肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

小説「破船 感想」吉村昭さん(新潮文庫)

 

吉村昭さんの小説「破船」を読みまして、例によって救いに乏しい過酷な展開を淡々刻々と描写する筆致にかんたんするとともに、帰属する集団に自己が埋没する人間のありようがリアリティあり過ぎてぞくぞくしました。

 

www.shinchosha.co.jp

 

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二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。しかし、積荷はほとんどなく、中の者たちはすべて死に絶えていた。骸が着けていた揃いの赤い服を分配後まもなく、村を恐ろしい出来事が襲う……。嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取る――僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習“お船様”が招いた、悪夢のような災厄を描く、異色の長編小説。

 

小野具定さんのカバーイラストが素晴らしいですね。

暗澹たる海の物語を見事に表現されているように思います。

 

 

ストーリーはほぼほぼ上記あらすじの通りですから、ネタバレを気にせずリアリズム溢れる文章を味わいましょう。

 

 

江戸時代、とある貧しい漁村。

穀物はまともに育たず、漁業と身売りで生計を立てている。

村には秘密があった。

冬季、あえて海が荒れた日の夜に浜で塩炊きをし、火を見て近づいた船を座礁させて、船員を殺害し、積荷を奪い、生計の足しにするのである。

村ではこの略奪行為を「お船様」と呼び、最大の慶事としていた。

 

しかしある冬に訪れた「お船様」には積荷がなく、船内の人間は既に死に絶えていた。

死者は皆、一様に赤い着物を着ている。

流行り病の病人を海に放逐したものとも察せられたが、村人には慶事である「お船様」をスルーする判断はなく、赤い着物を村人に分配した。

 

結果、村には天然痘(疱瘡)が蔓延し多数の死者が発生。

生き残った病人も、再発を防ぐため山へ追うことに。

 

人口が激減した村。

主人公伊作少年の家も、妹が死亡、母・弟は山へ追放となり、一人きりに。

そこへ、身売り奉公に出ていた父親が帰ってくる場面で物語は終了――

 

 

という内容です。

超ビター。

(フィクション作品です。元ネタの江戸時代初期の記録はあるそうですけど)

 

閉鎖社会における独特の因習、

破船略奪行為の因果応報で村が半壊する展開、

「隔離」「祈祷」しか対策がない時代の感染症の恐怖、

等々、読み応えあるポイントが満載の作品でして、分量も200ページちょいですから一晩で読み終えてしまいました。

 

 

 

もともと「漂流もの」作品が多い吉村昭さんですから、逆視点で漂流船を襲う作品を描くと残酷ぶりが一層引き立ちますね。

「仏はいくつあったんだね」

伊作は、岬の上から見下した二艘の小舟を思い浮べながらたずねた。

白湯を飲んでいた母が顔をあげると、

「海に落ちて溺れ死んでいた者が三人。船には傷を負った男をふくめて四人いたが、一人残らず打ち殺した」

と、低い声で言った。

「手向かいでもしたのかね」

伊作は、炉の火に映える母の顔をうかがった。

「初めからさからう素ぶりはなく、命乞いをしていたそうだ」

母は、抑揚の乏しい声で言った。

おそらく水主たちは、神仏の加護を求めて髷も切り落としていたにちがいない。ざんばら髪のかれらが膝をつき、船に乗り込んできた村人に手を合わせて助命を乞うている姿が想像された。

「情などかけてはならぬのだ。かれらを一人でも生かしておけば、災いが村にふりかかる。打ち殺すことは御先祖様がおきめになったことで、それが今でもつづけられている。村のしきたりは、守らねばならぬ」

母の眼に、険しい光が浮かんだ。

伊作は、神妙な顔でうなずいていた。

 

吉村昭さんが描いた大黒屋光太夫さんや長平さんたちももしかしたらこういう末路を辿っていたのかもしれませんし、彼らの小説で描かれた悲惨な漂流後にこんな展開が待っていたとしたらと想像すると救いがなさ過ぎて黙然とするばかりであります。

 

 

私としては、この作品は江戸時代の寒村を舞台にしたものではありますけど、特殊な(ブラック等)企業や(カルト等)集団にも通じるような、「自己が集団に埋没する、運命共同体的小社会の恐怖」が充分な現代性を有していて怖いな、と痺れました。

 

お船様」は、村にとっては慶事ですが、世の中からすれば「罪悪」であることは言を俟ちません。

そんな中、閉じた村で生まれ育った主人公伊作少年が、ずっと村にいたい、隣村等の他の地域には行きたくない、と感じるプロセスがリアリティあり過ぎでぞくぞくするんですよね。

ある種の洗脳教育小説じゃん、となります。

周旋人の家の土間で一泊してもどったが、再び峠を越えて山路から村を見下すことができた折の深い安らぎは忘れられない。かれは、村以外に自分の生きる場所はないことを実感として感じた。

廻船問屋の男たちが、行方知れずになった船の行方を探っているという話を聞いてから、隣村が得体の知れぬ恐しい地に思えてきた。隣村は島の一部で、さらにその島も海を越えた果しなく広い地に属しているという。それらの地には一定の掟があり、村の古くからうけつがれた定めとは異なったものらしい。

村の死者は、海の彼方に去り、時を得てその霊が村の女の胎内にやどるというが、霊は村以外に帰る地はない。慶事が悪事とされる定めの異なった地に戻るとすれば、ただ戸惑うばかりだろう。今後、所帯を持てば、当然、塩売りなどで隣村におもむかねばならぬが、出来るかぎり足を向けたくない。秩序立った定めの守られている村に、身を置いていたかった。

 

環境の違いが、生計手段の違いを生み、やがて倫理や信仰の違いを生んでいく。

弱く小さく閉じた社会で生きる者は、他の社会で生きることが恐ろしくなる。

どちらの社会で生きる者も、定めに従って生きているだけなのだけれど。

 

こうした人のありようを淡々と語られると、かなしい気持ちになりますね。

多様化が求められる現代にこそ、あえて読んでおきたい作品のように思います。

 

 

経済や技術の発展が、個人と個人間、社会と社会間での価値観の融和を促し、人類総体での安心量増加に繋がっていきますように。

 

 

 

 

「ウィザードリィ#7 久々攻略の感想および考察(種族、ゴローの間等)」PS ガーディアの宝珠版

 

マイフェイバリットゲームであるウィザードリィ#7を久しぶりにプレイしまして、やっぱり楽し過ぎてこのゲームは最高やなとかんたんし、もう一周プレイしようか迷っているところです。

 

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正式名称は「CRUSADERS of the DARK SAVANT」、通称CDS

ダーク・サヴァントという悪のSFボスの手先となって攻略してこい的なニュアンスでしょうか。#6でベラさんを殺害してエンディングを迎えた方なら、そういう展開でオープニングを迎えるので分からないでもありません。

 

ストーリーは#6からの続きもので、#6ラストで「コズミック・フォージ」という書いたことがなんでも実現するペンを発見するところから始まります。

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コズミックフォージを管理しているアレスエイデスさんの要望で、「アストラル・ドミナ」というどんな生命でも生み出せる宝珠を探しにいくことになった冒険者一行。

剣と魔法の西洋ファンタジーだった#6から、いきなりSFアドベンチャーな#7に切り替わって脳が混乱したプレイヤーも多かろうと思います。

 

 

今回のラスボスはこちら、ダーク・サヴァントさん。

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オープニングでラスボスを紹介してくれる親切仕様。

ゲーム内容はまったく親切ではありませんが。

 

彼の正体的なネタバレは#8に持ち越すといたしまして、以下、#7のネタバレはふんだんにございますのでご留意くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティは次のとおりです。

いちばん難易度の高い6人パーティ&転職なしで久しぶりにクリアしました。

 

侍の斬月さん。

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#7はキリジュツゲーなので、キリジュツと命中率に優れる侍は強力な職業です。

中盤、まともな刀が手に入らないのは玉に瑕ですが……。

 

 

 

モンクのハチさん。

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#6に続いてモンクは強力です。

スネークスピードも覚えて、先制で敵の首を刎ねる切り込み隊長に。

 

 

 

ヴァルキリーのミリアムさん。

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バランスよく強いヴァルキリーはとても役に立ちます。

なお、#7ではファイターは2倍のダメージを受ける謎特性があるので使用してはいけません。

 

 

 

レンジャーのロバートさん。

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#7では弓矢が役に立たないので、ひたすらスタンロッドで敵を麻痺らせる役です。

ユビサキワザやレンキンジュツで幅広く役に立てるのはいいですね。

 

 

 

ビショップのドミニクさん。

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パーティ随一の魔法キャラ。

転職なし前提であればビショップは便利です。

充実した呪い装備の数々も地味に強力。

 

 

 

最後はアルケミストのアルフレッドさん。

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サーマルパイナップル(核爆発手榴弾)を投げ続ける役なので、敵撃破数が大変なことになっています。

序盤から重要呪文「BLD.フラッシュ」「スリープ」「コンフュージョン」「アスフィジェーション」で大活躍できるので、アルケミストはおすすめですよ。

「DE.ポイズン」も意外なボスを即死させられたりして便利ですし。

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#7はレベルゲーのため、攻略効率だけを考えたら経験値を稼げて荷物も分散できる2~3人パーティが一番楽なのですが、#7ではアイテム種類が豊富なので6人パーティの方がプレイしていて楽しかったりするんですよね。

 

どういうパーティにするかはプレイするたびに一番悩むポイントです。

6人パーティでラストフロアのロボットやゴローの間ボスにほどよく苦戦するのも楽しいし、少人数でレベル100台にして強敵どもを瞬殺していくのも楽しいし。

こういうことを書いていると、一人旅とか二人旅で再プレイしたくなってきて困ります。いいロールプレイングネタが思い浮かんだらまたキャラメイキングしてしまうかもしれない。

 

(以前は三好三人衆でプレイしたこともあります)

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#7は旅する世界が惑星全土に及ぶため、従来作品よりプレイ時間が相当かかります。

船や、SF兵器的な要素も追加されていて、従来作品のファンからすれば違和感をぬぐい切れない気もしますが、慣れると#7のチャンポンスケール感はとてもいいものだと思うんですよね。

 

 

船で大海原を進みます。

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ちなみに#7ではスイエイスキルはとても重要で、スキルが10以上ないと水のマスに入った瞬間「イヨヨ」「ファー」と謎の悲鳴をあげて死亡します。

スキル100でも7-8マス泳ぐのが限界ですので、船が手に入った時のやったぜ感はすごいものがあるんですよ。

 

 

 

最強の武器「ライト・ソード」。

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「光の柱を発する取っ手」。要はライトセーバーですね。

素でめっちゃ強い上、終盤のロボット敵に倍打だったりします。

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ムラマサより倍近く強いライト・ソード、ドラゴンや悪魔よりも強いロボット……となると受け入れられないファンタジーファンも多いかもしれません。

#7はハマる人にとっては本当に面白いんですけど、こうした点で好き嫌いが別れるのもやむを得ない気がしますね。

 

電脳的な要素も普通に登場しますし。

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最終的にパーティはアストラル・ドミナを無事に発見します。

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アストラル・ドミナを横取りしようとするも、台座から動かせなくて激高するダーク・サヴァントさんがかわいいシーンです。

 

 

ラスボス戦の難易度はそれほど高くありません。

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その後はマルチエンディング形式で、今回は憎めない勢力であるティーラングについてみました。

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既にアストラル・ドミナはダーク・サヴァントさんに持ち去られてしまい#8に続くという場面なのですけれども、それはそれとして抗争を続けているアンパニ・ティーラングには参るね感があって好きなエンディングです。

惑星ガーディア、これから先も平和になることはなさそうですね。

 

 

こういう味わい深い種族間対立等が#7の魅力だと思いますので、以下考察を。

 

 

考察①:ガーディア土着種族の存在意義

惑星ガーディアには土着の五種族と、宇宙から到来したアンパニ族、ティーラング族が登場します。(厳密には他にも巨人や魔女やロボット等もいますが省略)

 

土着の五種族は、ガーディアとともに天才科学者「フォーンザング」さんがアストラル・ドミナの力で生み出した方々です。

彼らは「異星人が来るとき、この世は滅びるであろう」という予言を踏まえ、主人公やアンパニ・ティーラングの到来を受けて混乱・戦乱状態にあります。

 

ティーラングは目的達成には手段を選ばない侵略商人で、ダーク・サヴァントと手を組んでガーディアに侵攻してきています。どう見てもエイリアンですが意外と気さくな面もあります。

アンパニはティーラングのライバル種族で、公平・モラルを重んじる軍隊的商人です。どう見ても米軍です。

 

ここでは、フォーンザングさんが土着五種族をどのような意図で生み出したのかを考察したいと思います。

まずは各種族のかんたんな紹介を。

 

ゴーン族

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ゴーン族は強力な武士団種族で、ダーン族とムンク族の戦争を抑止するほどのガーディア最大戦力として位置付けられています。

しかしながら、星から来た者どもの策略で大魔法使いムラカトスさんが暗殺されてしまったり、帝国が内部分裂状態に陥ったりと、ゲームプレイ時点では往年の力を失ってしまっている模様です。

なんとなく、西洋諸国の植民地戦略に翻弄されたアジア・アフリカの強国がモデルになっているような気がしないでもありません。

聖堂の島でゴーン姫が葬られていたりアンゴーン・大名がかなり強かったりするところから見て、かつては相当強大な力を誇っていたっぽい。

 

 

 

ダーン族

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身体は貧弱ながら、瞑想・精神修養で魔法の力に優れた種族です。

首領マグナ・ダーンさんのもと一枚岩に結束しているのが強みですが、肝心のマグナ・ダーンさんの徳が低いのが残念。

末端の方々はいい人たちなんですけどね。

なんとなく、キリスト教で異端とされた宗派あたりがモデルになっているような気がしないでもありません。

 

 

 

ムンク

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強靭な肉体と怪しげなドラッグに定評のある種族です。

アストラル・ドミナの本質に肉薄するような「夢」を見ることができる辺り、ポテンシャルはそうとうある種族なのですが、どうも全体的に個人主義的で種族としてのまとまりがありません。

何もかもがダーン族と真逆で彼らとは犬猿の仲。また、ゴーン族にとっては「食料」視されているようです。

なんとなく、西洋人の目から見た日本の「禅」「忍術」やイスラム神秘主義がモデルになっているような気がしないでもありません。

 

 

参考:ムンク族のもとで見られる「夢」。

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単におクスリでラリッてるだけかもしれませんが、ここで見られる夢はアストラル・ドミナの力や、コズミック・ロードの役割(#8)にかなり近いと思われます。

 

 

 

ラットキン族

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ネズミ人間ラットキン族。

盗賊を生業とするマフィア集団で、ティーラング族やダーク・サヴァントにも要領よく取り入って漁夫の利を得ようとしています。

なんとなく、イタリアンマフィアやメキシカンマフィア等、アメリカ裏社会がモデルになっているような気がしないでもありません。

土着種族ながらティーラングの宇宙船を強奪して#8の世界に進出し、ダーク・サヴァントにも一泡吹かすという痛快な面が魅力ですが、その本質は暗黒街の住人でしかないので怖い怖いです。

 

一族のブラインド・メイスさんがケーン・オブ・コープス(骸の杖)という#7最凶の武器をお持ちということで著名ですが、キャラ的にあまり彼と戦いたくないんだよなあ。

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どうもプレイ時点では、ドン・バルローン率いるラズーカファミリーが、ブラインドメイスさん率いる盗賊ギルド勢を駆逐した後という設定っぽいんですよね。

#8でバルローンさんが「ケーン・オブ・コープス」を所持している辺り、バルローンさんはガーディアを離れる前のケジメとしてブラインドメイスさんを始末してきたのでしょうか。

単純な実力ではブラインドメイスさんの方が強いので、マフィアお得意の人質作戦とかでブラインドメイスさんを嵌めたのかもしれませんね。

 

 

 

ヘラゾイド

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エアスクーターに乗って移動する女性種族です。

#8に登場する種族「ハイガルディ」の末裔っぽい。

どうやって生殖しているのかは謎ですが、実際に数が少ないらしく、ドラゴン・マウンテンの上でひっそりとフォーンザングさんの遺産を守っています。

モデルどうこうより、ファンタジー世界におけるエルフの役割をSF世界に投影したような存在ですね。

 

ちなみに画像のジャン・エッテさんも#8に登場しますが……。

 

 

 

まとめ考察

ダーン族とムンク族は極めて仲が悪い。

ゴーン族は強大だが外からの謀略に弱い。

ラットキン族は混乱を助長させる存在。

ヘラゾイド族は現世不干渉で、過去の遺産を守るだけ。

そして、これら五つの種族すべてに通じなければ、アストラル・ドミナに至る謎を解くことはできない。

 

このように趣味が悪い設計をフォーンザングさんはしていったように映ります。

外から来た者たちの存在なしに、土着の五種族からアストラル・ドミナに到達する者が登場するとはとても思えません。

逆に、外から来た者たちがアストラル・ドミナを発見しフォーンザングさんの後を追うなら、これら在地の五種族に関わる試練を見事にクリアする必要がある訳です。

ゲーム的にはともかく、世界観的には「ガイコウジュツ」が超重要な気がしますね。

 

要は、ガーディア土着の五種族は、フォーンザングさんにとって後進に対する「試練」「課題」でしかないように見えるんですよね……人権感覚の欠片もないと言いますか、扱いがロボット兵と変わらないと言いますか。

アストラル・ドミナやコズミック・フォージを使いこなすコズミック・ロードにとっては、そのような感傷は取るに足らないことでしかないのかもしれませんけど。

 

それだけに、ラットキン族がガーディアを離れて好き勝手やり始めるのがウケるんですよね。

生まれがどうあれ、大事なのはタフに生き抜くバイタリティーですわ。

 

 

 

考察②:ゴローの間ってなんなの

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ガーディアの種族や生物と同様、ゴローの間のボス(神竜・オメガみたいなもの)もフォーンザングさんの手で生まれた存在なのでしょう。

なんせアストラル・ドミナの力があれば無尽蔵のエネルギーを持つ生き物もつくることができるらしいですし。

 

ゴローの間のボスたちは次の方々です。

弱い順に並べています。

 

 

ラーセーレーテップさん。

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はじめのダンジョンのボスが再登場。雑魚です。

ゴローの間の財宝を1個はプレゼントしてあげるよ、という救済措置なのでしょう。

 

 

ホラゴースの悪魔さん。

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たいして強くありません。レベル30もあれば普通に殴って倒せます。

 

 

ダルボレスの精霊さん。

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同じくたいして強くありません。レベル30もあれば普通に殴って倒せます。

ここまでは6人パーティでも難易度低めです。

 

 

地獄よりの使者さん。

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HP6698を誇る超タフな芋虫です。

まともに戦うと面倒ですが、魔法「ウィークン」でレベルを下げられますので、重ねがけしてから殴ればクリティカルや麻痺が発動して楽勝です。

 

 

千の目の怪物さん。

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レベル99、HP9099の化け物クラゲです。

まともに戦うと状態異常を喰らいまくって殺されますが、この方も「ウィークン」が効くので重ねがけしてから殴ればクリティカルや麻痺が発動して楽勝です。

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最後に第9世界の悪霊さん。

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レベル60の上、ACがめっちゃ低くてこちらの攻撃が当たりません。

しかも敵の攻撃は99の固定ダメージ&猛毒で、レベル40程度では数発で殺されます。

 

倒すにはこちらもめっちゃレベルをあげるか、

弱ゴジリ(弾避け)召喚&命中率アップ魔法&回避率アップ魔法をかけまくってリセットしながら運頼み撃破を狙うか、

ということになります。

弱ゴジリさんも数ターンで殺されるのが超怖い。

 

第9世界の悪霊という名前もおしゃれです。

名の通り99ダメージを与えてきますが、これでレベルも99だったりしたら伝説になっていたでしょう。

 

というか名の通り99ダメージを与えてくるという時点で、存在がややメタ的な概念に踏み込んでいる気がします。

やはりラットキン族の設計はフォーンザングさん的にもやり過ぎたところがあったのかもしれませんね。

 

 

 

以上のゴローの間の怪物ども、やはり#7の世界観的には過剰な強さです。

ダーク・サヴァントさんより明らかに強いし。

フォーンザングさんが喧嘩しても勝てないんじゃないの。

 

彼らの打倒がアストラル・ドミナ獲得上必須でないことからしても、ゴローの間は「アストラル・ドミナへの試練」ではなく「アストラル・ドミナでつくったらやり過ぎちゃった生物と宝物を保管しておこう。アストラル・ドミナの使い途を誤るとこうなるぞ(戒め)」ということなのではないかなあと思っています。

 

 

 

考察③:ベラさんはグレーター・ワイルドで何してるの

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#6の裏ボス、黒龍ベラさん。

彼はアレスエイデスさんを追って#8の世界へ向かったはずなのですが、なぜか#7のグレーター・ワイルドという何もない荒野で出会うことができます。

しかも問答無用でこちらを攻撃してきて、倒すとベラさんの家族の形見を落としていくという「何してんねん」感満載な感じで。

 

 

オマケ要素と受け取ることも出来ますけれども、彼が何しているか何らかの理由付けをしてみたいと考え、思い出したのが#6のこのセリフ。

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ベラさんの宇宙船の燃料、そういえば恐竜でした。

 

 

そして、グレーター・ワイルドといえば#7最強敵のこちら強ゴジリさん。

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もう分かりましたね。

ベラさんはグレーター・ワイルドで恐竜狩りをして燃料を補給していた。

 

ただ、強ゴジリさんやレックスさんは超強敵なので、ベラさんもバーサークして実力以上のものを出さないと倒せませんので。

(顔見知りの)主人公パーティが話しかけても気づかずに攻撃してきた、ということなのでありましょう。

 

ベラさんと#7で出会うこと自体が不幸な事故やったんや……。

 

 

 

 

 

以上、書いても書いてもキリがないほど、#7に対して感じることが溢れてきます。

王道ではまったくないのに、ユーザービリティも最悪なのに、こうも惹かれるのは独特過ぎる世界観とプレイ感覚のおかげ。

 

ハードルは極めて高いものの、これから先も#7にハマる奇特な人が現れますように。

プレイしたらがっかりしたわという人も多いと思いますけどご容赦くださいまし。

 

 

「ウィザードリィ#6 久々攻略の感想および考察(王妃・レベッカ・ベラ・ゾーフィタス等)」SFC 禁断の魔筆版 - 肝胆ブログ

 

 

 

「旅をする木 感想 命を見つめる姿勢、吉村昭さんと共通するもの」星野道夫さん(文春文庫)

 

星野道夫さんのエッセイ「旅をする木」をあらためて読んでみたところ、一つひとつの命を見つめるやさしい視線と、吉村昭さんの小説にも通じるような透徹とした姿勢とを感じてかんたんしました。

 

books.bunshun.jp

 

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広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカで暮すエスキモーや白人たちの生活を独特の味わい深い文章で描くエッセイ集 

 

 

 

アラスカをフィールドに活躍されていた写真家 星野道夫さん。

彼の名前を知らなくても、写真は見たことがある、という方も多かろうと思います。

 

↓参考:グーグル画像検索「星野道夫

星野道夫 - Google 検索

 

 

 

私の場合は、かつてANAJALかの機内誌で彼のエッセイを読んで、感銘を受けたことが強く印象に残っています。

 

 

さいきんでは、楽しい漫画「働かないふたり」で当著が推されていて、あらためて読んでみたくなった次第。

「働かないふたり 14~20巻 感想 旅をする木」吉田覚先生(くらげバンチ) - 肝胆ブログ

 

「働かないふたり」では、当著について「心をニュートラルにしてくれる」「分かっていたつもりのことが、実は分かっていなかったことを教えてくれる」「行ったことのない場所へ行きたくしてくれる」本であると紹介されていまして、上手いこと言うなあとかんたんいたしました。

 

 

星野道夫さんの文章は、「自分の可能性がいかに大きいか」「こことは違う世界が確かに存在する」といった実感を与えてくださりますので、若い方に特におすすめです。

 

その上で、特に若くはない自分がこのエッセイを読んでみて、感じ入った箇所をいくつか紹介してみたいと思います。

 

 

赤い絶壁の入り江

この旅の間中、ふと気がつくと、友人のOのことを考えています。今ここにいたらいいのになと、新しい風景に出会うたびに思います。不慮の事故で子供を失い、深い挫折感の中にいるOに、深い原生林に囲まれた東南アラスカの内海を見せてあげたいのです。

 

こうしたやさしさが染みる歳になったことを実感します。

 

 

 

北国の秋

秋は、こんなに美しいのに、なぜか人の気持ちを焦らせます。短い極北の夏があっという間に過ぎ去ってしまったからでしょうか。それとも、長く暗い冬がもうすぐそこまで来ているからでしょうか。初雪さえ降ってしまえば覚悟はでき、もう気持ちは落ち着くというのに……そしてぼくは、そんな秋の気配が好きです。

 

人間で言えば、40-50代くらいの感覚に近いような気がします。

 

 

 

ザルツブルクから

ぼくはアラスカを旅する中で、人間の歴史をはかる自分なりのひとつの尺度をもちました。それはベーリンジアの存在です。最後の氷河期、干上がったベーリング海モンゴロイドが北方アジアから北アメリカへ渡ってきた、約一万年前という時間の感覚です。いつの頃からか、その一万年がそれほど遠い昔だとは思えなくなりました。人間の一生を繰り返すことで歴史を遡るならば、それは手が届かないほど過去の出来事ではありません。いやそれどころか、最後の氷河期などついこの間のことなのです。

そんなふうに考えていたからか、ヨーロッパの歴史が実に最近のことのように思えます。ルネサンスの時代の建物を前にして、それがわずか四、五百年前のものであることに愕然としてしまうのです。人間の歴史の浅さというものに対してでしょうか、あるいは、人間の暮らしが変化している速さに対してでしょうか。

 

自分の視座について引き出しを増やすのであれば、大自然や地学、あるいは宇宙の歴史等に対して関心を持つといいのかもしれませんね。

 

 

 

歳月

Tが死ななくても、ぼくはおそらくアラスカに行っただろう。しかしこれほど強い思いで対象に関われただろうか。自分だけではない。それは彼をとりまく幾人かの人生を大きく変えていった。かけがえのない者の死は、多くの場合、残された者にあるパワーを与えてゆく。

 

生生流転がもたらすパワーや尊さ、輝き。

これこそ当著がいう「旅をする木」の実体なのでしょう。

 

 

 

海流

以前、クリンギット族の友人がふともらした、忘れられない言葉がある。

「おれたちには日本人の血が混じっているかもしれない。そんなことを想像させる口承伝説があるんだよ」

 

黒潮と漂流がもたらす、日本とアラスカの繋がり。

記録に残っていない無数のドラマが存在した可能性を感じさせてくれて、茫洋とした気持ちになります。

 

 

 

白夜

「ギフト(贈り物)だな……」

と、ドンが言った。

あたりが少しずつざわめいてきた。やがてぼくたちは、金色に光るワタスゲの海の中で、数千頭カリブーの群れに囲まれていった。

 

まこと幻想的な場景を、「ギフト」と表現する相棒のドンさん。

「ゲット」でなく「ギフト」と言えるのがいいですね。

ドンさん、NHK星野道夫さん父子のドキュメンタリーでも登場していまして、想像以上に渋いおじさんで素敵でした。

 

 

 

カリブーのスープ

人はその土地に生きる他者の生命を奪い、その血を自分の中にとり入れることで、より深く大地と連なることができる。そしてその行為をやめたとき、人の心はその自然から本質的には離れてゆくのかもしれない。

 

人と土地との繋がりを、生と死の連なりから見つめている点が素晴らしいですね。

 

 

 

 

 

 

いずれも、やさしさや敬意のこもった、命の輝きを見つめているような文章です。

 

あくまで私の素人感想ですが、星野道夫さんさんのこうした姿勢は、吉村昭さんの作品に通じるものがあって感じ入ります。

「羆嵐 感想」吉村昭さん(新潮文庫) - 肝胆ブログ

「死顔」吉村昭さん(新潮文庫) - 肝胆ブログ

 

それぞれアラスカの大自然、人の近現代史と、主として取り扱う題材は異なりますが、見よう・描こうとしていたものは近いんじゃないかなあ。

結果として、両者とも羆や漂流記に関心を抱いているのも興味深いところです。

 

 

 

 

星野道夫さんの遺した作品がこれからも流転し、多くの方々へパワーをもたらす「旅をする木」でありますように。

 

 

 

 

「大友義鎮 国君、以道愛人、施仁発政 感想」鹿毛敏夫さん(ミネルヴァ書房)

 

ミネルヴァの評伝「大友義鎮」が発売されまして、義鎮(宗麟)さんの内政・外交・文化面の知らなかった事績が豊富に紹介されていてかんたんしました。

一方、義鎮さんの生涯・合戦・家臣・ライバル(島津家除く)についてはあまり触れられていないのは素直に残念です。当著はとても面白かったので、その辺りを解説する後編も欲しいところです。

 

https://www.minervashobo.co.jp/book/b548715.html

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大友義鎮(おおとも・よししげ:1530年から1587年)戦国大名法名「宗麟」。
北部九州の守護公権力として領土と領海の統治に邁進し、ヨーロッパから訪れた未知なる宗教の宣教師や、外交交渉のために来日したアジアの国家使節に果敢に向き合った義鎮。国を超えて活躍したその生涯に迫り、事績と人間性に新たな光を当てる。

[ここがポイント]
◎ 混迷せるキリシタン大名=大友義鎮という悩ましいイメージを払拭し、最新研究成果に基づいた新しい「大友義鎮」像を描く。
◎ 「日本」という枠を超えて生きた真の姿に迫る。

 

はじめに

序 章 大友氏の史的背景と研究史

第一章 大友氏の歴代当主
 1 鎌倉期の当主
 2 南北朝・室町期の当主
 3 戦国期の当主

第二章 領国の拠点
 1 豊後府内の歴史的構造
 2 大名館の建設と都市づくり

第三章 領国の統治
 1 インフラ整備と夫役動員論理
 2 大内―大友連合の樹立と挫折

第四章 経済政策
 1 衡量制政策の展開
 2 豪商との相互依存関係

第五章 硫黄・鉄砲と「唐人」
 1 硫黄輸出と鉄砲国産化
 2 渡来「唐人」の経済的掌握

第六章 建築と絵画への造詣
 1 大名館・寺院の建設と障壁画
 2 唐絵の蒐集と贈答

第七章 アジア外交と貿易政策
 1 対明朝貢倭寇的活動
 2 臼杵丹生島城の築城目的

第八章 西欧文化の受容と評価
 1 カトリック世界との交流
 2 「キリシタン大名」像の虚と実

第九章 東南アジア外交の開始と競合
 1 種子島琉球・東南アジアとの交易
 2 対カンボジア外交権をめぐる抗争

終 章 義鎮の政治姿勢と経営感覚

おわりに
参考史料・文献
大友義鎮略年譜
人名・事項索引

 

 

一次史料や発掘成果をベースに大友義鎮さんの事績を再評価することを目的にしており、逸話的な義鎮さんの人物像である「酒宴乱舞・好色に浸っていろよき女に財宝を与え傾国に至る」「邪宗門に入信して仏家・僧坊・宗廟・神社、一々破却させる」の誤解を払拭せんと務めておられます。

同時に、大友氏歴代の事績の積み重ねや、豊後府内の発展、大内―大友連合の成立、豪商との結合、建築・絵画への造詣、そして明・東南アジア・西洋との独自外交等々、大友義鎮さんの誇るべき視点を次々と紹介いただける訳ですね。

 

こうした「歴史の敗者ということもありネガティブな評価が続いていた人物を、科学的な研究手法で以て再評価していこう」という流れは、三好家や畿内戦国史好きの私としてはシンパシーを感じます。

宮下あきらさんによる大友宗麟さんイラストが世に出たあたりから「大分県では大友宗麟顕彰が盛り上がってきているらしい」みたいな話を時折耳にしていましたので、ようやく最新研究の一端に触れることができて嬉しい限りです。

 

↓(参考 ※当著と関係ありません)宮下あきらさんの宗麟イラスト。漢濃度がすごい。畿内もこういうのほしい。

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本の内容に戻りまして、特に印象に残った点をいくつか。

 

  • 大友氏十五代親繁さん(1411~1493)の事績「雪舟さん支援」「豊後産硫黄の対明輸出成功」、すごいですね。親繁さん本人は質素な邸宅で暮していたというのも好感度が高いです。
  • 第二章「領国の拠点」、発掘成果や文献を駆使して府内(大分市)の発展過程を解きほぐしているパートが素晴らしいですね。中世都市がどのように栄えていくかの一事例として非常にクリアなイメージを描けますし、実際に大分市を訪れて散歩してみたくなります。
  • 大寧寺の変について、陶隆房さんと大友義鎮さんが、あらかじめ変の実行と晴英(義長)さんの山口入りについて密約を交わしていたとする一次史料ベース考察。しかも、海路で晴英さんが山口入りすれば大内氏家祖の伝承と整合して演出的によかろうという分析が興味深いです。
  • 九州商人と畿内(堺)商人の友好的繋がり事例。
  • 狩野永徳さんは、三好長慶さん菩提寺大徳寺聚光院での襖絵制作(1566)と、織田信長さん居城安土城での障壁画制作(1576)との間、大友義鎮さんのところを訪れて明人等と交流したり、丹生島城の書院の襖絵を製作したりしていた(1571)。
  • 島津家との「九州覇者」としての海外外交争いがとても面白い。島津義久さんが大友宗麟さんの派遣した対カンボジア外交・交易船を分捕った挙句、カンボジア王に「九州覇者は島津家ですさかい」と使節を派遣しなおしていた事例、はじめて知りました。
    その上で、大友家や島津家等の九州各家が蓄積した海外外交ノウハウが、豊臣家・徳川家という中央政権へ一元的に引き継がれていったという指摘はまことに意義深いものを感じますね。
  • あらためて大友義鎮さん(や九州大名)の独自の海外外交を見ていると、戦国大名をひとつの地域国家的存在と捉える見方にも説得力が増すかもしれない。この辺りは軽々に定義しにくいところではありますけど。

 

等々。

 

一方で冒頭にも書いた通り、有名な家臣方のご活躍ですとか、毛利家や龍造寺家や島津家との合戦や調略ですとかは当著には登場いたしません。ぜひ当著と同じくらいのクオリティでその辺も今後紹介していただけるとありがたいですね。

 

 

歴史コンテンツといえばコーエー社ですが、さいきんの信長の野望シリーズでも大友義鎮さんは伝統的な「女好き」「エイメン!」「げえっ、道雪!」といういじられ方を引続きされている一方で、他家への外交・調略上手っぷりも特筆されることが増えてきていて、クリエイター方が大友家研究の動向に注目していることが伺えます。

 

引続き大友家の研究が世の中に浸透していきますように。

それを受けて龍造寺家等の研究も進みますように。

 

 

 

「漢詩百首 日本語を豊かに 感想」高橋睦郎さん(中公新書)

 

中公新書高橋睦郎さんの「漢詩百首」が、漢詩の味わいや各詩人のプロフィールに気安く親しめる良著でかんたんしました。

日本人・日本語の歴史に対して、漢詩がいかに重要な役割を果たしてきたかを論じてくださっている熱量も素敵ですね。

 

www.chuko.co.jp

 

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返り点と送り仮名の発明によって、日本人は、ほんらい外国の詩である漢詩を自らのものとした。その結果、それを鑑賞するにとどまらず、作詩にも通暁する人物が輩出した。本書は、中国人六〇人、日本人四〇人の、古代から現代に及ぶ代表的な漢詩を精選し、詩人独自の読みを附すとともに、詩句の由来や作者の経歴、時代背景などを紹介。外国文化を自家薬籠中のものとした、世界でも稀有な実例を、愉しみとともに通読する。

 

 

中国人の漢詩60首、日本人の漢詩40首を、現代語訳や各詩人のプロフィールを交えて解説いただける内容になっています。

 

以下、個人的に気にいった漢詩のご紹介を。

なお、ブログだとルビがなくて分かりにくい箇所があるので、原著と一部漢字を変えていて、正確な引用になっていない点はご容赦ください。

 

 

 

力 山を抜き 気 世を蓋う、時に利不ず 騅逝かず。騅の逝かざる奈何す可き、虞や 虞や 若を奈何せん。

垓下の歌 項羽

わが力は山さえもひき抜き、気は世を蓋うほど。しかし時はわれに利せず、(愛馬の)騅は逝こうともしない。騅が逝かないのをどうすればいい? 虞よ虞よ、おまえをどうすればいい?

 

有名な項羽さんの詩ですね。

国史が好きな方にはおなじみだと思います。

項羽さんは様々な形で描かれていますが、個人的には本宮ひろ志版が好きです。

 

 

 

楼船を汎べて汾河を済り、中流に横たえて素波を揚げ、簫鼓鳴って悼歌を発す。歓楽極まって哀情多し、少壮幾時ぞ、老を奈何せん。

秋風の辞 漢武帝

二階建の船を浮かべて汾河を渡るさなか、流れのただ中に横ざまに白波をたて、縦笛と鼓が鳴り響き、舟歌がおこる。歓び楽しみが極まるところ、哀しみの情もさかんだ。若き日も盛りのときもどれほどつづこうか、かならずくる老いをどうのがれようぞ。

 

武帝さんの漢詩です。

宮廷詩人の代作かもしれないとのことですが、大事業を成し遂げた栄華と忍び寄る老いの哀しみとの対比が壮大でいいですね。

 

 

 

夜中 寐る能わず、起坐 鳴琴を弾ず。薄帷 名月に鑒り、清風 我が襟を吹く。

詠懐詩 阮籍

夜中、寝付かれないままに、起きあがって坐り、鳴琴をつま弾く。薄い帷は明るい月に照らしだされ、清すがしい風が私の襟もとを吹く。

 

竹林の七賢のひとり、阮籍さんの詩です。

内省的というか、自分一人で深く完結している感じがいいですね。

 

 

 

吾が家に嬌女あり、皎皎として頗る白皙。小字を紈素と為し、口歯自ら清歴。

嬌女詩 左思

我が家におちゃめがいる、透きとおるほどまことに色白。幼名を紈素といい、口も歯もまったくはきはきとよくしゃべる。

 

3世紀ごろの詩人、左思さんの詩。

娘大好きな内容の歌で、非常に共感が湧きます。

 

 

 

葡萄の美酒 夜光の杯、飲まんと欲すれば 琵琶馬上に催す。酔うて沙場に臥す 君笑う莫れ、古来征戦 幾人か回る。

涼州詞 王翰

葡萄をかもした美酒、(それを満たした)夜光る玉の杯。わたしが飲もうとすると、馬上で琵琶を弾いてくれようというのか。酔いつぶれたら砂の庭に寝てしまうぞ、君どうか笑わないでくれ。古よりこのかた、戦いに往ったものたちのうち、いったい幾人が帰ってこられたというのだ。

 

唐の詩人、王翰さんの詩。

拡張する大帝国の気風を踏まえ、辺境遠征を題材にしています。

酒、琵琶、馬上とくれば、上杉謙信さんなんかにも似合いそうな漢詩ですね。

 

 

 

年々歳歳 花相似たり、歳歳年年 人同じからず。言を寄す 全盛の紅顔の子、応に憐むべし 半死の白頭翁。

白頭を悲しむ翁に代る 劉希夷

くる年くる年 花は同じくわかわかしいが、めぐる歳めぐる歳 人は様変わりとしよっていく。聞いてくれ、今を盛りの若い君たち、この死にかけの白髪じじいをふさわしく憐れんでくれ。

 

以前も取り上げたことのある、好きな漢詩です。

「中国古典名言辞典【新装版】 感想と好きな言葉10選」諸橋轍次さん(講談社) - 肝胆ブログ

 

表現的には真逆ながら、花の色は移りにけりなの和歌と似たような心境を表しているのが面白いですよね。

 

 

 

独り坐す 幽篁の裏、琴を弾じ 複た長嘯。深林 人は知らねども、名月来って相照らす。

竹里館 王維

奥深い竹やぶのうち ここに独り坐り、琴のことを弾じ またいきながに歌う。深い林(のおくの趣)を(世の)人びとは知らないが、明るい月がやって来て(私の心と)照らし合う。

 

詩仏 王維さんの詩です。

王維さんは詩も画も上手で性格も穏やか、大変素敵ですね。

それにしても中国の詩人は竹林が好きであります。いかにも美しい漢詩の世界という感じでいいなあと思います。

 

 

 

千山 鳥の飛ぶこと絶え、万径 人蹤滅す。孤舟 蓑笠の翁、独り釣る寒江の雪。

江雪 柳宗元

(見渡す限り)千の山やまに鳥の飛ぶすがたはなく、万の小道から人の足跡も消えた。ただひとつの小舟、蓑笠の年寄りが、ただひとり釣っているのは冬の川面の雪か(魚か)。

 

唐の大詩人、柳宗元さんの詩。

まさしく山水画の世界という印象ですね。

 

 

 

閑林に独座す草堂の暁、三宝の声 一鳥に聞く。一鳥声有り人に心有り、声心 雲水 倶に了々。

後夜仏法僧鳥を聞く 釈空海

静かな林の草(深い僧)堂に独り坐して暁をむかえる。(仏・法・僧)三宝の声が一羽の鳥から聞こえる。一羽の鳥に声があり人には心があるゆえ、その声とその心 行く雲も流れる水も ともに了々とあきらかなのだ。

 

ここから日本人です。

空海さんの漢詩

有名な高野山の「ブッポーソー」と鳴く鳥の声を題材にしていますね。

読みくだしたときの「いっちょうこえありひとにこころあり」という箇所のリズム感が好きです。

 

 

 

夏来りて偏に愛る覆盆子、他事又無く楽しび窮らず。味は金丹に似て旁え美を感え、色は青草を分けて只紅を呈ぶるのみ。

覆盆子を賦す 藤原忠通

夏が来てもっぱら愛でるのはいちごの実だ。他の事はなにも無くこの楽しみは終わりがない。その味ときたら(霊薬)金丹にそっくりでそのくせ美味しく、その色はといえば青い草を分けてただ紅を帯びているばかり。

 

文字だけを見ると読み下しにくいですね。

なつきたりてひとえにめずるいちごのみ、あだしごとまたなくたのしびきわまらず。あじわいはきんたんににてかたえうましきをおぼえ、いろはあおくさをわけてただくれないをおぶるのみ。

読み下すと、ただただ苺大好きと訴えていることがよく分かります。

 

平安時代末期の保元の乱等で知られる藤原忠通さん。

こんなにストロベリーな嗜好と詩才をお持ちと知らなかったので意外な魅力でした。

 

 

 

生死憐むべし雲の変更、迷途覚路 夢中に行む。唯留むるは一事 醒めて猶記ゆ、深草閑居 夜雨の声。

閑居偶作 道元

およそ生き死にの憐れむべきことは雲の移り変わりさながら。迷いの道も悟りの道も夢まぼろしの中を進む。そのなかで醒めてなお留め覚えていることはただ一つこんな事か、ここ深草に閑居しての夜ふけてきく雨の響き。

 

永平寺を開いた禅僧道元さん。

こうした表現での仏教的世界観が好きです。

 

 

 

楊柳の花は飛んで江水に流れ、王孫の草色は芳洲に遍し。金罍の美酒葡萄の緑、青春に酔わざれば愁を解かざらん。

春日の作 新井白石

楊柳の花は飛んで大川の水に流れ、つくばねそうの若い色は芳しい中州に満ち満ちている。黄金の甕にあふれんばかりの美味い酒は葡萄の緑いろ、このうららかな春の日に酔わなければ 愁いを解き放つことはついにできまい。

 

江戸時代初期に幕政を担った新井白石さん。

真面目で固い人物像のイメージでしたが、こんなにおおらかな詩をつくってはるんですね。プライベートは親しみやすいタイプだったのでしょうか。

 

 

 

袖裏の毬子 値千金、謂言るに好手等匹無し。箇中の意旨 若し相問わば、一二三四五六七と。

毬子 大愚良寛

袖の裏の手毬はわしの宝物、わしほどの毬つき上手は他になかろうよ。心の思いを問いなさるなら、一二三四五六七とこたえるほかなかろうさ。

 

越後が生んだ能書家の良寛さん。

子どもと遊ぶのを愛したことで知られるお人柄がよく表れている漢詩で、ひいふうみよいつむなな、という開けっぴろげ感も素敵ですね。

 

 

 

螙冊紛披して煙海深し、毫を援り下さんと欲して復た沈吟。愛憎枉げんことを恐る英雄の迹、独り寒灯の此の心を知る有り。

修史偶題 頼山陽

虫食いの本どもは乱れ散らかり(歴史の)もやたちこめる海は深すぎるので、筆を取っていまや下ろそうとしながらまたも書き悩む。みずからの勝手な思いで英雄たちの歩いた道を曲げてしまうことを恐れる、このなやましい思いを知るのはただ寒い夜の灯のみだ。

 

江戸時代後期の大歴史作家頼山陽さん。

頼山陽さんとしても、悩みながら歴史に向き合い、苦心しながら日本外史等を執筆されていたことがよく分かる漢詩であります。

三好家ファン等からはおいこのやろうと思われがちな頼山陽さんですが、その創作者としての腕前はやはりすさまじく、川中島合戦の漢詩なんか素晴らしいですもんね。

史実を捻じ曲げるほどの文章力、とでも言いましょうか。

 

 

 

水煙漠漠として望めども分ち難し、月は只だ関山笛裏に聞くのみ。吾に剪刀有り磨けども未だ試さず、君が為に一割せん雨夜の雲。

十三夜 原采蘋

かわもやがぼんやりとたちこめて見渡そうとしてもはっきりしません、月のようすはもっぱら(名曲)「関山」をふく笛の音のうちに聞きえがくほかないようです。わたくしははさみを持っていて研ぎあげてはあるもののまだ試してはおりません、あたなの為に雨後の雲を一おもいに切りさいてさしあげましょうか。

 

江戸時代後期の女性、原采蘋さんの詩。

シャープな知性を感じる秀作だと思います。

 

 

 

今来も古往も事は茫茫、石馬声無く抔土荒る。春は桜花に入りて満山白く、南朝の天子も御魂香らん。

芳野懐古 梁川星巌

いまもむかしも物事は茫々とあきらかでなく、(陵墓の前の)石の馬はものいうことも無く盛り土は荒れるにまかせている。それでも春も桜花のころに入ると山じゅうが白くなり、このときばかりは南朝の天子の御魂も香りにみたされやすらかだろう。

 

江戸時代後期の詩人、梁川星巌さんの詩。

幕末志士との繋がりでも知られていますね。

尊王的な気配を帯びつつも、その視点はやさしい気持ちから生じているような味わいの詩で、いいと思います。

 

 

 

地涯 白雪を呼び、青夜 孤狼を発す。幻化 星歴を司り、詩魂老いて八荒。

庚戌元旦偶成 鷲巣繁男

はるかな地の涯はまっ白な雪を呼び、青い夜はひとりの狼を走らせる。ひとは幻と化して星の暦を司り、その詩魂は老いさらばえて八(方)のくにざかいをさまよう。

 

昭和の詩人、鷲巣繁男さん。

漢詩らしい孤独な味わいと、現代的な幻想性とが融合した、秀逸な作品のように感じます。

鷲巣繫男さんの作品、恥ずかしながらほとんど存じあげないので、これを機に勉強したくなりますね。

 

 

 

以上、この記事では作品の紹介だけに留めますが、本の中には、漢詩がいかに日本の重要な場面場面で人口に膾炙してきたかですとか、漢字・漢詩の導入がいかに日本語を豊かにしてきたかですとかを取り上げてくださっていますので、そういった領域に関心がある方にとっても面白いと思いますよ。

 

それにしてもあらためて漢詩を学んでみますと、歴代詩人方の「歯に衣着せずお上を批判して左遷される」スピリットや、音韻の巧みな使いっぷり等を見るに、あんがいラップなんかとフュージョンしてそのうち現代カルチャーの中でルネサンスされそうな因子を感じなくもないですね。

さいきん、モンゴルではヒップホップが人気と聞きますし、21世紀中ごろにはアジア独特の音楽×文芸が誕生していくのかもしれません。

 

 

豊饒な漢詩文化が、豊饒な現代文明に繋がっていきますように。

 

 

 

信長の野望20XX「寿桂尼の追憶 感想」

 

20XXで花蔵の乱イベントが実装され、個人的に今川家で一番好きな武将である岡部親綱さんが登場・活躍されていてかんたんしました。

 

↓「寿桂尼の追憶」実装リリース

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

攻略に役立つ情報はありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オープニングが急展開過ぎてうっかり笑ってしまいました。

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寿桂尼さんの愛息今川氏輝さんが突如お亡くなりになり、今川義元さんと今川良真(玄広恵探)さんによる後継者争い「花蔵の乱」が始まるという流れですね。

 

 

 

ストーリーはオーソドックスに20XXらしい展開で事件が解決します。

 

かさねさんの活躍(物理)場面も板についてきていて何より。

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今川家は桶狭間や氏真さん時代が取り上げられがちで、義元さん時代の初期がゲーム等で着目されるのはレアですから嬉しいですね。

 

 

20XXにも登場できた今川良真さん。珍しい星2呪術師であります。

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個人的に登場してくれて一番嬉しかったのは岡部親綱さん。

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珍しい星2覇道者です。

本家から流用されている顔グラも渋くていいですね。

(本家野望での能力パラメータ、もっと評価してほしいです)

 

 

岡部親綱さんは今川家の有力家臣岡部家の方で、花蔵の乱を今川義元さん勝利に導いたことで著名です。

20XXで大人気の岡部元信さん、あるいは人質時代の徳川家康さんへ親切にしたことで知られる岡部正綱さんの親世代くらいな方だと思われますが、この頃の岡部氏系図は私にはよく分かりません。彼らいずれかの父親なのかもしれないし親戚のおじさんなのかもしれない。

 

花蔵の乱は細部のニュアンスに諸説あるそうでして、(当イベントと違って)寿桂尼さんが玄広恵探さん方についたとか、あるいは寿桂尼さんが玄広恵探さん方に拉致られたとかで、今川家相伝の「往書(重要書類)」が玄広恵探さん方に渡ってしまい。

このままでは今川義元さんの正統性が揺らぐ、ヤベェ、となったところ、岡部親綱さんが速攻で玄広恵探さん方を撃破し、しかも「往書」を無事に取り返してきてくれたということで。

 

今川義元さんの家督を見事に安定させる大活躍を遂げた岡部親綱さん、イケてるなあとほれぼれいたしますね。

「奪われた宝物を取り返す」というミッションは非常に難易度が高い(基本的に焼失したり水没したり逃げられたりする)ものですから、それだけに三種の神器を取り戻した赤松家再興軍ですとか、この岡部親綱さんですとかはロマンがあって好きです。

 

なお、後に岡部元信さんも今川義元さんの首を取り返してきてくれる訳でして、今川家にとって岡部一族が得難い「奪還屋(ゲットバッカーズ)」であることは言を俟ちません。

本家信長の野望でもそういう点をおおいに愛でてほしいと思っている次第であります。

 

 

 

イベントに戻りまして、追憶イベントの結末が余韻あってよかったですね。

 

いつも義元さんのことを心配している寿桂尼さん。

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義元さんは寿桂尼さんの実子ではないよ説が盛り上がっていますけれども、それはそれ。寿桂尼さんはいつも今川家のことを想っていると考えたいところです。

 

 

一方、長じて案の定慢心が見られる義元さんもかわいい。

義元さんの星5グラは絶妙の表情だと思います。

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この後は史実ルートを辿るのか、桶狭間異聞ルートを辿るのか分かりませんが、寿桂尼さんが「追憶……過去を思い出し、やり直したい」フォーカスは桶狭間に当たっているでしょうから、個人的には桶狭間異聞的な流れに進んで義元さんが無事に生還できたのだろうよかったね今川家、と想像しております。

 

 

 

小少将さんといい、追憶イベントいいですね。

短編ながら味わいに富んでいて。

 

信貴山城からありし日を想う「松永久秀の追憶」イベントも実装されますように。

大志イベントでも爆死しながら追憶していましたしね。 

 

 

 

 

「草枕 感想 那美さんは男性向け恋愛コンテンツの一原型ではないか」夏目漱石さん(青空文庫)

 

青空文庫夏目漱石さんの草枕を再読しましたら、昔読んだときは高尚な芸術論的作品のように思えたのに、今読んだら「これは一種のTo Loveるとして読んだ方が面白いのではないか」という風に思えまして受容体たる己の精神的変化にかんたんしました。

 

www.aozora.gr.jp

 

 

有名な作品ではありますが、取っつきづらい内容なので読んだことがある人はあんがい少ないかもしれません。

 

あらすじとしては、

画家の主人公が温泉に行きまして、出戻りお嬢様の「那美さん」や床屋や寺の住職と交流したり、那美さんの従弟の出征を見送りに行ったりする、

というだけの流れです。

 

物語としての明瞭な筋はなく、何かの事件を解決したりとか那美さんと恋愛関係になったりとかはありません。

主人公が脳内で複雑な芸術論を考えまくるパートと、一転して軽快な会話パートとを読み進めてみようという作品であります。

個人的には夏目漱石さん独特の格調高い風景描写やテンポの良い会話描写がけっこう好きです。

 

 

 

主人公は冒頭の有名な文章

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

 

で端的に表れているように、近代的な都市文明、更に言えば「人情」そのものに倦んでいるやれやれ系の意識高いキャラクターです。

人情渦巻く都市から離れて、人っ気の少ない山深き温泉宿へ避難してきた感じですね。

画を描きに温泉場に来たはずが特に何をするでもなくぷらぷらしている辺り、自分に対する言い訳が上手いタイプでして、明治時代の読者よりもあんがい現代の読者の方が親近感を覚えるかもしれません。

 

 

一方、ヒロイン?の那美さんは温泉宿のお嬢様で、

  • 京都に好きな男がいたが
  • 地元の金持ちの男と結婚し
  • 結婚相手が没落したので実家に帰って来た
  • 周りからは薄情とか頭おかしいとか噂されている
  • 美人で
  • 巨乳で(乳が湯にふっくらと浮かぶ)
  • ほほほほホホホホと笑う

 

というキャラクターでございまして。

 

 

素直に小説を読むと、画の題材としての那美さんのあり様、西洋的芸術では表現し得ぬ那美さんの表情……的な芸術論的テーマを体現するような人物なのですけれども。

あらためて草枕を読んで、芸術論的なパートをすっ飛ばして主人公と那美さんの絡みだけに注目すると……

 

  1. 温泉宿に向かう途中、茶店で那美さんの噂話を聞く①
  2. 温泉宿初日の深夜、外で歌っている那美さんの姿を目撃する②
  3. 主人公が眠っている部屋に那美さんが入ってきた気配がある③
  4. 翌朝の風呂上り、那美さんが突如現れ濡れた身体に着物をかけてくれる③
  5. 温泉宿の下女から那美さんの噂話を聞く①
  6. 那美さんとアートな会話をする④
  7. 床屋と小坊主から那美さんの噂話を聞く①
  8. 那美さんが(嫁入り時の)振袖姿をちらりと魅せてくれる②
  9. 風呂に入っていたら那美さんが入ってくる③
  10. 那美さんと文学な会話をする④
  11. 那美さんから「身投げして往生した姿を画に描いて」と頼まれる②
  12. 馬子から那美さんの先祖に関する噂話を聞く①
  13. 那美さんが別れた夫と会っているのを目撃する⑤
  14. 那美さんと画の題材としての会話をする④
  15. 那美さんが別れた夫に向けた「憐れ」の表情を目撃する⑤

 

という流れになりまして。

 

整理すると、

 ①ヒロインに関する噂話

 ②ヒロインの神秘的な姿(からかわれている感もあり)

 ③ヒロインとのセクシーなイベント

 ④ヒロインが自分に理解や興味を示してくれる

 ⑤ヒロインが普段見せない表情(嫉妬要素もあり)

 

という要素がバランスよく散りばめられていることが分かりますね。

 

しかも、男性側は基本的に受け身で、温泉宿に滞在しているだけで那美さんイベントが次々に発生してくれるという状態なのです。

これは草枕メモリアル。

恋愛小説ではないんですけど、構成要素だけを抽出すると、現代の男性向け恋愛コンテンツとすごくフックが共通していると思いませんか。

たぶん明治時代の男性読者も、読んだ感想としては「温泉行ってみようかな」「那美さんいいよね……」「続きを書け」「つぶさに書け」あたりが大勢を占めていたんじゃないかなあと。

 

あんがい夏目漱石さんとしても、ご自身の経験や考えている事柄を様々詰め込んだ結果、もともと頭がいいだけにこのような格調高い文化芸術論的な作品になっちゃっただけで、ベースは「露天風呂でうっかり男女が遭遇しちゃうジャンル」への熱いパッションを籠めた作品だったりするのかもしれない。

三四郎」でも風呂に女性が入ってくる描写があった気がしますし、ていうか夏目漱石さんの実体験でもそういう話があったそうですし、これ系のシチュエーションもの好きでしょ? 感がすごいぞ。

 

 

草枕は一見難解で真面目な作品でありながら、内容(の一側面)は現代の男の子ウケする要素がふんだんなので意外と面白いんだよさすが夏目漱石さんということで。

 

昔「こころ」が榎本ナリコさんの手でコミカライズされたことがありましたし、同じように「草枕」もそのうち(セクシー面含め)画力と表現力の高いコミカライズがなされますように。