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かんたんにかんたんします。

「戦国武将列伝10 四国編 感想」編:平井上総さん(戎光祥出版)

 

いつの間にか戎光祥出版から「戦国武将列伝」というシリーズが発売されていて、試しに四国編を読んでみたら盛りだくさんな中身っぷりにかんたんしました。

 

これは……各巻をゆっくりでも読み進めていきたくなるやつなんですね。

 

https://www.ebisukosyo.co.jp/item/667/

 

 

長宗我部国親――長宗我部氏勃興の立役者  石畑匡基
長宗我部元親――天下人と戦った四国一の大名  平井上総
長宗我部信親・盛親――元親の後継者を襲った悲劇  平井上総
吉良親貞・香宗我部親泰――元親の勢力拡大を支えた弟たち  平井上総
久武親信・親直――軍事・政治に活躍した長宗我部氏の家老  平井上総
桑名吉成――元親・盛親に仕えた悲劇の重臣  石畑匡基
一条兼定――激動の人生を送った戦う貴族  平井上総
本山清茂・茂辰・親茂――土佐国中央を制した国人  平井上総
安芸国虎――元親に立ちはだかった土佐東部の名族  石畑匡基
細川氏之(持隆)・真之――細川氏有力庶流・阿波守護家の終焉  森脇崇文
三好長治――畿内情勢に翻弄され続けた悲運の二代目  森脇崇文
十河存保(三好義堅)――不屈の闘将、阿波三好家最後の当主  中平景介
三好康長――阿波三好家の顔役から信長の四国攻めの責任者へ  森脇崇文
篠原長房――主君に粛清された阿波三好家の重鎮  森脇崇文
篠原自遁――落日の阿波三好家を支えたもう一人の「篠原」  森脇崇文
大西覚用・上野介――乱世に翻弄された四国の境目国衆  中平景介
安宅冬康・神太郎・神五郎――淡路国衆となった三好一族  中平景介
十河一存――後世に脚色された〝鬼十河〟の実像  川島佳弘
香川之景・信景――讃岐における反三好勢力の旗頭  川島佳弘
安富元家・元保――細川氏を支える東讃岐の大将  嶋中佳輝
河野弾正少弼通直・晴通――父子で争った天文年間の激しい内訌  磯川いづみ
河野左京大夫通宣・四郎通直――地域権力河野氏の滅亡  磯川いづみ
村上武吉・元吉――「日本最大の海賊」の全盛期  大上幹広
村上通康・通総――海賊衆から豊臣大名への転身 土居聡朋
金子元宅――生き残りをかけた国衆の多方位外交  桑名洋一
宇都宮豊綱――喜多郡を支配した伊予宇都宮氏最後の当主  土居聡朋
西園寺公広――毛利・長宗我部に翻弄された境目領主  山内治朋
土居清良――英雄として語り継がれる謎多き武将  山内治朋

 

……すごい面子だ。

 

これら錚々たる人物たちについて、一次史料&最近の研究ベースで列伝を書こうというのだから企画の志の高さに恐れ入りますね。

こういう贅沢な本が出版されて一定数が売れるというのは、歴史ファンとしても研究者としても非常にいい時代になったものだとしみじみいたします。

 

まして四国の戦国時代。

 

もともと阿波三好家や細川氏之さん目当てで買った本ではありますが、読み進めて新鮮な気持ちで楽しめたのは桑名吉成さんだったり伊予の戦国時代だったり。

 

とりわけ伊予の戦国時代は、大内・大友・毛利・三好・長宗我部等々の大勢力のちょうど境目に位置する特徴、時代を代表する海賊衆を擁している特徴から、非常に独特な面白さがありますね。

いちばん旅したくなった県は愛媛県ですわ。

信長の野望・新生」で地味に湯築城がメチャ強だったのはこういう評価を先取りしたものだったのかもしれないっすね。

 

 

 

読んでいて印象に残った箇所は様々言い切れないくらいありますけれども、あえていくつか挙げるとすれば。

  • 長宗我部国親・元親期の細川京兆家との関係性、細川家内乱のどっち派に各時点で与していたかをもっと掘り下げて学んでみたい。

  • 久武親直さんや篠原自遁さんや戸田勝隆さんの悪評へのフォロー。

  • 桑名吉成さんを始めとした長宗我部家遺臣の活躍と悲哀。

  • 細川阿波守護家と備中の所縁。確かに!

  • 艶聞伝説はともかく、存在は否定されない小少将さん。

  • 三好康長さん天正十四年(1586年)までは生きてたっぽい?

  • 篠原長房さんの出家時期は久米田の戦い後ではなく義昭・信長勢との決戦を前にした元亀元年九月下旬頃。

  • 阿波勢の史料にしばしば登場する山伏。阿波の特徴と言えるかもしれない。

  • 大西上野介さんの活躍と、地域社会に残る大西氏の記憶。好みの文章。

  • 安宅神五郎さん(三好実休息)の子孫、どこかにいるのでしょうか。

  • 長宗我部元親さんの情報源として頼られる讃岐や伊予の諸勢力。

  • 事蹟をクリアに整理いただいてありがたい安富元家さん・元保さん・又三郎さん。「高国にとって、かつて奔放で恣意的な政元を有能で実力のある安富元家が支え続けたことは京兆家重臣の理想であった。たとえ現実がそれを許さなかったとしても、その幻影を追い続けたのであった」の一文が感慨深いです。こういう、三好家以外の視点から見た細川京兆家を読みたかったの。

  • 私がほとんど知らないので純粋に面白い伊予の争乱模様。愛媛いいなあ。

 

等々。

楽しい!

 

 

この本の出版を機に、四国の戦国時代人気がどんどん高まっていって、研究が更に進展していきますように。

 

 

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