じゃりン子チエのスピンオフ漫画「帰って来たどらン猫」が昭和の任侠映画&人情映画的コミックとしてパーフェクトな出来栄えでかんたんしました。
はるき悦巳先生の脚本・構成力は本当に素晴らしいと思う。
「じゃりン子チエ番外篇 どらン猫小鉄奮戦記 感想」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ
小鉄とアントニオジュニアをW主人公にした番外編コミックとなります。
チエちゃんは出ません。(名前だけは出ますけどね)
お好み焼き屋のオッちゃん(百合根)はちょっっとだけ出ます。
じゃりン子チエシリーズにおいて、二匹の猫が主人公を務めるときは任侠ものになることはよく知られています。
過去は各地で武名を轟かせながら現在はのんびり暮らしている小鉄と、
新進気鋭のルーキーとして名を馳せているアントニオジュニアとの、
コンビアクションと味わい深い人情が見どころになっているのです。
今作は単行本1冊通しての長編で、ざっくり言えばアントニオジュニアを慕う猫たちがひどい目に遭い、小鉄とジュニアがリベンジを喰らわせにいくような物語になります。
以下、ネタバレを含みつつ、猫たちの名ゼリフを。
小鉄
「ワシはジュニアのこと
ええ奴やと思ってるよ」
自分のドッペルゲンガー的な猫を見て自我が揺らぐアントニオジュニアに対して、あたたかい言葉をかける小鉄。
スッとこういうセリフを言えるあたりが格好いい大人です。
残念ながらジュニアの揺れる心には届かないのですけど。
アントニオジュニア
「わいて来たなザコ~~~
全員集合せえ~~
まとめて相手したる~~」
悪行猫のアジトに殴り込み無双し始めるジュニア。
実力では若手ピカイチ、分かりやすく観客が盛り上がれるシーンですね。
夜啼きのフクロウ&小鉄
「オレはてめえに会うために
悪いことはなんだってやって来たぜ
ホーッ
噂を聞けば正義の味方が
しゃしゃり出て来ると思ってな
ホーッ」
「ワシ
おまえのような奴の
噂が入って来んとこで生きとるんや」
悪行猫のボスは、かつて小鉄に喉を潰された猫でした。
悪党の口上をスッとかわす小鉄が任侠モノのヒーローっぽくていいぞ。
小鉄
「ジュニア
今降ろしたる
邪魔する奴は覚悟してかかって来いよ
ここでパチンコ屋やれるくらいタマ盗ったる」
敵の罠にはまって捕まってしまったジュニアに代わり、無双し始める小鉄。
こういう二人のキャラクターの違い、それぞれの活躍っぷりがコンビ物のアクション映画感があって大好き。
モブ猫(チンピラ)
「な…なんでや」
「儲かってライトアップするようになったら
客層かえるんかい」
小鉄とジュニアに博打場が壊滅したところにやってきた客の猫たち。
悪行猫残党たちに「ここはもう終わりです」と言われて、「儲かったら客層かえるんかい」とキレ返すのが大阪の庶民的チンピラっぽくていいシーンやなと思います。
ちなみに、「ライトアップ」とは敵ボスが仕掛けた罠で建物のあちこちに電流が走っているためです。
ネタバレはしませんが、敵ボスを倒してからのエピローグ×2がめちゃくちゃいいんですよ。ほんまに古き良き日本の映画的でね。
全部で250ページほどの、他のじゃりン子チエ文庫に比べれば少ないボリュームの番外編となりますが、良い映画を見たような満足度はひとしおであります。
おすすめ。小鉄もジュニアもかわいいし。
そんなマーケットが世の中にあるのかは分かりませんが、戦う猫たちのドラマとしては随一の完成度だと思います。
じゃりン子チエのリスペクト作品として傑作「ドンケツ」が生まれているわけですし、そのうちどらン猫リスペクトな作品も現代に登場いたしますように。
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