文学・一般書
解体新書訳出の過程を描いた吉村昭さんの「冬の鷹」を読みまして、前野良沢さんと杉田玄白さんの対比がまるで研究者とビジネスパーソンとの対比のようで非常にリアリティ深く、しみじみかんたんしました。 主人公は前野良沢さんなので構成は前野良沢さん寄り…
陰陽師シリーズの天鼓の巻、読みやすい短編ものが多数収められている巻でございまして、その中でも「器」という作品が家族ものとして非常に優れ、かつ哀しいお話で胸を打ちかんたんしました。 books.bunshun.jp 以下、ネタバレは抑えつつもほんのり展開と感…
映画の雨月物語が面白かったので、あらすじくらいしか把握していなかった原文の雨月物語をあらためて読んでみましたところ、日本型ドラマのオリジン感、純粋に面白い部分を抽出して蒸留したような透明感が際立つ面白さでかんたんしました。 「読む能」とでも…
たいへん寒くなってまいりました折、めっちゃ寒くてめっちゃ面白い小説に出会えてかんたんしました。 www.shinchosha.co.jp 1962年の暮、全世界は驚きと感動で、この小説に目をみはった。当時作者は中学校の田舎教師であったが、その文学的完成度はもちろん…
佐賀県で手に入れた神代勝利さんの小説が思った以上に面白くてかんたんしました。 龍造寺・鍋島コンテンツはまだまだ少ないので、龍造寺隆信さんのライバルサイドから見た佐賀戦国史ってのは貴重ですし面白いものですね。 ↓ 本のオフィシャルHPが見つからな…
芥川賞を受賞したという「鯨神」を含む宇能鴻一郎の短編集を読んでみたところ、「エロいよ」という一般的イメージのさらに上を行くといいますか、頭のいい人がエロとは何かを考え抜いている感じがするといいますか、一部登場人物がエロい変態というよりはも…
ジッドさんの「地の糧」という本を読んでみましたところ、言い回しや文体はなかなかに難解でありながら、言いたいことはなんとなく伝わってくる気もしますし、パーツパーツでぐっとくるいいこと言ってはる気がしますし、何よりも世の中の見知らぬ土地には美…
トロイア遺跡発掘で名高いシュリーマンさんが清国・日本(幕末)を訪れた旅行記を文庫で気安く読むことができてかんたんしました。 本の存在は聞いたことがあったのですけどまさか文庫で普通に読めるとは思っていなかったのでありがたいですね。 bookclub.ko…
陰陽師シリーズの絵物語第3弾にして、「鉄輪」まさかの3度目作品化。 あらためて「鉄輪」の完成度に唸らされるとともに、この人気作品に村上豊さんの絵がふんだんに挿入されるというのが贅沢でかんたんしました。 books.bunshun.jp 他の女に心変わりした男を…
「謎解きはビリヤニとともに」というインド系ミステリがなかなか面白くてかんたんしました。 ピュアに本格的なミステリを楽しめるというよりは、ミステリ要素を持ちつつインド人青年元刑事がロンドンで異邦人としても挫折からの復帰としても現実と理想のはざ…
幸田露伴さんの小説「蒲生氏郷」を青空文庫で読みまして、もともとぼんやり好感を抱いている蒲生氏郷さんのことを一層好きになれたり、当然出てくる豊臣秀吉さんや伊達政宗さんや前田利家さんの描かれ方もそれぞれ素敵だったり、葛西大崎一揆の当事者にとっ…
ブルーバックスの海底地形本「見えない絶景」が、海底の巨大にもほどがある地形の数々を案内してくれるだけでなく、地球の成り立ちや宇宙論まで壮大にもほどがある時の歩みをも案内してくださる良著でかんたんしました。 海、大地、地球、宇宙……いち人間より…
吉村昭さんの短編作品集「天に遊ぶ」、1編10ページ程度の超短編ばかりを集めた書籍でして、いずれも吉村昭さんの巧みな文章力・表現・人間描写を満喫できる作品ばかりでかんたんしました。 www.shinchosha.co.jp 見合いの席、美しくつつましい女性に男は魅せ…
某駅で売っていた官能小説がいまどきのエロコンテンツシーンのなかでは珍しいくらいオーソドックスな内容かつライトでとっつきやすい文体でかんたんしました。 エロコンテンツシーンはともすればマニア向け・一般人ドン引き系になりがちですから、こういうと…
コロナ禍によるロックダウン環境下を舞台にした海外ミステリ「56日間」が同時代性と、サスペンス描写・恋愛描写を両立する叙述の緊張感とに富んでいてかんたんしました。 www.shinchosha.co.jp 新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、ダブリン市内の集合住…
ちくま学芸文庫の「動物と人間の世界認識」が教養としても面白いし、社会に生きる一人間としてもわきまえておきたい視点やなとかんたんしました。 巻末解説でもちらと書かれているとおり、上級管理職を目指すような方は特にこういう視点を持っておくといいん…
陰陽師「夜光杯の巻」、際立った妖や悪人は出てこない代わりに安倍晴明さんと源博雅さんの仲良し&どっちもスゲェ描写が多くて安定した巻やなあと読み進めていましたら、最後のお話「浄蔵恋始末(じょうぞうこいのあれこれ)」がまっとうに恋愛ものとしてキ…
ロシア文学「現代の英雄」がマジおすすめと聞いたので読んでみましたところ、「高校とか大学とかのときに、こういう自意識が肥大化した男おったなあ」みたいな感慨がひしひしと募ってきてかんたんしました。 日本では「英雄」と訳されていますが、訳者あとが…
名前だけは聞いたことがあった三好正慶尼さんを題材にした小説が存在していて、首尾よく入手することができてかんたんしました。 「奴の小万」と称され、江戸時代に浄瑠璃や歌舞伎の題材としてもてはやされた大阪の女傑さんでありますが、小説内でも期待通り…
都会に生息する野鳥について、近年の勢力図や営みっぷりを紹介してくださる本が出版されていてかんたんしました。 こういう本が出版されると、ぷらぷら街歩きしているときも鳥の様子が自然と目に入って楽しめるようになるので嬉しいですね。 www.chuko.co.jp…
戦国時代の歌集「閑吟集」が岩波文庫からリリースされまして、前から読みたかったので発売されただけでもかんたんしきりだったのですが、収められている歌の多くが想像以上に一期は夢よ感に満ちておりまして我が邯鄲ブログ的には最高の一冊やなと味わい浸る…
「大宇宙の少年」というSF小説を読んでみましたところ、大長編ドラえもんを読んだ時のような、SF冒険の楽しさ&未来に向けた前向きな意思が湧いてくる的な栄養をふんだんに摂取できてかんたんしました。 「のび太と雲の王国」好きな方とかにはとてもいいと思…
陰陽師シリーズを順番に読み進めていましたら、「瘤取り晴明」に続いて村上豊さんの挿絵を思う存分楽しめる絵物語が再び登場してくれてかんたんしました。 昨年お亡くなりになったところなのでしみじみとした気持ちになりつつ、村上豊さんの描く魑魅魍魎はど…
以前読んだバタイユさんの「呪われた部分」が面白かったので、代表作っぽい「エロティシズム」を読んでみたらこれも面白くてかんたんしました。 たまには哲学書を読んでいる時間というのもいいものですね。理解が追いついている訳ではまったくありませんが、…
歴史・時代小説アンソロジー「茶話歴談」第五号に収録されている三好長慶・松永久秀・松永長頼題材の短編小説が素晴らしい作品でかんたんしました。 このレベルの作品が生まれるようになったのなら、三好長慶さんや畿内戦国史のコンテンツはもう先行き安泰だ…
小説「陰陽師」シリーズの長編作品「瀧夜叉姫」を読んでみましたところ、信長の野望20XXの平安編で登場する主要人物が大勢出てきて話もすごく面白くて、この作品へのリスペクトオマージュ心があったのかもしれないなあとかんたんしました。 books.bunshun.jp…
堺が誇る戦国時代の文化人「高三隆達」さんを軸に戦国時代の流行歌を紹介していただける本が良著でかんたんしたのですが、なぜか出版元の中公新書HPには紹介ページすらなく、amazon等各種通販サイトでもほとんど在庫切れで惜しいなあと思います。 戦国時代の…
認知科学者のお二人が書いた人間の知識の傾向をテーマにした書籍が知的好奇心をくすぐる内容でかんたんしました。 年の瀬にまじめな本を読むといい年だった感が出ていいものですね。 www.hayakawa-online.co.jp 自転車や水洗トイレの仕組みを説明できると思…
漫画太郎先生の蟹工船がめちゃくちゃ面白くてかんたんしたので、最近読んでかんたんしたプロレタリア小説「葉山嘉樹短篇集」の感想を。 www.iwanami.co.jp shonenjumpplus.com 葉山嘉樹さんは初期プロレタリア文学を代表する方ということで名前だけは知って…
講談社学術文庫で復刊された「世阿弥」評伝を読んでみましたところ、単純な世阿弥さんアゲにとどまらない、同時代の政界・芸能界動向や世阿弥作品の批評・他の能作家作品との比較等々の多角的な視点で実像を解きほぐす内容になっていてかんたんしました。 bo…