肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

ゲゲゲの鬼太郎「鬼太郎の世界お化け旅行 感想」水木しげる先生(中公文庫)

 

1976年にアクションにて掲載されていたという「鬼太郎の世界お化け旅行」、初めて読みましたがドラキュラ親分やベアードさんが相変わらず立ちふさがったり、画像だけ有名な南方妖怪チンポさんが登場していたりと、読みどころが多くてかんたんしました。

 

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鬼太郎が世界の妖怪退治に出発! 妖怪島で吸血鬼や双頭のミイラと対決。アジアの地下都市で砂妖怪に遭遇。ゴーゴンに石にされた鬼太郎の父を元に戻せるのか!?

 

「世界お化け旅行」の鬼太郎さんは、怪物くんみたいな柄のキャップをかぶっているのが特徴です。かわいい。

 

 

 

当作品集に収録されているお話は次の通りです。

 

  1. 水精(ヴォジャノイ)
  2. 妖怪大パーティー
  3. 妖怪七人の侍
  4. ドラキュラ親分
  5. 砂妖怪(エキセル
  6. 魔女サーカス
  7. 吸血鬼(キーエフ)
  8. 蛇人ゴーゴン
  9. 狼男とゴーゴン
  10. 決斗コロセウム
  11. 蝋人形妖怪(カリーカ)
  12. ベルサイユの化け物
  13. 霊魂爆弾
  14. ベアード
  15. ブードー

 

 

鬼太郎さんたち一行が世界を股にかけて旅をし、行く先々で現地の妖怪や神様と出会い、時には戦う感じですね。

全16話できれいに完結しているところも含めて読みやすい一冊だと思います。

 

 

以下、若干のネタバレを含みながらイケてるセリフ・読みどころを。

 

 

 

 

 

 

「おい自転車屋

「へい」

「ちょっとこのパンクをなおしてくれ」

 

ペシャンコになった目玉のおやじを自転車屋で治そうとするねずみ男さん。

雑な対応で復活する目玉おやじさんの生命力を称えるべきなのでしょう。

 

 

 

「精神を集中することによって魂はぬけ出せる」

 

世界の妖怪を撲滅しに旅立とうとしたら、いきなり獏にやられて魂を抜かれた鬼太郎さん。幽体離脱して息子を助けにいく目玉のおやじがさすがであります。

 

ちなみに続く水精さんもおやじがやっつけます。相変わらずおやじ強い。

 

 

 

「ほれ二万円
 おめえチンポが三つついてるからって
 ドロボウになるんじゃないぞ」

 

一部界隈で画像だけが有名な南方妖怪チンポさん。

3本のチンポからホバークラフトのように小便を噴射し海上を走る。

近年マレにみる妖怪の中の妖怪であります。

 

 

 

めしにありつけるというので
鬼太郎は喜びのあまり
ゲタップ(ゲタのタップダンス)をやった。

 

かわいい。

どうも世界お化け旅行の鬼太郎さんはあざといくらいかわいいっす。

 

 

 

「おまえさん
 それダイヤじゃないの
 ヨーロッパの妖怪は宝石に弱いのよ」

 

宝石に弱い狼男さん。

狼男なのに荒くれ感は特になく、むしろ世渡りに長けた印象になっているのが珍しいキャラ造形ですね。

 

 

 

「日本の妖怪には切腹しかないとわしは考えとる」

 

フランスの化け猫に取りつかれ衰弱した鬼太郎さん。

ヨーロッパ妖怪に敗北するくらいなら潔く切腹せよと迫る目玉のおやじ。

ふだん優しいのにときどき気合入りまくったことをおっしゃるんですよね。

 

 

 

鬼太郎たちの乗っていた飛行機はハイジャックに乗っとられ目がさめたらアフリカの上空。

 

最終話の一コマ目がこれだからたまりません。

ちなみにハイジャック犯は鬼太郎さんたちの手で2ページ目に鎮圧されます。

 

 

 

等々、鬼太郎、目玉のおやじ、砂かけばばあ、子泣きじじい一反もめん、ぬりかべ、そしてねずみ男と、いつもの面々が楽しく活躍し世界を股にかけるのですから、全体的にアップテンポな楽しい一冊になっています。

未読の方はこの機にゲットされてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

ゲゲゲの鬼太郎が世界的にもどんどん人気になっていきますように。

 

 

これで中公文庫の復刊も刊行終了ですね。

終わってしまうと寂しいなあ。

 

「沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う 感想」山舩晃太郎さん(新潮文庫)

 

水中考古学者の山舩晃太郎さんによる素人向け水中考古学紹介本が非常に面白くてかんたんしました。

海底の砂に埋もれさえすれば船や積み荷の劣化は最小限に抑えられる。水中考古学の知見や技術が深まれば歴史の新発見も増えるに違いなく、明るい未来が目の前に見えるかのような気持ちにさせてくれる本で嬉しくなりますね。

 

www.shinchosha.co.jp

 

 

最新技術を武器に、謎を追え! なぜか竜骨が見つからないクロアチアの輸送船、水深60mのエーゲ海に沈む沈没船群、ドブ川で2000年間眠り続けた古代ローマ船に、正体不明のカリブの“海賊船”。そしてミクロネシアの海に残る戦争遺跡。英語力ゼロで単身渡米、ハンバーガーさえ注文できずに心が折れた青年が、10年かけて憧れの水中考古学者になりました。深くて魅力的な海底世界へようこそ!

 

はじめに

第1章 人類は農耕民となる前から船乗りだった
300万隻の沈没船/水中考古学と船舶考古学/「タイムカプセル」と「ミルフィーユ」/トレジャーハンターの正体

第2章 発掘現場には恋とカオスがつきものだ
発掘シーズン到来/キールを探せ!/船はどこだ?/地味すぎる発掘のリアル/プロジェクトはつらいよ/発掘症候群/どうして見つからない?/二人でこっそり推理/内緒の発掘作業/沈没船の名は

第3章 TOEFL「読解1点」でも学者への道は拓ける
夢はプロ野球選手/水中考古学との出会い/英語が全く分からない!/絶望の授業初日/パズルのように船を解き明かす/最新技術「フォトグラメトリ」/考古学調査における新たな可能性/就職難にぶち当たる/道がないなら自分で作る

第4章 エーゲ海から「臭いお宝」を引き上げる
依頼は突然に/水中考古学者の懐事情/ギリシャの精鋭達/夢のような調査現場/水深60mの蒼/UFOのように動いて撮りまくる/保存処理は時間との闘い

第5章 そこに船がある限り、学者はドブ川にも潜る
川の考古学/薄い味噌汁のような川/やっと出会えた初めての古代船/水中での手実測/レア船と発覚!

第6章 沈没船探偵、カリブ海に眠る船の正体を推理する
親友との旅路/カリブ海に沈んだ2隻/2隻の眠る現場へ/沈没船探偵の出番/ついに船の正体を解明

第7章 バハマのリゾートでコロンブスの影を探せ
嫌な予感/発掘の遅れの理由/なぜ、そこに穴があるのか/キャラック船とキャラベル船

第8章 ミクロネシアの浅瀬でゼロ戦に出会う
戦争と水中考古学/チューク諸島と日本の歴史/水中文化遺産を守れ/珊瑚の生息地になったゼロ戦戦没者の眠る場所として

おわりに

文庫あとがき

解説 河江肖剰

【山舩晃太郎×丸山ゴンザレス】
対談 ロマンは現場で待っている

 

 

有名な方なのでご存じの方もいらしゃるかもしれませんが、著者の山舩晃太郎さんは水中考古学を学ぶために単身渡米し、そうとうなご苦労をしながら英語と水中考古学を修め、現在は最新技術のフォトグラメトリに習熟した学者さんとして世界中の海や川を潜っておられるとのことです。

 

引用した目次に書いてある通り、多種多様な船・史跡との出会いをされていて、本を読んでいても一つひとつのエピソードにどきどきわくわくさせていただけます。

 

エッセイ風、自叙伝風の軽妙な語り口でありながら、取り上げている内容は考古学者としての誠実なふるまい、水中考古学における発掘・探索の基礎技術紹介、フィールドワークにおける泥くさい仕事や気配りの数々等、実態的なものが多くてその点でも満足度が高いんですよ。

一般的な歴史好きの方にとっても、珍しいジャンルでありながら情熱や難儀さは似通うものがありますので感情移入して読み進めることができるのではないでしょうか。

 

 

どの章も面白い前提で、私は船そのものが好きですので前半の船舶構造を推理し探索に活かしていく場面が特にお気に入り。

中盤のフォトグラメトリ技術の基礎・威力を思い知らせてくれる場面も好き。

後半の世界中を旅しているかのような気持ちにさせてくれるエピソードの数々も楽しい。

はじめからおしまいまで面白い本だな!

 

 

詳しい引用・紹介はしませんが、カリブやミクロネシア現地の方々が、過去の歴史を象徴する存在である水中遺産をどのように受け止めているかが伺われる場面、いち歴史好きとしてはグッとくるものがありました。

自分が当事者でも同じように言うかもしれない。

でも現地の方々の間でもきっと意見は様々なのでしょう。

人がなぜ歴史を学ぶのか、歴史から何を得ようとするのか、そうしたことを考える一つの契機にもなりました。

 

 

考古学の新たな技術を学ぶという点でも、一人の研究者・歴史好きに出会うという点でも、魅力的な本ですのでおすすめですよ。

文庫版が出ていっそう多くの方の眼に触れていくといいですね。

 

 

そのうち中世日本の貿易や倭寇・海賊にかかわる水中調査も進んで、西国における戦国時代の解像度がよりクリアになるような発見もありますように。

 

 

 

 

楠木正成所縁「金剛山登山からの千早城と観心寺 春はよい季節」

 

ものすごく久しぶりに金剛山を登ってみまして、楠木正成さんゆかりの千早城観心寺を訪れましたら春ならではの爽やかな清閑さを満喫することができてかんたんしました。

山に登るにせよ寺社を訪れるにせよ、新緑の季節は本当にいいものです。

 

www.chihayaakasaka.org

 

www.kanshinji.com

 

 

 

この日は電車とバスで金剛山登山口まで参りました。

登山って駐車場のスペース限られるし道は混むしで車で行くか公共交通機関で行くかいつも迷いますよね。

 

 

たぶん一番メジャーな登山コース。

 

現在地から山頂(国見城)までまっすぐ登って、帰りに千早城(千早神社)へ寄って降りてきます。

 

片道1時間くらいで、このコースはばっちり整備されているので登山初挑戦の小学生でもそんなに問題ないことで知られていますね。

とはいっても尾根筋のような緩やかな道はなく、基本的に山頂まで斜面をひたすら登り続けるルートなのでけっこうしんどいはしんどいのですけど(しっかり筋肉痛になりました)。

 

 

というわけで山頂です。

 

山頂には何千回も登った方々のお名前が巨大掲示板にて称されていますので見物して慄きましょう。

いつの間にかふもとと山頂にモンベルさんのショップができていて驚きました。

山頂でおでん食べたらおいしかったっす。登山のおでんいいっすよね。

 

 

 

身体を動かした後は史跡訪問です。

 

帰り道の方が見つけやすい楠木正儀さんのお墓。

 

 

 

千早城入口(登山ルートからちょっとだけ遠回りするコース)。

 

 

 

千早城(千早神社)かいわい。

 

超有名人ゆかりの超有名城ではありますが、メインの登山ルートから少し逸れることもあってひと気はすくない。

 

その分だけ、ゆったりと楠木正成さん追悼ムードにひたれますし、春の新緑まじりな森閑・静謐も味わえますのでたいそう贅沢な気分になれます。

 

 

周辺の雰囲気。

 

中世山城の元祖的存在ですので攻めづらい立地であることは言うまでもありませんが、それ以上に静けさ厳かさ、楠木一族への崇敬的な空気が漂う、訪れるべきお城跡だと思いますね。

 

 

 

続きまして観心寺

 

金剛山登山口から河内長野駅へのバスを途中下車いたしまして、道を少し山っかわに戻ると楠木正成さんの銅像がお出迎え。

 

東京の皇居といい、楠木正成さんの銅像は騎乗姿の格好よさに定評がありますね。

 

 

役小角さん、弘法大師(QUOBO DAISI)さん、楠木正成さんなど錚々たる方々に縁のある観心寺さん。

 

 

楠木正成さんにかかわる金堂や建掛塔(建てかけてるところで楠木正成さんが戦死したため一階建てになった塔)、数多の仏像等、多くの国宝や重要文化財を拝見することができます。千早城同様、ひと気はすくないのですけど。

 

 

そして、それ以上にかんたんしたのはお花と新緑の美しさ。

 

桜単体で見れば半ば散った季節ではありながら、新緑の葉のみずみずしさ、シャガやタンポポなどの野花とがあいまった美しさ・爽やかさが素晴らしいですね。

手入れが行き届いた様子がぞんぶんにうかがわれ、季節季節の魅力があるお寺であることが確信できます。そんな中でもとりわけよい季節に訪れることができたなと嬉しい気持ちになりました。

 

 

このような環境下にて、楠木正成さんも満足度高く眠っておられたらいいですね。

 

「非理法権天」ってなかなか世の中の実態を端的にとらえた言葉だよなあと思います。

 

 

 

花粉も多少はおさまり、暑さもピークには遠く、目に入るものは美しくて鼻を抜ける匂いもかぐわしい。散歩するには本当によい季節ですね。

 

どなた様も事故や怪我なく春の訪れを存分に楽しんでおられますように。

楠木正成さんへのリスペクトがこれから先も盛んでありますように。

 

 

 

ゲゲゲの鬼太郎「猫町切符 感想 週刊実話掲載でも鬼太郎は鬼太郎」水木しげる先生(中公文庫)

 

ゲゲゲの鬼太郎シリーズ、週刊実話に掲載されていた作品を集めた文庫も出ていてかんたんしました。週刊実話掲載ということでモチーフにSFや政治・企業がじゃっかん増えはしますが鬼太郎さんたちはほぼいつも通りで実家のような安心感。

 

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地球に飛来する宇宙人たち。彼らの狙いは一体――? 天狗、猫又、化け狸、異国の神や悪魔まで、異界から来た妖異に鬼太郎が挑む。23話を収録。

 

 

 

収録されているお話は次の通りです。

 

UFO宇宙突撃隊

タイムマシン

ロケットハウス

竹やぶの小人

火星人現る

エンバン実験

不思議な家

猫町切符

宇宙人落下

ムーン大王

狸ばやし

メキシコの石

かくれ蓑

終末株式会社

海坊主

奪衣婆

透明人間

悪魔博士

二人狸

わんたん妖怪

影くい猫

死人列車

つきもの

 

週刊実話にて1978年の半年間掲載されていたようですね。

週刊であの緻密な絵を描き続けて話も面白いのがいつ見てもすごい。

 

 

各話のタイトルを見ても分かる通り、SF・宇宙的な題材がふだんより多くなっていますが、鬼太郎・妖怪連中は宇宙でも宇宙人相手でもふつうにふだんどおり活躍しているのがすごいなあと素朴に思います。

 

 

一部ネタバレを含む前提で

特に印象に残った場面をいくつか紹介しますと。

 

 

 

 

 

 

 

「我々の光線銃がきかないなんてどういうことだーっ」

 

女王星の地球占領軍を返り討ちにする鬼太郎、輪入道、カラス天狗。

強い。

 

 

 

(頭のいいやつというのも案外便利なもんだなァ

 考えてみりゃあ

 戦う前に勝つか負けるかを測定できれば

 僕と電子頭脳との関係のように戦争はおきないわけだ)

 

未来世界?の創造主こと電子頭脳さんが、鬼太郎を前にして「戦ったら負けるかもしれない、だまっていれば過去に帰ってくれる」と正しい計算をしはります。

人間は正しい計算通りに引き下がれないことも多いので風刺的なコメントな気もしますね。

 

 

 

「人間が猫になる“楽しみ”を邪魔するもんじゃない」

 

蒸発する人間が増えると猫が増えるという。

鬼太郎さんの超能力をもってしても解決できない怪異事件があることを教えてくれる、スケールが大きいけど猫だらけでかわいいお話。

 

 

 

極秘のうちに金を集め

未来学者や

ナントカ博士に

まことしやかな論文をかいてもらうと

なんとなく変化を求めている貧乏サラリーマンの絶好の話題となる。

 

週刊実話による世論形成術を端的に解説してくれるモノローグが面白い笑。

 

 

 

「ベリアルに対し鬼太郎は逆に体の中に封じこめ

 「霊魂四の字固め」またの名を

 「満腹殺し」という手で

 悪霊となったベリアルを殺したのだ」

 

悪霊となって生きていた悪魔ベリアルさん。

霊魂四の字固めというネーミングセンス輝く正体不明の技が気になりますね。

 

 

 

あと、話の筋は伏せておきますが終盤の「死人列車」というお話が一般人離れした感覚……人間的には決してめでたくないけど妖怪の世界観ではOKなのかなあというお話でとても面白かったです。妖怪文学作品として秀作ではないでしょうか。

 

 

 

鬼太郎ワールドの雰囲気をぞんぶんに味わえて、中公文庫による復刊はとてもありがたいプロジェクトでございましたね。

これからも腕利きの編集者による名作復刊の動きが続いていきますように。

 

「世界お化け旅行」を入手できていないので手に入れねば。

 

 

 

 

「中世ヨーロッパの城の生活 感想 想像力を補強してくれるよい資料」ジョゼフ・ギース&フランシス・ギース / 訳:栗原泉(講談社学術文庫)

 

中世ヨーロッパにおけるお城の暮らしをまとめた文庫本を目にしまして、読んでみたら思った以上に中世城主の日々の暮らしや仕事や特性など記述が多種多方面に及んでいてかんたんしました。

中世ヨーロッパといえばファンタジー的世界を想像するときの土台になることも多い舞台ですから、こういう本で想像力を補強できると楽しいんじゃないでしょうか。創作をする人が手元に資料として置いておいたり。

 

bookclub.kodansha.co.jp

 

 

↑ オフィシャルHPの画像を原寸大で引用しました。

城壁のテクスチャーまでよく分かりますね。

初代スーパーマリオクッパ城も思い返せば中世ヨーロッパ城モチーフだったような。

 

 

牢固とまた堂々と風格を漂わせ、聳(そび)える城。西欧中世、要塞のような城が陸続と建造されていった。城作りはいついかなる理由で始まったのだろうか。城の内外ではどのような生活が営まれていたのだろうか。ウェールズ東南端の古城チェプストー城を例に挙げ、年代記、裁判記録、家計簿など豊富な資料を駆使し、中世の人々の生活実態と「中世」の全体像を描き出す。

 

まえがき――チェプストー城
第1章 城、海を渡る
第2章 城のあるじ
第3章 住まいとしての城
第4章 城の奥方
第5章 城の切り盛り
第6章 城の1日
第7章 狩猟
第8章 村人たち
第9章 騎士
第10章 戦時の城
第11章 城の1年
第12章 城の衰退

 

 

目次の通り、イギリスにある「チェプストー城」というお城を主な題材に、中世イギリスの各種戦争や政変に少し言及しながら、チェプストー城主たちの暮らしや家計や行事、また、中世城郭の興廃について紹介してくださる構成になっています。

 

防御施設として建築された城が、やがて住まいとして暮らしやすさ・快適性も重視されるようになり、軍事や政治の変化もあって貴族はより暮らしやすくて快適な宮殿に居を移していく……という時代の変遷にしみじみ。

まったく一緒ではないにせよ、日本の中世~近世における武士の暮らしの移り変わりに似た要素も感じて、人間の感性や判断のユニーバサリティに思いが至るようでもあります。

 

 

いくつか印象的だった描写をご紹介。

 

土地こそが領主権の基盤をなしていた。領地で暮らし、領地によって生計を立て、領地のために生きる日々が、領主の人となりを左右したのは疑うべくもない。領主は土地から収入を得、農地以外の土地は猟場にした。

もちろん領主は政治には関心を寄せた。しかし、ほとんどの場合、領主が政治に関心を寄せたのは、政治が領地の経済状態を左右したからであった。

 

イグサはときどき取り換え、床も掃除をされた。エラスムスによれば、イグサの下には「昔からのビールや油の沁み、得体の知れない何かのかけら、骨、唾、イヌやネコの糞といった具合に、ありとあらゆる不潔なものがあつまっていた」。当時の城の床がこのようなありさまだったのは間違いないだろう。

 

毛織布や亜麻布を染めた当時の壁掛けは、十四世紀に入るとタペストリーへと進化を遂げていく。しかし当時は装飾というだけでなく、隙間風を防ぐ大事な役目も負っていた。

 

荘園管理には手紙の書き方や法的手続きをはじめとして、書類の準備や経理などの知識が求められたから、家令になるには特別な訓練が欠かせなかった。ヘンリー三世の治世の初め頃から、オクスフォードの町の教師たちが荘園管理の講座を定期的に開くようになり、領主にやとわれて実地奉公をはじめる機会に恵まれた青年たちを六ヵ月から一年間ほどかけて訓練したようである。

 

皿は一枚を二人で使う

 

中世ヨーロッパで最も広く人々の情熱を駆り立てた狩猟といえばタカ狩りである。

城の中庭になくてはならない建物のひとつにタカ部屋がある。

 

森林地域は莫大な価値のある天然資源だったから、誰もが森を欲しがり、森の防衛に努めたし、また森をめぐる争いも絶えなかった。狩猟を好んだウィリアム征服王はイングランドの森林を自分が使うために保護しようとして、フランスから「森林法」を持ち込んでいる。

 

密猟者に同情を覚える人も多かったようだ。森林裁判所の巻き物には、村人たちが「何も知りません」、「誰だかわかりません」、「疑わしい者はおりません」と証言したと、繰り返し記録されている。

森の役人たちは憎悪の対象だったのだ。

 

実入りの少ない平和時に、騎士に残されていた行動と収入の道はただひとつ、武芸試合である。

 

聖ミカエル祭は冬の始まりとされただけでなく、城の会計年度の始まりでもあった。

 

城の暮らしの中心であった大広間は、こうした邸宅の出現で変化をせまられることになる。プライバシーが求められ、城主一家専用の食堂や個室が増えていくにつれて、中世を通してより広く、より凝った作りに成長しつづけた大広間の重要性が失われていったのである。十三世紀の大広間は、十七世紀にはとうとう召し使いたちのたまり部屋になっていった。

 

 

等々。

 

興味ある方はぜひ手に取って詳しい描写を読んでみてくださいまし。

 

 

日本史世界史のかわりなく、歴史から人間のありようを学び、歴史にリスペクトを抱くような機会がこれからもふんだんにもたらされますように。

 

 

 

 

大相撲2024春場所感想「尊富士関の新入幕優勝がひたすらまぶしい、土俵外のいざこざは両者反省してほしい」

 

1年ぶりの大阪春場所、誰もが想像すらしていなかったであろう新入幕優勝&三賞全部受賞を尊富士関が成し遂げてただただかんたんしました。

生きているうちにこのような光景を目撃できるとは。

白鵬関引退以降、相撲界の主要記録というのはそうそう更新されることもなくなるんだろうと思っていましたが現実は人間のちっちゃい想像なんて軽々と超えていっちゃうんですねえ。

 

その元白鵬宮城野部屋問題、事案の中身もひどいし協会の措置もアンフェアな感じがするし、何よりも春場所はじまるよというタイミングで土俵外のいざこざニュースばかりが注目されたの本当に両者猛省してほしいと思いますわ。

土俵内がガチンコなのは大歓迎ですけど、土俵外で程度の低いガチンコされたらファンはしらけるばかり。

それもあって、尊富士関や大の里関等の若手が土俵内でまぶしい活躍を見せてくださったことの値打ちがいっそう引き立っていましたね。力士としての魅力と、経営者としての親方衆の実力とが釣り合うようになってほしいものです。

 

 

www.sumo.or.jp

 

www3.nhk.or.jp

 

 

 

幕内で勝ち越した方々は次の通り。

 

13勝 尊富士(優勝、三賞すべて)

12勝 なし

11勝 豊昇龍、大の里(敢闘賞、技能賞)、高安

10勝 琴ノ若、豪ノ山

  9勝 若元春、阿炎、朝乃山、平戸海、阿武咲、

   御嶽海、湘南乃海

  8勝 貴景勝、熱海富士、翔猿、琴勝峰、正代、

   佐田の海、錦富士

 

 

尊富士関はカミソリのような力士ですね。

キレ味の鋭さは幕尻ながら幕内随一のように映りました。

インタビューでもファン、親方、照ノ富士関をはじめとした部屋の関取衆、そしてご家族と、他者を敬い気づかう言葉が多くて胸を打ちました。伊勢ヶ浜部屋の絆とハイレベルな活躍、毎々かんたんさせられます。

これからもどうか大きなケガをすることなく、お身体大事に長く活躍いただけることを願ってやみません!

 

豊昇龍関も今場所よかった!

大関陣の中でも唯一「壁」として立ちふさがってくれました。

新顔相手に強いのは上位陣の必須素養ですから、いっそうの負けん気を発揮してこれからも活躍いただきたいです。

 

大の里関は素晴らしい活躍なのに悔しいでしょうね。

大器も実力も疑う余地がないだけに、細かな甘さを一つひとつ克服して、安定感の高い上位陣になっていただきたいところです。

 

そしてシレッと11勝している高安関よ。本来の実力から、もっと注目されるように、もっと場所を引っ張っていけるようにアピールしていただきたい!

 

琴ノ若関、大関デビューとしては恥ずかしくない成績ではありますが、やはり本人はそうとう悔しいことでしょう。大の里関同様、安定感のある上位陣として、甘いところを潰していってほしいものです。

 

豪ノ山関もよかった! 千秋楽は複雑な役割でしたが、この日を経験したことで豪ノ山関のメンタルは一層磨かれることでしょう。わたしは豪ノ山関の取り口が好きなので、更なる発奮に繋がることを熱望しています。

 

ほかの勝ち越し勢のなかでは、阿武咲関の印象がとても良かったですね。良さが戻ってきた、更に伸びた感じ。後半戦でも星を伸ばせているところに成長を感じます。

 

 

あとは、ふだん負け越し勢には言及しないのですが、二人ほど。

 

狼雅関、強くなりましたね~! おしくも負け越しながら、今後の活躍が確信できるような活躍でございました。

それと霧島関。家族が人質にでも取られてるんちゃうかというくらいの負けっぷりでしたし、千秋楽の琴ノ若関戦もあのポジションを取って攻めきれないという明らかな不調っぷり。本当に「らしくない」場所でした。不調の言葉で済むならいいのですけど、脊椎とか腰とかを痛めてなければいいんですが。心配。

 

 

春場所が終わるといよいよ世の中も春、新学期や新事業年度という感じがしてきていいものですね。

世の中も土俵の中でも上がり下がりや移り変わりがある季節、一人ひとりが新たな場でイケてる花を咲かせることができますように。

 

 

 

推しの武将山関は十両五枚目で9勝6敗。

まだ伸びるよ!

 

 

 

「ASTLIBRA Rividion 外伝-幻夢の洞窟- 攻略感想 パン屋の娘さん強すぎる」

 

製品版のアストリブラにとうとう外伝が実装され、しかも大幅ボリュームアップでパン屋の娘さんの無法な強さ暴れまわりを堪能できてかんたんいたしました。

フリー版のミニ外伝をプレイした方はぜひぜひRevision本編を追章までクリアしたうえでこの外伝もプレイしていただきたいところです。

 

www.astlibrarevision.com

 

store.steampowered.com

 

 

 

以下、ストーリーの核心的なところはネタバレしませんが攻略上のネタバレ要素は多々含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

難易度は「地獄」でプレイしてみましょう。

 

やってみて気づきましたが、同じ「地獄」でも本編よりはるかに難易度は低いです。

敵の挙動は本編と同じですけれどパン屋の娘さんの魔法がひたすら強いので。

 

 

 

外伝主人公のパン屋の娘さん。名前は不明。

 

「アンタならやれる」という声に押されて、町に侵入してきたモンスター相手にホウキを振り回して戦います。

この段階では決して強い子ではないのですけれど。

 

 

 

数回プレイすると、

 

「どうやら魔法の才能があるようだ」ということで魔法を習得し始めます。

この魔法がどれもとんでもない威力で、本編の神々が使ってくる技・魔法を凌駕するようなスペルを平気で唱え始めてしまうのです。

 

 

 

最終的には

 

大規模フレアを起こしたり

 

 

画面全体を凍結させたり

 

 

隕石を降らしたり

 

 

画面の敵全体の魔法防御を大幅に下げたり(魔法主体で戦うキャラが更に相手の魔法防御を下げてくるのでまさしく無法であります)

 

 

極太の雷を降らしたり(フリゲ版で猛威を振るったゼウスの超強化版です)

 

 

極太の光ビームでマップの敵を一掃したり(フリゲ版で猛威を振るったイレイザーの超強化版です)

 

 

というえげつない少女に成長しはり、

 

 

詳細は伏せますが製品版で実装された真ラスボスを8秒で撃滅可能にまで。

 

 

 

あくまで私のプレイベースの参考記録となりますが、

 

プレイ26時間にて

 

 

レベル13の能力値がこんな感じに。

 

 

 

比較として、倍の時間プレイした本編主人公のレベル99ステータスはこちら。

 

 

さすがに本編イケメンさんの方がHP・攻撃力・防御力ははるかに上ですが、注目すべきはST(MP)と魔導力。

なんとパン屋娘さんの方が魔法に関する力が倍以上上回っているのです。ゲームデザインの違いがあるとはいえ、レベルが80も違うのに……。

 

彼女は本編主人公さんほどのバックグラウンドストーリーを持っていないので「主役」足り得ないのはともかく、それだけに野生の天才というか化け物感が際立ちますね。

 

 

 

これには本編のライバル枠であるカイさんも驚愕なのであります。

 

やはりゼウス・・・・!! ゼウスは全てを解決する・・・・!!

 

 

ちなみにこのカイさん戦は本来負けイベントなのですが、みっちり鍛えて撃破すると実績が解除され、

 

貴重なアクセサリ「カイザーリング」を入手できます。

わたし初プレイ時は知らんかったので、クリア後に実績解除が1個だけ残っていることに気づいてここだけのためにやり直すはめになりましたわ笑

これからプレイする人は、みっちり鍛えてカイさんを倒してしまいましょう。戦うタイミングは第2層のボス撃破後です。GROWに励んでゼウスを覚えていけばばっちりです。

 

 

 

とまあ、長々と話しましたがもともとプレイ感覚が楽しく気持ちいいアストリブラにおいてこの外伝のパン屋の娘さんプレイは一層爽快感が増しており、魔法だけでなく物理攻撃も充分に強く、走る移動スピードやジャンプ力も最終的にはとんでもないことになり、本編で苦戦しまくったザコ敵やボスをびしばしスイスイ滅殺していけるのでとても楽しいの。

本編のなかなかな難易度と長さのもとで積んだ努力が一気に報われるかのよう。

ぜひにプレイしてみてくださいませ。

 

 

 

あとは、少しだけストーリーのチップスを。

 

 

フリゲ版では第5層で終わりでしたが、製品版の外伝では

 

と、本編の追章クリアを前提とした話が展開するのであります。

 

 

 

神様「リーゼロッテ」さんと邂逅し、新たなストーリーが始まります。

 

※敵が大幅に強くなっていきますが主人公はもっと大幅に強くなっていきますのでビビる必要はありません。

 

 

 

詳しくは解説しませんが、登場人物みんなパン屋の娘さんの途方もないポテンシャルにびっくりし通し。

 

それでいて彼女に嫌な印象をまったく抱かないのは、もくもくひたむきなタイプで家族思いで活躍も影働きに徹していてイキッているところが一切ないからなのでしょうね。ええ子がやっと報われてくれるような感じで。

 

 

ポリンさんのこれらセリフが、外伝の雰囲気の良さを象徴しているようで好きです。

 

 

 

 

あとは攻略面のチップスを少し。

 

フォースをたくさんくれる大きな石が並んでいるボーナスマップ、ジオクロスなどの強力な魔法を使えば破壊することができ、大量のフォースを獲得できます。


右下の獲得フォース量に注目。

 

 

 

スタイル(ジョブ的なもの)は、魔法系が使いやすいと思います。

 

物理攻撃も強い主人公ですが魔法がそれ以上に強いので、杖を振って一気にスタミナを溜めて魔法ぶっ放すのがいい感じ。

 

 

POLINの「ワイズマン」の存在が大きい。

 

杖の魔法弾で弾幕を張ればあっという間にスタミナ(MP)が溜まるの。

魔法弾自体が彼女の魔導力ゆえに超強いし。

 

 

 

見落としがちですが、特定の装備からロープやハーブ(→眠り薬)を入手できます。

 

 

本編でも後半に侵入できたエリア、外伝でも行けるようになりますので、よい装備を入手いたしましょう。

 

 

本編との裏表イベント!

 

こういうの地味に嬉しいですよね。

 

 

真ラスボス撃破後、真ラスボスのレベルを上げるモードが実装されます。

 

で、レベルを2回上げた真ラスボスを倒すと、実績(外伝を遊びつくしたやつ)がひとつ解除されてアクセサリも手に入ります。

 

 

 

最後に実績集。

上に行くほどさいきん解除したやつ(要は苦労したやつ)です。

 

 

 

やあ、楽しかった。

外伝ふくめて膨大なプレイ時間。本当に素晴らしいゲームです。

 

 

個人製作なので無理は言えませんけれども、アストリブラ2がいつの日か発売されますように。ギャラリーオブラビリンスみたいなモードやりたいなあ。

 

 

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