タイトルのアクが強い児童文学「地獄たんてい織田信長」がアクの強いギャグ&歴史小ネタがまんさいでかんたんしました。
歴史好きのパパママが子どもと一緒に読んであげるといいかもしれない。たぶん。
内容としましては、
小学六年生の男の子「横山情也」さんが、
クラスメイトの歴史好き女の子「果報」さん、
同じく地獄から転校してきた豊臣秀吉さん(猿)とともに、
地獄を抜け出して悪事を企む戦国武将3名を追跡する……
というお話です。
内容も絵面もたいへんアクが強くて素敵ですね。
約200ページで、大人なら20分くらいで読めるくらいの文章量です。
全体的にさいきんの児童文学らしいギャグ&ツッコミ多めの内容ですから、小学生なら中学年くらいから楽しんで読むことができるのではないでしょうか。
イラストも小学生が笑いそうな圧強めでいい感じですね。
テイストとしてはコロコロのマトモくんのような、主人公がツッコミ役で周囲はひたすらボケまくるような感じの作品です。
戦国時代の小ネタを散りばめているのも、小学生の歴史趣味への導線になっていていいなあと思います。
詳しいネタバレはいたしませんが、例えば初めて出会う敵は今川義元さんでして。
今川義元さんがノリノリで
「地獄闘法! 寄親寄子制の術!」
と怪しい技を繰り出してくださいますし(術の詳細は伏せます)、
クラスメイトの果報さんも
「あれは上下関係を親子関係に見立てて、今川義元が兵を動員するときとかに使った軍事システムだよ!」
などと対象年齢を間違ってそうな解説をしてくださるのがウケますね。
(ちなみに桶狭間の戦いについて、今川義元さんの上洛説がシレっと否定されていたりもします)
個人的に一番笑ったのは、中盤から後半にかけて、織田信長さんが主人公横山情也さんの見えている地雷を思いきり踏み抜き、離反されてしまうシーン。
さいきんネタにされがちな「織田信長さんは家臣や同盟相手の地雷を踏み抜く」を、まさか小学生相手にやってくれるとは。
もちろん(史実もそうなのかもしれませんが)信長さんには信長さんなりの深謀遠慮があって地雷を踏み抜いたのであり、最終的には和解・共闘に至るのですけれども。
どんなジャンルも子どもや若者が入ってこないと衰退してしまいますので、こういう最近の研究ネタもある程度取り入れた、楽しい子ども向けコンテンツが出てくるのは喜ばしいことだと思います。
出版業界の中で、児童向け書籍のマーケットは例外的に好調みたいですしね。
戦国時代に限らず、歴史ネタを活かしたイケてる児童文学が増えていきますように。