肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「ギャラリーフェイク 38巻 感想 シリーズでも指折りの良作揃い」細野不二彦先生(小学館)

 

ギャラリーフェイクの単行本が久しぶりに発売されておりまして、収録されているエピソードがシリーズの中でも特筆すべきほどに良作揃いでかんたんしました。

ギャラリーフェイクに親しんだことがある方なのであれば38巻は見逃さない方がいいと思いますぜ。読んだことない人も38巻から始めるのもいいと思うんですぜ。もともと一話完結が基本のシリーズですので、どの巻から読んでも大きくは大丈夫ですしね。

 

www.shogakukan.co.jp

 

 

伝説のアートコミック復活最新巻!
アートコミックの金字塔『ギャラリーフェイク』1年ぶりの新刊発売!!
近年の世相の不安を予言するような絵を描くアマチュア画家の末路は…!?
サラがネットゲームを通じてイケメン俳優と恋仲に!? 
さらにさらに痴呆老人の親を施設に預ける息子の葛藤や、
貧しい生活環境のもとで祖父や弟たちの面倒を見る
ヤングケアラーの問題など、現代社会が抱える問題も織り交ぜ、
令和の世を闊歩する闇の画商・フジタの活躍を描く!!

 

 

 

収録されているお話は5つです。

以下、かんたんな概要とネタバレにならん程度に見どころを。

 

 

ART.1 ウラVSウラ

フジタに新たなライバルが登場するお話。

ライバル猪ヶ谷洗三さんの詳細なプロフィールは伏せておきますが、好感度は大変低いのに憎めない可愛げやうっとうしさに富んでいて個人的には好きな人物です。イッシッシ。

主人公のフジタさん、こういう胡散臭い人物を相手にした時にこそ立ち回りやアートの実力が分かりやすく発揮される傾向にあると思いますので、猪ヶ谷さんの再登場にも期待したいところです。

 

 

ART.2 不安のかたち

上記あらすじの「近年の世相の不安を予言するような絵を描くアマチュア画家の末路は…!?」に該当するお話。

絵画としてはムンクさんが登場いたします。絵のモチーフとしては「叫び」ですが、画題としては個人の不安よりも社会の不安にフォーカスが。細野不二彦さんの絵に力があるというか、けっこうなパワーを紙面から感じます。

不安や混迷の深い世相にあって、小さな一個人の善意が輝く物語構成が素敵です。

 

 

ART.3 人形の絆

上記あらすじの「サラがネットゲームを通じてイケメン俳優と恋仲に!?」に該当するお話。

サラさんが主人公で、サラさんの魅力を充分に楽しめる内容になっています。いつもながらサラさんチャーミングでいいですね。

シリーズを通して、サラさんに言い寄ってくる男ってろくでもない変態野郎が多い印象がありますけれども、今作に登場するイケメンはまっとうなギャップ萌え好青年なのが逆に驚きでクスッと笑えました。

 

 

ART.4 モネの橋のたもとにて

上記あらすじの「痴呆老人の親を施設に預ける息子の葛藤」に該当するお話。

私のなかでは当巻ベストエピソードです。

貧しさにせよ健康問題にせよ、困難な境遇の人にたいして細野不二彦さんやフジタさんが送る視線のあたたかさ、マジで好きです。

 

 

ART.5 妖への道

上記あらすじの「貧しい生活環境のもとで祖父や弟たちの面倒を見るヤングケアラーの問題」に該当するお話。

ART.4同様、気の毒な境遇の人にたいするあたたかみを満喫できるうえ、妖怪への憧憬、創作に対する情熱をも感じられる名作。

フジタさんのセリフが超魅力的で、

「準クンが中学生らしい時間を獲得するには金が必要なんです。」

「令和の現在、“妖怪”の需要はマシマシなんですよ。不安な世相を反映して、怪しい妖怪モノが流行る! じっさい江戸時代、妖怪画のブームが何度もありました。」

更にその後少年にかける言葉の一つひとつ(詳細は伏せます)が、めちゃくちゃ染みるんですよ。

若い方にもぜひ読んでいただきたい作品です。

 

 

 

 

と、どのエピソードも大変おもしろくイケていて、強くおすすめする巻です。

ここにきて作品のキレ味を一層増しているのがすごいですね。

 

 

細野不二彦先生がこれからもお元気に、ギャラリーフェイクをはじめとした作品群を充実させていってくださいますように。

過去作へのアクセスもどんどんよくなってほしいものです。