じゃりン子チエ文庫版22巻。
アントニオの亡霊が再び復活したり悪徳業者とテツが戦うのかと思ったらおバァはんが無双したりテツはテツでヨシ江はんの言うことを素直に聞いてしまったり猫たちは今日も人間並みの行動をしていたりと、相変わらず見どころの多い巻になっていてかんたんしました。
月に1回のじゃりン子チエが楽しみになっているので、まだまだ長く付き合っていきたいものであります。
22巻に収録されている話は次の通りです。
- 拳骨斃る!!
- 拳骨の帰還
- 拳骨起きたら三人こけた
- 命の恩人はパン一で帰る
- タレ目のチエちゃん
- 恐山の呪い
- 真夜中の呪い消し
- 百合根にカツオ節
- 何かが夜来る
- アントニオ百合根
- 恐山で起こったこと
- 百合根が出るかアントニオが出るか
- ガンバロウ君
- ガンバロウ君は一発屋君
- 50万円クイズがもう一枚
- 開けてびっくりダンボール箱
- 元祖・標準語「しゃべくり」協会
- 丸太君の決意
- こわいこわい会社訪問
- 丸太君の生還
- 反乱劇の真相
- 黒幕は誰だ
- 門出の宴
- クイズでペケは大正解
以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。
オープニングで花井センセ(拳骨)が倒れるもすぐに回復する話、
それからアントニオが憑依したお好み焼屋のオッちゃんが暴れる編、
それから悪徳商法業者に丸太君(ヒラメちゃんの兄)と若い青年とテツが挑む編、
が収録されている巻になります。
花井センセが倒れてしまったのは心配ですね。
結石の痛みが原因で、すぐに治って良かったんですけれども。
作中では無敵キャラの一人ですが、テツやおバァはんに比べるといい意味で常識の範疇にいる人なので、これからも健康にはご留意いただきたいものです。
アントニオが前巻に続いて復活を遂げたのにも驚きです。
連載当時も好評だったんでしょうか。
アントニオ父は出てくるたびに悪辣ぶりが際立ちますので、毎々ジュニアが曇ってしまうのが気の毒かつかわいいんですよね。
チエちゃん同様、現代風に言えば毒親に振り回されつつも頼もしく生きているのが健気であります。
悪徳商法業者編は、じゃりン子チエシリーズで定期的に登場する悪役の新しいパターンですね。
単純なヤクザではもはやテツの敵役になれないので、こういう風に実際のあくどい商売であったりサブキャラクターの成長譚を混ぜたりする展開を挟むことで物語に厚みが出ているように思います。
以下、各キャラクターの名ゼリフを。
チエちゃん&テツ
「ウチ久しぶりにテツのシャツ買いに行ったら
オバちゃんに眼がきつなったて言われたんやで」
「名誉なことやないか」
「どこが名誉やねん」
「ゆうとくけど
だまって相手ビビらす眼つきになるには
相当な実践積まないかんのやど」
「なんの話や」
漫画の作画がだんだん全体的にツリ目になってきていることをセルフパロディしたかのようなやり取りがウケます。
この後、目にセロテープを貼ってタレ目になろうとするチエちゃんがかわいいんですよ。
花井センセ(拳骨)
「それワシの腹にたまってて
小便と一緒に出てきた石や」
その辺で拾ってきた10cmくらいありそうな石をテツに見せびらかす花井センセ。
年甲斐もない冗談でからかうところがこの先生の愛嬌ですね。
チエちゃん
「なんやあ……
ジュニアがお好み焼焼いてるのか」
百合根氏がアントニオに憑りつかれて猫化してしまったため、代わりにお好み焼を焼いているジュニアを目撃したチエちゃんのリアクション。
猫がお好み焼を焼いているというまあまあ衝撃的な光景のはずなんですけど、割と受け入れられているチエちゃんの世界観がイカレていて好きなシーンです。
マサル母&マサル
「お母はん
もぉええから早よ帰ろ」
「なにがいいのよ
マサルは呪いのおかげで勉強も手につかず
お寝しょまでするようになったのよ」
「あ~~」
アントニオ事件を、チエちゃんによる自身への呪い攻撃だと勘違いしたマサル。
皆の前で母親に寝小便をばらされるという地獄に遭うところが可哀想です。
アントニオin百合根&ジュニア&小鉄
「ジュニア~~~
早よ鼻クソぶつけんかい」
「は…はいっ」ピチッ…
「おまえなんちゅう親子じゃ」
アントニオの亡霊を百合根氏から引き離すチエちゃんの策を実行するまで、父親に素直に従うふりをするジュニア。
鼻クソをぶつけられても諦め顔に徹している小鉄の老成っぷりに惚れ直してしまいますわ。
ヨシ江はん&テツ
「あんた早く」
「ハ…ハイ
呑め~~こいつ
ヨシ江ちゃんのゆうこときかんかい」
対アントニオ策戦(百合根に酒を呑ませまくる)をいぶかるテツに対して、即行動を依頼するヨシ江はん。
ヨシ江はんに言われたら素直に動くテツがかわいいし、いざという時の竹本一家の底力を感じさせてくれますね。
小鉄&ジュニア
「おまえ
もぉ二度と生のアントニオと
話したいなんて思わんでくれよ」
「ああ…
オレ生の父さんを知れば知るほど
絶望に襲われるもんな」
すべてが解決してからの二匹の会話。
こんなに名残りが尽きる成仏シーンも珍しい気がしますね笑
チエちゃん&ヒラメちゃん
しゅぱ しゅわ しゃぱ
んぱっ しゅぱ
「おいしいなぁ」
「ほんま……おいしいわ」
「よぉ冷えてるし
ウチなんぼでも食べられそう」
おバァはんにもらったスイカを食べる二人。
こうしていると小学生らしくてただただ愛らしいですね。
テツ
「あなたは五十万円クイズに当選されました
?
?
つきましてはまずカセットテープとデッキの代金
二十万円を四日以内に送金下さい………?」
賞金付きパズルで客の個人情報を収集する送り付け商法に、まんまと引っかかったテツと丸太君と青年。
テツを騙した時点で業者にとっては死刑フラグですね。
丸太
「原因はボクやから責任取りたいねん
オジさんだけにまかしてないで
今度こそはボクも一緒に」
悪徳業者に騙されたのは自分が悪い……と気に病んで、悪徳業者にちゃんと反論しに行こうと決意を固める丸太君(ヒラメちゃんの兄)。
ヒラメちゃん一家はいざとなれば真面目な根性を見せるのが魅力的だと思います。
おバァはん
「ババァてなんだんねん」
最終的にチエちゃん家まで殴り込んできた悪徳業者を一蹴するおバァはん。
巨漢を一撃で店の外まで吹っ飛ばしていますが、このババァどんなけ強いんでしょう。
なんか巻を追うごとにバトルセンスが磨かれていっているような気がします。
チエちゃん&小鉄
「ちょっとおもてに水まいて
ウチ店の中掃除するから」
「は…はい
水まきね……」
ナチュラルに猫へ指示出しをするチエちゃんと、
当たり前のようにバケツへ水を汲んで水まきをする小鉄。
今日もじゃりン子チエワールドは平常運転です。
消費者問題として悪徳商法が取り上げられるようになってきたのはまさしくじゃりン子チエが連載されていた1970年代頃でしょうか。
クーリングオフ制度や訪問販売法等が整備されていったのもこの時代ですね。
それから50年、いまも悪徳商法は多様な手口で無辜の民を苦しめております。
じゃりン子チエであれミナミの帝王であれこち亀であれウシジマくんであれ、さまざまなルートであくどい手口の恐ろしさが知れ渡るのはいいことですね。
警察や弁護士や消費生活センター等々の地道な尽力がますます世の中に浸透して参りますように。
「じゃりン子チエ 文庫版21巻 感想 アントニオの霊」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ
「じゃりン子チエ 文庫版23巻 感想 チエちゃん VS 米谷さん」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ