肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「見えない絶景 深海底巨大地形 感想 わくわくしっぱなし」藤岡換太郎さん(講談社ブルーバックス)

 

ブルーバックスの海底地形本「見えない絶景」が、海底の巨大にもほどがある地形の数々を案内してくれるだけでなく、地球の成り立ちや宇宙論まで壮大にもほどがある時の歩みをも案内してくださる良著でかんたんしました。

海、大地、地球、宇宙……いち人間よりもはるかに大きな存在たちの歴史を楽しく学べる本で超おすすめですよ。

 

bookclub.kodansha.co.jp

 

 

いざ、地形のモンスターをめぐる深海底世界一周の旅へ!
深海底には、陸上とは比較にならない巨大地形がひしめいている。地球を2周する長さの巨大山脈、エベレストを呑み込む深さの海溝、日本列島の数倍もある台地、海底総面積の30%を占める大平原、月の直径よりも長い大断層……どうしてこんなものができたのか? 
さあ、キャプテンフジオカがナビゲートする潜水艇「ヴァーチャルブルー」で、「見えない絶景」をめぐる世界一周の旅に出よう。想像を絶する地形のバケモノたちの成り立ちを知れば、地球の「本当の顔」が見えてくる! 

おもな内容

第1章 深海底世界一周

 第〇景 世界一周のロードマップ
 第一景 日本海溝
 第二景 深海大平原
 第三景 シャツキー海台
 第四景 ハワイ諸島ホットスポット
 第五景 巨大断裂帯
 第六景 東太平洋海膨
 第七景 チリ海溝
 第八景 大西洋中央海嶺
 第九景 中央インド洋海嶺
 第十景 坂東深海盆

第2章 深海底巨大地形の謎に挑む

第3章 プレートテクトニクスのはじまり

第4章 冥王代の物語

終 章 深海底と宇宙

 

 

上記概要紹介の通り、本の前半は世界を一周しながら海底の巨大地形を眺めてみよう、本の後半は海底地形の成り立ちからそもそもの地球の成り立ちまでをも論じていくよ、という構成です。

 

後半部分には著者独自の仮説も多く含まれますが、仮説は仮説とちゃんと書いてくれていますので良心的。巻末には索引や出典もきっちり挙げてくれていますので、興味のあるテーマは自分で掘り下げていけるようになっていますよ。

 

 

著者は有名な「しんかい6500」に50回以上乗ったことのある研究者さんです。

「しんかい6500」ですよ。

子ども向けの乗り物図鑑にも載っている、あの超有名なやつ。

もうそれだけで憧れの的ですよね。

 

水深6000メートルを超える海の底で、マネキンの首を見つけた等の驚きエピソード一つひとつがすでに十分面白い。

 

そこから、空想の乗り物に乗りながら、日本から東回りに地球を一周して海底を旅していくという進行もわくわくしっぱなしです。

水深4000~5000メートルのあたりに広がっている、あまりにも広大な深海大平原。

日本列島の総面積よりも広く富士山よりも高いシャツキー海台。

月の直径よりも長い巨大断裂帯。

長さの総和が地球2周分に相当する海嶺。

 

等々。

 

どこかで聞いたことのあるような地形たちも、一気にズラッと見学させてもらうと満足感が高まりっぱなし。本を読んでいるだけで壮大な旅をしている気持ちになれます。

本当に、一度海水が干上がったときの地形を生で見てみたいものだ。

 

 

その上で、本の後半部分で、これら巨大地形を生んだプレートテクトニクスプレートテクトニクスを生んだ宇宙・地球史の流れを大変分かりやすく解説いただけるので、本を一冊読むだけで超上質な入門講義を聞き終えたような気持ちになれるんですよ。

旅パートではない後半部分も、感覚としては地球誕生以前~現代の時間軸に沿った旅のようなものですから、まあわくわく感が止まらないですわ。

 

著者の仮説含め、海底や地学、宇宙の世界は未解明の謎だらけで、人類が探索できた深海もほんの少しだけです。

あまりにも巨大な地形という現実、あまりにも小さい人類の研究成果という現状、その対比がまた学問に対するモチベーションを高めてくれる感じがします。

わたしの残された人生のなかで、これらの謎がひとつでもふたつでも明らかになっていくのを耳にするのが今から楽しみですわ。

 

 

本の中でも図表が豊富ですが、内容が面白すぎるので、そのうちこの本のような内容の博物館展示が開催されますように。

実際の岩石サンプルやCG図解や引退したしんかい6500とかが所狭しと並べられているような展示があったらみんなアガりまくること間違いなしですよね。