肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

文学・一般書

小説「浮雲 感想 主人公の高学歴童貞っぽさがすごい」二葉亭四迷さん(新潮文庫)

二葉亭四迷さんの「浮雲」を読んでみましたら、主人公の高学歴&女性経験ゼロからくる謎の上から目線感ですとか、ヒロインの流行に流されてそれっぽく生きている感ですとか、ライバルの典型的な世渡りうまい嫌なやつ感ですとか、ヒロインのお母ちゃんの典型…

「ドン・フワン・テノーリオ 感想 キリスト教戯曲の大乗仏教的美しさ」作:ホセ・ソリャーサ / 訳:高橋正武(岩波文庫)

宗教幻想劇「ドン・フワン・テノーリオ」を読んでみましたら、いい意味でキリスト教らしい救済のされようが美しくてかんたんしました。 「紀州のドンファン事件」の報道を見て軽い気持ちで読んでみたんですけど、想像以上に内容がよかったので何事もきっか…

小説「蜜のあはれ 感想 室生犀星さんの性癖マジすげぇ」(青空文庫)

室生犀星さんの金魚擬人化幻想小説「蜜のあはれ」を読みましたら、70歳の著者が書いたとは思えないくらいぶっ飛んだ性癖描写が盛りだくさんでかんたんしました。 ふるさとを遠きにありて思ふことで定評のある室生犀星さんのイメージがガラリと変わってしまい…

小説「陰陽師 龍笛ノ巻 感想 最後の"飛仙”がとんでもない」夢枕獏さん(文春文庫)

陰陽師シリーズ「龍笛ノ巻」を楽しく読み進めて満足していたところ、最終エピソード「飛仙」のオチがイッてる内容で一層かんたんしました。 books.bunshun.jp 以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。 当巻に収録されているお話は次の通りです。 怪蛇…

「ベーコン 随筆集 感想」訳:成田成寿さん(中公クラシックス)

フランシス・ベーコンさんの随筆集を読んでみましたら、けっこう実際的というかイギリス貴族っぽい経験知に富んでいてかんたんしました。 日本で言えば戦国時代末期くらいの人物ですが、現代の上級マネジャー層に求められる素養に通じるようなことをたくさん…

「光と風と夢 感想 特に後半が好き」中島敦さん(青空文庫)

中島敦さんの南洋もの小説「光と風と夢」を読んでみたところ、はじめは西洋人の日記文学エミュレーターっぷりすげぇなと感心していたのですが、後半に進むにつれ主人公の自我の起伏がえらいことになってそれがまた大層美しいなとかんたんいたしました。 www.…

「神秘主義 キリスト教と仏教 感想」鈴木大拙さん / 訳:坂東性純さん・清水守拙さん(岩波文庫)

鈴木大拙さんの著作を久しぶりに読んでみたところ、相変わらずの奥深い思索・弁舌ぶりにかんたんしました。 www.iwanami.co.jp キリスト教神秘思想を代表する修道士エックハルト、中国、日本の禅僧の問答、真宗の念仏者の極点・妙好人の信心の世界、これら東…

小説「破船 感想」吉村昭さん(新潮文庫)

吉村昭さんの小説「破船」を読みまして、例によって救いに乏しい過酷な展開を淡々刻々と描写する筆致にかんたんするとともに、帰属する集団に自己が埋没する人間のありようがリアリティあり過ぎてぞくぞくしました。 www.shinchosha.co.jp 二冬続きの船の訪…

「旅をする木 感想 命を見つめる姿勢、吉村昭さんと共通するもの」星野道夫さん(文春文庫)

星野道夫さんのエッセイ「旅をする木」をあらためて読んでみたところ、一つひとつの命を見つめるやさしい視線と、吉村昭さんの小説にも通じるような透徹とした姿勢とを感じてかんたんしました。 books.bunshun.jp 広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐ…

「漢詩百首 日本語を豊かに 感想」高橋睦郎さん(中公新書)

中公新書、高橋睦郎さんの「漢詩百首」が、漢詩の味わいや各詩人のプロフィールに気安く親しめる良著でかんたんしました。 日本人・日本語の歴史に対して、漢詩がいかに重要な役割を果たしてきたかを論じてくださっている熱量も素敵ですね。 www.chuko.co.jp…

「草枕 感想 那美さんは男性向け恋愛コンテンツの一原型ではないか」夏目漱石さん(青空文庫)

青空文庫で夏目漱石さんの草枕を再読しましたら、昔読んだときは高尚な芸術論的作品のように思えたのに、今読んだら「これは一種のTo Loveるとして読んだ方が面白いのではないか」という風に思えまして受容体たる己の精神的変化にかんたんしました。 www.aoz…

「アイデンティティが人を殺す 感想」アミン・マアルーフさん / 訳:小野正嗣さん(ちくま学芸文庫)

「アイデンティティが人を殺す」というエッセイを読んでみたところ、まこと現代世相にフィットした考察や意見が記されていてかんたんいたしました。フランス語の原文には触れていませんが、小野正嗣さんによる訳もすごくいい気がいたします。 このテキストは…

小説「陰陽師 生成り姫 感想 陰陽師シリーズを初めて読む人におすすめ」夢枕獏さん(文春文庫)

陰陽師シリーズ初の長編作品「生成り姫」が、シリーズを初めて読む人にもシリーズのファンにもサービスレベルが高い逸品でかんたんしました。 books.bunshun.jp 十二年前、月の明るい晩。堀川の橋のたもとに立ち、笛を吹く源博雅と一人の姫。すべては二人の…

「高村光雲 幕末維新懐古談 感想」青空文庫

青空文庫に、彫刻家高村光雲さんの懐古談が掲載されていてかんたんしました。 上村松園さんであったり、青空文庫は芸術家関係の文章を復刻してくださっているのがありがたいですね。 www.aozora.gr.jp 高村光雲さん(1852-1934)は写実的な生き物の彫刻で名…

「東京「街角」地質学 感想 この本はガチおすすめ」西本昌司さん(イースト・プレス)

東京都市部のオフィスビルや商業施設で使用されている石材を題材に、石の美しさ、石の種類と成り立ち、近代の石材利用史、石を通じた地球の歴史等々を軽妙に教えてくださる書籍にかんたんしました。 都市部での散歩が飛躍的に面白くなってしまう、散歩道の開…

「笑う警官 刑事マルティン・ベック 感想」マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー / 訳:柳沢由実子(角川文庫)

1960年代のスウェーデンミステリ「刑事マルティン・ベック」シリーズの代表作「笑う警官」を初めて読んでみまして、その地道で骨太なストーリーライティングっぷりにかんたんしました。 派手なトリックやどんでん返しはありませんが、汗と足と集団戦で着実に…

小説「逆軍の旗 感想 明智光秀/戸沢藩暗闘/南部藩仇討ち/上杉鷹山」藤沢周平さん(文春文庫)

大河ドラマ「麒麟がくる」をきっかけに藤沢周平さんの明智光秀短編「逆軍の旗」、および同収録の「上意改まる」「二人の失踪人」「幻にあらず」を読んでみたところ、いずれも場景がひたひたと目に浮かぶような筆致に胸を打たれかんたんしました。 books.buns…

小説「陰陽師 鳳凰ノ巻 感想 書き出しの文章がいいよね」夢枕獏さん(文春文庫)

小説陰陽師、4巻めまで読み進めてあらためて実感したのが、夢枕獏さんによる導入部の文章のよさ。 陰陽師シリーズはこの書き出し部分があまりにも心地よくてかんたんするので、読み続けたい気持ちになりますね。 books.bunshun.jp 以下、ネタバレを一部含み…

「はしれギンガ」&「オーブとたびびとのふく」感想(あいうえお館のウルトラかいじゅう絵本より)

噂には聞いていたのですが、ウルトラマンシリーズの絵本の完成度がやたら高くてかんたんいたしました。 ウルトラマン愛と子どもの知育情操教育とを両立しているところがすごいですね。 www.aiueo-kan.co.jp さいきん、身近に赤ん坊がいるので、読み聞かせて…

「小泉八雲集 感想」訳:上田和夫さん(新潮文庫)

小泉八雲さん(ラフカディオ・ハーンさん)の作品集を通して読んでみたところ、よく知られた日本の昔話があらためて面白かったり、小泉八雲さんの観察眼が素敵だったり、上田和夫さんの日本語訳が美しかったりと、非常に満足度が高くてかんたんしました。 ww…

小説「陰陽師 付喪神ノ巻 感想 1巻2巻より更に好き」夢枕獏さん(文春文庫)

小説「陰陽師」の3巻め「付喪神ノ巻」が、1巻2巻よりも更に抒情性を増した仕上がりになっていてかんたんしました。 好みは人それぞれだと思いますが、私はこの巻好きだなあ。 books.bunshun.jp 以下、一部ネタバレを含みます。 「付喪神ノ巻」に収録されてい…

「ウルトラマンになった男 感想 弱音が格好いい」古谷敏さん

初代ウルトラマンのスーツアクター古谷敏さんの自伝が、ウルトラマンファンにはたまらない描写が盛りだくさんでかんたんしました。 www.shogakukan.co.jp 古谷敏さんの東宝大部屋俳優時代から、ウルトラマン時代、ウルトラセブン時代、そして独立に至る経緯…

鍋島直茂小説「武士道 感想」近衛龍春さん(実業之日本社)

鍋島直茂さんの生涯を記した小説「武士道」の鍋島直茂像が、ストイック極まりない理想のサラリーマンのような佇まいでかんたんしました。 www.j-n.co.jp 鍋島直茂さんの幼年時代から晩年に至るまで、みっちりと描写してくださっている歴史小説になります。 …

「小長啓一の「フロンティアに挑戦」 感想」村田博文さん(財界研究所)

元通産省事務次官の小長啓一さんへのインタビュー本が、昭和経済史の正の面の結晶みたいな感じでかんたんしました。 土地勘がない方には取っつきにくいかもしれませんが、官僚や商社等にかかわりのある方は読んだ方がいいし読むとモチベーションが上がると思…

「児玉まりあ文学集成 2巻 感想」三島芳治先生(トーチweb)

文学技法を漫画にアレンジした作品「児玉まりあ文学集成」の2巻が1巻よりも取っつき易く面白くてかんたんしました。 to-ti.in なかなか説明が難しい漫画ですが、「児玉まりあ文学集成」は言葉や文学のレトリックを漫画で再構成してみたような実験的な作品で…

正岡子規さんの「犬」と「蝶」(青空文庫)

正岡子規さんが病床で記した短編小説(エッセイ?)「犬」「蝶」が子規さん独特のユーモアや美的センスを醸し出しつつ隠しようもない諦念と哀しみに直面させられる佳品でかんたんしました。 www.aozora.gr.jp www.aozora.gr.jp それぞれ1-2分で読める作品で…

「寛容についての手紙 感想」ジョン・ロックさん/訳:加藤節さん・李静和さん(岩波文庫)

ロックさんの「寛容についての手紙」が非常に高度な精神性に満ちた名文でかんたんしました。 政教分離や信仰の自由といった、現代社会の常識や前提のルーツのひとつになっていることが読むだけで伝わってきますよ。 https://www.iwanami.co.jp/book/b369932…

小説「大黒屋光太夫 感想 置かれた状況で望みは変わる」吉村昭さん(新潮文庫)

吉村昭さんの小説「大黒屋光太夫」が、壮大な漂流小説の中で変遷していく人の望みのありようをビビッドに表現していてかんたんしました。 www.shinchosha.co.jp www.shinchosha.co.jp 大黒屋光太夫さん。 有名人なのでご存知の方も多いと思いますが、 江戸時…

「中国古典名言辞典【新装版】 感想と好きな言葉10選」諸橋轍次さん(講談社)

諸橋轍次さんの「中国古典名言辞典」を読んでみたところ、知の巨大な集積っぷりに圧倒されてかんたんしました。 いい本を手に入れたものです。 bookclub.kodansha.co.jp 諸橋轍次さんは新潟出身の、漢学の大家ですね。 こちらの辞典は諸橋轍次さんの目で、広…

「ぜいたく列伝 感想」戸板康二さん(文春文庫)

往年の富豪・文化人・政治家等の個性際立つ贅沢エピソードを記したエッセイ本がなかなか読み応えがあってかんたんいたしました。 books.bunshun.jp 著者は戸板康二さん。 「ちょっといい話」で知られる、歌舞伎評論、小説、エッセイ等様々な文章で才を発揮し…