肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

信長の野望20XX「黄梅院の追憶 感想」

信長の野望20XXイベント「黄梅院の追憶」、今川義元さんが桶狭間で生き残っても三国同盟の結束が揺らいでいてかんたんしました。

短編イベントではありますが、こういうクオリティの高い戦国ifを楽しめるのが20XXのいいところですね。

 

↓イベントのリリース

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

攻略に役立つ情報はありません。

難易度がそこまでは高くなくてありがたいです。

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イベントの導入部。

 

武田家と今川家の確執が始まったぞ、という情報が北条家に入ります。

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結論から言えばこれは虚報でして、結果論では偽情報を信じて拙速に黄梅院さん離縁を決断した北条氏康さんの裏取り不足的なイベントになっています。

まあそれだけ氏康さんが風魔小太郎さんに信を置いている、ということなんですけど。

 

幽魔勢力は人間に化けられる訳ですが、中途半端にドラマパートに介入すると親しい人からは偽物と見破られてしまいますけど、こういう伝令的な役割に徹した場合はそうそう偽者とばれることもなくて厄介ですね。

 

 

 

北条氏政さん。

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201X時代ほどの腹黒さは出さず、ただただストレートに妻を愛している知性と意志力の高い青年として描かれています。

なにこれ羨ましい。

 

 

 

黄梅院さんと幼年期の氏直さん。

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かわいいけどかなしい場面です。

 

20XXの黄梅院さんはなぜか往年のジュリアナ的なお嬢様として描かれていますが、いつの間にかそのキャラ付けもすっかりお馴染みなものとなり、こうして特段の違和感なく黄梅院イベントが開かれていること自体がすごいことだと思いますね。

黄梅院イベントを実装する戦国コンテンツなんてなかなかないんじゃないかな。

 

 

 

桶狭間後もピンピンしている今川義元さん。

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桶狭間の反省を踏まえて国力を強化しているのなら、この今川家はそうとう強靭な勢力になっていそうで恐ろしいですね。

 

20XXの戦国時代イベントもだんだん積み重ねられてきて、以前のイベントを前提にした描写が増えてきているのはよいものだと思います。

こうして今川義元さん生存ifを見れるのも楽しいし、寿桂尼さんも追憶した甲斐があったよね感があってよきよき。

 

そのうち三好長慶さんor三好義興さん生存ifも見てみたいものであります。

 

 

 

そして武田信玄さんと武田義信さん。

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この、今川義元さんが生きていても三国同盟を置いといて織田家と勝手に盟を結ぶ武田信玄さんがものすごく武田信玄さんぽいし、その場合でも今川家との関係を重視して父に諫言する武田義信さんもものすごく武田義信さんぽいし、知らぬ間に両者の確執に巻き込まれている武田勝頼さんもものすごく武田勝頼さんぽい。

 

この武田家ifの描写は短いながらも武田家への深い理解と愛情に満ちていて素晴らしいっすね。
 

 

 

 

諸々さておき、マイペースに武将として活躍しているかさねさんも好きです。

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今さらですが、かさねさんは201X時代の秀吉さんの武勇要素まで一人で担っていて大変ですね。 その分だけチャンポンな濃い女性になっていて面白いですけど。

 

 

 

 

結論として、20XX世界では北条氏政さんと黄梅院さんはお幸せで何よりです。

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こんなにストレートな恋愛描写も珍しい気がします。

羨ましい。

 

地味に、黄梅院さんは武田家に送り返されていないという新説に沿った結末となっているのが趣深いですね。

20XXのようなゲームだと、従来説になりそうな局面がユーザーの介入で新説的な着地になる、という演出もできるんだな。

 

 

 

 

こういう、短くてもクオリティの高いシナリオを楽しめるイベントはいいですね。

難易度が極端に高くないのも嬉しい。

追憶シリーズは今後も定番イベントとして実装されてほしいものです。

 

そもそもの20XXサービスも上手いこと続いていきますように。

8つの時代という壮大な先行きまではともかく、201X完結、平安時代完結、20XX版戦国時代各大名家イベント実装、までは絶対やりますとか宣言してくれたら安心できて嬉しいです。

 

 

 

実録「漫画太郎版おおきなかぶ~ vs 小学生 読み聞かせ」ガタロー☆マン先生(誠文堂新光社)

 

画太郎先生の絵本第二弾「おおきなかぶ~」を小学生に読んであげたところ、前作の「ももたろう」に続いてゲラゲラゲラゲラ笑ってもらえてかんたんしました。

 

絵本のジャケを見せただけで「あっ、この絵は!!!!」と喜んでもらえたので画太郎イラストのインパクトは子どもたちの脳裏に焼きついていたようです。

私いい初等教育しているわぁ。

 

 

www.seibundo-shinkosha.net

 

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すべてがサビ! 

これは絵本のソウル・ミュージックやないか!(トータス松本

 

言い得て妙なキャッチコピーですね。

画太郎先生の作品がいかに魅力的か、そして画太郎先生がいかにスタッフや各界の実力者から愛されているかが伝わってまいります。

 

 

 

さて、画太郎版おおきなかぶ~でございますが。

 

「ももたろう」同様、ストーリーは基本的に原作通りです。

 

が、「ももたろう」と違ってオチは漫画太郎イズムが出てきています

「絵本」「おおきなかぶ」にオチという概念を使っている時点でどうかとも思いますが、オチは原典通りではありません。

 

なお、横で聞いていたお母さま方から「トルストイに謝れ」という感想が出ていたことは申し添えておきます。

 

 

いちおうフォローしておくと

階段オチはありませんし、

死~んとはなりませんし、

オゲゲーとかしませんし、

なんこうはぬりませんし、

斧やタトゥーで首を刎ねられたりもしません。

 

ただしババァの下品ネタはあります。

 

 

 

 

とはいえ、肝心なのは小学生方のナマの感想です。

 

「……ました!!!」

「……ませんでした!!!」

 

と読み進め。

 

 

結果!!

 

  • ページをめくるたび「ゲラゲラゲラ」と大爆笑
  • 「ちんこ~!」「この顔~!」と猿のように連呼
  • 「もう1回読んで~」とおねだり
  • 「おもしろかった!」「ありがと~!」と大人に感謝

 

大好評やないかい。

 

 

 

よかった。

 

画太郎先生の作品は、現代の小学生にも通じる普遍的な力があったんやね。

Zガンダムウルトラセブンドラゴンボール超プリキュア5等と同様、人気作品は続編が製作されるという黄金法則に乗った瞬間を確かに目撃させていただきました。

 

私はとても嬉しい。

 

 

 

それにしても漫画太郎先生、ドストエフスキーさんの「罪と罰」に続いてトルストイさん等の「おおきなかぶ」まで手中に収めてしまうとは。

画太郎先生はもはや日本を代表するロシア文学者と呼んでも過言ではあるまい。

 

 

ウォッカと同じように、漫画太郎先生の作品が迷える人々の魂をこれからも慰めてくださいますように。

 

 

実録「漫画太郎版ももたろう vs 小学生 読み聞かせ」ガタロー☆マン先生(誠文堂新光社) - 肝胆ブログ

 

 

 

大相撲'21名古屋場所感想「白鵬から凡人への問いかけ」

 

大相撲で久しぶりに名古屋場所が開催され、久しぶりに15日間フル出場した白鵬関が全勝優勝で復帰するという異次元な事態を目撃しかんたんしました。

いろいろ物議はかもすのでしょうけど、数年先数十年先から見ても歴史に残るような場所になった気がしますので今場所を見届けることができてよかったなあと思います。

 

www.sumo.or.jp

 

www3.nhk.or.jp

 

 

 

幕内力士の勝ち越し勢は次の通りです。

 

15勝 白鵬(優勝)

14勝 照ノ富士

12勝 琴ノ若(敢闘賞)

11勝 玉鷲

10勝 逸ノ城、豊昇龍(技能賞)、宇良

  9勝 霧馬山、石浦

  8勝 正代、御嶽海、明生、隆の勝、宝富士、北勝富士
      照強、志摩ノ海、千代翔馬、剣翔、一山本

 

 

 

千秋楽の解説で北の富士さんが白鵬関の心境を「凡人には分からない」と仰っていましたけど……いい意味でも悪い意味でも、確かに白鵬関はもう凡人の世界線では生きていないような気がしてきましたし、どのような取り口であろうがどのような批判をいま浴びようが数十年先の歴史で讃えられたり功績を評価されたりしているのは白鵬関の方なんだろうなという感慨を抱くような場所でした。

 

白鵬関自身が常々「未来の横綱が自分の記録を目標にできるように」等と仰っていますし、過去や前例や郷愁や虚像からしか相撲を評せない我々凡人に対して相撲の未来がどうあるべきか問いかけられているような気すらいたします。

 

14日目の立ち合いにかつての猫だましを思い出した相撲ファンも多いと思いますけど、あれで翔猿関はちょっと救われたんじゃないかと思ったり。

ルールの範囲内で新たな取り口や戦略を広げていくことをただ批判しているだけで本当にいいのか、相撲ファン的には揺さぶられたような気持ちです。

 

今場所の白鵬関を見ていて思ったのは、ビジネスの世界でグローバルなリーディングカンパニーがあの手この手で先進的な取り組みを、ときにはえげつない手法も駆使してシェア1位に君臨しているのと似通っているなあと。

資本力や人材や取引関係の優位性に安住してドンと構えてさあ2位以下の企業よかかってきたまえなんてやっているトップ企業ってありえないですもんね。

強大な企業ほどCSRを求められるのも批判にさらされるのも似ていますし、我が道を進んで世の中に大きなものを残していくのも同様なのでしょう。

 

前もなんかで書いた気がしますが、白鵬関については引退してしばらく時間をおいてからでないと我々凡人には上手く評価できないんだろうなと思います。

 

その上で、いまいま白鵬関を批判する人がいるのはいいと思うんですけど、批判する側の人も相応しい品格を保ってくださいますように。できれば口汚い言葉が千秋楽観戦に来て涙していたご家族の耳には届きませんように。

 

 

 

照ノ富士関の横綱昇進おめでとうを筆頭に勝ち越し力士それぞれに好ましい気持ちを抱いたり負け越しはしたものの大栄翔関が後半少しだけ復調していたのが嬉しかったり千代翔馬関のバタバタ相撲が最近わりと好きだったり推している武将山席が千秋楽で勝ち越してハッピーだったり色々語りたいことはありますが、白鵬関の衝撃が強過ぎたので省略いたします。

 

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版18巻 感想 おバァはんの謀略がエグい」

 

じゃりン子チエの文庫版18巻、テツを弱らせるためにおバァはんが仕掛けた謀略がエグ過ぎる上、結果巻き起こった騒動まで一人で解決してしまう無双っぷりにかんたんしました。

 

www.futabasha.co.jp

 

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18巻収録のお話は次の通りです。

 

  • 寝小便作戦
  • 金メダルなんていらない
  • 絶体絶命のテツ
  • 寝小便の勝ち!!
  • 本物の寝小便
  • 怪人クモ男
  • テツ壊しは誰だ
  • 大団円はいつのこと
  • 恐怖の「ばくだん」女
  • テツなんて守りたくはないけれど
  • 明るく楽しいお正月に向かって
  • 初詣解決篇
  • 出前で失敗 お地蔵さん
  • 恐怖の「人間マンホール」
  • 「人間マンホール」なんてカモ
  • 対決の日の前祝い
  • 対決「人間マンホール対ばくだんの王者」①
  • 対決「人間マンホール対ばくだんの王者」②
  • ヒラメちゃんのスカウト
  • ヒラメちゃんはモデルさん
  • 儲かる顔は みな同じ
  • 丸太はヒラメのお姉ちゃん
  • ガムテープのテツ
  • テツの顔は ウン万円

 

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前半がおバァはんがテツにしかけた心理作戦、弱ったテツに対して送られたヤクザの刺客、そして話をややこしくするカップルの乱入、が入り乱れる込み合った長編話、

中盤がお酒をいくらでも飲むことができる「人間マンホール」男とお好み焼屋のオッちゃん(百合根)との酒飲み対決のお話、

後半はヒラメちゃんが絵のモデルとしてスカウトされるお話、

という構成になっています。

 

 

とりわけエグいのがおバァはんの謀略でして。

  • テツは幼少期なかなか寝小便が治らなかったトラウマがある
  • おバァはんがテツを弱らせるために寝小便作戦を思いつき、チエちゃんに協力を要請する
  • チエちゃんがテツに「寝小便は大人になって再発することがある」と囁く
  • 寝ているテツのふとんの中に、毎晩小鉄やアントニオジュニアがコップ1-2杯のお湯を注ぐ
  • ガチで寝小便が再発したと思い込んだテツは心身が消耗していく
  • そのうち、テツは本当に寝小便が再発し心身が荒廃してしまう

 

という、「やり過ぎやろ……」「ほぼマインドコントロールの手口やんけ……」感満載の内容となっているのです。

 

ババァ怖え。

これは読者がマネしたらあかんやつですね。

じゃりン子チエはたまにブラック過ぎるギャグが出てくるのが侮れないです。

 

 

 

その上で以下、各登場人物の名ゼリフを。

 

 

チエちゃん&小鉄

小鉄…」

「ハイ…用意してあります
 ちょうど水がオシッコの温度に」

「よっしゃ ほんなら頼んだで」

 

エグい謀略の片棒を担ぐ少女と猫。

小鉄が完全にチエちゃんの舎弟になっているのがウケますね。

こういう時だけスムーズに意思疎通できているのもジワジワきます。

 

 

 

おバァはん&チエちゃん

「今日のスキヤキの味はちょっと濃い目にしまひょか」

「濃い味がテツ好きやから」

「それもありますけど
 あとでノド乾きますやろ」

「あ…」

 

謀略を畳みかけるおバァはん。

マジ怖え。

 

 

 

小鉄&アントニオジュニア

「カラカラやて……」

「そぉなの………
 でも砂漠で遭難してもやっぱり寝小便はしちゃうのよ」

 

水分を取らなくなったテツに対しても遠慮なく偽寝小便をデリバリーし続ける悪猫二匹。彼らもテツ相手なら遠慮なしなのが酷い。

 

 

 

テツ

「ボク…
 ボクほんとに自分が分かんないのよ」

 

本当に寝小便を再発した上、幼児退行の症状まで出てきたテツ。

これはほんまにアカンやつです。

 

まあテツなので雑に治って、ヤクザをおびき寄せるために弱ったふりをし続けるんですけどね。

 

 

 

ヨシ江はん

「そのうちて………

 お父はんもぉとっくに元に戻ってますがな」 

「そんなことお父はんの顔見たら分かりますがな」

 

テツが回復した上でわざと弱ったふりをしていることを、誰よりも早く気付くヨシ江はん。この辺りの彼女の洞察力は相変わらずすごいですね。

 

この後、ヨシ江はんに何故か浮気をしている嫌疑がかかり、そのせいでテツは再び精神が荒廃するのですけど、その際も事態を概ね正確に察して適切に行動しているのがさすがです。

 

 

 

おバァはん

「さぁさぁ正月正月
 みんなでええ正月にしまひょ
 もぉなにも考えることおまへんで」

 

混迷を深める事態に対して、結局ひとりでヤクザの刺客と対峙し、ヨシ江はんの浮気疑惑の原因を捕らえ、関係者を集めて解決篇を始めてしまうおバァはん。

 

もともとは自分が蒔いた種なのに金田一少年やコナン君みたいな役割を図々しくやっているのがウケますね。

 

 

 

おバァはん&チエちゃん

「ウチ今気合い入れて店やろと思てたとこや」

「うっ…たまりまへんなぁ
 チエのその元気だけが残りわずかなわたいの人生のたった一つの光ですわ」

「またまた
 みんなはまっ暗なウチのまわりでおバァはんが一番元気やてゆうてるで」

「だ…誰だすそんなことゆうてるのは」

「それよりおバァはん残りわずかの人生やったら
 お客さんウチの店にまわしてや」

 

そんなこんなで再び日常が戻った二人。

朗らかに会話していますが内容はなかなかスパイシーです。

 

 

 

画家(野見山正蔵

「いい…本当に素晴らしい
 まるで劉生の麗子像だ
 動かないで!!
 よく見せてくれ
 たまらない平面だ

 

ヒラメちゃんに創作意欲が刺激された著名な画家さん。

本人としては心から賞賛しているのですけど、あまり褒められている感じがしないのが複雑ですね。

 

この画家さん花井拳骨氏の旧友だそうで、どうも花井センセの周りの大人はみんなヒラメちゃんファンになってしまうようです。

 

 

 

 

 

複雑に練り上がった物語がバタバタ解決していくのが楽しい巻でしたね。

読んでマネをするアホな読者が出てこないことを祈るばかりです。

 

こういう喰えないババァがいつまでも元気な大阪でありますように。

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版17巻 感想 猛威を振るう危険酒"ばくだん"」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

 

小説「陰陽師 龍笛ノ巻 感想 最後の"飛仙”がとんでもない」夢枕獏さん(文春文庫)

 

陰陽師シリーズ「龍笛ノ巻」を楽しく読み進めて満足していたところ、最終エピソード「飛仙」のオチがイッてる内容で一層かんたんしました。

 

books.bunshun.jp

 

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以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

当巻に収録されているお話は次の通りです。

 

  • 怪蛇
    安倍晴明さんと蘆屋道満さんが「蛟(みずち)」に出会う話。

  • 生首の化物と対峙する話。怖い。賀茂保憲さん登場。
  • むしめづる姫
    有名な虫好きの姫(露子姫)が登場する話。鬼と女とは、人に見えぬぞよき。
  • 呼ぶ声の
    賀茂保憲さんゆかりの亡霊と対峙する話。
  • 飛仙
    キレのある意味で問題作。後述。

 

相変わらずいずれのお話もクオリティが高く、満足度の高い作品となっています。

 

「首」のホラー描写が秀逸な点、新登場人物の賀茂保憲さんや露子姫がそれぞれキャラが立っていて魅力的な点、源博雅さんの笛描写が更に素敵になっている点、ひんぱんに登場する鮎がおいしそうな点、等が印象に残りますね。

とりわけ源博雅さんの笛は、さっそく賀茂保憲さんをたぶらかしていたり、いつのまにか蘆屋道満さんが源博雅ガチ勢になっていたりと、主要登場人物の間で着実に確固たる位置づけを得ている点がすごいと思います。

 

 

 

その上で、もっとも読んでいて変な笑いが漏れ出たのが「飛仙」でして。

 

筋立てとしては

  • 御所の屋根の上に夜な夜な"何か"が現れる
  • 藤原友則さんの娘が謎の病にかかる
  • 安倍晴明さんが娘(全裸)を救う
  • 病の原因は、空を飛ぶことができる仙人が落とした薬でした
  • 御所の屋根の上をとんでいたのもこの仙人です

 

という流れで、これだけ読むといかにも不思議な幻想譚に映るのですけれども。

 

 

まずこの仙人さんが

「風に漂って流れてゆくことはできるのですが、飛べませぬ。宙に浮いていると、子供たちが竹竿を持ち出してきては、おもしろがって、下からわたくしを打つので、いつの間にやら、竿打ち仙人などと呼ばれたこともござりました」

 

と絶妙に萌えるキャラクターであること。

平安時代の子どもたち強い。ウルトラQの子どもたちに似通うものを感じます。

 

 

その上で、この仙人さんの薬が

「あの天足丸は、わたしにしか効きませぬ。使った蟲はすべて雄であり、わたし自身が洩らした男の精を混ぜて作りました故、女の方が飲まれると、たいへんなことになるとわかっておりました」

 

というえげつない代物であることが判明し。

しかも原材料については安倍晴明さんも源博雅さんも特にツッコまず話が進んでいくのが読者の苦笑いをやったら煽ってくるんですよね。

 

自分が洩らした精を飲んで空に浮かび、子どもたちにイジメられる仙人。

洩らした精入りの薬を落として、嫁入り前の娘にえらい迷惑をかける仙人。

 

なんてダメな仙人なんだ……。

このありがたみのなさが一周まわって愛しいぞ。

 

 

 

かように、この「龍笛ノ巻」は満足度と斜め上度を存分に楽しめるよい巻でした。

これから先の巻でも賀茂保憲さんや露子姫が再登場して活躍しますように。

飛仙の仙人さんはたぶん再登場しないと思いますが何かの間違いでその後の様子が描かれたりするときがきますように。

 

 

 

小説「陰陽師 生成り姫 感想 陰陽師シリーズを初めて読む人におすすめ」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ

 

 

「ベーコン 随筆集 感想」訳:成田成寿さん(中公クラシックス)

 

フランシス・ベーコンさんの随筆集を読んでみましたら、けっこう実際的というかイギリス貴族っぽい経験知に富んでいてかんたんしました。

日本で言えば戦国時代末期くらいの人物ですが、現代の上級マネジャー層に求められる素養に通じるようなことをたくさんおっしゃっている良い古典だと思いますよ。

 

www.chuko.co.jp

 

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随筆集なので、テーマとなる目次を引用いたします。

興味を引かれたら読んでみてくださいまし。

 

 

 

  1. 真理について
  2. 死について
  3. 宗教の統一について
  4. 復讐について
  5. 逆境について
  6. 偽装と隠蔽について
  7. 親と子について
  8. 結婚と独身生活について
  9. 嫉妬について
  10. 恋愛について
  11. 偉大な地位について
  12. 大胆について
  13. 善良と性質の善良について
  14. 貴族階級について
  15. 反乱と騒動について
  16. 無神論について
  17. 迷信について
  18. 旅行について
  19. 帝国について
  20. 忠告について
  21. 遅延について
  22. 狡猾について
  23. 自分自身のための分別について
  24. 革新について
  25. 事務の敏速について
  26. 賢明に見えることについて
  27. 友情について
  28. 出費について
  29. 王国と国家の偉大さについて
  30. 養生法について
  31. 疑念について
  32. 談話について
  33. 植民地について
  34. 富について
  35. 予言について
  36. 野心について
  37. 仮面劇と祝賀行列について
  38. 人間の性質について
  39. 習慣と教育について
  40. 運について
  41. 利子について
  42. 青年と老年について
  43. 美について
  44. 障害者について
  45. 建物について
  46. 庭園について
  47. 交渉について
  48. 追従者と友人について
  49. 依頼人について
  50. 学問について
  51. 党派について
  52. 礼儀と身だしなみについて
  53. 賞賛について
  54. うぬぼれについて
  55. 名誉と名声について
  56. 司法について
  57. 怒りについて
  58. 事物の推移について
  59. 噂について(未完)

 

 

文章は簡潔でとても読みやすいですし、ところどころ西洋史の有名人エピソードを例として挙げてくれるので歴史ファン的な楽しさもあります。

個人的に推しているシラ(スッラ)さんのエピソードもちょいちょい取り上げてくれるのが嬉しい。

 

 

59編のテーマの中で、特に印象に残ったのは11の「偉大な地位について」ですね。

偉大な地位にいる人は三重の召使である。君主あるいは国家の召使であり、名声の召使であり、仕事の召使である。だから自分の体にも、自分の行動にも、自分の時間にも、自由をもたない。権力を求めて自由を失おうとするのは妙な欲望である。あるいは他人に対する権力を求めて、自分自身にたいする権力を失うことになるのである。

偉大な地位へのぼることは、みんな、曲がりくねった階段を通るものである。そして党派がある場合に、のぼりかけているときには、自分の身を一方の側につけ、地位を得てからは、どっちつかずにいるのがよい。自分の前任者の記憶を利用するときには公平でやさしくするのがよい。というのは、もしそうしないと、自分がいなくなったとき、きっと借金が返されるということになる。同僚があったら、その人たちを尊敬することである。そしてその人たちが求めていないときでも、その人たちの助けを呼ぶ方が、呼ばれることを期待する理由があるのに除外するよりよいものである。話しあっているときや、ものを頼む人にたいする私的な答えのときに、自分の地位をあまり意識したり、考えたりしない方がよい。そして、「公けの仕事のときは別人になる」といわれるようにした方がよい。

 

心構えとしても具体的姿勢としても、よい忠言であると思います。

もっと広まるといいですね。

現代社会はいい意味でも悪い意味でも実力があればそれなりに偉くなることができますけれども、偉くなる過程でこういうメッセージを誰からももらえない人も多いですし。

 

同様に、20の「忠告について」も含蓄のある内容でして、偉くなる人は読むべきです。

 

 

 

40の「運について」もいいですね。

明らかに目に見える徳性は賞賛をもたらす。だが、秘密の隠れた徳性があって運をもたらすものなのである。

たくさんの小さく、ほとんど見分けられないような徳性というか、むしろ資質と習慣があって、人間を運のよいものにするのである。

シラは自分の名に「大」をつけず「幸運な」という方を用いるようにした。そして、これまでも気のつかれていることだが、自分自身の知恵や政策を、あまり大っぴらに自慢する人は、不運に終わるものである。

 

 

 

45「建物について」、46「庭園について」は、イギリス人らしい美意識と趣味が出まくっていてエッセイとして純粋に面白いです。

 

 

47「交渉について」も実際的な名文だと思います。

巧妙な人物を相手にするときには、いつでも、その人の目的をよく考えて、その言葉を解釈してみなければならない。そして、そういう人たちにたいしては、口数を少なくして、相手にいちばん思いもかけないことをいうとよい。困難な交渉の場合にはいつでも、種をまくと同時に刈り取ろうと思ったりしてはいけない。問題を準備し、だんだんと、それを熟させるようにしなければならない。

 

 

 

幾つかを引用しましたが、君主的な視点で実用的な知恵をたくさんいただけるよい本だと思いますので、これからも広く読まれていくといいですね。

 

どうか才能ある方には相応しい徳性を身につけていただいて。

もったいないつまずき方が世の中から減っていきますように。

 

 

「応仁・文明の乱と明応の政変 感想」大薮海さん(吉川弘文館 列島の戦国史②)

 

列島の戦国史シリーズの2巻「応仁・文明の乱と明応の政変」が、応仁・文明の乱について京周辺だけでなく地方各地への波及っぷりを詳しく整理してくれていてかんたんしました。

応仁・文明の乱は書き手によってフォーカスを当てる点がかなり変わってくる気がいたしますが、この本はかなり包括的に描写されているのでおすすめですよ。

 

www.yoshikawa-k.co.jp

 

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京都での東西両軍の対立に至る政治過程や、大乱の様子と乱後の情勢を西国にも目を向けて叙述。乱世へと向かう時代を通観する。

 

 

 

内容をイメージしやすいよう、細かめに目次を引用いたします。

 

室町幕府の運命を決した争乱―プロローグ

    いまだに謎多き大乱

    足利義教の登場

    義教の恐怖政治と波乱の予兆

 

一 斜陽のはじまり

 1 嘉吉の乱

    将軍「犬死」

    細川持之の孤軍奮闘

    自信を喪失する持之

    進まない赤松氏討伐

    嘉吉の徳政一揆

    足利義勝の早過ぎる死

 2 足利義政の登場

    困難な船出

    管領執政の継続

    管領執政か将軍親政か

    義成と大名、今参局日野重子の対立

    有馬元家の出家

    今参局烏丸資任の失脚

    伊勢貞親と日野氏を中心とする体制

    義政の親政への意気込み

    財政的に先細る幕府

    内裏再建の政治的効果

    分一徳政令

    さまざまな増収の試み

 3 管領家内部の争い

    畠山持国と持永の争い

    持国の後継者争い

    畠山政長と義就の争い

    細川氏一族の協力と対立

    最弱の管領家、斯波氏

    管領家同士の争い―加賀国

    管領家同士の争い―近江国

 

二 中央における応仁・文明の乱

 1 義政と足利義視

    跡継ぎがいない!

    斯波義敏の帰還

    斯波義敏・義廉をめぐる対立軸

    文正の政変

 2 畠山義就の帰還

    二度にわたる復活戦

    義政からの家督認定

    御霊合戦

 3 応仁・文明の乱

    開戦

    事態の収拾を図る義政

    「室町殿幡」と義政

    東軍と西軍

    両軍の思惑

    義視の逃亡

    逃亡先として北畠氏が選択された理由

    伊勢国での義視

    義視の帰京と西軍化

    東幕府と西幕府

    西軍の南朝復活計画

    劣勢の東軍

    室町社会のひずみが生み出した「足軽

    応仁二年八月の東軍大攻勢と伊勢貞親の再登板

    朝倉孝景の交渉術

    騙された孝景

    東軍内の分裂と疫病の流行

    両軍和睦への動き

    京都における終戦

 

三 地方における応仁・文明の乱

 1 北陸地方

    地方への視点

    越中国

    能登国

    加賀国

    越前国

    若狭国

 2 東海地方

    三河国

    尾張国

    飛騨国

    美濃国

    伊勢国

    志摩国

    伊賀国

 3 畿内近国

    近江国

    大和国

    紀伊国

    摂津国

    河内国

    和泉国

    丹波国

 4 山陽地方

    播磨国

    淡路国

    美作国

    備前国

    備中国

    備後国

    安芸国

    周防国長門国

 5 山陰地方

    丹後国

    但馬国

    因幡国

    伯耆国

    出雲国隠岐国

    石見国

 6 四国地方

    讃岐国

    阿波国

    伊予国

    土佐国

 7 九州地方

    筑前国

    対馬国

    壱岐国

    筑後国

    豊前国

    豊後国

    肥前国

    肥後国

    日向国

    薩摩国大隅国

 

四 戦後の世界

 1 武家社会の再建

    京都を離れる大名たち

    止まない赤松氏と山名氏の対立

    日野勝光の執政

    日野富子の執政

    義政の「錬金術

    義政期の日明貿易

    親離れしたい義尚

    「東山殿」義政と「室町殿」義尚

    義政の出家

    義政・義尚と東山文化

 2 公家社会の衰退

    京都から逃げ出す公家衆

    奈良での一条兼良

    京都に残った公家衆

    理想と現実

    後土御門天皇の努力と挫折

 3 寺社社会の苦悩

    貧する京都と富める奈良

    避難民の受け入れに苦慮する興福寺

    法会の退転、院家の廃絶

 

五 国一揆明応の政変

 1 各地で頻発する一揆

    両畠山氏の対立

    山城国一揆

    和泉国の文明一揆

    加賀国の文明一揆と長享一揆

 2 継続される応仁・文明の乱の対立構図

    義尚の焦り

    義尚の近江親征

    義材の焦り

    義材の近江親征

    細川政元伊勢貞宗による新将軍擁立

 

再び争乱の世へ―エピローグ

    義材の敗者復活戦

    室町幕府の行方

 

あとがき

参考文献

系図

略年表

 

 

盛りだくさんですね。

 

列島の戦国史シリーズは地方の視点や社会・文化の視点が充実していることが特色でして、そういう意味では四章の文化面はあっさりな印象を受けますが、三章各地方史の厚さが素晴らしいのであまり気にならない感じです。

同時代の九州の様子などを紹介している本はレアなので、一回読んだくらいでは頭に充分入ってはいませんが、たいへん興味深く面白かったですね。

 

 

全体を通じて印象に残ったのは、

応仁・文明の乱を幅広な視点から分かりやすく(それでもかなり複雑ですが)立体的に記載してくれていること、

足利義政さんの評価(主に政治面)がキツめ、日野富子さんに対しては再評価姿勢等、けっこう人物ごとの著者の評価がはっきりしていること、

著者の文体やカッコ内補足がところどころツッコミ待ち感があってユーモアセンスを感じること、

等でしょうか。

 

私の勉強不足もあって個々の史実への解釈どうこうよりも、著者のフック力高い文章の個性の方が記憶に残った感じですね。元々の素材からして面白い史実を描写するのにマッチしている気がします。

 

 

(参考)センスやツッコミ待ちを感じる描写事例

満祐は幕府からの討伐軍がすぐに派遣されるものと思って屋敷で応戦の準備をしていたものの、いくら待っても来ないため、屋敷に義教の首無しの遺体とともに火をかけ、義教の首を携えて自らが守護を務める播磨国に下国した(ただし首はその途次で放棄)

なぜ河内国大和国に攻め込んでの完全な討伐が実施されなかったのかは不明であるが、後土御門天皇の代になってからはじめて行われる新嘗祭、すなわち大嘗会が近日中に予定されていたことが関係しているのかもしれない。しかし、義政に仕える女官が入江殿(三時知恩寺)の清浄(トイレ)で赤子を産み落としたことが清浄を掃除した際に発覚して一か月の天下蝕穢となり、大嘗会の前に行われる御禊行幸が延期された(『御法興院政家記』)。

しかし「東山御物」と呼ばれる美術品コレクションには義政以前の将軍たちが収集した美術品も含まれており、すべてが義政の時代に形成されたものではない。また、義政は幕府の財政難のためにそれを解体して売却すらしており(第一章参照)、見方によっては義政を「御物」文化に終焉をもたらした人物とも捉えられる

しかし後土御門の思い通りにいかないことも多く(そしてその原因の大半は義政が非協力的な態度を取っていたことにある)、文明十年にはたびたび譲位を口にしている。

 

 

 

あと、塩瀬饅頭がこの2巻でも登場していたり、次代の主役である三好家が登場したりしている点は4巻に続く感があって楽しいですね。

当時の人々は日照りにより困窮しており(「法隆寺文書」)、京都では徳政の名を借りた暴動も発生していた。その暴動の首謀者は阿波守護細川政之被官の「三吉(好)」など大名の被官人であったという(「後法興院政家記」)。そしてこの暴動は土一揆として周辺各国に拡大する気配をみせていた。

 

この頃から三好家は民の味方だったようです(棒読み)。

 

 

 

などなど、楽しく読んだ面を中心に紹介しましたが、この本全体を通じて室町幕府や有力守護の実権がどのように剥がれ始めたかがよく分かる構成になっていますので、戦国時代のはじまりを学ぶ上で良著になっているように思いますね。

 

1巻の享徳の乱等ともども、戦国時代初期への関心が一層高まっていきますように。

 

 

 

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