肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

小説「山内の鷲 神代勝利 感想」佐野量幸さん(不知火書房)

 

佐賀県で手に入れた神代勝利さんの小説が思った以上に面白くてかんたんしました。

龍造寺・鍋島コンテンツはまだまだ少ないので、龍造寺隆信さんのライバルサイドから見た佐賀戦国史ってのは貴重ですし面白いものですね。

 

↓ 本のオフィシャルHPが見つからなかったのでグーグル検索貼っておきます

山内の鷲 神代勝利  - Google 検索

 

 

神代勝利さん……?

 

という人も多いと思いますので、信長の野望・新生の武将プロフィールを張っておきますね。

 

マイナーな知名度ながらけっこうお強いでしょう。

龍造寺隆信さんなんかの本を読むと、勢力拡大の前半で「あれ、けっこう神代勝利さんって人に手こずってるな。ていうか神代勝利ってスゲェ名前やな」と印象に残る人物なんですよ。

少なくとも信長の野望では六角義賢さんより全能力値が強く設定されているくらいですしね。

 

佐賀市から北側の山内地方の勢力を糾合して、たびたび龍造寺家を苦しめたお人です。

最終的に勝利さんの子孫は龍造寺・鍋島に吸収されるに至りましたが、勝利さんは龍造寺隆信さんに何度も敗れて追い出されては復活してきて勢力を盛り返しておりまして、そういう面でも龍造寺隆信さんの人生と相似したライバルっぽくて良いですね。

 

著者さんも

それにしても、神代とは、ものすごい名前である。何たって、神様の代わり、なわけであるから。そしてこれが、神代勝利となると、人名というより、むしろ四字熟語である。すなわち、神の代わりに、または、神に代わって勝利する、という意味の……。だからか、何度も復活できたのは。

 

とあとがきで述べておられて、小説の題材に愛着を抱いているさまが伺えます。

 

 

小説の目次は

1章 神代新次郎

2章 山内へ

3章 龍造寺氏の追放

4章 龍造寺剛忠の復帰と円月

5章 龍造寺氏の再度の追放

6章 長者林の戦い

7章 和議

8章 谷田崩れ

9章 勝利の山内復帰

10章 鉄布峠の戦い

11章 筑前の戦い

12章 川上峡の決戦

13章 再起と勝利の最後

14章 千布城急襲

15章 巻き返し

16章 八ッ溝の戦い

17章 今山の戦い

18章 草野攻め

19章 宇奈貴礼の戦い

20章 長良の死

21章 島原・沖田畷の戦い

22章 その後の神代氏

 

と、素直に勝利さんと神代氏の流れを追う構成になっています。

 

昔からの山内地方の豪族という訳ではなく、福岡県から佐賀県に流れてきた神代氏が、その人物と武勇を買われて瞬く間に山内地方の諸氏をまとめあげる存在になり、龍造寺隆信さんと東肥前の覇権を争う相手になるという、なかなかにロマンがある展開ですよね。

 

勝利さんはよく戦うも川上峡の決戦で敗北、その後お亡くなりになりますが、その後も山内地方の勢力は神代氏のもとに一丸となって結束をたもち、今山の戦いで大友方として多くが討死したり、島原・沖田畷の戦いでは一転龍造寺方として鍋島直茂さんを逃がすためにやはり大勢が最後まで奮戦して討死したり、その武士としての意地や死にざまを見せつけ続けます。

著者や土地の人々はそこに神代勝利さんの遺風を感じ、いまも称揚されているわけで、私のような外の土地の者からしてもリスペクトを充分に覚えます。

 

小説としても、序盤の勝利さん配下たちのユーモラスな喧嘩であったり、勝利さんのライバルとしてふさわしい格に描かれる龍造寺隆信さんであったり(謀略のえげつなさはたびたび指摘されつつ、人物としての大きさは充分に認められている感じ)、その後の肥前を担うにふさわしい人物として鍋島直茂さんが位置づけられていたりと、戦国時代小説としても読みやすく楽しい感じになっていますので、龍造寺・鍋島ファンもゲットしてみるといいんじゃないでしょうか。

 

 

土地土地の人物を愛でるローカル歴史小説が好きなので、これからも各地を旅してこのような本を手に入れ、読み続けたいですね。

郷土愛あふれるコンテンツが生まれ続けてくださいますように。

 

 

2023年ももうすぐ終わります。

皆さまどうかお健やかに、よいお年をお迎えくださいませ。