じゃりン子チエの文庫版18巻、テツを弱らせるためにおバァはんが仕掛けた謀略がエグ過ぎる上、結果巻き起こった騒動まで一人で解決してしまう無双っぷりにかんたんしました。
18巻収録のお話は次の通りです。
- 寝小便作戦
- 金メダルなんていらない
- 絶体絶命のテツ
- 寝小便の勝ち!!
- 本物の寝小便
- 怪人クモ男
- テツ壊しは誰だ
- 大団円はいつのこと
- 恐怖の「ばくだん」女
- テツなんて守りたくはないけれど
- 明るく楽しいお正月に向かって
- 初詣解決篇
- 出前で失敗 お地蔵さん
- 恐怖の「人間マンホール」
- 「人間マンホール」なんてカモ
- 対決の日の前祝い
- 対決「人間マンホール対ばくだんの王者」①
- 対決「人間マンホール対ばくだんの王者」②
- ヒラメちゃんのスカウト
- ヒラメちゃんはモデルさん
- 儲かる顔は みな同じ
- 丸太はヒラメのお姉ちゃん
- ガムテープのテツ
- テツの顔は ウン万円
以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。
前半がおバァはんがテツにしかけた心理作戦、弱ったテツに対して送られたヤクザの刺客、そして話をややこしくするカップルの乱入、が入り乱れる込み合った長編話、
中盤がお酒をいくらでも飲むことができる「人間マンホール」男とお好み焼屋のオッちゃん(百合根)との酒飲み対決のお話、
後半はヒラメちゃんが絵のモデルとしてスカウトされるお話、
という構成になっています。
とりわけエグいのがおバァはんの謀略でして。
- テツは幼少期なかなか寝小便が治らなかったトラウマがある
- おバァはんがテツを弱らせるために寝小便作戦を思いつき、チエちゃんに協力を要請する
- チエちゃんがテツに「寝小便は大人になって再発することがある」と囁く
- 寝ているテツのふとんの中に、毎晩小鉄やアントニオジュニアがコップ1-2杯のお湯を注ぐ
- ガチで寝小便が再発したと思い込んだテツは心身が消耗していく
- そのうち、テツは本当に寝小便が再発し心身が荒廃してしまう
という、「やり過ぎやろ……」「ほぼマインドコントロールの手口やんけ……」感満載の内容となっているのです。
ババァ怖え。
これは読者がマネしたらあかんやつですね。
じゃりン子チエはたまにブラック過ぎるギャグが出てくるのが侮れないです。
その上で以下、各登場人物の名ゼリフを。
チエちゃん&小鉄
「小鉄…」
「ハイ…用意してあります
ちょうど水がオシッコの温度に」「よっしゃ ほんなら頼んだで」
エグい謀略の片棒を担ぐ少女と猫。
小鉄が完全にチエちゃんの舎弟になっているのがウケますね。
こういう時だけスムーズに意思疎通できているのもジワジワきます。
おバァはん&チエちゃん
「今日のスキヤキの味はちょっと濃い目にしまひょか」
「濃い味がテツ好きやから」
「それもありますけど
あとでノド乾きますやろ」「あ…」
謀略を畳みかけるおバァはん。
マジ怖え。
小鉄&アントニオジュニア
「カラカラやて……」
「そぉなの………
でも砂漠で遭難してもやっぱり寝小便はしちゃうのよ」
水分を取らなくなったテツに対しても遠慮なく偽寝小便をデリバリーし続ける悪猫二匹。彼らもテツ相手なら遠慮なしなのが酷い。
テツ
「ボク…
ボクほんとに自分が分かんないのよ」
本当に寝小便を再発した上、幼児退行の症状まで出てきたテツ。
これはほんまにアカンやつです。
まあテツなので雑に治って、ヤクザをおびき寄せるために弱ったふりをし続けるんですけどね。
ヨシ江はん
「そのうちて………
お父はんもぉとっくに元に戻ってますがな」
「そんなことお父はんの顔見たら分かりますがな」
テツが回復した上でわざと弱ったふりをしていることを、誰よりも早く気付くヨシ江はん。この辺りの彼女の洞察力は相変わらずすごいですね。
この後、ヨシ江はんに何故か浮気をしている嫌疑がかかり、そのせいでテツは再び精神が荒廃するのですけど、その際も事態を概ね正確に察して適切に行動しているのがさすがです。
おバァはん
「さぁさぁ正月正月
みんなでええ正月にしまひょ
もぉなにも考えることおまへんで」
混迷を深める事態に対して、結局ひとりでヤクザの刺客と対峙し、ヨシ江はんの浮気疑惑の原因を捕らえ、関係者を集めて解決篇を始めてしまうおバァはん。
もともとは自分が蒔いた種なのに金田一少年やコナン君みたいな役割を図々しくやっているのがウケますね。
おバァはん&チエちゃん
「ウチ今気合い入れて店やろと思てたとこや」
「うっ…たまりまへんなぁ
チエのその元気だけが残りわずかなわたいの人生のたった一つの光ですわ」「またまた
みんなはまっ暗なウチのまわりでおバァはんが一番元気やてゆうてるで」「だ…誰だすそんなことゆうてるのは」
「それよりおバァはん残りわずかの人生やったら
お客さんウチの店にまわしてや」
そんなこんなで再び日常が戻った二人。
朗らかに会話していますが内容はなかなかスパイシーです。
画家(野見山正蔵)
「いい…本当に素晴らしい
まるで劉生の麗子像だ
動かないで!!
よく見せてくれ
たまらない平面だ」
ヒラメちゃんに創作意欲が刺激された著名な画家さん。
本人としては心から賞賛しているのですけど、あまり褒められている感じがしないのが複雑ですね。
この画家さん花井拳骨氏の旧友だそうで、どうも花井センセの周りの大人はみんなヒラメちゃんファンになってしまうようです。
複雑に練り上がった物語がバタバタ解決していくのが楽しい巻でしたね。
読んでマネをするアホな読者が出てこないことを祈るばかりです。
こういう喰えないババァがいつまでも元気な大阪でありますように。
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