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「戦国武将列伝11 九州編 感想」編:新名一仁さん(戎光祥出版)

 

戦国武将列伝の九州編、もともとあまり詳しくないので基礎的なことも他地域同様の境目地域を軸とした争いの模様も楽しく学べてかんたんしました。

 

https://www.ebisukosyo.co.jp/item/688/

 

 

【目次】
大友義鑑――西国の覇者大内氏と張り合った戦国大名  八木直樹
大友宗麟・義統――運に恵まれた宗麟と運に見放された義統  八木直樹
志賀道輝・道易・親善――豊薩合戦で分裂した一族  八木直樹
田原紹忍――大友政権最大の権力者の実像  八木直樹
田原宗亀・親貫――反乱を起こした豊後最大の国衆  八木直樹
戸次道雪・高橋紹運・立花統虎――孤軍奮闘した猛将たち  八木直樹
吉弘鑑理・宗仞・統幸――大友宗麟・義統に最も信頼された姻戚  八木直樹
秋月種実――戦国北部九州を動かすキーパーソン  佐藤凌成
高橋鑑種・元種――常に自立と勢力拡大を目指した国衆  佐藤凌成
原田了栄――原田氏の最盛期を築いた大蔵一族嫡流  佐藤凌成
宗像氏貞――宗像社を守り抜いた大宮司にして国衆  佐藤凌成
蒲池鑑盛・鎮並――大友と龍造寺の間で揺れ動く筑後の名族  佐藤凌成
田尻鑑種 ――大名間を渡り歩く必死の処世術  佐藤凌成
龍造寺隆信・政家 ――肥前における勢力拡大の実像  中村知裕
鍋島直茂――龍造寺隆信豊臣秀吉に見出された武将  中村知裕
筑紫広門――筑前筑後肥前の国境地域に君臨した国衆  中村知裕
大村純忠――生涯戦い続けた最初のキリシタン大名  中山 圭
有馬晴純・義貞・義純――西肥前の覇者の栄光と転落  丸島和洋
有馬晴信――「キリシタン大名」の実相  丸島和洋
菊池義武――波乱万丈の一生を送った菊池最後の当主  柳田快明
隈部親永・親安――統一政権を震撼させた肥後国一揆のリーダー  柳田快明
城親賢・親基(一要)――隈本に勢力を張った菊池氏重臣  柳田快明
阿蘇惟豊・惟将――戦国期阿蘇氏の栄耀を彩った大宮司父子  柳田快明
甲斐宗運(親直)――弓矢ヲ取リテ近国ニカクレナキ勇士也  柳田快明
名和顕孝――秀吉の前に沈んだ、肥後名和氏最後の当主  柳田快明
相良晴広・義陽――近世大名へと生き延びた肥後国唯一の戦国領主  柳田快明
伊東義祐・義益――日向随一の実力者の栄光と没落  宮地輝和
島津忠朝――遣明船航路を支配する島津氏御一家  宮地輝和
北郷時久――従属国衆化して戦国を生き抜いた島津氏御一家  宮地輝和
島津忠良・貴久――島津氏中興の祖、戦国島津氏の祖  新名一仁
島津義久――「六か国太守」を自認した島津氏全盛期の当主  新名一仁
島津義弘――兄義久を支える立場から「両殿」へ  新名一仁
島津家久――四兄弟随一の武篇者  新名一仁
島津実久・義虎――本宗家になれなかった最有力御一家  新名一仁
肝付兼続・良兼・兼亮――島津氏と渡り合った大隅最大の国衆  新名一仁
種子島忠時・恵時・時堯――島津家と距離をとった種子島島主  新名一仁

 

 

九州の戦国時代は大友氏や龍造寺氏・鍋島氏の本を何冊か読んだことがある程度で、あとは一般的なことしか存じておりません(そういえば島津四兄弟の良さげな新書が数年前に出てたけど読みそびれてたことを思い出しました)。

 

九州自体、メジャーな場所に点で行ったことしかないので土地勘もなく、それだけにこの九州編は地図を見ながらちょっとした観光気分で読み進めることが出来たのが楽しかったです。

「雄度牟礼城」とか「娑婆神峠」とか「祁答院」とか、言語感覚的にも新鮮。

 

 

そんな中でも、大内・大友・龍造寺・島津といった大勢力の権勢が強くなる/弱くなるに応じて、境目地域の国衆の動向が大きく揺らぎ、それらがやがて大勢力の更なる興廃に繋がっていく様については他地域の戦国時代とまったく共通していて、ある種の親近感を覚えます。

こうした当時の人に共通する価値観や動き方があるからこそ、各地域の戦国時代研究が他地域の研究に良い刺激を与えあうことができるのでしょうね。

 

 

私の中で特に印象に残ったところをいくつか。

 

  • 北九州各家の転機になりまくる「二階崩れの変」「大寧寺の変」「厳島の戦い」「毛利家の北九州侵攻」「耳川の戦い」。この辺りはのっけからスケール感が大きく、北九州の各家は情勢の見極めがさぞ難しかっただろうなとあらためて感じます。「毛利きつね」という大友宗麟さんの毛利元就評も記憶に残りますよね。

  • 志賀「親次」さん、一次史料では「親善」さんでしたか。知らなんだ。

  • 上井覚兼さん、岩屋城の戦いで顔面に鉄砲当たってたんですか……日記書いている場合じゃない。

  • 秋月種実さん編の最後にしっかり紹介される上杉鷹山さん。さすが。

  • 原田氏が会津に移ってからも、筑前に残った旧家臣子孫たちと交流が続いていたというエピソード、いいですね。土地に根差した国衆の生命力を感じる。

  • 龍造寺家の内政政策「庄屋給」が興味深い。村落共同体のリーダーの財政基盤を保証することで軍事活動・在地支配を急速に進めることができたということですが、この点は掘り下げて学んでみたいです。

  • 大村純忠さんの取り上げられ方の熱が高いだけに、ライバルかつ知名度も高い松浦氏も立項されてほしかった感じがしますね。それぞれの視点から歴史を見た方がより学びが深くなりそう。

  • 阿蘇家の大宮司を巡る内乱、詳しい経緯を初めて知ったので興味深かったです。この時代は内部トラブルを抱えている寺社も多いとはいえ、大寺社でこれだけの内乱が起こって、それが周辺諸家を巻き込んだ境目紛争にまで繋がっているのは珍しい気がします……と思ったけど諏訪家とかもそうか。

  • 伊東氏や肝付氏による反島津同盟、流れを見ると戦略的にはちゃんとしている感じがするのに、要所要所の戦で大敗している辺りに島津家の恐ろしさを感じる。誇張されすぎとか言われもしているようですが、やっぱり島津四兄弟って何より戦の強さがすごいんじゃなかろうか。

  • その島津四兄弟も、イケイケ過ぎる重臣層に悩む義久さん、名代としての立場や兄との関係に悩む義弘さん、一人だけ立項されない上に弟へ嫉妬する様だけは紹介される歳久さん、フェイクニュースを流したバチが当たる家久さんと、彼らは彼らで大変だなと沁みる。

  • 肝付氏の勢力圏はイメージほど広くないとのこと。地図を見たら確かにそんな感じがしました。先入観を持ってはいけませんね。

  • 種子島氏の独立性高い立ち位置、法華宗ルートを通じた京との太いパイプっぷりが面白いですね。

 

等々。

知らないことが多い地域だけに、こうした列伝本はありがたいです。

 

 

行きたい行きたいと思っている佐賀県にすらまだ行けていない状況なのですけれど、そのうちゆっくり九州を旅する機会が私に訪れますように。

将太の寿司全国大会編くらいの時間をかけて各地を巡ってみたいものです。

 

 

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