肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「冬の鷹 感想 働く社会人や引退した社会人におすすめ」吉村昭さん(新潮文庫)

 

解体新書訳出の過程を描いた吉村昭さんの「冬の鷹」を読みまして、前野良沢さんと杉田玄白さんの対比がまるで研究者とビジネスパーソンとの対比のようで非常にリアリティ深く、しみじみかんたんしました。

主人公は前野良沢さんなので構成は前野良沢さん寄りではあるのですが、杉田玄白さんが嫌な風に書かれているかというと個人的にはそこまでの印象は抱かず、どちらも立派で必要な人物だったように映ります。それでいて、得られた名声や富は両者間に圧倒的な格差がありますので、そういうところがまさに世の中だよなあと。

 

あと、吉村昭さんの地元である日暮里界隈の描写が良すぎて、そのパートだけ優れた紀行文みたいになっているのにもかんたんしました笑

(描写は引用しません)

 

www.shinchosha.co.jp

 

 

わずかな手掛りをもとに、苦心惨憺、殆んど独力で訳出した「解体新書」だが、訳者前野良沢の名は記されなかった。出版に尽力した実務肌の相棒杉田玄白が世間の名声を博するのとは対照的に、彼は終始地道な訳業に専心、孤高の晩年を貫いて巷に窮死する。わが国近代医学の礎を築いた画期的偉業、「解体新書」成立の過程を克明に再現し、両者の劇的相剋を浮彫りにする感動の歴史長編。

 

 

あらためて。

語学や翻訳って本当に難しいですね。

前野良沢さんがオランダ語を学ぶ過程、解体新書を翻訳する過程の苦心がめちゃくちゃ伝わってきますので、各言語の教材や学習方法が充実している現代のありがたさを痛感するばかりです。

 

 

本全体の感想は冒頭に書きましたので、以下、特に気に入った描写をいくつか。

 

 

或る日、全沢は良沢に、

「世の中にはすたれかけている芸能が数多くある。が、人というものはそれを見捨ててはならぬ。大切にとりあつかって、後の世につたえるようにしなければならぬものだ。それと同じように、人がかえりみぬものに眼を向け、それを深くきわめることにつよめよ。よいな、人としてこの世に生をうけたかぎり、そうしたことに身をささげねばならぬ」と、言った。

 

芸能を例えに、医学の世界にも未開拓の分野が数限りなくあることを教えてくれる伯父。マイナー趣味の人間にも勇気を与えてくれる名言です。

 

 

いつの間にか良沢は、デキショナールに強い関心をいだくようになっていた。楢林栄左衛門の言によると、それはABCの順序で配列された一冊の書物になっているという。

 

辞書が人類の英知の結晶であることを実感させてくれます。重い重いとぼやく子どもを見たら江戸人や明治人が欲しくても手に入らなかったものなんやでと言ってあげましょう。響かないと思いますが。

 

 

梅雨の季節をむかえたが、雨の降る気配はなく、晴天の日がつづいた。そして、暑熱が江戸の町々をおおった頃になっても雨は降らない。空には、雲の湧くこともなくまばゆい夏の烈日が瓦をやき、土に亀裂を生じさせていた。

 

何気ない地の文による時候描写ですが、吉村昭さんなので可能な限り当時の気候を調べ上げて描いてはるんだろうなあという信頼感がありますね。

 

 

良沢たちは、老人の説明にうなずくこともせず、妙な文字のしるされている書物と見くらべながら、眼を光らせてささやき合っている。そして、かれらの口からは、

「いささかも違いませぬな」

という感嘆したような声がしきりにもれていた。

 

有名な、腑分けとターヘル・アナトミアとを見比べるシーン。

腑分けする老人が良沢さんや玄白さんの様子に畏敬の念を抱き始める描写が好き。

 

 

不意に、玄白が足を止めた。

「いかがでござろう。ぜひおきき下され」

玄白の眼が、良沢と淳庵に据えられた。

良沢たちは、立ち止った。

「いかがでござろうか。このターヘル・アナトミアをわが国の言葉に翻訳してみようではありませぬか。もしもその一部でも翻訳することができ得ましたならば、人体の内部や外部のことがあきらかになり、医学の治療の上にはかり知れない益となります。オランダ語をわが国の言語に翻訳することは、むろん至難のわざにちがいありませぬ。しかし、なんとかして通詞などの手もかりず、医家であるわれらの手で読解してみようではござらぬか」

 

一同の運命が変わった瞬間。

実際の翻訳は前野良沢さんの手によるものなれど、発案、進捗管理、関係者の人間関係調整、出版、幕府等との折衝等、プロジェクトマネジメントの一切合切は杉田玄白さんによる尽力が大。小説全体を通してこの点は克明に描写されていて、その後の富や名声の格差にも直結している訳でして、働く社会人であれば肌感覚に刺激がビシビシきます。

誰一人かけてもプロジェクトは実現しないんだけどもやっぱり言い出しっぺって大事ですし、プロジェクトマネージャーがいないと実現もなかなかしないんですよね。

 

 

「それならば尚更のことです。源内殿に参加して下さるよう懇請すべきです」

「それは不同意です」

「なぜでござります」

淳庵が、驚いたように玄白の顔を見つめた。

「第一に、私は、源内殿のオランダ語の知識を信用いたしておりませぬ」

玄白の冷ややかな声に、淳案は呆れたように口をつぐんだ。

 

かつて世話になった平賀源内を翻訳事業に加えるか否か。

前野良沢さんの知らないところで、プロジェクト人事を冷静に手掛けている杉田玄白さん。平賀源内さんは移り気で翻訳みたいな地道な作業は無理、と。

後に高山彦九郎さんも登場するのですが、同時代のゆかりある奇才が出てくるのもこの小説の面白さを膨らませています。

 

 

完全主義者である良沢が、「解体新書」の不十分な翻訳に不満をいだいていて、それが自分の氏名の掲載を固辞した原因だということも察していた。

「愚しいことだ」

玄白は、腹立たしげにつぶやいた。

良沢を満足させるような翻訳をはたすには、さらに長い歳月を必要とするだろう。それよりも、たとえ不備な点は少々あっても「解体新書」を一日も早く世に出して、医家たちに利益をあたえるのが自分たちの社会的義務だと思った。

 

翻訳成るも、出版を望む玄白さんと出版を嫌がる良沢さん。

二人の対比がいよいよ鮮やかになってまいります。

 

 

良沢は、幸左衛門の序文が、多くの序文と同じように実のない儀礼に堕したものに感じられて不快だった。そして、その序文を涙をながし喜んでいる玄白を滑稽にも思った。学業には、このような虚礼は必要ない、とかれは胸の中でつぶやいた。

 

良沢さんの描写の中でも特に好きなシーンです。

長崎出島のオランダ語通詞から解体新書を称える序文をもらったものの、数日間で読み込んで褒めれる訳ないだろと冷めた気持ちになる良沢さん。

この厳しすぎる姿勢、人づきあいなどまったく考慮しない一徹ぶりが大きな成果を生み、一方で晩年の困窮を招く。

杉田玄白さんのようなハイバランスの人材にも我々は憧れますし、前野良沢さんのような不器用な偉才にも我々は敬意を抱くものですね。

 

 

「人の死は、その人間がどのように生きたかをしめす結果だ。どのように死をむかえたかをみれば、その人間の生き方がわかる」

良沢は、そこで言葉をきると、杯をゆったりと口にはこんだ。

 

平賀源内さんの死にコメントする良沢さん。

この良沢さんのコメントを描写しておいた上で、この小説のラストを前野良沢さんと杉田玄白さん二人の死に様対比描写で締めくくるのすごすぎると思う。

 

 

 

等々。

 

翻訳と医学とを題材にした小説ながら、社会人的には実感あふれる描写の数々で、働く人や引退した人にとって共感するところも多いですし世の中の厳しさに震えるところも多いと思います。現代にも通じる視点や要素がふんだんで。

戦死したり沈没したり漂流したり岩から熱湯が吹き出したり羆に襲われたりしないだけ、吉村昭作品のなかでは比較的おだやかな気持ちで読み進めやすいですよ。

 

 

人一人ひとりが異なる才能や性格を有している中、熱意で結びつけられたチームが大きな仕事を成し遂げ、再び一人ひとりになってそれぞれの晩年を過ごしていく。

そんな変わらぬ人の営みを、私も皆々様も送っていくことができますように。

 

 

 

「鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学 感想」菅豊さん(講談社選書メチエ)

 

日本人と鳥食の歴史を解きほぐした本が売っておりまして、読んでみたら非常に解像度の高い記述っぷりにかんたんさせられました。

「鷹狩」「鷹や鷹でとらえた鶴の贈答」「野鳥レシピ」等、現代から失われまくっている文化だけに想像力が刺激されて非常に面白いです。

歴史本で織田信秀さんや細川晴元さんや三好長慶さんが鷹の贈答をしている場面を読んでも「……治一郎のバームクーヘンもらったくらいかな、嬉しいよね」程度に思っていた昨日までの自分にさようならです。鷹の贈答、めちゃくちゃ重くて権威と直結する行為やったんですね。

 

bookclub.kodansha.co.jp

 



おいしい野鳥が食べたい!――幕府の権力をもってしても、江戸のグルマンの食欲を抑え込むことはできなかった。失われた食文化の全体像を、初めて描き出す異色作!
江戸時代の人々は、多くの「野鳥」を多彩な調理法で食していた。鶴、白鳥、鴨、雁、雉子、雲雀、鷺、雀、鳩・・・それらは、食のみならず政治や経済、儀礼などをめぐって、魚やほかの動物たちには見られない、複雑で高度な文化の複合体を形作っていた。鳥は、日本文化そのものを理解するうえで欠かせない重要な動物だったのである。
歴代の徳川将軍は、鷹狩で野鳥を狩り、鶴を天皇に献上し、また大名や家臣に獲物を分け与えた。中・下級の武士たちは雁鍋や鴨鍋を楽しみ、裕福な町人は料亭で野鳥料理に舌鼓をうち、庶民は鴨南蛮や雀焼といった素朴なファストフードを頬ばった。幕府によって野鳥流通が厳しく統制され、日本橋の水鳥市場は活況を呈し、その大きな利権を狙ってアウトローたちがうごめいていた。しかし、江戸時代に隆盛を極めたこの食文化は、明治以降、衰退してしまう。そして今、数千年の歴史をもつ野鳥を食べる伝統文化が、日本から消滅しようとしている。
さまざまな野鳥料理のレシピ、江戸に鳥を送っていた村のフィールドワークなどから、語られざる食文化を総合的にとらえたガストロノミー(美食学)の誕生。

 

目次
序章 鳥の味にとりつかれた美食家たち
第一章 鳥料理の源流――京料理から江戸の料理へ
1 日本人はいつから鳥を食べていたのか?
2 中世の鳥料理
第二章 江戸時代の鳥料理と庖丁人――鶴の味噌汁、白鳥のゆで鳥、鷺の串焼き
1 江戸の町から出てきた大量の鳥の骨
2 『料理物語』のレシピ
3 庖丁人――一流シェフの伝統と技術
第三章 大衆化する江戸の鳥料理――富商、貧乏武士、町人の味覚
1 鶏鍋、雁鍋、鴨鍋――中級・下級武士の食卓
2 料亭・名店の味――富裕層、文人墨客の贅沢
3 鴨南蛮と雀焼――庶民の素朴なファストフード
第四章 闇の鳥商売と取り締まり――せめぎあう幕府と密売人
1 「生類憐れみの令」による危機
2 アウトローたちの鳥商売の手口
3 鳥商売と大岡裁き
第五章 侠客の鳥商人 ――東国屋伊兵衛の武勇伝
1 日本橋・水鳥市場の男伊達
2 幕臣と侠客との親密な関係
第六章 将軍様の贈り物――王権の威光を支える鳥たち
1 鷹狩と贈答による秩序維持
2 「美物」の使い回し――中世の主従関係
3 「饗応料理」の鳥の意味
第七章 江戸に鳥を送る村――ある野鳥供給地の盛衰
1 手賀沼の水鳥猟
2 西洋的狩猟の浸食
3 カモが米に負けた
終章 野鳥の味を忘れた日本人

 

 

戦国時代や江戸時代の記録にしばしば鷹や鶴の贈答、あるいは鷹狩が出てきたり、

「都会の鳥の生態学」という本で「日本人が野鳥を食べなくなったので野鳥が都市部に戻ってきている」と紹介されていたり、

そういえば「銀平飯科帳」でも幕府御狩場地域の村人が自由に土地を活用できず難儀していたり。

「都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 感想 散歩が楽しくなる本が好き」唐沢孝一さん(中公新書) - 肝胆ブログ

 

歴史もののコンテンツに触れていると、人と野鳥とのかかわり文化の一端に触れる機会ってありますよね。

 

でも、人と野鳥のかかわり、現代では廃れていますので。

この本を通じて体系的に文化や歴史を学べるのはまことにありがたいのです。

 

 

内容は上記引用の通りで、鳥食が儀礼化して権威表現に直結していった歴史的経緯ですとか、野鳥食のレシピですとか、江戸時代を中心とした鳥食・鳥猟文化ですとか、近代化の過程で鳥猟が衰退していったことですとか、豊富な事例文献をもとに解説してくださいます。

 

 

個人的に印象ぶかい箇所をいくつか引用しますと。

 

鳥商売はかなり儲かる、うま味のある商いだったようだ。天文一三年(一五四四)、祇園社に奉仕することで果物商売を独占していた犀鉾神人(神社に属し特権を得た商人)たちが、鳥三座の専売権を侵してまで、鳥を販売するという暴挙に出た。そのため、鳥三座はこの由々しき行状を、室町幕府に訴え出ている。鳥商売をめぐって訴訟沙汰にまで発展したのである。

 

戦国時代における京の暮らしの空気感が知れて嬉しい。

 

 

七月八日。伴四郎は、なんと「御鷹の餌物鳩」を、仲間とこっそり盗み食いしている(青木 二〇〇五、六五-六七)。

 

「幕末単身赴任 下級武士の食日記 増補版」青木直己さん(ちくま文庫) - 肝胆ブログ

 

 

冬になると子どもたちが庭や鳥の来そうな場所へ「おっかぶせ」または「ぶっかぶせ」と呼ばれるわなをしかけ、野鳥をとる。ひよどりやあかっぱら(あかはら)などがとれると、鳥飯をつくる。野鳥の羽をむしってさばき、肉をごぼう、にんじんと一緒に醬油味で煮て、炊いたご飯と混ぜる。

家族みんなが喜んで食べるごはんで、おかずがなくても、これだけで食べられる。(「日本の食生活全集 千葉」編集委員会編 一九八九、一九七)

 

千葉県は江戸が近く沼が多いこともあり、つい最近まで鳥猟の記憶が残っていたようです。ひよどりの味は想像できませんが、レシピ的にはとてもおいしそうですね。

 

 

生類憐れみの令は、別の面で江戸の鳥食文化を脅かす事態を生み出した。生類憐れみの令によって、江戸初期に設定された鷹場が不要となり、鷹場制度が弱体化された。その結果、鳥が乱獲されたのである。

 

おかみが資源統制やらなくなって乱獲を招く。政策の狙いの逆結果を招く。

鳥に限りませんが、人の歴史の中でときどき起こる話です。

 

 

江戸時代、関所において江戸に入る鉄砲と、江戸から出る女を厳しく取り締まっていたことから「入鉄砲出女」という言い回しがあったことは有名であるが、実は江戸に入る、あるいは江戸へ送る鳥たちも、関所で厳重に検査されていた。入鉄砲ならぬ入鴨、入雁である。

 

野鳥の流通が厳しく統制されていたことが知れて興味深い。

鳥商人もあの手この手で密輸していたようです。

 

 

鷹狩の支配権を朝廷から奪い、朝廷への鳥の献上をもって権威を示すあり方は、徳川家康が初めてではない。それは室町時代の権力者たちから引き継いだ手法である。たとえば、豊臣政権は、天皇がもっていた鷹狩の支配権を奪い、公家の鷹狩を禁じ武士の特権とするまでに至った(大友 一九九九、二〇三)。

御鷹之鳥を朝廷に献上し、また大名たちに下賜する行為は、将軍の政治的、社会的な最上の地位を確認するための象徴的行為だったともいえる。そのため、たとえば大名が捕った初物の鳥は、将軍に献上すべきとか、また将軍から大名が拝領した御鷹之鳥は、ほかの鳥と比べ格段に丁重に扱うべきなどといった細かいしきたりが決められ、さらに、鳥種ごとに、「この格の大名に対しては、この格の鳥を下賜すべき」という取り決めまでも、厳格に明文化されていたのである。鳥の贈答は、まさしく儀礼であった。

たとえば尾張紀州、水戸の御三家や、甲府と館林の徳川家である御両典、さらに前田家や島津家、毛利家など国持大名といわれる家柄の大大名で、少将以上の官職に任ぜられた者は、最もランクが高いツルを拝領した。また、家督相続の間もない国持大名や老中、若年寄、城代などは、次のランクであるガンを拝領していた。将軍の子女も鳥を拝領していた。下賜される鳥の格は、拝領する側の大名や幕職にある者の家格や官職を反映していたのである。

 

江戸幕府が鷹場管理や野鳥流通を厳しく統制した背景として、ほかの食材にはない、鳥ならではの儀礼・権威的位置づけを説明してくださいます。

確かにほかの食材ではこういうことはされていない。朝廷関係で米や酒が神聖視されることはあっても、物流統制とかのたぐいではないですし。

鳥と権威の結びつき、なかなか興味深い文化的テーマだと思います。

 

 

室町時代には、有力大名→将軍家→天皇家・宮家→公家や近習の者という、鳥の「使い回し」「流用」が頻繁に行われていた。よそからもらった贈答品を、別のところへ使い回す行為は、現代人にとっては、いささかけち臭い行為のように感じ取られるかもしれない。しかし、この鳥の「使い回し」は、中世の倹約家や吝嗇家によってなされた、贈答品購入費用の節約ではない。この時代の朝廷と幕府という権力構造の上に、贈り贈られる関係が張り巡らされ、その関係を通じて「美物移動の連鎖」(春田 二〇〇〇、七二)がなされ、多くの人びとがその連鎖によってつながれていたのである。そして、その美物移動の連鎖によって人々の連鎖が強められ、さらに、その連鎖を通じて、身分や序列、関係というものが再確認されていた。その美物に付与された、「使い回し」の来歴は、むしろ肯定的に受け止められたことであろう。鳥の「使い回し」は、特段隠す必要はなかった。

 

なるほど。使い回しによって肯定的に確認される序列や関係性。

本願寺証如さん、細川氏綱さん、三好長慶さんでの折詰使い回し逸話も時代感覚的には全然OKだったんでしょうかね。

 

 

また、『美少女戦士セーラームーン』の担当編集者「おさBU」としてその名を轟かす小佐野文雄さんにも感恩の意を表したい。いつの日か『美少年侠客トーゴクヤイヘー』を、講談社で時代劇漫画にして欲しいと念願する次第である。

 

明治期には樋口一葉さんともゆかりのあったという大鳥商東国屋。

江戸時代の鳥猟をめぐって切った張ったする美少年漫画がなかよしで連載されるなら私もぜひ読んでみたいものです。

 

 

 

等々、非常に読み応えのある内容で、読めば読むほど鳥食文化への解像度が上がっていくので歴史好きの方や食べもの好きの方にはとてもおすすめです。

 

現代日本の人口を思えば、なかなか野鳥食の爆発的ブームというのは資源制約的に起こしづらいところはあると思いますけれども、国語科目における古典・漢文の必要性と同じように、かつての日本人が野鳥に対して抱いてきた感情のようなものはこれからもなんらかのかたちで受け継がれていきますように。

 

 

 

「サガ2 久々攻略の感想 ちからorすばやさ特化ロボ強いね……」サガコレクション版(スクウェア)

 

GBのサガ2を久々にプレイしてみました。

サガ2はサクッとクリアしたことがあるだけでやり込んだことがなかったので、ちからorすばやさに特化させたロボがこんなに強かったのかいと驚いたり、噂のしちしとうが異常値な威力だったりと新鮮に楽しめてかんたんしましたわ。

 

 

「サガ1 久々攻略の感想 やっちまったぜ・・・・」サガコレクション版(スクウェア) - 肝胆ブログ

 

 

www.jp.square-enix.com

 

 

 

以下、展開の一部ネタバレを含みますのでお含みおきください。

 

 

 

 

 

オープニングイベント。

 

ドンケツなメンバーでプレイしてみます。

秘宝を集めたものは北九州を支配することができる。

消息を絶った宮本会長を探しに狐月組with村松組長がいま立ち上がる!

 

 

 

はじめの町まで送ってくれる野口組長せんせいいいよね……。

 

 

 

サガ2のセリフ回しはサガ1ほどパンクではなく王道的かつ少年冒険記的になってきていますが、それでもちらほらサガイズムを感じるところも。

 

 

 

少年の旅路のなかで、ちちおやの不倫疑惑展開が出てくるのも味わい深い。

 

 

 

攻略面について、今回は人間、エスパー、ロボ×2という構成にしたところ、

  • 人間は器用貧乏、序盤は高HPで肉壁、最終盤は七支刀入手で最強アタッカーに
  • エスパーは雑魚散らし役&回復役、中盤にやまのかみ相手で〇すべてを入手して壁役に
  • ロボはそれぞれ「兵器特化→グングニル入手後はちから特化」「すばやさ特化」

 

という使用感になりました。

 

逃げるのを封印して、こつこつと

  • 人間は意識して素早さを上げる、力はエクスカリバーを入手してからでOK
  • エスパーは意識して防御と素早さも上げる、やまのかみや天誅組で〇すべてやサイコブラストを覚える、めがみ(イージスの盾役)加入後は〇すべてをふいうちに変えた方が便利だったりする
  • ロボの装備購入ができるくらいちゃんとお金を稼ぐ

 

に努めたら、サガ2って最後まで適正難易度で進めるものなんですね。

昔プレイした時は「人間の攻撃が当たらない」「逃げまくってボスのところにたどり着くしかない」みたいな感じだったのに。

 

 

とりあえずサブマシンガンに代表されるロボの便利な兵器を活用すればザコ敵は楽勝、ボス戦も素早さ特化ロボが加速装置を使って素早さ武器を繰り出せば楽勝、という感じです。ロボ強い。

 

特化型ロボはラスボス戦でも安定的に1000以上のダメージを与えられるので序盤から最後まで心強い存在でした。

ただし防御面を捨てているので他のキャラによる回復やイージスの盾のアシストは不可欠です。めがみ(イージスの盾役)加入まではドラゴンアーマーは装備しておいた方がよさそう。

 

 

最終的なパーティ陣容。

ラストフロアで育成し続け、しちしとうを入手した時点です。




ロマン武器のしちしとう。
はにわさんがごくまれに落とします。波動砲で吹き飛ばし続け、私の場合は50体目くらいで落としてくれました。

 

 

 

その威力は。

 

武器耐性のあるラスボスにも4000くらいのダメージを与え。

 

 

ちから特化ロボが第1世界のザコ敵に振るえば、えらい威力が出ます。

(後半の敵には当たらない)

 

昔サガ2をプレイした時は、エクスカリバーやフレアの書で800くらいのダメージを出せれば御の字と思っていたのに、特化ロボやしちしとうは4ケタの壁をかんたんに超えていっちゃうんですねえ。

 

 

サガ2は大いなる力と世界の安定とのバランスがテーマになっております。

現実の世の中にもものすごく能力が尖っている人や秘宝や七支刀的な超絶アイテムを持っている人がいるかもしれませんけれども、そんな中でも世界人類が平和でありますように

 

 

 

 

おまけ、名場面的なシーン集。

 

 

 

「ギャラリーフェイク 38巻 感想 シリーズでも指折りの良作揃い」細野不二彦先生(小学館)

 

ギャラリーフェイクの単行本が久しぶりに発売されておりまして、収録されているエピソードがシリーズの中でも特筆すべきほどに良作揃いでかんたんしました。

ギャラリーフェイクに親しんだことがある方なのであれば38巻は見逃さない方がいいと思いますぜ。読んだことない人も38巻から始めるのもいいと思うんですぜ。もともと一話完結が基本のシリーズですので、どの巻から読んでも大きくは大丈夫ですしね。

 

www.shogakukan.co.jp

 

 

伝説のアートコミック復活最新巻!
アートコミックの金字塔『ギャラリーフェイク』1年ぶりの新刊発売!!
近年の世相の不安を予言するような絵を描くアマチュア画家の末路は…!?
サラがネットゲームを通じてイケメン俳優と恋仲に!? 
さらにさらに痴呆老人の親を施設に預ける息子の葛藤や、
貧しい生活環境のもとで祖父や弟たちの面倒を見る
ヤングケアラーの問題など、現代社会が抱える問題も織り交ぜ、
令和の世を闊歩する闇の画商・フジタの活躍を描く!!

 

 

 

収録されているお話は5つです。

以下、かんたんな概要とネタバレにならん程度に見どころを。

 

 

ART.1 ウラVSウラ

フジタに新たなライバルが登場するお話。

ライバル猪ヶ谷洗三さんの詳細なプロフィールは伏せておきますが、好感度は大変低いのに憎めない可愛げやうっとうしさに富んでいて個人的には好きな人物です。イッシッシ。

主人公のフジタさん、こういう胡散臭い人物を相手にした時にこそ立ち回りやアートの実力が分かりやすく発揮される傾向にあると思いますので、猪ヶ谷さんの再登場にも期待したいところです。

 

 

ART.2 不安のかたち

上記あらすじの「近年の世相の不安を予言するような絵を描くアマチュア画家の末路は…!?」に該当するお話。

絵画としてはムンクさんが登場いたします。絵のモチーフとしては「叫び」ですが、画題としては個人の不安よりも社会の不安にフォーカスが。細野不二彦さんの絵に力があるというか、けっこうなパワーを紙面から感じます。

不安や混迷の深い世相にあって、小さな一個人の善意が輝く物語構成が素敵です。

 

 

ART.3 人形の絆

上記あらすじの「サラがネットゲームを通じてイケメン俳優と恋仲に!?」に該当するお話。

サラさんが主人公で、サラさんの魅力を充分に楽しめる内容になっています。いつもながらサラさんチャーミングでいいですね。

シリーズを通して、サラさんに言い寄ってくる男ってろくでもない変態野郎が多い印象がありますけれども、今作に登場するイケメンはまっとうなギャップ萌え好青年なのが逆に驚きでクスッと笑えました。

 

 

ART.4 モネの橋のたもとにて

上記あらすじの「痴呆老人の親を施設に預ける息子の葛藤」に該当するお話。

私のなかでは当巻ベストエピソードです。

貧しさにせよ健康問題にせよ、困難な境遇の人にたいして細野不二彦さんやフジタさんが送る視線のあたたかさ、マジで好きです。

 

 

ART.5 妖への道

上記あらすじの「貧しい生活環境のもとで祖父や弟たちの面倒を見るヤングケアラーの問題」に該当するお話。

ART.4同様、気の毒な境遇の人にたいするあたたかみを満喫できるうえ、妖怪への憧憬、創作に対する情熱をも感じられる名作。

フジタさんのセリフが超魅力的で、

「準クンが中学生らしい時間を獲得するには金が必要なんです。」

「令和の現在、“妖怪”の需要はマシマシなんですよ。不安な世相を反映して、怪しい妖怪モノが流行る! じっさい江戸時代、妖怪画のブームが何度もありました。」

更にその後少年にかける言葉の一つひとつ(詳細は伏せます)が、めちゃくちゃ染みるんですよ。

若い方にもぜひ読んでいただきたい作品です。

 

 

 

 

と、どのエピソードも大変おもしろくイケていて、強くおすすめする巻です。

ここにきて作品のキレ味を一層増しているのがすごいですね。

 

 

細野不二彦先生がこれからもお元気に、ギャラリーフェイクをはじめとした作品群を充実させていってくださいますように。

過去作へのアクセスもどんどんよくなってほしいものです。

 

 

 

映画「ウルトラマンブレーザー大怪獣首都激突 感想 親世代のウルトラ入門に最適」

 

ウルトラマンブレーザーの映画を軽い気持ちで観に行ってみたら、小さな子どもの育児に悩んだ経験のある大人にとっては刺さりまくる内容でかんたんしました。

制作サイドも「初めて特撮やウルトラマンを見る人」を意識して制作されたという通り、一見さんにとっての値打ちが極めて高い作品だと思いますから、「ウルトラマンに興味あるけどどれから見たらわからない」という大人にたいして私はブレーザー映画を今後勧めるようにしようと思います。

 

m-78.jp

 

ウルトラマンブレーザーという作品は近年のウルトラマンシリーズの特徴の多くをあえて外した作品で、たぶん視聴者によってもともと評価が大きく分かれるタイプの作品なんだろうなと思います。

 

いちウルトラファンの私としては

  • ブレーザーのデザイン(理容店のポールみたいな人体的配色がオリジナリティ高くて格好いい)
  • コミュニケーションを巡るテーマ性
  • 「虹が出た」「オトノホシ」「さすらいのザンギル」「ソンポヒーロー」あたりのお話の雰囲気
  • ガイアリスペクト(今回の映画のパンフで触れられていて嬉しかった)

 

辺りが特に好き。

 

 

その上で今回の映画、

  • アースガロンが大活躍したり(敵からしたら恐怖でしかないほどタフでイケていた)
  • ブレーザーがいちいちかわいかったり
  • タガヌラー交通事故みたいなB級ギャグにちょいちょい笑えたり
  • 現実の首都圏を舞台に暴れまわる特撮映画っぽさを味わえたり

 

等の満足度が高かったのですが、いちばんかんたんした要素がありまして。

 

 

以下、重要なネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵のモチーフが「暴れて手がつけられない子ども」という画期性。

 

これですよ。

 

ゴンギルガンというギルギルガンみたいな少年心を直球で貫くネーミングや、いかにも強敵らしい怪獣デザインもさることながら、

 

「嫌いだ」「大嫌いだ」と泣き叫びながら街をぶっ壊していく大怪獣性がね。

 

 

いい歳の大人としては、いろんな記憶がフラッシュバックして情緒がグチャグチャに相成るんですよ。

手のつけられない子ども、かわいいのに大好きなのにもうこうなってしまったら理屈もへったくれもなくてどないしよう無視したろかしばいたろかとなるやつ。

怪獣の叫び声に少年の泣き声を重ねてくるの、マジで脳が揺れます。

お子様の観客はただただブレーザーやアースガロンの活躍を目ぇ輝かせて見ていたらいいんですけど、その隣で映画を見ているお父さんお母さんは頭の中がゴン! ギル! ガン! って喰らいまくりますからね。

 

 

コミュニケーションをテーマにしたブレーザーでありながら。

 

子どもの暴力(ゴンギルガン)はそれ以上の力でねじ伏せ。

子どもは力づくで退避させ安全はしっかり確保し。

元暴れる子どものエミ隊員の言葉を借りるかたちで、やがての成長(と社会復帰の可能性?)をほのめかす。

子どもの親は、ただただ愛をまっすぐに伝えるのみ。

誰も子どもに理屈をぶつけないし、論破しようともしていない。

 

このものすごく現実感のある子育て対応一つひとつがですね。

育児にもがく親世代にクリティカルヒットするんですわ。。。

 

 

展開のつっこみどころとか、ウルトラシリーズとしてはこういう要素も見たかったとか、たぶん色んな意見がこの映画にも寄せられるんだろうと思います。

 

それらの意見も大事に、おおいにくみ取っていただきつつ。

 

私としては映画冒頭の長めの本編総集編紹介も含めて「初めてウルトラシリーズに触れる大人」にとっては最良の作品なんじゃないかと思いました。

クレヨンしんちゃんでいうところのオトナ帝国のような位置づけといいますか。

 

 

本当に、怪獣が街をぶっ壊している、なんなら親の勤務地周辺をぶっ壊しながら、子どもの声で嫌いだ大嫌いだ叫ばれたらたまらんっすわ。

霞が関で残業しまくって子ども寂しがらせている親とかがこの映画見たら血管焼き切れるんちゃうのと心配してしまうくらい。

 

それだけに、親子で見るにおすすめの映画です。

 

 

このような作品を鏡に大人がなにがしかを感じ、ご自身や周囲のお子さまへより確かな愛情をお届けくださいますように。

 

 

 

「エイハブ 感想 最高傑作という科学者もいる」猿渡哲也先生(集英社)

 

猿渡哲也さんの「エイハブ」単行本をようやく入手でき、圧倒的画力から繰り出される圧倒的超展開の連続と原典由来の圧倒的文学性とにかんたんいたしまして、確かに「やばっ最高傑作だよ・・・・たぶん」と作者がおっしゃるのも分かるなあと思いました。

 

www.shueisha.co.jp

 

 

 

猿渡哲也先生といえば平松伸二先生とのゆかりも深いレジェンド漫画家のおひとりで、かなりの作品数がありますのでどれが最高傑作と言えるかは実際難しいですね。

私も全作読んだわけではありませんが完成度でいえばこの「エイハブ」や「ロックアップ」、キャラクター魅力でいえば「タフシリーズ」「あばれブン屋」「傷だらけの仁清」あたりでしょうか。

個人的には「DOKURO -毒狼-」が猿渡哲也先生の作家的個性が濃密で大好きです。一闡提に血の粛清を!

 

 

「エイハブ」はメルビルさんの小説「白鯨」を漫画化したものでして、原典の白鯨は面白いけどめちゃくちゃ読みづらい作品なだけに1巻完結の漫画にしてくださるのはそれだけでありがたみがあります。まんがで読破シリーズの白鯨アナザーver.として加えてくれてもいいんじゃないでしょうか。

 

 

以下、展開はおおむね原作通りではありますが一応ネタバレにご留意ください。

 

 

 

 

物語は

 

主人公のエイハブさんが白鯨に捕鯨船仲間を皆殺しにされる

 ↓

ただ一人生き残ったエイハブさんは復讐者となり捕鯨船を率いる

 ↓

日本近海でついに白鯨にエンカウント

 ↓

ただ一人の少年を除いて皆殺しに遭う

 

という流れになります。

 

白鯨という神の化身と、「アハブ」という神に逆らいし者との戦い。

神に逆らった者にふさわしい無慈悲な展開と結末にただただ呆然ですね。

 

 

お話の中で、白鯨「モビーディック」さんは圧倒的なフィジカルと神々しさを見せつけて捕鯨船メンバーに絶望を超えた絶望をもたらしてくださいます。

この白鯨描写が猿渡哲也先生の超画力と異常に相性がよくて、この作品の大きな見どころとなっています。モビーディックさんが飛翔して捕鯨船に飛び乗り竜骨ごと船をへし折るシーンなんて地獄としか言いようがないもの。

終盤の毎ページ毎ページ気のいい捕鯨船メンバーが一人ずつ絶命していくシーンなんてもうたまらない。どんなに知的で理性的な好人物でもモビーディックからすれば歯クソでしかない。人類の価値観なんて神からすれば認識すらされないレベルの些事。

この神と人とのアンフェアな関係性を描き切っているという点で、このエイハブは確かに最高傑作という呼び名にふさわしい完成度だと思います。破壊描写と文学性が見事なまでに融合しているんですよ。

 

作品構成としても、めちゃくちゃ読みにくい原作と比べ、大半が鯨との戦いシーンに紙面が割かれていて非常に読みやすい。

一方で原作よりも大幅に描写を抑えた捕鯨ウンチクや人物描写シーンが、少ない分量でも選りすぐりの印象度を持っていて心に残るし、バトルの悲壮性を盛り立てています。

この緩急のバランスという点でも最高傑作と言えるかもしれません。

原作小説を自分色あふれる漫画作品に変換しながら、原典の魅力や描写やテーマは充分に活かし、1巻完結の読み進めやすいエンターテイメントにまとめる。さすがベテラン漫画家であります。

 

 

スターバックさんやクィークェグさんたち捕鯨船の好漢、

捕鯨や鯨油精製の工程、亀や豚脂肪、スターバックスコーヒー等の日常場面、

そしてエイハブ船長の執念と捕鯨砲と義足。

 

魅力あるエレメントの数々が、白鯨「モビーディック」さんの天災的暴力によって何もかも水泡に帰していく。一矢は報いたし、イシュメールさんだけは生き残ったけれども……。

 

エピローグでは、これだけのドラマに満ちた捕鯨産業すら、石油の発見とともに廃れていったことが描写されており、無常・無情を一層引き立ててくれています。

 

 

「大いなるもの」の魅力と理不尽を描き切ってくれているこの最高傑作が、願わくばこれからも多くの読者に恵まれていきますように。

まともに完成度が高すぎて、猿渡先生独特のネタ要素が少ないからかえって読者が増えなさそうで不安なんですよね笑。

 

 

 

思い起こせば、若い時代の鬼龍さんと一般格闘家との関係性も白鯨じみた圧倒的隔絶があったように思いますし、それが初期鬼龍さんの圧倒的魅力に繋がっていたようにも思います。

もともと猿渡哲也先生の作家性と「白鯨」は相性がよかったのかもしれませんね。

 

 

 

 

「ザ☆ウルトラマン 初視聴の感想 効果線がすごく効果的」円谷/日本サンライズ

 

ダンバインと同時並行でザ☆ウルトラマンも毎日視聴を続けて全話見終わりまして、そのアニメならではの効果的な効果線/陰影の使い方、BGMや演出のよろしさ、特撮実写と比べてヌルヌル進む展開の気持ちよさに大変かんたんしました。

クセになる魅力というか、気がつけば戦闘シーンのBGMがずっと脳内で流れているくらい気に入りましたわ。

 

m-78.jp

 

m-78.jp

 

 

以下、気に入ったポイントをつらつらと。

ほんのりネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

ジョーニアスの効果線/陰影が超格好いい

ウルトラマンシリーズとしては珍しいアニメ作品ということで、特撮では難しい表現・演出が多くなされています。敵怪獣がたくさん出てくるとか、着ぐるみでは難しい造形の怪獣が登場するとか。

そんな中でも私が特に気に入ったのが、主人公ウルトラマンジョーニアスの格好よさを引き立てまくる効果線/陰影の使い方です。

上の公式サイトのサムネもまさにそうなんですけど、象徴されるのが作品後半の変身シーンおよび変身直後の着地シーンそれぞれのバンク。ときには1話のなかで2回繰り返されるくらい多用されるバンクなんですが、変身時の集中線演出、着地時のスピード線演出が格好よすぎて何回でも見つめちゃうの。漫画的な黒い効果線を実写で活用するのはちょっと難しいと思いますので、特筆すべき魅力やと思いますわ。

作画の気合が乗っているときは戦闘時の筋肉陰影描写も格好よくて、アニメ独特のウルトラマンの白肌にすごい栄えるんですよね。

 

ジョーニアスさんの白肌にプラスされる黒い効果線の魅力は、ガイさん(石黒英雄さん)のイケ顔にプラスされる黒煤ダメージ表現の魅力に匹敵する。

これは私のウルトラマンシリーズ体験の中でも最上級の賛辞であります。

 

 

展開がヌルヌルで気持ちいい

アニメ媒体ということもあってか。

ドラマパートもバトルパートも、同時期の特撮ウルトラマンと比較して展開がヌルヌルしている印象を受けます。作画がヌルヌルというわけではなくて、展開のテンポそのものがヌルヌル進むんですよね。ドラマならもう数秒リアクションや体勢直しに時間がかかるところを、アニメだとすぐに次の動きに進んでいる感じなんですよ。

このリムーブの速さがそのままジョーニアスさんの強さ演出に繋がっているところがまたすごいと思います。前半だと複数の怪獣をさくさく倒していくとか、敵怪獣に氷漬けされても即座に脱出してしまうとか敵怪獣に投げ飛ばされてもすぐに立ち上がるとか。後半だと敵艦隊を一人でなでるように破壊しまくっていくとか。

 

 

BGMがクセになる

主題歌の「緑の地球を汚したやつらは決して許しておけないと」ですとか、

科学警備隊の戦いBGM、そしてジョーニアスさんの戦いBGM。

いずれもめっちゃクセになります。

一回聞いただけではそれほどでもなかったのが、毎日毎日聞いていると脳内でエンドレスリピートに。戦いBGM、ギャラクシーファイトでも流れてほしいものです。

 

 

科学警備隊が有能すぎる

最終話の各隊員白兵戦無双シーン、その前数話のウルトリア艦隊戦無双シーンが最たるものですが。

歴代シリーズの中でも上位ではないかというくらい、防衛チームが精鋭ぞろいです。

隊員が優秀すぎて、後半はピグの優秀さを落としてコメディ役にしないと話が回らなくなってきていたのがすごい。

アニメだとヒロインのヌードシーンOKというあたりも興味深い当時感覚でしたわ。

 

 

U40、特に大賢者の設定がおいしい

ヘラー軍団戦を見るに、大賢者さんはウルトラマンキングのような強大な戦闘力を持っているわけではなさそうですが。

それでいながらU40全員から厚い敬意を寄せられている点、ヘラーさんも「大賢者=宇宙の歴史」みたいなことを言っていた点を踏まえれば、大賢者さんはマジで賢いのでしょう。

マルチバースとはいえ、もしかしたらキングやノアの存在、超古代の歴史、Xの正体、等々のシリーズでいまだ明かされぬ謎についても大賢者さんならご存じなのかもしれません。

アニメ登場人物だけに今後ギャラクシーファイト等に登場するのは難しいとは思いますけど、いずれ何らかのウルトラ作品で解説役出演でも果たしていただきたいですね。

 

 

ヘラー軍団モブの千葉繁ボイスが楽しい

お話の展開がヌルヌル進む中で、後半のヘラー軍団との戦いでは次々と千葉繁ボイスのモブ兵士が出てきて次々とやられたり調子に乗ったり上官に報告したりイキイキ働いておられるのにめちゃくちゃ好感を抱きます。

北斗の拳アニメから更に数年前の作品時点で、こんなに存在感のあるモブ演技っぷりで活躍されていたんですね。

 

 

特に印象に残ったエピソード

は、40話の「怪獣を連れた少年」でしょうか。

ウルトラマンシリーズの哀しい話は本当に心に残りますね。

 

怪獣だと、これは時事ネタ的な注目ですが、26話のギバルーガさんがブレーザー世界のセカンドウェイブことゲバルガさんと似ていて盛り上がりました。

ヒトデ型怪獣同士、オマージュなんですかね?

ベムスターさんもそういうところありますし、ヒトデ型の怪獣というのは独特の印象強さがありますわ。

 

 

 

 

以上、つらつら書きましたがとりあえずジョーニアスさんの強さ格好よさが図抜けていましたね。

自分がジャミラよろしく怪獣になってしまったとしたら、介錯してほしいウルトラマン上位ですわ。ヌルヌルしばかれてプラニウム光線(球形)で一思いに葬ってほしいぞ。

 

 

最近のツブラヤスタッフからも愛されているようですし、これからもザ☆要素が定期的にフィーチャーされていきますように。