じゃりン子チエ文庫版17巻。
これまでにも時々登場していた怪しいお酒「ばくだん」がますます話をかき混ぜるようになってきてかんたんしました。
いまよりは多少おおらかな昭和時代とはいえ、「ばくだん」を小学生が売っている姿を堂々と掲載していいのだろうか……笑。
17巻収録の話は次のとおりです。
- 商売繁盛のきざし
- 良い子は木刀で育つ
- 雑誌の「チエちゃん」
- 「下駄ばきグルメの店」繁盛記①
- 「下駄ばきグルメの店」繁盛記②
- 「下駄ばきグルメの店」繁盛記③
- 「押し売り出版」は二度テツをくすぐる
- 「押し売り出版」倒産計画
- 「押し売り出版」はどこじゃ
- 突撃「押し売り出版」
- 帳面の怪
- コケザルの入院!?
- 闇に動くモノ
- 夏の責任
- 責任の逆噴射
- サービスの配達
- 始業式まで夏休み
- 宿題後遺症
- ピアノ・リサイタルの夜
- 恐怖がまた来る
- 文潮新人賞
- 「花井拳骨」論を読む
- 続「花井拳骨」論
- 地獄のバースデイ・パーティー
以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。
前半は、雑誌でチエちゃんの店が取り上げられて大繁盛する話と、裏側でテツとコケザルがヤクザを強請る話。
中盤後半は、マサルのオジさんにかかわるお話を軸にバタバタと様々な騒動がおこる展開となります。
まずは各登場人物の名ゼリフを。
チエちゃん
服なんか着がえるより
"ばくだん"でもひっかけたい気分やわ
マサルの誕生日会に呼ばれ、小学生が言ってはいけないセリフを吐くチエちゃん。
マサルの母の暴走で、チエちゃんヒラメちゃんはもとよりマサル自身も憂鬱極まりない状態になっているのが笑えます。
マサル
オレが悩んでるのはお母はんがメチャメチャ機嫌ええからなんやど
オレとこのお母はんええこと続き過ぎて完全に自分を見うしのうてしもてるんや
あ・・あれっ
あれっ
な・・
あ・・
あ~~脱ける~~~
髪の毛が脱ける~~
さすがにここまでいくと可哀想すぎますね。
雑誌記事
マイナーなホルモンにパワフルなバクダン
ノレンをくぐるとベアナックルのリングサイドにいるようなワイルドなフィーリング
チエちゃんのお店が雑誌で取り上げられ、女子大生等が大挙してやってくることに。
ベアナックルのリングサイド、という表現が秀逸だと思います。
それにしても雑誌記者が絶賛するくらい、チエちゃんの店のホルモンはおいしいんですね。おバァはんの仕込みが上手いのでしょうか。
テツ
女学生
ばくだん呑んで
退学生
ばくだんを吞み始めた女子大生を見て一句読むテツ。
意外な文学性を発揮しますね。
この後の回で、悩める文学青年たるマサルのオジさんを救うのもテツの隠れた人徳でしょうか。
ヤクザでも五発どつかれたらサラリーマンにサービスするで
夏休みの宿題に励むチエちゃんにちょっかい出して、ソロバンで五発も殴られたテツ。スイッチの入ったチエちゃんは無敵であります。
おバァはん
これは悪い酒でっけど通の者はけっこうばくだんを注文しまっせ
これこれ
嫁入り前の娘はんが
あの…
ばくだんは下品な酔い方しまっせ
ばくだんについて的確に勧めたり止めたりするおバァはん。
ばくだんを扱うお店サイドの認識が伺えますね。
お好み焼屋のオッちゃん(百合根)
アル中のプロとして忠告するけどな
ばくだんのチャンポンは人間変わるぞ
さぁばくだんで仕上げよかい
コップでばくだんは素人や
どんぶりもらおかい
ばくだんと言えばこの方ですね。
別れた女房に引き取られた息子関係で、案の定荒れ狂います。
アル中のプロ、という表現も今日的には全然あかん気がしますね笑
さて、このように猛威を振るう「ばくだん」。
これはやっぱり、同名のまっとうな方のお酒ではなくて、戦後に粗製乱造されたカストリ的なやつの方なんでしょうね……。
文庫版15巻でチエちゃんがお好み焼屋のオッちゃんにばくだんを注ぎながら
これやこれや
ははは
悪酔いして暴れるんやったらこの「ばくだん」が一番なんや
オッちゃんやったら一本呑んでも眼ェつぶれへんやろ
とコメントしてはりましたが(オッちゃんのアル中化にチエちゃんも確実に寄与している気がする……)、「眼ェつぶれる」という表現が出るあたり、この「ばくだん」は限りなくメタノールに近いアカンやつということなんでしょう。
チエちゃんとおバァはん、どこで仕入れてるんでしょうか……。
こんな酒を出してチエちゃんが補導されたりお店が潰されたりしたら不幸っぷりにますます磨きがかかってしまいます。
チエちゃんのばくだん酒提供がおおっぴらにならず(雑誌に載っちゃいましたけど)、これからも慎ましく暮らしていくことができますように笑。
「じゃりン子チエ 文庫版16巻 感想 ヒラメちゃん最高やなとなる鉄下駄編」 - 肝胆ブログ
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