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「アクタージュ9巻 感想 ああ腹が立つ腹が立つ」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ)

アクタージュ9巻、夜凪景さんと百城千世子さん、それぞれの炎がいい感じに燃え盛ってきてかんたんしました。

 

www.shonenjump.com

 

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表紙は山野上花子さんです。

透明感のあるアラサー美女。

ふつう透明感のある美女といえば無垢な少女性に対して使われる表現ですが、このお方の場合は良識とか倫理観とかブレーキとかも透明がかっている大人なのが恐ろしくて魅力的だと思います。

少年誌で掘り下げるのは難しいタイプだと思いますので、いつか花子さんのスピンオフ「アクタージュSAGA」がグランドジャンプとかで掲載されてほしいですね。

 

ちなみに9巻のカバー裏ではそんな彼女のナマ足が拝めます。

花子さんファンは単行本を買いましょう。

 

 

 

以下、若干のネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9巻では、舞台「羅刹女」本番直前の各々の様子が描かれています。

夜凪景さんの同級生たちが大変ありがたい存在になっているとともに、記者会見でテンション上がっている様が非常にかわいかったり、

天知心一さんがどこまで狙い通りなのか、何が狙いなのか、脚本家および夜凪景さんの演出家に山野上花子さんを指名したのは確信犯なのか、色々気になってしまったり、

王賀美陸さんの好感度が回を重ねるごとにマシマシになっていて、ああこの方は民を大事にしてくれるタイプの王様なんだなと嬉しくなったり、

相変わらず良質で満足度の高い群像劇が描かれております。

 

 

 

その中でも、9巻で最も読者を唸らせるのは百城千世子さんの変貌と、夜凪景さんの過去への向き合いではないでしょうか。

 

百城千世子さんの「やっぱり負けるのは悔しいんだよ 悔しい…!」や「黙れ猿」に強い衝撃を受けたり、包丁を握った夜凪景さんの横顔に慄いたりした方も多いのではないかと思います。

(百城千世子さんに猿呼ばわりされたいファンも増えていることでしょう)

 

ヒロイン二人が怒りの炎を燃やし羅刹女となっていくプロセスを見るにつけ、今後の展開が楽しみでならないですね。

 

 

 

舞台「羅刹女」編、それぞれがどんな本番になって、どっちが勝つんでしょうね。

 

率直に言えば、

夜凪景さんの怒りの質は「他者への怒り」で、演技のベースは父親への憎しみ。

百城千世子さんの怒りの質は「自身への怒り」で、演技のベースは嫉妬や自己嫌悪や愛です。

 

(前者はいかにも少年漫画の主人公で、後者はいかにも少年漫画の主人公のライバル)

 

夜凪景さん、思い起こせばかつて友達(になる前)のひなさんを怒鳴った際も、自身ではなく自身の大事な人を侮辱されたと感じたからこそでした。

この度の役作りでも、父親への憎しみに向き合い始めていますが、あの憎しみも自身以上に母親の心情を慮ってこそのものだと思うんですよね。

自身の大事な人が傷つけられた、悲しい、その悲しみを怒りに転化させて燃え盛る、そんな流れで彼女は羅刹女を身に宿していっているように思えます。

今後、夜凪景さんがゲス野郎っぽい父親を許せるのかどうかは分かりませんが、少なくとも彼女の羅刹女は他者の裏切りや酷い振る舞いに対して怒り、逆にもしその他者を許せたり理解できたりしたら怒りも静まることが予想されます。

 

一方、百城千世子さんの怒りは、明らかに夜凪景さんの出現と成長をきっかけにして彼女の内部に生まれた嫉妬や自己嫌悪や愛、あまりにも巨大な感情がそのまま炎に転化されたような怒りであります。

他者に対してのものではないだけに、舞台上で仮に牛魔王孫悟空がどんな態度を取ろうが、とどのつまり彼女の羅刹女は、自身の中で消化、昇華、解脱、あるいは諦め……等に至らない限り、怒りの炎が容易に消えることはありません。

というか羅刹女の舞台が終わっても消えなさそう。

 

 

 

羅刹女」公式サイトでは。

これは、ある一人の女の、嫉妬とも自己嫌悪ともつかぬ、「怒り」の物語――。

 

脚本家 山野上花子さんの発言では。

「私の羅刹女

「ああ腹が立つ腹が立つ 自分に腹が立つ…!」

「女は面白いですよ

 宝石のように綺麗な顔をしていても 皆 腹の中に禍々しい炎を宿している」

 

 

こうした舞台設定を素直に踏まえれば、また、メタ的にも後攻側になることを踏まえれば、内側の炎に身を焦がす百城千世子さんが有利なようにも思えます。

 

客層にもよるでしょうが、女の怒りの物語を名乗るのであれば、個人的にも百城千世子さんの演技の果て、更には今後の生き方が楽しみでなりません。

百城千世子さんの炎の昇華の仕方次第で、実は脚本家である山野上花子さんも救われたり目覚めたりすることすらあるのかもしれませんしね。

 

 

一方、物語として明らかに分かりやすく、かつジャンプ主人公っぽいのは夜凪景さんの方ですから、勝敗も含めて実際の今後のお話の展開がまったく読めず、それだけに楽しみです。

漫画の先行きを心待ちにできる状況、幸せですね。

 

 

 

ところで孫悟空といえば。

クリリンさんのために怒ってスーパーサイヤ人になった孫悟空さんと、

自らへの怒りのためにスーパーサイヤ人になったベジータさんが思い浮かびますね。

 

アクタージュのヒロイン二人もそんな関係性で進んでいくんでしょうか。

えっ、額に「M」が浮かんだ百城千世子さんとか絵面的にヤバくないですか。

コスプレするだけで事案になるやつですよ。

 

 

 

何はともあれ物語の羅刹女さんもヒロインのお二人も怒りがほどけて幸せに暮らしていけますように。

 

 

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