ウルトラマンブレーザーの映画を軽い気持ちで観に行ってみたら、小さな子どもの育児に悩んだ経験のある大人にとっては刺さりまくる内容でかんたんしました。
制作サイドも「初めて特撮やウルトラマンを見る人」を意識して制作されたという通り、一見さんにとっての値打ちが極めて高い作品だと思いますから、「ウルトラマンに興味あるけどどれから見たらわからない」という大人にたいして私はブレーザー映画を今後勧めるようにしようと思います。
ウルトラマンブレーザーという作品は近年のウルトラマンシリーズの特徴の多くをあえて外した作品で、たぶん視聴者によってもともと評価が大きく分かれるタイプの作品なんだろうなと思います。
いちウルトラファンの私としては
- ブレーザーのデザイン(理容店のポールみたいな人体的配色がオリジナリティ高くて格好いい)
- コミュニケーションを巡るテーマ性
- 「虹が出た」「オトノホシ」「さすらいのザンギル」「ソンポヒーロー」あたりのお話の雰囲気
- ガイアリスペクト(今回の映画のパンフで触れられていて嬉しかった)
辺りが特に好き。
その上で今回の映画、
- アースガロンが大活躍したり(敵からしたら恐怖でしかないほどタフでイケていた)
- ブレーザーがいちいちかわいかったり
- タガヌラー交通事故みたいなB級ギャグにちょいちょい笑えたり
- 現実の首都圏を舞台に暴れまわる特撮映画っぽさを味わえたり
等の満足度が高かったのですが、いちばんかんたんした要素がありまして。
以下、重要なネタバレを含みますのでご留意ください。
敵のモチーフが「暴れて手がつけられない子ども」という画期性。
これですよ。
ゴンギルガンというギルギルガンみたいな少年心を直球で貫くネーミングや、いかにも強敵らしい怪獣デザインもさることながら、
「嫌いだ」「大嫌いだ」と泣き叫びながら街をぶっ壊していく大怪獣性がね。
いい歳の大人としては、いろんな記憶がフラッシュバックして情緒がグチャグチャに相成るんですよ。
手のつけられない子ども、かわいいのに大好きなのにもうこうなってしまったら理屈もへったくれもなくてどないしよう無視したろかしばいたろかとなるやつ。
怪獣の叫び声に少年の泣き声を重ねてくるの、マジで脳が揺れます。
お子様の観客はただただブレーザーやアースガロンの活躍を目ぇ輝かせて見ていたらいいんですけど、その隣で映画を見ているお父さんお母さんは頭の中がゴン! ギル! ガン! って喰らいまくりますからね。
コミュニケーションをテーマにしたブレーザーでありながら。
子どもの暴力(ゴンギルガン)はそれ以上の力でねじ伏せ。
子どもは力づくで退避させ安全はしっかり確保し。
元暴れる子どものエミ隊員の言葉を借りるかたちで、やがての成長(と社会復帰の可能性?)をほのめかす。
子どもの親は、ただただ愛をまっすぐに伝えるのみ。
誰も子どもに理屈をぶつけないし、論破しようともしていない。
このものすごく現実感のある子育て対応一つひとつがですね。
育児にもがく親世代にクリティカルヒットするんですわ。。。
展開のつっこみどころとか、ウルトラシリーズとしてはこういう要素も見たかったとか、たぶん色んな意見がこの映画にも寄せられるんだろうと思います。
それらの意見も大事に、おおいにくみ取っていただきつつ。
私としては映画冒頭の長めの本編総集編紹介も含めて「初めてウルトラシリーズに触れる大人」にとっては最良の作品なんじゃないかと思いました。
クレヨンしんちゃんでいうところのオトナ帝国のような位置づけといいますか。
本当に、怪獣が街をぶっ壊している、なんなら親の勤務地周辺をぶっ壊しながら、子どもの声で嫌いだ大嫌いだ叫ばれたらたまらんっすわ。
霞が関で残業しまくって子ども寂しがらせている親とかがこの映画見たら血管焼き切れるんちゃうのと心配してしまうくらい。
それだけに、親子で見るにおすすめの映画です。
このような作品を鏡に大人がなにがしかを感じ、ご自身や周囲のお子さまへより確かな愛情をお届けくださいますように。