京都にふらっと出かけまして、足利将軍展と新版画展という楽しみにしていた展示をハシゴ見できて幸せにかんたんしました。
あと、久々にかつくらでヒレカツ食べたり柚子こごりを土産に買ったりと、京都らしい食べものに触れあえたのも幸せです。
足利将軍、戦国を駆ける!
京都の地に武家政権を樹立した室町幕府。これを率いた個性豊かな足利将軍たちは、戦国乱世に突入してもなお、直臣団や大名らとともに生き残りの道を模索し続けました。
さて、2023年は、室町幕府最後の将軍となった足利義昭が京都を追放されてから450年の節目の年にあたります。そこで本展では、京都府が所蔵する国宝・東寺百合文書や、京都大学総合博物館所蔵の重要文化財・教王護国寺文書をはじめとした一級品の歴史資料を通して、戦国の荒波に立ち向かった足利将軍たちの軌跡を辿ります。
戦国時代の足利将軍をめぐる文書類を展示してくださっています。
スペース的には2部屋分とめちゃくちゃ量があるわけではありませんが、担当の方がどう見ても楽しんで企画されたのであろうことが伝わってくる解説コメントが楽しくて、畿内戦国史好きの方なら間違いなく親近感を覚えることでしょう。
- チラシのデザインに細川晴元花押か柳本賢治花押のどちらを採用するか迷ったが、より映える賢治さんの花押を採用した
- 三好宗渭さんのひよどり花押の魅力アピールを重ねてくる
- 展示の本題ではないけれど大内義隆さんの花押デザインのはっちゃけさもついでに推してくる
- 三好長慶さんの無茶ぶり特性をシレッと紹介してくる
- 三好長慶さん配下(藤岡直綱さん)の素行の悪さ(守る気のない約束)をあばく
- ナビゲーター大内義興さんの晩年の記憶があやふやになっている(足利義冬さんの奥さん大内義興さんの娘説について)
等々、確かな知識と、お客様(とたぶんご自身)を楽しませるセンスの良さが非常にナイスハーモニーで、こういう腕のあるお方が畿内戦国史界隈にいらっしゃるという事実がまず幸いですね。これからも発信機会を増やしていただきたいものです。
展示品について、目玉は「大内義興像」とか真っ赤な「足利義輝泰山府君祭都状(天下息災&怨敵三好長慶退散を祈るやつ)」とか国宝「東寺百合文書」の数々とかかなと思います。未見のものがありましたら是非。
個人的になぜか一番印象に残ったのは福田家文書の「細川晴国書状等7通」でして、今までそんなこと感じたこともなかったのですけどきれいに表装された細川晴国さん文書の花押を眺めているとじわじわ「晴国さんの丸が二つならぶ花押、なんかイイなあ」という感情が湧いてきてたまらなくなりました。
本当にいままで晴国さんの花押の魅力なんて考えたこともなかったのに突然どうしたんでしょう私。福田家の表装デザインが良かったんでしょうか、掛け軸としてまじまじ見てみると素敵に映るんですよね。
細川晴国さん目当てで文化博物館に行く方はまだまだ少ないかもしれませんけど、よかったら注目してくださいまし。
THE新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦
江戸時代に確立された浮世絵版画の伝統的な技法を用い、高い芸術性を意識した、明治以降の画家による新しい木版画の取組みが「新版画」の始まりとされています。これを牽引し、世に広めたのが版元・渡邊版画店(現在の渡邊木版美術画舗)の渡邊庄三郎(1885-1962)です。庄三郎は、鏑木清方門下生を中心とした新進気鋭の画家たちを絵師に起用し、絵師、彫師、摺師の協業のもと、それまでにない複雑かつ華麗な彩色に手摺りならではの技法を駆使し、木版画による新たな芸術を世に問いました。本展では、伊東深水らによる美人画、川瀬巴水、笠松紫浪らによる風景画、山村耕花、名取春仙らによる役者絵、小原祥邨、高橋弘明(松亭)による花鳥画などの作品に加え、新版画誕生のきっかけとなった外国人作家の作品をご紹介します。「新版画」の精神を今なお受け継ぐ渡邊木版美術画舗の全面的なご協力のもと、残存数が少ない貴重な初摺の渡邊版をとおして、色あせない新版画の魅力を伝えるとともに、渡邊庄三郎の挑戦の軌跡を示します。
浮世絵風の版画で、サーフィンしているやつとか、サンタクロースが雪の庭園を歩いているやつとか、鉄橋を描いているやつとかを見たことがある人もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
(参考)グーグル画像検索↓
新しい題材、新しいアーティスト、新しい技術による、大正時代~の版画を新版画というそうで、江戸時代の版画とはまた違った魅力があるのですよ。
これまで幾つかの作品を見たことはあったのですが、それらが一堂に会する美術展はまだ見たことがなかったので楽しみにしていたのです。
そしたら、思った以上にグッとくる作品の数々に出会えましたので、これはほんまに「行ってよかった。みんなも行こう」というやつです。
特に気に入った作品と一言コメントを書きますと。
- フリッツ・カペラリ≪黒猫を抱く女≫
髪の毛表現と襦袢の色合いが好き - 橋口五葉≪化粧の女≫
黒・金の使い方や鼻筋の色合い、品がいい構図 - チャールズ・W・バートレット≪神戸の雨中≫
全作品のなかで一番好き - チャールズ・W・バートレット≪ホノルル波乗り≫
版画とハワイの海の色、相性いいんですね……構図も完璧だと思う - 伊東深水≪泥上船≫
水・船中水たまりの配置の妙、色使いの妙 - 伊東深水≪眉墨≫
動作の一瞬を切り取ったような、緊張感ある美しさ - 伊東深水≪潮干狩≫
美人画としての完成度、貝柄の着物、青色の淡さが美しい - 川瀬巴水≪芝増上寺≫
白、赤、風、顔の見えない女性。絵画の魅力が詰まっていると思う - 川瀬巴水≪清洲橋≫
モダンな題材と、版画表現としてのレベル高さ。まさに新時代 - 川瀬巴水≪上州法師温泉≫
湯気、陽光、水面、木材、いずれの表現も大好き - 川瀬巴水≪雪庭のサンタクロース≫
一度見たら忘れられないと思います - 笠松紫浪≪春雨 湯島天神≫
春めく桃紫色の雨&雨宿りする鳩たちのかわいさ - 織田一麿≪伯耆大山遠望≫
スケールがデカい! ダイナミックさを堪能できる版画 - 石渡江逸≪神奈川子安町所見(八百屋の店)≫
夜の八百屋に並んだ野菜の色を、非常に豊かに表現 - ピーター・I・ブラウン≪東京風景≫
モノトーンかつ直線的なデザインが、他の作品と一線を画した現代性 - 名取春仙≪初代中村吉右衛門の馬盥光秀≫
すごい、確かに中村吉右衛門顔やわ…… - 名取春仙≪五代目中村歌右衛門の淀君≫
これが伝説の五代中村歌右衛門版淀君……生でも見てみたかったな - 小原祥邨≪雪中南天に瑠璃鳥or鶫≫
版画として、鶫より瑠璃鳥の方がよかろうという判断がおもしろいし素敵
と、ごっつう面白かったです。
アクセスも良いのでまじおすすめですよ。
京都はいつ歩いても満足度の高い街ですね。
これからも京都を彩る文物の中に、畿内戦国史や新版画がひょっこり紛れておりますように。