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かんたんにかんたんします。

「ゲゲゲの鬼太郎 決定版 4巻感想 “鬼太郎の誕生”って墓場の鬼太郎時代じゃなかったのか」水木しげる先生(中公文庫)

 

ゲゲゲの鬼太郎決定版の4巻が引続き面白いのですが、巻末に収録されているエピソード「鬼太郎の誕生」がてっきり墓場の鬼太郎時代のお話だと思っていたのでゲゲゲ時代の別冊少年マガジン収録作品であることに気づいてかんたんしました。

たしか墓場の鬼太郎アニメの1話がこの鬼太郎誕生だったんでしたっけね。

 

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決定版4巻に収録されているお話は次の通りです。

 

  • 人食い島
  • ばけ猫
  • のっぺらぼう
  • ひでりがみ
  • オベベ沼の妖怪
  • 雪ん子
  • 姑獲鳥
  • げた合戦
  • 妖怪関ヶ原
  • 穴ぐら入道
  • 天狐
  • 天邪鬼
  • 血戦小笠原
  • 妖怪ラリー
  • 妖怪大統領
  • 鬼太郎の誕生

 

有名な妖怪が次々と登場しつつ、オールスターバトル的なエピソードも含まれる良いバランスですね。

 

以下、幾分のネタバレを含みつつ、好きな場面やセリフを。

 

 

 

 

 

  • 「わしゃあもうだめじゃ 溶ける あとをよろしくたのみます」

    鬼太郎と一緒に島男の口の中に入ってしまい身体を解かされてしまう和歌山の村長さん。身体が溶けて消えかけているのに割と落ち着いているのが大物で好き。

  • ばけ猫騒ぎで、ばけ猫を退治するのではなく、交通事故で亡くなった猫や犬の霊を慰める慰霊碑を建てて解決する鬼太郎。こういう展開もいいですよね。

  • ひでりがみvs野づちのスペクタクルバトル。

  • 「母子家庭の子ではふつうの子どものようにあそぶこともゆるされないからね」
    「気の毒だねえ……」
    「母が病気のためはたらけず生活保護受けてんの」
    「むかしからおかみは大会社に対する保護基準は甘いけど貧乏に対する生活保護基準はきびしいからね」

    1960年代の漫画のセリフではありますが、いまも変わらない社会風刺っぷりですね。弱者をかばうでもなく責めるでもなく、写実的に描いているのが水木しげる作品のいいところだと思います。

  • 「妖怪には死というものがないからね」

    お化けは死なない。雪男・雪女・雪ん子を体内の妖怪原子炉でやっつけた鬼太郎。しかし雪ファミリーは霧状になって大気をさまよい、異常気象がおきればまた復活するかもしれないとのこと。何もかもがすごい。

  • 妖怪関ヶ原に登場するガマ仙人が、ほどよく強くてほどよく弱みもあって、非常に魅力的なキャラだと思います。シチュエーション限定で最強になるタイプって面白いですよね。

  • 「妖怪はブームだがやくざは下火だ」
    「廃坑に妖怪がいるって話だ そいつを見世物にしたらもうかるとおもう」
    「術には術をもって戦えばよいではないか」
    「使うべきものは頭だよ」

    以上、すべてやくざの親分のセリフ。妖怪を捕まえよう、妖怪が抵抗しても対策を立てて戦おう。侠気が過ぎる、さすが親分。

  • 九尾のキツネにタイマンを張って勝利する鬼太郎。相手も余力を残してはいましたが。一般の漫画ならラスボス格にあたる超有名妖怪も普通に出てくるのがなんていうかぜいたくです。

  • 大規模バトルになるといつもウキウキで戦いに赴く砂かけばばあ。頼もしい。竜巻まで起こせたのかあんた。

  • ラリーに出場するバックベアード。シュールすぎる絵づらの圧だけでも異常に面白いのに、レースバトルとしても普通以上に面白いから困る。

  • 「鬼太郎の誕生」の作画とコマ割りが、ふだんのお話よりも映画的で読みごたえがあります。鬼太郎と目玉のおやじの誕生を描くという物語的面白さもさることながら、水木しげる先生の技巧の高さの方にも惹かれますね。

 

 

これだけ楽しめて1000円しないのはお得です。

本屋が減っていく一方ですけれども、本の中でも特に文庫はまだまだ競争力のあるコンテンツだと思うんですけどねえ。値段と濃さのバランスがさ。

 

じゃりン子チエゲゲゲの鬼太郎のような、色あせない作品が小説漫画学術書とわずこれからも文庫として発刊され続けますように。

 

 

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