ゲゲゲの鬼太郎シリーズ、週刊実話に掲載されていた作品を集めた文庫も出ていてかんたんしました。週刊実話掲載ということでモチーフにSFや政治・企業がじゃっかん増えはしますが鬼太郎さんたちはほぼいつも通りで実家のような安心感。
地球に飛来する宇宙人たち。彼らの狙いは一体――? 天狗、猫又、化け狸、異国の神や悪魔まで、異界から来た妖異に鬼太郎が挑む。23話を収録。
収録されているお話は次の通りです。
UFO宇宙突撃隊
タイムマシン
ロケットハウス
竹やぶの小人
火星人現る
エンバン実験
不思議な家
猫町切符
宇宙人落下
ムーン大王
狸ばやし
メキシコの石
かくれ蓑
終末株式会社
海坊主
奪衣婆
透明人間
悪魔博士
二人狸
わんたん妖怪
影くい猫
死人列車
つきもの
週刊実話にて1978年の半年間掲載されていたようですね。
週刊であの緻密な絵を描き続けて話も面白いのがいつ見てもすごい。
各話のタイトルを見ても分かる通り、SF・宇宙的な題材がふだんより多くなっていますが、鬼太郎・妖怪連中は宇宙でも宇宙人相手でもふつうにふだんどおり活躍しているのがすごいなあと素朴に思います。
一部ネタバレを含む前提で
特に印象に残った場面をいくつか紹介しますと。
「我々の光線銃がきかないなんてどういうことだーっ」
女王星の地球占領軍を返り討ちにする鬼太郎、輪入道、カラス天狗。
強い。
(頭のいいやつというのも案外便利なもんだなァ
考えてみりゃあ
戦う前に勝つか負けるかを測定できれば
僕と電子頭脳との関係のように戦争はおきないわけだ)
未来世界?の創造主こと電子頭脳さんが、鬼太郎を前にして「戦ったら負けるかもしれない、だまっていれば過去に帰ってくれる」と正しい計算をしはります。
人間は正しい計算通りに引き下がれないことも多いので風刺的なコメントな気もしますね。
「人間が猫になる“楽しみ”を邪魔するもんじゃない」
蒸発する人間が増えると猫が増えるという。
鬼太郎さんの超能力をもってしても解決できない怪異事件があることを教えてくれる、スケールが大きいけど猫だらけでかわいいお話。
極秘のうちに金を集め
未来学者や
ナントカ博士に
まことしやかな論文をかいてもらうと
なんとなく変化を求めている貧乏サラリーマンの絶好の話題となる。
週刊実話による世論形成術を端的に解説してくれるモノローグが面白い笑。
「ベリアルに対し鬼太郎は逆に体の中に封じこめ
「霊魂四の字固め」またの名を
「満腹殺し」という手で
悪霊となったベリアルを殺したのだ」
悪霊となって生きていた悪魔ベリアルさん。
霊魂四の字固めというネーミングセンス輝く正体不明の技が気になりますね。
あと、話の筋は伏せておきますが終盤の「死人列車」というお話が一般人離れした感覚……人間的には決してめでたくないけど妖怪の世界観ではOKなのかなあというお話でとても面白かったです。妖怪文学作品として秀作ではないでしょうか。
鬼太郎ワールドの雰囲気をぞんぶんに味わえて、中公文庫による復刊はとてもありがたいプロジェクトでございましたね。
これからも腕利きの編集者による名作復刊の動きが続いていきますように。
「世界お化け旅行」を入手できていないので手に入れねば。