涙目になる小鉄がかわいそうです。
小鉄
「とにかくこのことすぐチエちゃんに知らせよ」ジュニア
「おまえチエちゃんの手下に徹しとるなぁ」
ジュニアのイヤミがキレッキレです。
小鉄
「ただいま~~ わ~」チエちゃん
「なにがわ~やこら よぉ見んかいな」小鉄
「な…な…なんやそれ ウンコやないのかぁ」チエちゃん
「あんたもええ根性してるなぁ ウチびっくりしたわ」小鉄
「び…びっくりて…… ワシもびっくりしたなぁ」チエちゃん
「あんたいつからそぉゆうタチの悪い猫になったんや なんかウチに不満があるのか」小鉄
「ふ…不満て……」チエちゃん
「あんたウチとこに来て何年になるねん」小鉄
「な…何年て…… チエちゃんが五年生の時やからその…どぉゆう計算になるんですかね」チエちゃん
「猫が赤ちゃんの時とか急に宿替いした時とかに家でウンコするゆうのは聞いたことあるけど ええトシしていきなりウンコするゆうのはウチにケンカ売ってるのか」
濡れ衣を着せられる小鉄。
それだけでも気の毒なのに、チエちゃんの詰め方が小学五年生と思えない迫力に富んでいてすごい。
小鉄
「死ぬとこて……おまえワシより元気やないか」ジュニア
「なにが元気じゃ おまえみたいな先見えてるオッさん生かしといたら少年のオレが先に死ぬことになってしまうんじゃ~」
石を持ったジュニアに追いかけまわされる小鉄。
いろいろあって夢洲あたり?に行ってしまい、そこから小鉄が道を間違えて琵琶湖まで旅して、ようやく大阪に戻ってこれたようです。
小鉄
「チエちゃーんワシや親友の小鉄や ワシやっと帰って来たで~」チエちゃん
「あっ 小鉄ええとこに帰って来た ちょっと留守番しとき」小鉄
「チエちゃーんワシ久しぶりに帰って来たのに なんかもぉちょっと温かい言葉を…」チエちゃん
「ええなぁ猫は… 毎日遊びまわっておなかすいた時だけ帰って来たらええんやから」
猫の心、飼い主にまるで通じず。
他にも、チエちゃんに捏造観察日記の材料にされたりして、とにかく小鉄がいじらしくてかわいい巻でした。
とはいえ、そんな中でもチエちゃんと一緒にテツへイタズラしてキャッキャニャッニャ笑いあったり、ジュニアをからかったり、いい塩梅に幸せそうなんですけどね。
巻のラストでも、写真家の前で逆立ちを見せてあげたりするサービスマインドがいかにも小鉄らしくて男前です。
いちばん人格も実力も優れているのに、いじられ苦労性キャラに身を置いて幸せそうにしているのが小鉄の器量だと思いますね。
小鉄とチエちゃんのような楽しい関係に恵まれる猫が多くありますように。
「じゃりン子チエ 文庫版12巻 感想 マサルの母離れ挑戦」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ
「じゃりン子チエ 文庫版14巻 感想 掛け合いが楽しい巻」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ